タグにて頂いたタイトルのものを形にしてみました。あんま長くないです(笑)それとなく、ルローワンドロの【お揃い】ネタも被せてみました(笑)
@ree_1116
僅か、数秒。
汗を拭う為に、目を逸らしただけの、刹那の間。
聞こえてたはずの音は途切れ、
途切れて、
「はあああ?なんだべそれ?本当なんだろうなぁ」
「間違いねぇす!ボス!!あいつ何しでかすかわかったもんじゃありませんよっっ!」
ゾウへ向かう最中、クルー達が目撃したのは夜の闇に塗れて、船内を彷徨くトラファルガーの姿。そうして忽然と姿を消したと思ったら、僅か数秒でまた元の位置に現れ、甲板へと向かうと言う。
「海賊同士の同盟なんて裏切りがつきものっすよ!」
「俺たちでやっちまいましょうよ」
「待て待て、逸るな」
視線を逸らした先には屈託無く笑うルフィ先輩と、その横に立ち薄く笑みを浮かべるトラファルガーの姿。
クルー達の話によると、トラファルガーが消えるのはルフィ先輩にお貸しした寝室辺り。
寝首を掻こうとしてるのではという話しも出て来ている。
んだどもなぁと思う。
信頼しきってるからこそのあの距離だ。
お互いに。
そもそも、この船にあってルフィ先輩に手を出そうもんなら俺たちがどう動くかくらいわかるだろうに。ましてやゾロ先輩やウソップ先輩たちも居る。んな、馬鹿なことする野郎ではない。
・・・・・と、思うべ。
でも、
「よっしゃ、わかったべ。今晩俺がトラファルガーの後を付けて真相を明らかにしてやるべ!」
不寝番を残し、皆が寝静まった頃合い。
不意に甲板に腰を下ろしていたトラファルガーが動き出す。
出来るだけ気配を消し、慎重に後を追い、辿り着いた場所はやっぱりルフィ先輩の部屋だった。
ふありと辺りを包む、青。
何か呟いたと同時に消える。
そっと聞き耳を立てれば、
「あ、」
と、いう途切れた声。
「な、な、な、」
何してんだべーーーーー!!!!!!
「あ、・・・・っ、」
思わず、息を呑んでしまったのは、どうしてと思ってしまったから、だ。
この数日。
こうしてずっと寝静まったころを見計らって、忍び込んでいた。
船に乗り込んだ日こそは、ぐーぐー鼾をかきながら眠っていたが、次の日からはそんな音すらなく、目を閉ざしていて。
途端、不安になった。
暗がりに閉じ込められたような、錯覚に陥った。
だから、口元に手を翳す。
漏れる息を確認できたってのに、それだけじゃ心許なく思い、首筋や胸元に指や掌を当てていた。
感じる体温に、生きている音に、ふと力が抜け、息をゆっくり吐いてから、寝床にしている甲板に戻っては月を見上げ、早く太陽が昇らねぇかなとそんなことを考えながら、浅い眠りに落ちていた。
そう、この数日間。
俺が近寄っても、触れても、一度として目覚めることなんてなかったってのに。
どうして、突然?
どうして、押し倒されているんだ?
疑問が浮かんで浮かんで、何も言えず何も問わない俺の上に乗っかったやつは、少し珍しく困ったように微笑んで、お前付けられてんぞ、という。
付けられて?
