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万騎くん

全体公開 3 1013文字
2018-01-25 00:54:09

 矢嶋万騎――またの名をホーニー・トードは、統和機構のエース級戦闘用合成人間である。

 そしてただの高校生でもある。現在は学校をズル休み中である。

 いや、ズル休みというのも正確ではないだろう。彼はベテランの戦士、情け容赦なく敵を殺せる非情さを持ち合わせているとは言っても、立て続けにしんどい任務が重なれば心身ともにしんどくなる。道徳や価値観は幼少期からごく普通の家庭で形成されてきたために、そういうこともあるのだ。要するにメンタルが弱ってしまっているので、こうして学校にも行かずベッドの上で丸くなっている。両親もたまにこういうことがあるのはわかっているので、風邪ということにして学校に連絡を入れてくれた。理解があるのはありがたいことだ。
 3日前の任務対象は年端もいかない子供だった。まだ足し算ができるかできないかくらいだったろうか。1週間前は自分と同じくらいの歳の少年だった。親友と思しき少年が庇いに来たが、任務を優先した。1ヵ月前は壮年の女性だった。最後に息子に合わせてほしいと言われた。2ヶ月前は……
 考えるのはやめようと頭を振って、反対方向に寝返りを打った。鬱々としたことを考えてもしょうがない。回復しなければ仮病を使ってまで休んだ意味がないとわかっていても、そもそも昼まで寝ていたので、日が傾いてきた今頃に寝られるはずもない。
 ずっと布団にくるまっているだけの状況も飽きてきたので、チカチカとランプの点灯する携帯を開いた。ランプはメール着信の合図だったようで、送信元は親友の二人だ。思わず顔をほころばせて一通ずつ開けば、仮病じゃねーのかとか、学校でこんな馬鹿やってたとか、お前がいないと寂しい(馬鹿にしている)とか、くだらないお見舞いメールだった。読んでいるとさっきまで何を考えていたのか忘れてしまって、けどメールの返信をする気も起きないまま、携帯を閉じてまた寝入ろうとした――途端に、けたたましい着信音が薄暗い部屋に響いた。慌ててディスプレイを確認すれば、親友のうちの一人から。そういえば丁度学校が終わる頃合だろうか。風邪の振りをしようかしまいか……と考えながら通話を受ける。


「おー、どうしたんだよ。……いや仮病じゃないって。ほんとに風邪…………え、カラオケ?百太の奢り……全然行ける。今治ったから。……だから全然仮病じゃないって。すぐ行くから駅前集合で。…………母さん!遊びに行ってくる!」


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