X以外のSNSでの投稿にはPrivatter+がおすすめです
Xフォロワー限定公開・リスト限定公開の停止について

【悪夢とかみさま】

全体公開 2 1086文字
2016-09-05 18:03:12
Posted by @mugenwars


伸ばした手は届かない
落ちた砂は掬えない
いや、
砂を巻いたのは私だ
絶望を招いたのは私だ

彼女が泣いている
彼女に剣が向けられる
彼女に剣が突き刺さる

彼女は笑っている
これでよいと満足そうに笑っている

違う。

剣が刺さったのは私
腹に埋まっていく鉄の感触
彼女が泣いている
雨のように彼女は涙を流す
私はまた間違えた

彼女の唇に唇を重ねる
彼女から貰ったものを返すために
彼女にあげたものを奪うために
ゆっくり急速に魂が冷えていく
これでよいと言葉を紡ぐ
力が魂に埋まっていく
貫かれた魂がひび割れる音がする
彼女が泣いている

彼女がないている

たましいが

砕ける



っ!!」

暗闇のなかで目を開けた。
世界の絶望が私の目覚めを笑って歓迎する。

「ずいぶん長いこと眠っていたね」

絶望以外の声がする。
目を向けて、暗闇に人影をみる。

「ダイジョウブ、だいたい3日と11時間ぐらいしかたってない。世界はそれほど多くは変わってないよ」

くつくつと愉快そうに笑う人影は、天地を無視して宙に胡座をかく。

……久しいな、お前がここに来るのも」

己の手を確認し、自分の額に触れ、身体の形を確認して、自分がまだ有ることを確かめながら、
立ち上がり、言葉を吐き出す。

「ソウダネ。125年と5か月24日ぶり。何をしにきた、と聞きたいかい」

私は影を見る。
相も変わらず笑顔の絶えない相手に目を細める。

「ボクは真実を告げるもの。貴方がそう作った。だから主にホントウを伝えにきたよ」

そういうと、影の顔が間近に迫る。
鼻先が触れそうなほど近くで、彼はいう。

「このままでは一番よくないことになる」

だが、そんなことはもう

「シっている。そういうんだろう」

そうしてにんまりと笑ってから、間近にいた彼は離れていった。

「もうひとつ。そう遠くないうちに、ここに駒がくる。貴方に真実を尋ねるために」

いつになく真剣そうな顔をしたあいてに、
思わず眉をしかめた。

「いつから、預言者なんて始めたんだ」

そう私がいうと、いつもの調子で影がわらった。

「ボクは予言なんてしないよ」

そう言って彼は、とん、と地を蹴る。
ふわりと浮いて、その姿はあっという間に闇に溶け込んでいった。
くすくす、と笑い声を残して。


……

しばらく去った方向をみていると、
ザリザリと耳障りな音と絶望が嘲笑う声がする。

最悪のエンディングは狂ったように目まぐるしく姿を変える。

そのときはじめて、

己の手が震えていることに気づいた。


投稿にいいねする


© 2026 Privatter All Rights Reserved.