@ticoaya90
「タイムリープができたらねぇ」
誰かが後悔を瞳に縫い付けたままこぼした。馬鹿だと思う。何度繰り返したって、ゴミはゴミのままですよ、と。
何かが臭うと思ったら、それは腐りきったゴミの臭いだった。ゴミはどこかと探したら、それは自分自身だった。私はゴミだ。だからゴミ箱にいるのだ。公園のゴミ箱の中に、当たり前に捨てられているのはゴミなのだ。だから、というわけでもないけれど、私はゴミだ。
「なぁ姉ちゃん、あんたゴミなのかい?」
「ゴミですよ」
「そうかい」
回収屋のおいちゃんがせっせとゴミを仕分けする。私は何ゴミに分類されるのだろう。
「ん?あぁ、あんたは燃やせねぇゴミだよ」
「そうですか」
それもそうか。燃やせる訳もないだろう。燃料の価値だってきっとないのだ。私はゴミだ。熱量の無い、ゴミ箱に捨てられるだけの、無意味という協調性すら持ち合わせない、邪魔な、ゴミだ。
「なんで姉ちゃんはゴミになっちまったんだい?」
「理由なんてありません。私がゴミだからゴミなんです」
「そうかい」
おいちゃんは私の髪に絡まる空き缶を丁寧にほどいて、リサイクルゴミに仕分けした。よく見ると色んなゴミがある。鼻をかんだティッシュは役に立ったろう。古びた電子レンジはお疲れ様。牛乳パックはありがとう。そして私は、ただのゴミ。
「私が未来から来たって言ったら笑いますか?」
「あ、それ知ってるよ。流行ってる映画だろ、えっと、たいむりーぷってので過去に戻るやつ」
「まぁ、何度繰り返したってゴミはゴミですよ」
「じゃあ色んなゴミになれるわけだ」
公園のジャングルジムには三人の子どもが絡まっていた。今時撤去されていないなんて珍しい。それも多分時間の問題だろうけど、それじゃあきっと、あの遊具だってゴミになる。
何度繰り返したって、ゴミはゴミ。私はゴミだ。けれど、色んなゴミになれるのなら、ジャングルジムにだってなれるのだろうか。想像もできない。だって私は、臭くて邪魔なだけ。
「リサイクルゴミに生まれ変われたら、そのうち再生紙とかになれるかな」
「なんだいそれ」
「ううん、やっぱり想像つきません」
「おもしれぇ女だ」
回収屋のおいちゃんは眉毛を下げて笑うから、それはとても特徴的でまじまじと見つめてしまった。色落ちしたような薄い青のハンカチで、私の頬っぺたをゴシゴシ拭う。痛くて赤く腫れたと思う。
「さ、遊びはやめて帰んなよ」
「私はゴミです」
「じゃあまた捨てられときな。おいちゃんがまた仕分けしてやっから」
髪に絡まったくちゃくちゃのガムが胸にひっつく。ジャングルジムの子どもたちは、私を見ると恐ろしいものを見たとばかりに散っていった。私はゴミだから、それも当然だ。
帰る場所はゴミ箱。いつか、再生紙になりたい。そんな夢ができた、ただのゴミ。