思いのままに書いたので、作者でさえ、何が起こっているのかわかりません。
さらっとよんでください。
ここにあるのは、事実だけど、忘れたかった、ほとんど忘れてしまった事です。
サリーの脳内変換もあるのです。記憶とは、時間とともに変わるものなのですから。
@wocarinas
わたしには好きな人がいます。
同級生の、明るい髪が眩しい、優しい男の子です。
わたしのこの学校に来て初めてお話した相手でもあります。
彼は本が好きです。
わたしのお仕事は司書なので、よく一緒に図書室へ行きます。
選んだ本を「面白かったよ」と言ってもらえるのがとても嬉しくて。
わたしにはそこで過ごす日々が何とも言えず幸せなのです。
彼のことを想って、彼の役に立ちたくて、わたしは隠れてたくさん本を読んでいます。
いつか全部読んだなら、彼に一つずつ薦めていきたいのです。
「好きです」とは言いません。
ただ想うだけでこの気持ちに価値があると思うから。
それは、本には載ってない、わたしの考えだけど。
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わたしはなんて愚かなんでしょう。
わたしの想いも、願いも、行動も、すべてが彼を傷つけていたなんて。それに気付けなかったなんて。
自分の考えで動くことは、きっと罪なのです。
「全部本を読んだら」とわたしが隠れて本を読む横で、「それより早く」と読む彼に気付けなかった。彼はわたしを想ってくれていて、でも、わたしは彼よりも本に夢中で。
私が恋をすることは罪なのでしょうね。
こんなことになるのなら。
全部、全て、すっかり忘れてしまいたい。
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「サリー、」
上から降る、穏やかな声に瞼を開く。
ぱぁっ、と明るくなった視界で、春の陽だまりのような温かい金の髪が揺れていた。
目に入ったのは机に腰掛ける旧友の姿。
「茉紘?」
「そ、可愛い可愛い茉紘くんで~す」
にっこりと微笑む表情は自信たっぷりで、前にふらりと現れた時に垣間見えた小さな迷いなどはすっかり消えていた。
この男にはやはり笑顔が良く似合う。いや、楽しそうなのが似合うのか。本人に伝えると話が長くなるから言わないが。
「我に何の用だ?」
「来てみただけ、暇だったから」
用がないと来ちゃいけないの?と頬を膨らませて、大きなパライバトルマリンの瞳がこちらを見る。軽い口調に責めるような色はなく、何かいいことでもあったのかと尋ねると。
「アンタの寝顔が子供みたいで面白かった」
今度こそ揶揄い混じりの明るい声と共に悪戯っぽい笑みを浮かべるので、ため息をつきつつ良かったなと返してやった。
でも、寝ていたのは無意識で、読んでいた小説はそのまま開かれていて、内容ははっきり思い出せないままで、睡眠不足ではないのに何故だろうという問いは、次に掛けられたそっけない言葉で消えていった。
「懐かしい名前が出てたよ__
_って」
思い返すように、懐かしむように、浮かべて表情に連れられて金の髪がはらりと舞う。
そして、
視界が、真っ暗になる。
口に出されたそれは、昔の、彼の、名前で。
『わたし』だった頃の『きみ』の名前で。
真っ暗に残された、一人ぼっちのわたしの光。
「サリー…?」
訝しげな声に引き上げられる。
春のひだまりが、暗い闇にかぶさるように。染め上げるように。
「なんでもない、」
「…そ」
陰る相手の表情で、自分の表情が崩れているのだろうと察した。
忘れたと思っても、これだけは消えないのかと苦笑する。
ああ、愚かしいな。
闇にも落ちきれなくて、光にも進めない。
『わたし』も『我』もなんて愚かなんだろう。
ふと、目に入ったのは、机に広げられた読みかけの小説。
そこにあったのは、
『しかし、しかし君、恋は罪悪ですよ。わかっていますか?』
飛び込んだ一つの文に、
わかっている。と。
こころ の中でそう答えた。