愛する人がこの世に生を受けためでたい日。
私の想いも花開く。
ツイステ二次創作、シル監ラブストーリー第30話。
※創作女監督生の名前が出ます
※捏造設定あり
@natsu_luv
麓の街の植物園の薔薇の花が彩り豊かなパレットのように美しく咲いている。
情熱的な赤、愛らしいピンク、眩い黄色、純粋無垢な白。
色とりどりの花はそれぞれの持つ表情で見る者全てを魅了している。
私の愛する人の故郷に咲く薔薇も、こんな風に綺麗な姿で咲いているのだろうか。
もうすぐ誕生日を迎える愛しい人に想いを馳せながら、私はグリムと共に植物園の中を歩き回っていた。
「オレ様、歩き疲れたんだゾ」
「グリム、わがまま言わないの。これからシルバー先輩へのプレゼントを買いに行くから、もう少しだけ付き合って」
「ソフトクリーム買ってくれたら、付き合ってやるんだゾ!」
「はぁ、わかったよ」
私は園内のカフェで売っている苺ミルクのソフトクリームを二つ買い、一つをグリムに与えた。
ソフトクリームを手にしたグリムは、すっかりご機嫌になっている。
私達はソフトクリームを食べながら、ゆっくりと歩いて植物園の出口へと向かった。
植物園を出た後、私達はお気に入りの雑貨屋に入った。
ディスプレイに目を惹かれているグリムを横目に、私はシルバー先輩へのプレゼントを選び始めた。
ふと、シルバー先輩がトレーニングマットを新調したいと言っていたことを思い出した。
もしかしたら、シルバー先輩によく似合うトレーニングマットがあるかもしれない。
私は店内を見回りながら、トレーニングマットを探した。
「あっ、このマット可愛い!」
「ふなっ、ただのマットなんだゾ」
「グリム、よく見て。ここに仔馬さんが描かれてるの」
「本当なんだゾ! マットの色もシルバーの目の色と似てるんだゾ」
青と紫のグラデーション、銀色の可愛らしい仔馬の刺繍が印象的なトレーニングマット。
上品なデザインのマットは、きっとシルバー先輩によく似合うだろう。
ポーチが付属しており、マット自体も軽いので持ち運びにも便利だ。
私は即決でこのトレーニングマットをプレゼントとして買った。
買い物を終えた私達は、明日のシルバー先輩の誕生日パーティーの手伝いをするためにナイトレイブンカレッジへと戻った。
ナイトレイブンカレッジに戻ってすぐに、私とグリムはディアソムニア寮へと向かった。
玄関の前にいたリリア先輩に出迎えられ、私達は談話室へ案内された。
セベクくんと他の寮生たちが壁とテーブルの飾り付けを施している。
グリムにはセベクくんと一緒に飾り付けをしてもらい、私はリリア先輩とバースデーライブのセッティングを始めた。
途中でカリム先輩とケイト先輩も合流してきた。
機材とドラムセットを談話室の一角に置き、ステージを創り上げていく。
ひと通り作業を終えた後、私とグリムはオンボロ寮へ帰った。
宿題を終わらせ、グリムと一緒に夕食を食べてしばらくしてから、私は明日のバースデーライブのための最終調整をした。
軽いストレッチとボイストレーニングを済ませた後、私は寝支度を始めた。
遠くからサヨナキドリの声が聞こえてくる。
その美しい声の心地良さに浸りながら、私はベッドに入って目を閉じた。
今日は愛するシルバー先輩の誕生日。
私とグリムは誕生日パーティーに参加するために、ディアソムニア寮を訪れた。
談話室には本日の主役であるシルバー先輩がいた。
今日のシルバー先輩の装いは、濃紺の豪勢な帽子とローブを纏った姿になっている。
まるで、おとぎ話に出てくる善良な魔法使いのようだ。
しばらくすると、魔法のペンデュラムで選ばれたプレゼンターのイデア先輩によるインタビューが行われた。
私は撮影の邪魔にならないように、部屋の片隅でインタビューの様子を眺めていた。
挙動不審でありながらも、きちんと話をまとめてインタビューを進めていくイデア先輩。
そんなイデア先輩とシルバー先輩の面白いやり取りが目の前で繰り広げられていた。
シルバー先輩はお父様のことや麓の街でのエピソードを淡々と話していた。
インタビュー終了後、花束を模した箒がシルバー先輩に手渡された。
純粋無垢な白い花で統一されたブーケが、優美な雰囲気を持つシルバー先輩によく似合っている。
もうすぐシルバー先輩がバースデーロードを飛ぶそうだ。
私はシルバー先輩の勇姿を撮影するために、バースデーロードの近くへと向かった。
バースデーロードの地に着いたシルバー先輩が、箒に跨って飛び始めた。
いつの間にか、小鳥たちもシルバー先輩と一緒に空を羽ばたいている。
私はこの美しい光景を形にするように、ひたすらゴーストカメラのシャッターを切った。
バースデーロードを飛び終えたシルバー先輩が私の方へ歩いてきた。
