@lmyonsanl
――探偵業界の何かのパーティ会場にて。
「やあ、御守君」
「………………善知鳥さん」
「貴女も来ているとは思わなかったよ。てっきり琴浦君が来るのかと」
「今夜は先生の代理です。あと兄さんも来ていますよ。ほら、あそこに」
「はは。あんなに囲まれて。相変わらずモテるねぇ」
「変わった人にばかりにモテるので、それがいいことかどうかはわかりません」
「変わった人?」
「……お心が極端に繊細で……、他人への依存度が高いタイプといいますか……」
「ああ、メンヘラ女ってことね。――ヤキモチかい?」
「いえ、そんなことはまったく」
「ま、そうだね」
「それより善知鳥さんもこういうところに顔をお出しになるんですね。失礼ですが、てっきり華やかな場は苦手なのかと思ってました」
「仕事が絡むからねぇ……。繋がりもできるし、何より探偵がたくさんいる。面白いのと出会えたら儲けだろう?」
「ふうん……。そういうものですか」
「大人だからね、いろいろとあるのさ」
「子供扱いですか……」
「これは申し訳ない。確かにこんな美しいお嬢さんにかける言葉じゃなかったか。髪の色とあったそのドレスは、今夜の貴女にとてもお似合いだ」
「…………本当に、本っ当にそういうのやめてください……。心にも無いようなことを……」
「本心なんだけどねぇ。まったく僕も信用がないものだ」
「はぁ……」
「あはは」
「……そう言えば、部下の方はご一緒ではないんです?」
「来てるよ。今は食べ物を取りに行ってる。――ん?」
「どうしました?」
「なに、知り合いを見かけただけだ。――ああ、向こうも気づいたか」
「では私はお邪魔ですね。このあたりで失礼させていただきます」
「そうかい? 面白い子だから御守君にも紹介しようかと思ったんだけどな」
「それはまた別の機会にでも。では――」
「ああ、またね」
「え……!? 火之さん!?」
「……! 夜子か」
「はい。こんばんは。……今夜火之さんに会えるとは思ってもみませんでした」
「あー……。おれも来る気はなかったんだが……」
「会長にお声をかけられたとか?」
「そういうことだ。あのお方に『服も用意する』とまで言われてしまったら、もう来ないわけにはいかないだろ……」
「ふふ、そうですね」
「こんな窮屈な服、会長殿からの頂き物でなければ着ることなんてなかっただろうな」
「いつもはゆったりしたお召し物ですもんね、慣れていないだけでしょう」
「そういうもんか?」
「そういうものです。それに確かに珍しいですけど……。スーツもお似合いですよ」
「ん……。ああ、どうも……。――それにしても、会長殿は何をお考えなのかわからん」
「簡単じゃないですか」
「そうか?」
「ええ。火之さんにもっと人の集まる場に出てもらいたい、それだけでしょう。会長は火之さんの今後を気にしているんですよ」
「む……」
「なんとなくは感じているんでしょう?」
「それは……」
「……とはいえ火之さんの気持ちもわかります。私も知らない人にどうでもいいこと言われますし。いろんな人が集まるから仕方ないと割り切ってますが。本当にもう、なんなんですかね? 『若いくせに態度がでかい』というのには反論しませんが、兄さんと鈴切の三人でこういう場に来ると、『若い男二人を引き連れてお姫様気取り』とか言われるんですよ? 一緒にいるのは兄とうちの社員なんですが!? それに私が一番若いんですが!?」
「ははっ! 夜子も大変だな」
「笑いごとじゃありません! あと学校でのことや、私の好みを根掘り葉掘り聞いてくる輩も我慢なりません! さっきもそういうタイプに絡まれて……。面倒くさくて外に逃げてきたところだったんですよ」
「へぇ。それで夜子はこのあとどうするんだ? このまま帰るのか?」
「いえ……。そろそろ会場に戻ります。兄さんと帰ることになっているので」
「ならおれも一緒に行くとするか」
「そうですか。ところで会場内に一度は入ったんですか?」
「最初の挨拶の時だけな。終わったらすぐに出た」
「ではお食事もまだなんですね。どのお料理もとても美味しかったですよ。テーブルに取りに行きづらいなら、私が適当に見繕ってきましょうか?」
「いいのか? じゃあ頼む」
「ええ。では行きますか」