@sayori_888
小さい頃、幸村はしょっちゅう佐助に添い寝を頼んできた。
けれど佐助は忍だ。
例え世話係として傍付きとなろうが主と同衾など許される訳が無い。
だからあの手この手で断って来た。
宥める為に一晩枕元で手を握っていた事もある。
元服してからは流石に添い寝は頼まなくなったけれど。
共に出掛ければやはり枕を並べて寝たがった。
勿論それも丁重にお断りしたが。
幸村の旅に佐助が付き添うのはあくまで護衛が目的である。
そんな佐助が横になどなっていられない。
戸口から離れず一晩を明かした。
ずっとそうしてきたからか、眠りに落ちかける幸村にその言葉告げる時少しだけ反応が気になった。
「旦那・・・眠るの?」
重たい頭を膝に抱いて、そう尋ねると手が伸びてくる。
子供の頃みたいに握ってやればふ、と幸村の表情が和らいだ。
さっきまでは苦し気に眉間に皺を寄せていたけれど。
まるで子供の頃と変わっていない。
それが嬉しくて子守歌代わりに肩をトントンと同じ拍子で叩いてやると、次第に幸村が寝入る様に呼吸がゆっくりになっていく。
「旦那・・・眠るの?」
もう一度同じ言葉を繰り返す。
答えは今度は無かった。
幸村も殆ど眠りに落ちかけてる様だった。
だから、もう聞こえないかなと思って佐助はこっそり言ってみた。
「俺様も流石に疲れたから・・・一緒に寝ようかな・・・」
それは十年以上共にいて初めての事だった。
初めての添い寝。
「目が覚めたらあんた驚くだろうね」
きっとその驚いた大声で自分は目が覚めるのだろう。
思うと何だか楽しみで
佐助は口端を上げて目を閉じると、そうして二人廃寺の影で揃って静かに眠りについた。
(慶長20年、安居神社にて)
終
2016.2.27
お題「睡眠」