私は撮影した写真をシルバー先輩に見てもらった。
「バースデーロードを飛ぶシルバー先輩、とても素敵でしたよ」
「ありがとう。よく撮れているな」
「気に入ってもらえて良かったです。小鳥さんたちも嬉しそうですね」
「あぁ、そうだな」
私はシルバー先輩と肩を並べて鏡舎まで歩いた。
ディアソムニア寮へ戻ると、この日のために用意された絢爛豪華な料理とケーキが用意されていた。
お腹を空かせているであろうグリムが、今にも飛びつきそうなくらいにそわそわしている。
ツノ太郎さんがシルバー先輩の近くへとやって来た。
シャンメリーを手にし、ツノ太郎さんは開会の挨拶を始めた。
「今日はシルバーの誕生日だ。皆で祝福を授けよう」
「誕生日おめでとう! 乾杯!」
乾杯のグラスの音とクラッカーの音が談話室内に鳴り響いた。
パーティーの参加者たちがお皿に盛り付けられた料理を取り分け始めた。
私はグリムが独占しないように気をつけながら、少しずつ料理をお皿に取っていった。
今回用意された料理は、シルバー先輩のお気に入りのきのこのリゾットがあるレストランのケータリングを手配したとリリア先輩が教えてくれた。
好物であるきのこのリゾットを食べているシルバー先輩の様子が見えた。
眉尻を下げて嬉しそうにしている姿が可愛らしい。
ふと、シルバー先輩と目が合った。
料理を食べていた私達の元にシルバー先輩が歩み寄ってきた。
「ニコル、グリム、楽しめているか? 料理もまだまだ出てくるらしい。最後まで満喫してくれ」
「まだ出てくるのか? 楽しみなんだゾ!」
「良かったね、グリム。シルバー先輩、今日の料理も美味しいですね」
「そうか、喜んでもらえて嬉しい」
美味しい料理を囲みながら、私とシルバー先輩は微笑み合った。
しばらくすると、全ての料理が出揃った。
参加者たちが次々と出てきた料理をお皿に取っていく。
私とグリムも引き続き、料理を取り分けていった。
料理のお皿が空っぽになったタイミングで、バースデーケーキが運ばれてきた。
このバースデーケーキは有名パティスリーで作られた特注品だそうだ。
「シルバー、ニコル、お前たちの愛の共同作業を見せてくれ」
「はい、マレウス様」
ツノ太郎さんが剣型のナイフをシルバー先輩に授けた。
私とシルバー先輩はナイフを握り、鋒を三段重ねのバースデーケーキに入れ込んだ。
ナイフの先端がケーキに入った瞬間、カメラのシャッター音と拍手が鳴り響いた。
ケーキ入刀の後、すぐにケーキは寮生に回収されて人数分に切り分けられた。
お皿に盛り付けられたケーキを手に取った瞬間、ふわりとピスタチオの香りが漂う。
「ケーキも美味いんだゾ!」
「ピスタチオのクリームが上品な味わいで美味しいですね」
「ニコル、ケーキを食べ終わった後はプレゼントの授与式とわしらのライブじゃぞ」
「はい、わかりました」
リリア先輩から伝達を受けた私は、ケーキを食べ終わってから昨日買ったプレゼントの箱を持ち出した。
まずは、ディアソムニア寮生からのプレゼントがシルバー先輩に贈られた。
中身は新商品として購買部でも話題になっていたスペアミント味のボトルガムだった。
プレゼントの贈り主である寮生いわく、眠気覚ましに使ってほしいと思って選んだとのことだ。
続いて、アズール先輩がラベンダー色の封筒を持ってシルバー先輩の前に現れた。
「シルバーさん、僕からはモストロ・ラウンジの優待券を贈ります。ぜひとも、ニコルさんやお友達とお越しください」
「ありがとう」
「……何か裏がありそうなんだゾ」
「裏……? 裏面には何も書かれていないが……」
「シルバー先輩、そういう意味ではないかと……」
何も疑うことなく、モストロ・ラウンジの優待券の裏面をじっくり見ているシルバー先輩。
思いもよらないシルバー先輩の反応に、一部の参加者たちは必死で笑いを堪えていた。
次は馬術部代表として、リドル先輩が参考書をシルバー先輩にプレゼントした。
部活動に支障のないように勉学にも励んでほしいというメッセージを贈り物に込めた、そうリドル先輩が言っていた。
いよいよ次が私の番だ。
私はシルバー先輩の元へ歩み寄り、プレゼントの箱を捧げた。
「シルバー先輩、私からのプレゼントです」
「ありがとう。さっそく、開けてみてもいいか?」
「はい!」
「これは……俺があの時言ってたことを覚えていてくれたのか」
箱の中身はシルバー先輩の瞳の色に近い色味のトレーニングマット。
麓の街の雑貨店で見つけた、シルバー先輩にぴったりのプレゼントだ。
両手にトレーニングマットを広げたシルバー先輩が、眉尻を下げて微笑んだ。
その様子を見て、私とグリムは安堵した。
プレゼントの贈呈式が終わり、次は軽音部によるバースデーライブだ。
