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Diamond.4

全体公開 1426文字
2015-02-26 00:16:04
Posted by @na75go

 花を閉じ込めた冷蔵のフラワーショーケースの中でまどろむ花に視線を滑らせる。
咲ききるのを遅らせるためのその空間には色鮮やかな花が多様に用意されているが、フム、とシーザーは蕾や既に咲いているバラを数本手に取った。
濃い赤とピンクの中間の色みのそれの中から特に美しいものを選別して、カスミソウと纏めて小さな束にして花束に纏めると、リボンで纏めて再びショーケースに戻す。
「シーザー、今日花束の注文入ったんですか?」
「ああ、これは個人的な花束だから。」
丁度事務作業を終えたらしいフーゴが店先に帰って来たところらしい。再びショーケースの中で延命措置をとられた花束の出来のよさに、フーゴが納得したように頷いた。
「受け取ってもらえると良いですね。」
果たしてこの従業員がいったい何処まで察しているのか定かではないが、シーザーはそうだなと頷いておいた。



 夕食一緒に食おうもう予約したし、と連絡が来たのは昨日の夜だった。
携帯の連絡先を知らないジョセフからの誘いは店の電話にかかってきた。何のつもりだと問えばだって連絡先ココしか知らないモンと全く悪びれる事無く言う相手に、怒るのもアホらしくなって折れたのだった。
どんな店だと聞けば美味いイタリアンと言うので、まずかったら容赦しないと言って電話を切ってから場所を聞いていないことを思い出したが時既に遅し。
こちらからは一切連絡できない状況である事に気付きうな垂れつつ今日を迎えたのだが、心配は杞憂だったようで閉店の5分前にはジョセフが店に現れた。
「おつかれ~。昨日す~ぐ電話切っちゃうから迎えに来たぜ。」
そんなセリフと共に裏口で待つというジョセフを見て、一緒に閉店業務をしていたフーゴに「今日は良いですからもう上がってください。」と肘で追いやられてさっさと放り出された。
忘れずにと手渡されたのは作ってあった花束で、自然と顔が赤く染まったシーザーだがフーゴはさっさと業務に戻っていく。
すまないと声をかけると、お疲れ様です、とだけ声が帰って来た。
すぐに出てきたシーザーを認めたジョセフは、「あれ、早えーじゃん。」と目を丸くしている。
真面目なシーザーなら業務を終わらせてからじゃないと出てこないと思っていたので。弄っていた携帯をポケットにしまうと、じゃあ行こっか。と歩き出す。
ああ、と返して横に並べば、腕に抱えた花束のフィルムがカサリとが音を立てて存在を主張する。
白い和紙とフィルムに包まれたそれにジョセフの目が向いたのを認めて、シーザーは乱雑にも思える仕草でジョセフに突き出した。
「どしたのこれ?リサリサに??」
「いや、違う。お前にだ。」
「オレにぃ?!何で?!」
「何でって、その何でもいいだろう!昨日電話切っちまった詫びとでも思っておけよ!」
きちんと受け取ったのを見届けて腕を放して、表情を盗み見る。
覗き込みながらどこか嬉しげな顔にホッと息をついて歩を早める。
「あ、ちょっとシーザーちゃん待てって!これなんて花?」
「麝香薔薇だよ。」
「ジャコウバラ?」
ムスクローズのことだ。」
「ふうん?薄暗くてよく見えねーけど、綺麗な。」
満面の笑みで言われて、コツンと頭に拳をぶつけた。顔に熱が集まったのがわかって、シーザは「さっさと行くぞ」とジョセフを促した。
 後日花言葉を調べたらしいジョセフからニヤケた笑顔を向けられる事になる事を、今はまだシーザーが知る由も無かった。


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