..
ads by microad

【カゲボウシを丸めてみた】

Publish to anyone 107views 1favs
2015-02-12 22:22:57
2015-02-13 05:49:20

 青いインクにされてしまったアルヴェイラ。
 彼女は元に戻ってから、この部屋にやってきて、そして帰っていった。何か煮え切らない態度であったがそれも当然だろう。
 エドウィンは、ソファの背に身体を預け、彼女が残していった菓子折りを見つめながら、ふふっと笑った。
 彼女がナイトワンズの術中にはまり、身動きできない時に彼は彼女をなじったのだから。戻ってきたとき、相当怒るだろうなと知っていた。けれど、彼は彼女をなじった。
 おそらくは、今日のような表情を見たかったからだ。
「悪趣味、だったかな」
 独り言ちながら、正方形の可愛らしい箱を指でつつく。中身はクッキーか何かだろうか。ことり、と物音がして。エドウィンは動きを止めた。
 今、箱が少し動いたような。
 シフォンで包まれた包装のリボンを解く。組み合わされた紙箱を開いてみると、目が合った。

「ア……」
 
 濃い紫色のふわもこしたものが、そこに入っていた。菓子箱の中に窮屈そうに、みっしり、と。
 そいつはエドウィンを見上げた。
 ほう、とは言わずに、ア……と言った。
 問答無用で、男の手がそいつをむんずと掴んだ。箱から引っ張り出してみれば、それはアルヴェイラのアトリエに住まうレジェンダリ──カゲボウシだった。
 その目の下あたりに、クッキーの破片らしきものが貼りついているのを見つけ、エドウィンは笑った。ただ口端を歪め、ぞっとするような笑みを浮かべたのだ。
「オカシハナイゾ」
 ほほう、とエドウィン。
「アルヴェイラは、クッキーの代わりに玩具をよこしたようだ。さて──」
両手で挟み込んで、ぎゅうぎゅうと締め付ける。「これは何かな?」
「ヤメテイタイイタイ」
「ボールかな?」
 床に落とし、ぼよんぼよんと跳ね返るのをドリブルのようにして楽しみながら、最後には片手で掴んで、ゆらりと立ち上がる。
「ジェラルド、ちょっと」
 まるでハンドボールのように片手でカゲボウシをひっ掴み、エドウィンは執事を呼んだ。ドアを開けて相手が現れれば、にこにこと捕獲したそれを見せつける。
 ジェラルドはただ、ほう、とだけ言った。
「菓子箱の中から、ボールのようなものが出てきた」
「私には目らしきものがあるように見えますが」
「可愛いだろう? アルヴェイラがくれたんだ」
「あのお嬢様が、ですか?」
 執事は、目を細め疑わしそうに主人の手の中にあるそれを見つめるのだった。もこもこしたそれは、怯えてぶるぶると震えていたが、この部屋にいる者の誰一人としてそれを気遣うような人間はいなかった。
「だが、悲しいかな。僕は、もうこういったもので遊ぶ年齢ではない」
「意外に楽しんでおられるように見えましたが」
「手触りがいいんだよ」
 しれっと言うエドウィン。前触れもなくジェラルドにそれを放ってみせる。有能なる執事は難なくそれを受け取ると、両手で掴み、しげしげと眺めた。
「リボンをつけて、そっくりそのまま返してやろう」
 エドウィンはクッキー箱の包装についていたリボンを取ると、懐から取り出した万年筆で、さらさらと何かを書き込んだ。ジェラルドに目配せをすれば、彼は心得たようにカゲボウシを丁寧にテーブルの上に置いた。
「ボール君、動くなよ」
 にこやかに言うエドウィン。しかし、動いたら殺すと、その目が言っているようで。カゲボウシはぶるぶる震えながら頷いた。
 リボンを背中からぐるりと巻いて、お腹のところで蝶結びにして。エドウィンは、出来たとつぶやいた。
「そら、行きな」
 涙目になっているそれを指でこづくと、慌てて走り出したカゲボウシは、コテッと転んだ。後ろを振り返り、ニヤニヤ笑っているエドウィンを見ると、脱兎のごとく逃げ出した。

 その後、アルヴェイラは、リボンをつけたカゲボウシが慌てた様子でアトリエに戻ってきたのを迎えるのだった。
 ヒドイメニ、ヒドイメニ!
 何かを一生懸命訴えるカゲボウシを見下ろしつつも、彼女はリボンに何かメッセージが書かれていることに気付くのだった。

 不思議なオモチャをありがとう。でも、きみに返すよ。
 これじゃ、お茶菓子にもならないからね。
 ── E.C

 まあ。アルヴェイラは口元を抑え、そして、ぷっと吹き出すように笑ったのだった。


──────────────────────
可愛いものみると、つい苛めたくなるんです(笑)!

ads by microad


You have to sign in to post a comment or to favorites.

Sign in with Twitter


ふゆしろカナエ @kanafuyu
モノカキの冬城カナエです。シェアワールド企画「メイガスソウル」用のアカウント。メイガス関連以外の方はフォローしないっす。ごめんなさい。
Share this page

ads by microad


Theme change : 夜間モード
© 2018 Privatter All Rights Reserved.