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【ツタエルモノ】

全体公開 1 1171文字
2016-10-26 19:31:18
Posted by @mugenwars

分かたれたのは力。
彼の神が持ち生まれた宿命。
七つに砕いたそれを、黒い子供たちの核とした。

それがハジマリ。


【ツタエルモノ】

腹の底が煮え立つように熱をもつ。
だというのに、手足は氷水に浸けたように急速に冷えていく。

仮面に覆われていない左半分の顔。
口と目が不気味な三日月型に歪められた。

一番幼い兄弟たちの悲鳴と泣き声がまだ耳に響いている。
一番強い兄弟の角と刃が砕ける音が頭に焼き付いている。
一番賢い兄弟の言葉が心の底に落ちていく。

自分が残されたのは、
一番弱いからだ。
そう、終わりを受け入れる自分が助言をくれる。


「"知っていた"んだろう?こうなることも」

不気味な三日月型の口から言葉が発せられる。
それに対して、いつものように笑うと、言葉より先に、腹から溢れだした命が口から溢れていった。
肺にはいった液体のせいで咳き込むと、さらに貫かれた腹は熱をもつ。

「アア……シっている」

そう、知っていた。
こんな結末が訪れることを。

「知っていて止めなかった、おまえは兄弟一の卑怯者だ」

腹を貫く右腕の持ち主がくつくつと臆病者を嘲笑う。
そんなことも、もう生まれたときから知っている。

シって、いる、シった。オボえている、いや、忘れない

見えなくなり始めた目で仮面を見る。
残った空気を絞り出して声を吐く。

「シった、シっておくぞ、オマエのホントウ、忘れない、決して!決してだ!オマエのハジマリから、オワリまで、全部、全部を!」

そのとき、どんな顔をしただろうか。
笑った気がするし、怒った気もする。

落ちた音と、頭をぶつけた感触がする。
あいつが笑った声が、魂に、刻み込まれた音がする。

ざくり、
ざくりと


ざくり、

音が聞こえて、目を開けた。

雑多にいろいろなものが置かれた小さな部屋。
ひとつだけある椅子に腰かけて、
居眠りをしていたことを思い出す。

腹の奥が熱い気がして、腹を擦る。
怪我もないし、なにか溢れていることもない。
知っている感覚はいつまでたっても現実のように主張する。
震える足を無理矢理動かして乱暴に立ち上がると、椅子がばたりと転がった。

「ああ、シっている。忘れなんかしない」

転がるものを蹴り、扉をあける。




「ねえ、ホントウのこと、教えてあげようか」

白灰色の長髪の人間が、怪訝そうに空色の瞳で見る。
笑って見せる。いつものように。

「魔王たちの墓場の世界の魔王、それを放っておくと

頭の裏で、あいつが笑う。

「キミの望む自由は潰えるよ」

空色が、細められる。
同じように、目を細めて、

そのとき、どんな顔をしただろうか。
笑った気がするし、怒った気もする。

それが、ハジマリのツヅキ。


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