反転ドラヒナで続き物になった『夜と昼を彷徨う者(4) https://privatter.net/p/9941676』の後日談です。ドラヒナ夫妻が城で同居するので、みっぴきで引っ越し祝いをしよう!の話と
、前回「実家に顔出ししてくる。」と飛び出したドラルクさんが何をしていたか、というお話です。
捏造した反転ウスミラと、反転師匠が出るので注意して下さい。こんな感じに反転してみました。
反転ドラウス:次期当主として、ご真祖様の財団とかなんかの運営や、血族間のトラブルもバリバリこなすできる男。人前ではウエーンしないし、スマホも使えるし、店員さん恐怖症はない。家族の前では、本編と同じキャラ。
反転ミラ:ドラウスと出会うまでは、人間と吸血鬼間の調停者として鳴らしていた、チートボス。出会ってからは、パパが寂しがるので入ってきた依頼しかこなさないし、定時退社がモットーになった。家庭を大事にするので、子供時代のドラルクは寂しい思いはしなかったが、夫婦で愛し過ぎてグレた事を気にしている。
反転ノースディン:本編は偽悪者で、無理に嫌味を言ってる所がある…ので、単に嫌味を言う人になって貰った。女道楽で、女性を口説くのにチャームを使わないのがモットー。マメに連絡もするし、プレゼントもするし、パトロンになって世話も焼く。女性に恋人が出来たら、持参金つけて送り出すタイプ。親友夫妻の息子の言動が粗野になってきたので、躾も兼ねて自分の城に連れてきた。血が欲しいなら、口説く女性は一人で十分だし、戦場に出ればいくらでも手に入る、の発想の弟子とは馬が合わなかった。料理は得意。
反転師匠との会話シーンと引っ越し祝い後の二人のシーンを、追加しました。
2023/04/06に上げました。
@kw42431393
「~♪♪」
ヌフフ、ドラルク様ご機嫌ヌね?
「おや、出てたかね?でも、仕方ないだろう。鼻唄の一つも出ようというものだ。」
ドラルク様の歌なら、いくらでも聞いていたいヌよ。昔はよく歌ってたヌね。
一緒にテーブルにご馳走を並べながら、長年連れ添った使い魔に笑いかける。200年以上生きていて、10代の若造の如く浮かれるのに苦笑するしかない。が、一部とはいえ願いが叶うのだ。彼にも言った様に仕方ない事だ。
時計を見上げる。もう、そろそろ来る頃だろう。いや、『帰ってくる』というべきだろうか。
「吸血鬼ドラルク、今夜も監視に…おっと。」
フフ、癖だね。でも、うちのお嬢さんは、今回屋根裏ではなく玄関から入ってきた。いい傾向だ。
「そう、もう私は監視対象ではない。協、力、者…だ。」
「う、うむ。そうだな。」
耳元に口を近づけて、吹き込む様に言う。ヒナイチくんは、恥ずかしげに頬を染めて俯いてしまった。ますます言わせ甲斐があるというものだ。
「そして、これからは…なんと言うのかね?」
「た、…だ…い…。」
「聞こえないねぇ、何と言ったのかな?」
「お、お前!耳がいい癖に!」
赤面して怒鳴る彼女の頭に口づけを落とす。そのまま、マントの中に誘い込んだ。
「今日から、ここで暮らしてくれるんだろう?さあ、言っておくれ。」
恥ずかしげに目を伏せる、彼女の背中を撫でる。怒る事もなく、顔を胸に擦り寄せてきた。
「…た、ただいま。ドラルク。」
雨降って地固まる、とはよく言ったものだ。最低な関係から始まった私達は、紆余曲折を得てお互い離れられない関係となった。それでも、彼女には憎しみの火種は燻っていたし、私とて彼女を誰かに盗られるのでは、という焦燥感に駆られていた。そこから、ささいな諍いは続いていたのだ。
先日に至っては、彼女は私を殺そうとし、私は彼女の意志を無視して血族にするしかない、とまで思い詰める様な事態となった。
『まずは彼女とお話し合いをなさい。』
『ヒナイチくんにも考える時間が必要だヌ。』
