アニメのノースディン編を見て、再燃しちゃったのでロナルドくん視点のドラヒナのお話です。
女装準備中の皆がわちゃわちゃします。
縁日ではしゃいでるおじさんにクッキーがねえ!?とか、色々つっこんだけど、チャームに落ちたヒナイチくんのフラッシュバックと、ふっと笑うのはいい改変だったと思う。
あと、「イキイキしてるな、お前ら」も聞きたかった。
ギルドで待ってるノースディンのモノローグを追加しました。
2023/04/01に上げました。
@kw42431393
「あの野郎に目にもの見せてやる!!」
ドラルクの師匠だっていうノースディンによるギルドの占拠。そして、町中の女性への魅了。
その女性達には、俺達の仲間のマリアやター・チャン。そして、ヒナイチが入ってる。俺だって放っておく訳にはいかねえと思ってるし、怒ってる。それは、ショットやサテツも同じはずだ。
「諸君、悪いが力を貸してくれ。」
「このドラルク、奴をギャフンと言わせる為なら何でもする!」
おう、こいつは本気だ。
いつもふざけてばかりで、つまらねえ事ですぐ死んで、大事な所で裏切って…そんな馬鹿が、本気でキレた所を初めてみた。
厳密には、お袋さんに誘拐された時も本気でキレていたが、あれとも明らかに違った。だから、
「よし!やろうぜ、ドラ公!」
からの行動がこれかよ?
「ちょっと、ロナル子さん。最後まできっちりしてくれないと困りましてよ。」
「いや、なんでそこでお嬢様言葉なんだ?」
場所は変わって、俺の事務所。ウサギ小屋とか散々な言われようだが、人間も吸血鬼もここを溜まり場になりつつあるのは何でだろうな。
「何を言っておりますの。あの女ったらしのクソ歯ブラシ髭をとっちめるのですわ。どうせやるならトコトンやりましてよ。」
その上で、「お野蛮なロナル子さんにはお分かりにならないですわね。」とかぬかしやがる。なので、一発砂っといた。
「見てご覧なさいな。おノーブルで淑やかなこの深窓の令嬢ぶり。」
そう言いながら、ドレスでくるりと回ってみせる。いや、おっさんの全方位なんて見たくないわ。
「何をおっしゃいますの、シンデレラ苛めてる継母ですわ。」
煽られたからには、こっちもやり返す。いや、やり返さなくていいだろ。
そもそも、気持ち悪いわ。何、ファンデーションからマスカラまできっちりやってんだ。こいつ。
「それにしても…こないだからやけにお嬢様言葉上手くね?シーニャんちから帰ってからさあ…。」
「ウフフ、色々あったのよねぇ?ドラちゃん?」
後ろから入ってきたシーニャを見てドラルクが、煽ってくるのをやめた。
いや、本当に何してたんだ?すごいひきつった顔してんな。
「なあ、ロナルド。これ、どう思う?俺的に凄いこだわりたい所なんだが…。」
さらにショットが話しかけてきた。ちなみに、臍出し女子高生ルックだ。
「何が?」
「この脛毛なんだがな、適度に剃るべきかな?」
ちらっと、スカートを捲って見せてくる。
そりゃ、女装だから剃るのは分かるが適度って?
「脛毛そのままも悪くはないが。バッチリムダ毛処理したつもりが、見落としてた感あった方もいいかな?ノースディンもそそるんじゃないかと…」
「バカヤロー、なに誘惑する予定なんだよ?」
そりゃ、お前の性癖だろ。
「その辺り、詳しくお聞かせ願えませんか?ムダ毛の世界は私もまだまだ分かりかねる世界で。」
「おう、いいぜ。まず入門になりそうなお勧めの雑誌は…」
へんな!お前も乗らなくていいから。メキメキすんな!俺んち壊れるわ!元に戻って、ワンピース着てろ!
「ムン!マスカラ入れて見たのだがどうだろうか?あと、胸の花からいい匂いがする様にしてみた。これなら、奴も蝶の様に誘い出されて…。」
今度は、皆も知ってるゼンラニウムだ。マスカラと口紅はいいが…これ、女装っていうか?ほぼ、まんまなんだが。
「ならんわ。乳首の花で誘えると思ってんのか?そもそも、皆バレバレだろ。」
「そこは大丈夫だ。伊達にあの髭、受精卵から地縛霊までナンパはしていない。」
お前、そんな奴に教育受けたの?
