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【ムゲンWARS】「とんでもないものが起きてしまった」

全体公開 2927文字
2016-10-06 22:41:36

世界線と時間軸が微妙な砂糖多めのお話。R-15?

Posted by @shalnadia

~前回までのあらすじ~
生物に憑依して魂を食らう魔王である憑の魔王は偶然、水禍の勇者という少女を拾った。
外見要素が気に入ったのでしばらく乗っ取っていようとしたが、魂が引きこもってしまった。
その魂を目覚めさせるため色々な人物とあれやこれやしたが、なかなか成果は上がらない。
と思っていたら、ひょっこり勇者は目を覚ましたのであった。人生なんてそんなものだ。


◆少女、大地に立つ

憑の魔王は憑依した対象の魂のカタチを視ることができる。
この勇者の少女の魂の形は、真っ暗闇に水面があるカタチである。いや、あった。
「!?」
その時は急に訪れた。今まで暗闇だったところに光が差し込み、空と島とが現れた。
島には細々としたなにかよくわからないものがある。水面は海で、今は不規則に乱れていた。
「これはいったい「僕は今まで何を「僕っ子じゃと!?「僕が僕じゃなく喋って「ええい少し待て!」
少女の口から二人分の言葉が溢れ出す。
少女のカラダから、どろりとスライム状の物体が滲み出し、人の形になっていく。
これが今の憑の魔王の本体だ。そしてスライム娘から、人間の形へと移り変わる。
銀色のロングヘア、尖った耳、垂れ気味の目ながら美しく整った顔立ち。
豊満な乳房は母性と許容力を現し、それながら華奢に見える四肢が妖の者である事を表していた。
但し、身長は勇者と同じで145cmほどしかなかった。
「ふう。練習した甲斐があったというものじゃ」
見た目からは想像のつかない可愛らしい声で女性は一人つぶやく。
これが憑の魔王のニンゲン偽装形態である。なお、戦闘力が犠牲になっている。
「君は……?僕のカラダから出てきたように見えたけど……
「我は憑の魔王と呼ばれる者。勇者の少女よ、汝(なれ)のカラダを2年ほど使わせて貰っていた」
「なれ……貴方って意味だっけ。二年、か、僕なんて死なせてくれればよかったのに」
「そうか。ならば今後も生かし続けてやろう!魔王が勇者の望みを聞く道理はないからの!!」
「ふふ、悪い魔王だ。でも僕、勇者といってもそれらしいことをしたことはないんだ」
「ほう、そうなのか?」
「それどころか、水害を呼び出しては人々を苦しめてばかりさ。生まれ育った村すら、………
ふいに少女の目に大粒の涙が浮かぶ。魔王はうっすら察し、優しく抱きしめてやった。
嗚咽の声が暫く続き、魔王はただ優しく背中をぽんぽんとしていた。
……ごめん、ありがとう。僕はね、自分ごと生まれ育った村のすべてを海に還してしまったんだ」
……そうか」
「両親もいた。友達もいた。恋人は、まあ。そんな僕を、誰かが水の禍、水禍の勇者と呼んだよ」
……そう、か。すまぬ、辛いことを思い出させてしまったかの
「いいんだ。僕が勝手に思い出しただけだからね。……こんな罪人が、勇者なわけないだろう?」
「しかし――
しかし。女神が勇者に選んだ証の石は、今も変わらず輝き続けている。
それが何を意味しているのか、二人にはわからなかった。


◆◆仕様と貝はすり合せるもの

明確な時計はないが、時刻はそろそろ太陽が南天しようという頃である。
日の出とともに起きて農作業をしたカラダは、食事を求めていた。
……おなかすいた」
「ん、確かにそんな頃合じゃな。今用意するからの」
「手伝う」
変化の練習こそしていたが作業する練習はしていなかった魔王。
久々にカラダを動かし妙な感覚が抜けない勇者。
やいのやいの騒ぎながら数刻経った頃には、黒焦げの小麦の塊と洗っただけのサラダができていた。
しかし、二人はなんだか楽しそうであった。
「見事に大失敗じゃの!」
「うん、失敗だね」
顔を合わせてくすくすと笑いあうさまは、まるで生まれたときからの姉妹のようですらあった。
「君、は……えっと、名前……
「名?憑の魔王、で困ったことがこれまでなかったからのう。汝は?」
「僕は……村のしきたりで名前を貰えなかったんだ。あだ名はあったけど」
「そうなのか?不便じゃったろうに。よし、お互い名前を付け合うというのはどうじゃ?」
「わかった。じゃあ貴女は……ルース」
「即決!?ちょ、ちょっと待つのじゃ!ええと、ええと!」
憑の魔王、ルースがうんうん唸っている間に、少女は黙々とサラダを食べている。
極めてマイペースな娘のようだ。
……よし、サンディアというのはどうじゃ!愛称はディアかの!」
……ディア。サンディア。僕の、名前」
にへら~っとした、嬉しそうな、幸せそうな笑顔。魔王はきゅんとなる心を隠しきれなかった。
「じゃあ……ルース」
「なんじゃ、サンディア」
……えへへ」
「な、なんだかくすぐったいの」
二人は向かい合って照れくさそうに笑うのであった。

食事も終わり、片付けが終わり。二人は並んで紅茶(これはうまく出来た)を飲んでいる。
「ルースは食事しないの?」
「我の食事は生物の魂じゃからのー。生物がするような食事は必要ないのじゃよ」
「食べられないわけではないんだ」
「おそらく?試したことがないからのう」
「ふうん……。その姿は常にいられるの?」
「残念ながら。冬の日の出から南中するほどの時間もしたら半分死体になってしまうじゃろうな」
「それは……僕に触れていれば少しは平気とか、そういう?」
「うむ。今の我はほぼ汝あーサンディア、の魔力で生きておる」
……えへへ」
「(くっ、可愛い)」
「じゃあ……ん」
ごく自然なことのように、二人の唇が触れ合う。魔王の目が驚きに開かれる。
「ん……ちょっと、疲れた感じがした。これが魔力を吸われる感覚なのかな」
「ちょ、え、ディア、汝」
「あんまり疲れないようにまめにこうしたほうがいいね」
「えっ、あ、はい?そうですね?」
「ごはんも食べたし……水浴びしよっか」
「マイペースじゃのう。沐浴ならあっちで
「ううん、一緒に。というか、僕、もう我慢できない」
「我慢ってな、何をかの」
「一目惚れ、って信じない方だったんだけどな。……僕、ずっと見せ付けられてた。美味しそう」
「な、何がじゃ!?なぜ脱いで、ちょっどこ触って、んっ――!♡」

「ごちそうさまでした」
「おそまつ、さま、でした、のじゃ……♪」


◆◆◆ふたつがひとつ

「では、確認するが」
翌朝。美味しく焼けたパンを見つめる勇者を見ながら、魔王が切り出す。
「サンディア、汝は人間や勇者と戦うこともあろうが、いいんじゃな?」
「うん。ルースは僕に実質命を預けることになるけど、いいんだね」
「うむ。それではコンゴトモヨロシク、勇者殿?」
「今後ともよろしくね、魔王さん」
ごく自然に、二人の唇が触れ合う。先ほどから握り合っていた手が更に絡み合い、離れない。
世界の流れにこの二人の存在がどう関係するのか。
二人の関係に世界の流れがどう関係するのか。
それは、天使であろうとも計り知れないことであった。

<おしまい>
(サンディア:スペイン語で西瓜 ルース:同、光)

【R-18】http://privatter.net/p/1890082


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