ロナルドくんとジョンに言われて、彼女と話が出来たのは幸いだった。懐にしまってある契約書に目をやる。
私とヒナイチくんの間で交わした契約書には、『人間と吸血鬼の抗争が終結すれば、彼女の身柄を貰い受ける。死亡の場合は遺体を遺族ではなく私に、人事不省の場合は私に判断を委ねる。代わりに、彼女が退官するまで抗争終結に、私は協力する。』とある。
実は退官まであと46年待てば、まあ望みは叶う訳だ。しかし、折角ならもっと縮めたい。
今までは、ヒナイチくんが無事なら世界が滅びようが、どうでもよかったのだが、それなら私も積極的に動いた方がいい。
だから、契約したその日の内に吸血鬼対策課と同胞達の間を取り持って貰える様に、実家に頼みに行ってきた。
吸血鬼対策課は、吸血鬼犯罪を取り締まる公的機関だ。実は、親人間・中立派の同胞達とて彼らに相談したり、助けを求めたい、という者はいる。しかし、その性質上どうしてもお互い敬遠しがちで、地域によっては敵意を向け合っている所もある。
一方、竜の血族は世界中におり、お祖父様が親人間派である事から親人間派の者は多い。竜の血族の本家が本気を出せば、比較的穏便に事が進むと私は考えた。
ついでに、私の立ち位置を『協力者』に格上げして貰える様に、根回しも頼んでおいた。これまでは、彼女が監視に来て欲しいから『監視の必要な危険度Aの吸血鬼』の身分に甘んじてきたが、『協力者』になればおおっぴらに動ける。彼女を守ってやる事も可能だ。
私の母は敏腕弁護士で、家庭を大事にする方だ。だから、仕事を詰めなかったのだが、可愛い一人息子の頼みである。あれから程なく、吸血鬼対策課との交渉は進み、今日実現されたという事だ。
『次は抗争の終結か、さらに忙しくなるな。ドラウス、定時で帰れない日も多くなる。寂しいだろうが、我慢してくれ。』
『勿論だよ、ミラさん。ドンドンドラウス、我慢の子。妻子の為だ、私も古き血の者達との会合で話してみるよ。』
ああ。うちの両親は、大恋愛の末に結ばれた吸血鬼同士の夫婦なので…200歳越えの息子の前でもこうなのだ。お父様も家の外では、次期当主として、他の血族間の調停者として采配を振るっている方なのだが…
『ドラルクや、何でも言っておくれ。お前が選んだお嬢さんの為でもある!パパは協力を惜しまないよ!』
『今までドラウスが寂しがるから、入ってくる仕事しかこなさずに定時で帰宅していたが…お母様に任せてくれ。かつて、両種族間のバランサーを務めていた手腕を見せてやるからな!』
未だに帰省すると、両親に抱きつかれて頬擦りされる羽目になるのだ。今思うと、若い頃の私が反人間派に与したのは、両親への反発もあったと思う。
まあ、そこは置いておこう。
正直、その後で会いに行ったノースディン師匠の方が、私には堪えた。父の親友で、私とは叔父の様な間柄だが…どうも子供の頃から反りが合わない。
昔の戦いで失った右目の代わりに付けている義眼は、師匠が作ったものだ。これから、戦場を駆け回る事が増えるだろう。だから、予備を作って貰わなければならない。あと、彼女にちょっかいを出さない様に、釘も刺しておきたかったのだ。
それに、お父様が親人間派なので、表立っては言わないが、彼は反人間寄りの中立派だ。だから、向こう側の情勢に察しがついている所もある。情報を回して貰える様に頼む必要があった。
『なるほどな。それにしても…ますますもって、不肖の弟子だ。監視員に入れあげているのは知っていたが、完全に籠絡されたらしいな。』
『うぅ…それは。お好きに言って頂いて結構。』
『だから、色々な女性で経験を積んでおけと言っただろう。遊んでないから、今頃たった一人に狂うのだ。まあ、ドラウスも一途だからな。』
そう…嫌味を言うのだ。昔から弟子を煽ってやる気を引き出そうとかではなく、単に嫌味を言う。だが、完全に私を嫌っている訳でもないので、頼み込めば断わりはしないはずだ。