「しかし、受精卵て…一体どうやってるんだろうな?」
「妊婦さんのお腹に、『君が生まれてくるのを待っているよ。美しい人。』とかぬかしてだな。横から見たら、タダの痛いおっさんだわ!男の子だったら恥ずかしいわ!バーカ、バーカ!」
横にいたくねえな、俺なら他人の振りして帰る。
しかし、気づいた事がある。こいつは、人を煽るのは得意中の得意だ。ノースディンが他の女性やターちゃんやマリアを口説いてる時でも、この調子で騒いでた。だけど…
『やめろ!ノース!』
あいつの時だけ違ったんだよ。チャームにかかったあいつを見た時の、焦ったマジな顔。しかも、なんも言わねえのな。
「なあ、ドラルク。お前さあ…」
「何かしら?」
だから、真面目な話しようとしてんだから戻ってこいや。
「そろそろ参りましてよ。ヒ…この街で誰かが血を吸われる前に。」
…すげえ怖い顔してたな。本当は、ヒナイチが吸われている姿を想像したんだろ?
はあ、とため息をついた。
「ジョン、お前も大変だな。」
「ヌ?」
ジョン、もといジョアンヌはリボンでおしまいだから、お手軽だ。その上、何もしなくても可愛いからな。
「なんで、あそこまでハムスターって言い張るのかね。」
「ヌヌヌ…。」
初めにヒナイチが氷笑卿の話題を出した時、どうしてそこで「知っている」と言わなかったのか。
そのまま黙って帰しておいて、俺には「すぐ退治に行くぞ」と言ったのか。
あいつを関わらせたくなかった、奴に触られたくなかったんじゃないか?
氷笑卿に会わせたくなかったんだよな?
ずっと一緒にいたジョンは分かり過ぎてるだけに、げんなりするよな。俺でも察しつくのに、本人が分かってないんだわ。
「諸君、用意はいいかね?」
「ニューン!」
「「「「お、おう…!」」」」
本当に、ヒナイチも厄介な奴を選んだよな。
「…ち、ん?」
ヒナイチと呼ばれた赤毛の少女が、キョロキョロと周りを見渡した。翡翠の瞳が、微かに生気を帯びていく。
さすがに吸血鬼退治を生業にするだけあって、彼女達はすぐに魅了の影響が薄れる。特にこの赤毛の少女は…
「赤毛の姫君、何も気にする事はない。さあ、私に美しい顔をよく見せておくれ。」
「…は…い。」
顎に手をかけて覗き込む。チャームをかけ直すと、瞳に戻りつつあった光が霞んでいった。
「人の心なぞ容易いものだ…僅かな隙に滑り込めば手に入る。」
手に入らなかった者か…。心頑なで高潔な人間…そうそういるものではない。
私が血族に迎えようとしたあの男の様な…今も氷漬けの棺桶で眠っている彼の様な人間は。
「ちん…ちん。」
よくよく見れば、中々の上玉だ。健康そうで、見た目も美しい。我々が舌なめずりしたくなる、弟子好みの白いうなじをしている。
あの弟子の必死な顔、それに…幼い頃から見ているから分かる。あの子は、本気で怒ると言葉少なくなるのだ。
それに彼女からは、お前の気配がする。他の同胞に取られたくなくて、黙って纏わせておいたらしいな。本気だという事か。
「お嬢さんは、弟子の事をどう考えているのかね?」
あの子は、誇り高き竜の嫡孫なのだ。半端な娘は、ドラルクに相応しくない。
「…。」
「答えないか…まあ、今は私しか見えないだろうがね。」
仮にここで「ドラルクが好きか?」と聞いた所で、「違う。」と答えるだろう。今なら、私を「愛している」と言うはずだ。
弟子に絶交されてしまうから、つまみ食いはしないが…お前がどんなに肩入れしようと、人間の心はこの程度だ。
「一緒にいて楽しいんだ…ドラルクは…いいやつだ。」
再び、瞳に生気が戻っていく。口元がふっと綻んだ。そういえば、手に口づけをして、チャームに落ちるその瞬間、この娘は同じ笑みを浮かべていた。
これ以上、ドラルクの話はよそう。他にも、天使達を迎えなければならないのだ。この娘にばかり構ってはいられない。
「吸血鬼は天上の国には程遠い。それでも分かるよ…」
キイィと微かな音が鳴る。
「…ありがとう。ノースディン。」
再び、少女は私の手中に落ちていった。