@gotoplanisphere
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満開の白いアーモンドの花の木の下で、ムウはいつのまにか膝に本を広げたまま眠りに落ちていたようだった。
「ムウ、風邪をひくぞ」
低い声が響き、ムウは大きな手が優しく肩を揺するのを感じた。
うたた寝から起こされたムウは、まだ半分夢の中を漂いながら眼を閉じたままぼんやり答える。
「・・・あなたの夢を夜に見るのは構わないのです。だって長い時間ぐっすり眠った後は、朝目覚めた時すぐに『ああ、夢を見た』ってわかりますから。
でも、辛いのはうたた寝であなたの夢を見るときです。うたた寝は目覚めてからも、しばらく夢とうつつの境界が曖昧で、現実なのか夢だったのか分からなくて・・・」
ムウの春霞のように柔らかな緑の目がふうっと開かれ、傍らに膝をついてムウを覗きこんでいるサガの顔を見上げる。
「このあなたは現実のあなたですか?それともこれも夢の続きですか?」
「・・・ほんものの私だ」
うつつに戻ってこようとするかのように、ムウはゆっくりと瞬きをした。
「――夢にあなたが出てくるのです。いつも、いつも。
夢の中で、あなたは色んな勝手なことをして、私はとても幸せで、でもいつもあなたは最後に行ってしまう。――振り返ることもなく」
ムウは微笑ってみせたが、すぐに潤んだようにみえる眼を伏せた。
「・・・私はちょっとおかしいみたいです。あなたのことをうたたねの夢の間にみるほど」
春の風にアーモンドの枝が揺れ、桜のような花びらが一斉に舞った。
うつむいたムウの藤色の髪に次々と白い花びらが舞い降りる。薄い花弁が藤色に映えてまるで繊細な白いベールのようにみえた。
「――ムウ、知っているか?アテナに教えていただいたのだが、古の日本人によると、想い人の方が想われ人の夢に現れるそうだ。だからお前がいつも私の夢を見るのならば、それは私のほうがお前のことをいつも考えているからだな」
「サガ」
サガの言葉に顔をあげたムウの髪の花びらを、サガは一枚ずつそっととる。
「そして、私がお前の夢の中で去るのは、また目覚めた後こうして現実で会いに来るためだ」
夢の中の道もうつつの道も想い人にまっすぐに続いている。
ムウはサガにぎゅっと抱きついて、顔を押し当てた大きな胸から伝わってくるサガの鼓動をいつまでも聞いていた。
END
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うたたねから目覚めたときの、現実と浅い夢のあわいに漂っているようなまどろみの感覚が好きです。
十二宮編・ハーデス十二宮編でサガに置いていかれたことがトラウマなムウ様がすこし救われる話。
「恋わびて打ぬるなかに行かよふ 夢のたゞちはうつゝならなむ」
(古今和歌集 十二恋 藤原敏行の朝臣)
夢の中で往き来する道は、まっすぐあの人のもとに通じている。現実もそうであったらいいのに。
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台無し後日談
(・・・ところで私の夢に出てくるムウは大胆にもあんなことをしたりこんなことをしたりと、こちらの方が赤面してしまう程なのだが、アテナの話によると私の夢の中に現れると言うことは、あのムウは現実のムウの願望ということだったのか。
私の妄想かと後ろめたく思っていたが、あのようなとても口に出せないあれこれは、ムウ本人が心の底で望んでいるということなのだな・・・///)
と、言ってエクスティンクションをくらうサガ。