多喜BAD1・死ネタ注意
@lianmiso
夜が明ける。長い長い夜が。
待ち遠しかった太陽が少しずつ山々の合間から顔を見せ、戦いの終焉を告げる。
「朝日だよ。壱樹くん。」
壱樹は地に伏して地に生える植物のように鮮やかな緑を広げていた。体には蔦が絡まり、艶やかな葉を広げ小さな赤い薔薇が咲いている。主人の代わりに朝日を心待ちにしていた。
「夜明けの空を見たことがあったかい。湊くん。」
壁に背をもたれ、ずっとしっかりと握りしめていた拳を緩めて地へ落とし湊は眠っていた。拳を染める血が新しく上塗りされることはもうない。心なしか安らかに見えるのは多喜の感傷だろうか。
「霧凍くん。」
黒いコートが地面に広がっていた。強風に攫われたコートではない。彼が持っていっていなければ愛用していたリボンタイが転がっているはずだ。人が消失したと言っても信じるものはいないだろう。
霧凍が最後に呟いた願いは多喜にとって酷なものだった。
「なんで生きろって言ったんだ。らしくないじゃないか。」
多喜の掠れた力のない問いに答えは返ってこない。
「どうしてみんな僕を庇ったんだい。」
守らなければいけなかった者は多喜の手を掠め、擦り抜けていった。
自分より歳若い者を見送ってしまった。
それでも生きなければならない。
それが願いならば、何があっても生きなければ。
杖に縋りながら多喜は重い体を引き摺るようにして歩き始めた。
3人が守った世界を、暖かな陽の光を背に浴びながら。