また、師匠は女道楽で、修行時代の私に男女のあれこれを教えたのも彼だ。基本私は武闘派なので、『穏便に良質な血を得る手段』として教えられた技術は、当時つまらないと断じていた…彼女に使うまでは。
彼が私の練習に宛がった女性達は、所謂高級娼婦でその道のプロだったはずだ。肉体的にも技巧的にも、ヒナイチくんとは比べ物にならない。
だが、彼女達は私の心を全く動かさなかった。
気持ちは良かった…だが、それだけだ。未だにある、ヒナイチくんに触れる度に感じる中毒性は…彼女達の時にはなかったのだ。
『つまらない?まあ、無理強いはせぬよ。誰だって、得手不得手はある。』
そう言われて、腹が立ったので受けていた授業である。ヒナイチくんは、私をそういう意味で経験豊富な吸血鬼だと思っていたらしいが、そこはハズレだ。
戦場で銀の銃弾を潜り抜けるスリル、相手を圧倒した時の高揚感…それに比べると彼女達との行為はつまらなかったと、今でもそう思っている。
『まあ、彼女も貴様にすっかり溺れていると言うじゃないか…私が教えた手技が役に立った訳だな。感謝して貰わねば。お前は当時、馬鹿げた無駄な授業とか言っていたなあ?』
そう、私がヒナイチくんに施した快楽の刷り込みは、彼から得た知識を使っていた…返す言葉が全くない。私だって、使うと思わずに生きてきたのだから。
『そ、その節はお世話に…な、なりました。』
認めなくてはいけないのか…腸が煮えくり返る思いで頭を下げた。今では、ジョンとロナルドくんが言う様に、素直に『君が大事だ』と信じてくれるまで伝える方が正解だったと知っていても…。
『今度、そのお嬢さんを連れて来い。私が見てやろう。』
『…折を見て、血族の集まりで紹介します。それまでは…。』
少し前の私なら、彼女を籠に入れて親にも見せなかっただろう。しかし、今となってみればそれは出来ない。私は力はあっても、不死身ではないのだ。
お父様は優しい方だから、ヒナイチくんを血族にする前に、仮に私が死んでも、彼女の面倒は見てくれるはずだ。しかし、ある程度の立場を作ってやらなければ、彼女にとって夜の世界は針の筵となる。
ならば、生半可に夜の世界に足を踏み入れた彼女が、昼の世界に戻ったら?せめて、もう少し2つの種族の関係が改善されなければ、昼の世界でもいい顔はされないだろう。
これまで彼女さえ手に入れば…としか考えていなかったツケが、山積みになっていたのだ。
『ドラウスは次期当主として素晴らしい男だが、如何せん。家族にはベタベタに甘い男だ。あいつはお前が選んだ娘なら、どこの馬の骨ともしれん者でも迎え入れるだろうからな。』
さすがにカチンときた。あの子の事だけは、親にだって言わせない。
『せ、師匠!それ以上言ったら、あんたでも…!』
『何だ?』
『…こ…っっ!』
義眼が『ギイイ!』と音を立てる。目の前の紅茶も凍りついていく。
私に術を教えたのはこの人だ。そう簡単に勝てる相手ではない。そもそも、頼みに来たのだ。
『っ…!』
自分の命に関心がない私にとって、プライドはジョンの次に大事なものだった。でも、あの子を手に入れる為なら…。
『ほう。本気だな…昔だったら、その剣で突きにきただろうに。』
抗争終結には、吸血鬼、退治人、吸対の連携が不可欠だと言ったのは私自身だ。だから、私も軽率な真似をしてはならない。
『…あ、あの子をとやかく言わないで頂きたい。血族に迎え入れるまでには、本家に相応しい女性に成長するはずです…それが出来る娘です。』
『まあ、いい。さっきの件は考えておく。』
それだけ言って、あの髭は席を立って行ってしまった。
『あ、ありがとう…ござい、ます。』
再生能力がない事で幼い頃から両親に甘やかされてきた私にとって、かなり精神的にキツかった。これから、彼に頭が上がらなくなるのだろう。
「ドラルク?」