私はリリア先輩たちと一緒に談話室の一角に創り上げたステージへ向かった。
チューニングとマイクテストを済ませ、私はバースデーライブ開始の挨拶をした。
カリム先輩とケイト先輩がアイコンタクトを交わし、最初の楽曲の演奏が始まった。
カリム先輩のマーチングドラムのリズムに合わせ、ケイト先輩がギターでファンファーレのような前奏を奏でていく。
後から加わったリリア先輩は、自慢の五弦ベースの低音で二人の演奏をしっかりと支えている。
前奏が終わると、楽曲の雰囲気がガラリと変わり、スラッシュメタルの要素が入ってくる。
ここから私の歌が加わっていく。
力強く前向きなメッセージを込めるように、私は旋律を歌い上げた。
サビに入ると、また楽曲の雰囲気が変わる。
花が一斉に咲き広がっていくような旋律へと変化するのだ。
シルバー先輩はこの楽曲のサビをとても気に入っていた。
私はシルバー先輩へメッセージを贈るように、強く優しく声で旋律を奏でた。
一曲目が終わり、少し間を置いてから私達は次の楽曲の演奏を始めた。
速いテンポで展開されていくこの楽曲は、運動部の練習試合の時によく演奏するものだ。
馬術部の試合を観に行った時も、この楽曲を含めたセットリストで応援ライブを行ったことがある。
前を向いて明るく生きていく主人公の姿を思い浮かべながら、私は歌詞に旋律をのせて歌い上げた。
「最後の曲は僕も加わって演奏しよう。シルバー、心して聴くがいい」
「はい、マレウス様」
ツノ太郎さんが愛用の黒いバイオリンを持ってステージの方へやって来た。
リリア先輩のベースのアルペジオから始まるこの楽曲は、『審判の日』をテーマにした美しくも激しい楽曲だ。
ベースのアルペジオが終わった途端、ツノ太郎さんのバイオリンの旋律が中心となった前奏が始まる。
私は戦いに赴く主人公の姿を想像しながら、声高らかに旋律を歌い上げた。
間奏ではツノ太郎さんのバイオリンとケイト先輩のギターの掛け合いが繰り広げられていく。
楽曲がクライマックスへ向かい、最後のサビで私は談話室内に高音のシャウトを響かせた。
楽器隊の演奏も盛り上がっていき、最後は再びリリア先輩のベースのアルペジオで締められた。
少しの余韻に浸った後、談話室内に歓声と拍手が鳴り響いた。
「ありがとう。俺のために演奏してくれて嬉しい」
「シルバー先輩。改めまして、誕生日おめでとうございます」
私は一番前でステージを見ていたシルバー先輩にお祝いの言葉を伝えた。
無事にライブを終えた私は、シルバー先輩に誘われてバルコニーへと出た。
そして、二人で肩を並べながら満天の星空を眺めた。
シルバー先輩は箒で作られたブーケを手にし、何か考えを巡らせているように見える。
何があったのだろうと思い、私はシルバー先輩に話しかけようとした。
すると、シルバー先輩の方から私に声を掛けてきた。
「ニコル、俺と一緒に夜空を飛んでみないか……?」
「えっ、いいんですか!?」
「あぁ、構わない。マレウス様からも許可を得ている」
「わかりました。一緒に行かせてください」
私達はディアソムニア寮を出て、再びナイトレイブンカレッジのバースデーロードへと向かった。
シルバー先輩の後ろにぴったりとしがみつき、箒が浮かぶのをじっと待った。
穏やかな追い風がシルバー先輩を味方してくれている。
ふわりと箒が夜空に浮かび、私達の夜間飛行が始まった。
上空から眺めるナイトレイブンカレッジの全景を見るのは初めてだ。
箒に跨って飛んでいると、空を羽ばたく鳥のようになった気分を味わえる。
後方から微かに羽音が聞こえてきた。
どうやら、夜行性の鳥たちがシルバー先輩の元へ集まってきたようだ。
「あっ、フクロウさんとサヨナキドリさんがやって来ましたよ」
「お前たちも夜空の星を見に来たのか?」
「こくりと頷いてますね」
「そうか。では、俺たちと一緒に行こう」
シルバー先輩が優しい声で鳥たちに語りかけた。
私達は横一列に並んで夜空を飛んだ。
サヨナキドリが美しい鳴き声を瞬く星空に響かせた。
その声に釣られるかのように、フクロウも深みのある低音を奏でた。
「美しい鳴き声だな。まるで、ニコルの歌声みたいだ」
「えっ……?」
「大地を包み込むような低い声も、天へと響くような高い声も、どちらも俺を魅了させてくれる」
「ふふっ、ありがとうございます」
私の方を少しだけ振り返ったシルバー先輩が、眉尻を下げた微笑みを浮かべてそう言った。
私の心が愛しい気持ちで満たされていく。
心の中にある想いを込めた花束を手渡すかのように、私はシルバー先輩の背中にこの身を委ねた。
夜空に浮かぶ星たちがきらきらと輝いている。
その光景は私の愛しい人がこの世に生を受けた日を祝っているように見えた。