告げられたことを反芻しながら周辺を窺えば、確かにひとつ。間近に気配がある。隠してるつもりなんだろうが、隠しきれてないもの。見聞色を使ってなくても容易にわかるような気配に対して、俺はどうして気付けなかったのかと、悔やむ。そこまで、と思ってまた悔やむ。
「・・・おい」
「ん?」
「退け」
「しー」
しーってなんだよ。
と、目を顰めれば、いいからいいから、と小さな声で笑いながら、視線をすと逸らす。
ひとつある、気配へとだ。
「なんか、ひそひそやってるってロビンが言ってた」
「ニコ屋?」
「うん。だから、しーっだ」
いや、意味わかんねぇし。
このままで居るのも癪だ、と倒された先から起き上がろうとしたってのに、何を思ったのか麦わら屋はとすんと俺へ倒れこんで来やがった。
「おい」
「んー」
「何、」
「いいからいいから」
って、さっきからお前そればっかじゃねぇか。
何がいいってんだ。
「だってよ、お前」
首元に。
感じる、体温。
押し付けるように、動く口唇。
熱い、吐息。
「・・・・お前、俺が生きてるか確認しに来てんだろ」
何処か低い声で告げられた真実でしかない事柄に息を呑んだ。
どうしてお前、
「・・・気付いてたのか?」
「ん?ああ、まぁな」
嬉しそうな返答に、戸惑いながらも。
過去、確かにあった出来事を思い出していた。
「キャプテン!!」
突然の大声に、額を拭っていた腕が跳ねた。
でかい声出すなと、俯いていた視線をあげれば、しん、と静まり返った室内。
え?と時が止まったような錯覚に陥った。
さっきまで聞こえていた音が、なくなっている。
途切れ、
「なんで、」
出来る限りのことはした。
やれることは、全部やった。
手術の範疇では現状、命は繋いだ。
はず、だ。
生きられる保証はねぇが、それでも、なのに、
「・・・麦わら屋?」
途切れて、
「・・・・トラ男?」
そう、確かにあの時。
こいつは、止まった。
そんな、と俺が陥ったのは、絶望の底に落とされたような感覚で。
嫌だ。駄目だ、駄目だとそれだけになってしまった。
俺は医者だとこいつを預かったってのに。
なのに、途切れた音。
知らないだろ、麦わら屋。
俺、俺な。
怖かったんだ。
怖くて、怖くて、どうしてかわからない程、怖くなって。
また、とどこかで思った。
また、失ってしまうって。
あの時はまだ繋がりなんてないに等しかった。
ただ一度、共闘したがそれだけのことでしかなくて。
Dの名を持つやつに出逢えて実際、嬉しくは思ったが。
本当にそれだけでしかなくて。
なのに、言いようのない絶望を感じて。
怖かった。
医者だってのに、怖くて。
なぁ、知らないだろ。
お前の所為だ。
あんなこともう御免だ。
あんな想いはもうしたくない。
だから、
新世界の海の上。
一人、甲板に座り、目を閉ざしたってのに。
辺りに満ちた静寂の所為か。
お前が近くに居るってのに、おかしく静かで。
暗がりの瞼の先に、浮かび上がってくる過去の出来事に、どうしても襲い掛かってくるもんを振り払う為に、此処に来た。眠っているお前がちゃんと生きていることを確認したくて、此処に来たんだ。
知らないだろ。
わからないよな、お前のことだ。
こんな、弱さのようなもん。
俺だって知りたくなんかなかった。
過去に何度もあった、消失の記憶。
必ずと誓ったことで、薄れていた記憶。
強くならなければ、と懸命に必死にここまで来た。
そう、俺は強くなったってのに。
忘れたと心の奥底に仕舞い込んだものを思い出させたのは、お前。
知らしめたのは、お前の所為。
お前が、悪い。
お前が、
「んな顔すんなって」
陥り掛けた思考の闇から戻したのは、麦わら屋のそんな声と、目元に触れた指先で。
「・・・・トラ男、」
不意に優しく、呼ばれ。
塞ぎかかっていた瞼を開け、目の前、有り得ない程至近距離にある黒い瞳を見た。
何故か、黒が揺らいでいるように思えて、
「言っとくけどよ、俺だって・・・・同じだぞ」
「・・・同じ?」
「俺だって、お前が生きてるのか不安に思うこと、あるぞ」
「え?」
「ドレスローザでよ・・血塗れで倒れてただろ。あの時のこと、思い出す時がある。怖くなって、お前探して。つい飛びついたりしちまってよ。でも、近くに居たら安心してよ。良かったなぁって・・・失わなくて良かったって毎日、思ってる。だからよ、」
だから、ともう一度繰り返し、ふ、と口唇が重なった。
確かに伝わってくる、熱。
生きている、証。
「馬鹿・・・」
「お互いさまだろ?」
「・・まぁ、そうかもな」
「だから、お揃いだな」
「え?」
「うん、俺とトラ男。お揃いだ」
言葉に、少し前。
小さな小さな船医に告げられたことを思い出す。
ああ、あれは・・
「そうか、」
「うん、そうだ」
ししし、と笑ってはまた、触れてくる。
気付けば、もっとと言わんばかりに腕がそいつの背に廻ってて。
気付けば、深く深く、鼓動までも重なるよう口付けに夢中になっていた。
何気ない日常に、お互いが生きている奇跡の中。
俺たちは、これからも共に行くのだろうか。
それは誰にもわからない。
でも、今はこうして触れ合える距離にある。
生きていることを実感出来る距離に在れる、奇跡。
【何気ない日常、それが奇跡】
2016.07.15 Ree.MORITA
*-------------------------------------
タグにて頂いたタイトルを形にしてみました。
折角なので、今回のワンドロの続編風味で・・・
この後、毎日一緒に眠るルローちゃんです(笑)
ロメオたちにも宣言しますんで、色々楽しそうですー!
素敵タイトルくださったじゃびさんに感謝感謝ですーーー!!
ここまでお付き合い、ありがとうございました。