マントの中のヒナイチくんが、黙っている私を怪訝そうに見上げてくる。そうだ、この子の為だ。プライドの1つや2つ、捨てても…構わない。
「なんでもないよ。もう寮から宅配で、君の荷物は届いている。屋根裏に上げておいたから、着替えておいで。」
「分かった。それにしても…あの時、契約書にお前の居城に住む様に書いてあったとは、気づかなかったな。」
契約書は、最後までちゃんと見給え。分かってて血判を押したと思っていたのだが…そこはまだ19で詰めが甘いらしい。
私からすれば、毎日君に来て欲しくて『監視対象』をしていたのだ。一番下に書いてあるのを指摘した時、君は随分と驚いていた。
「本当は、すぐにでも引っ越しさせたかったのだがね。監視対象と同居はまずいと、君が言うから協力者になるまで待ったのだよ。」
「当たり前だろう。実際、ほぼ寮に帰ってなかったのは認めるが…んぅっ?」
チュッと軽く唇を啄むと、彼女がビクッと震えた。
「諦め給え。我々と関わった以上、もう逃げられない。契約を交わしたら尚更だ。君だって…。」
「うん…お前から離れられない。」
ヒナイチくんの手が背中に回る。おや、やけに素直じゃないか。
「実を言うとな…。」
「ん?」
「お前は意地っ張りな私を好きになった訳だな?」
「フフフ、そうだったねえ。」
「だから、素直になると飽きられるんじゃないか…と時々不安だったんだ。」
ああ、そういう意味か。妙に行動にブレがあるとは思ってたのだ。人間と違って、我々はそういう習性じゃないのだよ。
「分かってないね。何をしようと、君であればどうでもいい。それに自分の手で育てた薔薇は、予想と違っても可愛いものだ。」
「それはありがたいが…時々お前のが重すぎてだな。」
「それも諦め給え。人ならざる者に囚われたら、それまでだと。」
頷くと、胸に顔を埋めてくる。初めの頃には想像もつかない状況だが…ここまで来るのに色々あったのだ。ジョンとロナルドくんには、感謝せねば。
実を言うと、もっと早くロナルドくんに会っていれば、とっくにここまで来ていた気がする。元々ヒナイチくんはジョンに心を許していたが、彼は私の使い魔だ。相談しきれない所があったらしい。
ロナルドくんはお嬢なので、女性の気持ちも理解してやり易かったのだと思う。私にしても同性という事で、ロナルドくんには相談しやすかった。二人の協力者がいてこそ、この流れになったのだろう。
さて、そろそろ食堂に向かおうか。ジョンが待ちくたびれてしまう。それに…
「やっと、ロナルドくんも来たからね。」
「やっと…?ロナルドはもう中にいるんじゃ…え?」
トロンとした顔で甘えていたヒナイチくんが、私の視線を追って背後を見る。
「あっ!ロナルド、その…。」
「ウフフ、ごめんあそばせ。仲睦まじい様でなによりですわ。」
「あ、ああ…あの時はあ、ありが…とう。えっと…わ、私…先に着替えてくる!」
ああ、恥ずかしがって行ってしまった。いい所だったのに…。
「やれやれ、まだ人前では甘えてくれないらしい。ねえ、ロナルドくん。」
「お招きに預かりまして…と言いたかったのですが。おタイミングが悪くて申し訳ありませんわ。」
困った様にコロコロ笑う、赤い退治人服に身を包んだ友人は、離れていく彼女の背中をしみじみと見た。
「お二人に納得のいく結果になりました様でして、安心致しましたわ。」
「まだ、完全ではないがね。あとは…」
そこからが長いのだ。
「はい。少しでも多くのお吸血鬼さんと私達がお友達になるお時代を作る事ですわ。」
彼は胸に手を当てながら、強い意志を持って宣言する。目をキラキラさせて、毎度こういうセリフをよく恥ずかしげもなく言うものだ。
「その通りだね。そうすれば、あの子はこちらに来れる。やっと、私のモノに出来る。」
はぁ…と盛大なため息が、聞こえた。私は何かおかしな事でも言っただろうか?
