徘ロナ(ハス探)で吐露する話、のまとめ。
@hirop573
「いいご身分だこと」
そう見えるのか。
結構な事だ。ただ、そう思うと同時にどこか傷心した自分もいる。この時はその程度だった。
いつもの通りに稽古を通して汗をかき、団員と言葉を交わし、普段と何ら変わりない一日を終えるつもりだった。
だが、そこで脆かった自分の心が保たなかったのかぼろぼろと涙が出始めた。
(何故だろう。ああも言われる必要はなかったと思うのは)
常日頃言われている事だったのに。
吐き捨てるように去っていく女性の顔が鮮明に浮かぶ。
(ひとの事も知らないで)
自宅でよかったと心底感謝した。まるで愚図っているような醜態、団員が見れば何と言うだろう。それぐらいに見せられないものだ。
あぁ、だが止まらないものは仕方ない。
何を知ってその言葉を言ったんだ。何を見てだ。何を、何を!!
(ただ、生きているだけなのに)
誰にも見られていないこともあってか吹き出た感情が止まる事はない。
「…ふ、…ぅ…う…」
アパート自宅、隅で肩を震わせ唇を噛み締める。おさまるだろうか。どうか隣人に気づかれないようにと。
誰もいないからと嗚咽を溢すことができると思っていたのに。
「………。何故いる」
『……………』
いつかに出会った悪魔か死神か、そんなやつが目の前で佇んでいた。神出鬼没なそれは瞬き一つすれば現れて、いつもの様に無言でこちらに視線を向けている。
「生憎出迎える気分ではないものでね。日を改めてくれると…助か…」
涙声でなんとか伝え切ろうとする前に頬に手が添えられ、気づけば目の前がそれの瞳で埋め尽くされていた。
見つめられる事には慣れているはずなのに、不思議と耐えられなくなり帽子を目深に被る。人間の様な掌の感触で余計に涙腺が緩む。耐えなければと、こいつにだけは見られたくなかったと思うのも何故なのだろうか。
「…見せ物じゃないんだが」
『いや何。奇異なものを見たなと思うてな』
「……、………」
『裁く輩はどれだ。我が仕留めてやろう』
「その必要はない。は、はは……ひ、ぅ…、…」
父とは程遠い細い手だ。けれど思い出してしまうのは心細さ故か。溢れた涙がそれの手に伝い沁みを作る。泣いている様をそれは揶揄う事なくただただ見つめていた。
時折添えてきた手が慈しむように摩られ、促されるように流れていく。
(生きていたいだけなんだ)
添えられた手に縋るように触れ、私はただ"ひとり"静寂の中啜り泣いた。
【知ってるさ】
『契りを交わせば塵芥共など一瞬の命であろうものを』
「無駄な殺生はしない。悪魔に手を貸す事と同義だ」
『ほう。以前は我を悪魔や死神と呼称しておったというに。現の我は何者であろうな?』
「…今のこれが全てだろう。悪魔や死神が私の涙を拭うか?」
『ほう…』
「少し認識を改めただけさ。それに…お前と私が初めて会った時に既に交わしていたはずだがな?」
『ク…ハハハ。左様。忘れていなかったようだな』
「当然。二重の契約などさせないさ」
【厄介ごと】
あぁ、その様に手配を頼む。あの方は気まぐれだから臨機応変に対応できる人員をな。
…私か?心配せずとも自分の身は自分で守るさ。
ん、あぁそうか。
お前は見たんだな。私の側にいる奴を。大丈夫だ。
あぁ見えて繊細なようでな、敵意もない。
…余計なお節介は身を滅ぼすぞ。
自惚れではないがアレは私を気に入っているようでな。
手を出される事があるなら容赦はしない。それがお前でもだ。
分かったならさっさと行け。これも見られている事を忘れるな。
「……威嚇するな」
『フ…。この程度で怯まれてはまだまだよの』
「お前を見て正気な時点で大したものだがな…ややこしいなあいつは」