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未来へ

全体公開 1267文字
2017-06-13 00:57:13

ウソツキ・フォークロア
アノニムルートネタバレ有り 時間軸はエピローグの前辺りのお話

暗闇の中で、どす黒い怨嗟の声を聞く。
耳を塞ごうと、目を閉じようと、それは消えない。
希望に満ちていたはずの数多の未来を踏み潰し、選択を誤り、奈落の底へと堕ちるのは、当然の結果だ。
それは永劫変わることはない。
そう思っていた。彼女と出会う前までは。
「大丈夫?」
「ああ、うん。ちょっと寝てた」
彼女の大丈夫?という言葉にボクは大丈夫だよ、とは返さなくなっていた。
強がりも嘘つきも、彼女の前ではもう必要がない。
大丈夫なわけない、苦しくて、辛くて、逃げ出してしまいたい。
寂しくて、悲しくて、もう一歩も前に進めない。
自分一人ではどうしようもなくなっていた。
ボクの心は自分が思っていたよりも随分と疲弊していたらしい。
そんなボクの傍に彼女はずっと寄り添ってくれた。
年上の男の癖に格好悪く泣いてしまうボクを抱き締めて、甘やかす。
今も彼女は魘されていたであろうボクを抱き締めてくれていた。
「今日は、昨日より少しだけ長く眠れてたみたい」
彼女がそう言って、ボクの髪を撫でる。
夜中に何度も飛び起きてしまうボクの睡眠時間はとても健康的とは言えない。
最近はかなり眠れるようになってきてはいるけれど、それでもこの有り様だ。
「いつもごめんね」
恋人になってからは、ベッドは大きなものに買い換えて、同じ布団で眠っている。
そうなれば、嫌でも相手がどんな状況かはわかる。
彼女もボクに合わせていたら、体調を崩してしまうかもしれない。
そう以前に聞いてみたら彼女はいつものなんてことないと言う顔をして。
「アノニムよりはとても健康だし、強いから大丈夫」
となんとも頼もしいお言葉をいただいてしまい、それ以上は何も言えなかった。
彼女と比べればボクはかなり体力もないし、病気もしやすいのでそこは引き下がる事しかできない。
「私が好きでしている事だし、アノニムが謝る事なんて1つもないよ」
「相変わらずなんていうか、強いよねぇ~
惚れ直しちゃいそうだなぁ、ボク」
軽口も今日はあまり元気が出ない。
とりあえず、へらへらと笑ってみたけど失敗した。
空回りが虚しい。
本当は、彼女に嫉妬もしている。ボクには無かった、その強さ。
強い意志、言葉、どれもボクには手の届かないものばかり。
そう思いながらも彼女の傍にいるのは一体どうしてなんだろうか。
キラキラと輝いて、眩しくて、それが恐ろしいのにボクはずっと彼女から離れられない。
ボクを好きだと囁く声に、恥じらうその表情に、ボクは恋をしているのだ。
彼女の言葉に彼女の瞳に何度も何度も。
彼女は決してボクを慰めたりしない、全てを諦める事も投げ出す事も許しはしない。
でもそれがボクにとっての救いになるのだ。
「ありがとう、ボクの傍にいてくれて」
顔を上げてそう伝えると、彼女が微かに頬を染めてはにかむ。
「どういたしまして」
ボクの憎くて、強くて、可愛くて、愛しい恋人。
どうか、この未来をこの幸福を一秒でも長く感じられますように。
そして彼女が、ずっと笑っている世界でありますように。

fin


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