「モノではありませんわ。ヒナイチさんとは対等なのでしょう?さっきから聞いていれば、お自分のご都合ばかりではありませんか。」
はて?その後、彼女を吸血鬼にする予定だ。その契約も取り付けてある。対等になる…同じ事ではないのか?
「…ところで、君には感謝している。『お話合い』とやらをしてよかったらしい。」
「あら、私としては言いたい事もありますけれども…お課題としておきましょう。まだまだ、貴方も考えるお必要はこざいましてよ。何より、決めるのは彼女ですもの。」
どうもよく分からない事を言う男だ。今に始まった事ではないが。
「とにかく、入ってくれ給え。君には我々と退治人、そして退治人と吸対の仲立ちをして貰わなければならない。今後ともよろしく頼む。」
連れだって食堂に向かう。廊下の先でヒナイチくんとジョンの楽しそうな声が聞こえてきた。それを聞いて、ロナルドくんが頬を緩めた。
「勿論ですわ。それこそ、やりがいがございます。私のお使命ですもの。とりあえず、今夜はみっぴきで…」
「うむ、みっぴきでゆっくり出来るのは久しぶりだ。当分忙しくなるかもしれん。今宵は、楽しんでくれ給え。」
はい。楽しいヒナイチさんの引っ越し祝いを致しましょう。まずは、これから私達が目指す目標に乾杯しましょうね。
エピローグ
「ドラルク、て、手伝おうか?」
引っ越し祝いも終わり、ロナルドくんも帰った頃、ヒナイチくんがキッチンに姿を現した。ちなみに仕草は上品だが、ロナルドくんもなかなか大食漢なのだ。
料理は趣味だが、人間の食事は食べられない私と、ウェイトコントロールをしているのでさほど食べないジョンにとって、彼女が…そして彼も来てくれる様になって、大量に色々な料理を作るのは楽しいものだ。
ジョンと片付けをしながら、明日は何にしよう…そう考えるのも趣味の一つ、だから、苦にはならない。
「明日も仕事だろう?荷物の整理もあるのに、大丈夫かね?」
「ん…それはそうだが…その…」
頬を染めて口ごもる。私の横で、皿を拭いていたジョンは、所用を足す振りをしてキッチンから出ていく。彼女の横を通る時、軽くポンポンと叩いて…。
「何かね?」
手を拭きながら、そっと近づいた。決心した様に赤面した顔を上げる。
「わ、私は、これまではお前の監視員だった…訳だ。」
「そうだね。」
「こういう事も含めて、お前は客のもてなしだと言って…私はそれに甘えてきた。だけど…」
そこから先は、言わなくても分かった。胸に沸き上がってくる感情を何と言えばいいのか。
「今日からは、同居人なんだ。まだ、吸血鬼になってやれないけど…結婚も…こ、子供も…せめて戦いが落ち着いてからになるけど…。」
「…。」
そのまま、胸の中に囲い混む。小さな体が、嬉しげに震えた。
「お、お前の…奥さん…になるんだ。だから、出来るところからでいい。家の事も…て、手伝わせて…うっ?」
最後まで言わせてやれなくてすまないね。でも、我慢出来なくて…彼女の唇を塞ぐ。「まだ途中だったのに。」と言いたげな不満そうな顔が、恍惚とした顔に変わっていく。
「…っう…はぁ…っ…。」
舌を抜くと、改めて抱き締める。本当に表す言葉が見当たらない。
「ヒナイチくん、ありがとう。じゃあ、頼もうかね。」
その言葉を聞けただけで、満足だ。プライドなんて、いくらでも捨ててやる。誰に土下座しても、今の私は後悔しないと誓って言えるだろう。