オリジナル
・雰囲気短文
・雨降りの話
@huyutoya
今日は翡翠の雨が降る。
細い音がする。
さあ、さぁ、さあさ、さぁ。
木の枝に、葉に、草に、雫が垂れては跳ね返る。ひたひたと柔らかな音で跳ね返る。
白く真っ直ぐな糸が空から降り注いでくるようだ。
ぽすり、と重さを伴う音がした。
草むらに降り続ける雨。草を折り曲げて、一つ小さな雨の塊が包まれていた。
拾い上げたそれは、白と緑の石だった。
ああ、今日は翡翠の日。
空から翡翠の雨が降る。
ぽつり、さあさぁ、しとりしとり、さぁさあ。
傘を叩く静かな音を聞きながら、ぼんやりと雨を眺めて佇む。
不意に入り交じる一瞬の翠色を追えば、ころりと草むらに転がった。白く青く、優しく混ざった色は草木とは違う色を生じる。
白、白、白、緑、白、白、青、白、白、白、白、
手を差し出すと雫はとろけて、透明な軌跡をつくって手から滴る。
軟らかな石は、石としてこの手に残らない。ただただ色とぬるい感覚を残していくだけ。
暫くその感覚を味わっていると、ぽすりと手の平に重い音。
翠の丸い石が、そこにある。
親指の爪ほどの石に雨が降り、とろとろと柔らかな雫になって滴り落ちる。交わる色でありながら、決して交わらない石と石。
ころりと転がし、指先に持っていく。危うく零れる所で、何とかつまんだ。
空に翳せば、薄雲の先から漏れる光に照らされて、石の奥底に透き通った翠が光る。
白よりもずっと透明に。空よりもっと青に近く。
二つの色を宿しながら、翠は翠でしかない色だった。
今日は翡翠の雨が降る。
ひすいの色が、降ってくる。