ミラさんの誕生日に書いた話で、グッマザ回の幕間のお話です。原作で、みっぴきがじゃれあってるのを寂しそうに見ている姿が印象的でして。何度か足を運んでたけど、黙って帰ってたのかなあ、と思ったり。
ボックス特典のオーディオコメンタリーを聞いてて、ミラさんとドラルクさんはやっぱり似てるなあ、と思ったりしました。
ウスミラ要素有のみっぴきに祝われる夫妻を追加しました…あと、このタイミングでヒナイチくんのキャラソンにやられたので、ドラヒナのキスネタも追加…ちょっと無理矢理詰め込みましたね(汗)
2023/04/13に上げました。
@kw42431393
「なあ、ドラルク。楽しいか?」
「はい、お母様。」
本当だろうか?さっきから息子は、ずっとゲーム画面に釘付けだ。観覧車から下を覗く。人間の親子、吸血鬼の親子、思い思いに楽しそうに、アイスを食べながら、あるいはお喋りをしながら歩いている。
おや。でも、よく見るとゲームしながら歩いている子供も目立つな。今日日そんなものかもしれない。
「ねえ、お母様。」
やっと、息子がゲーム画面からこちらに顔を向けてくれた。思わず、嬉しくて顔が綻んでしまう。
一番忙しくて構ってやれなかったこの時期のドラルク…この子と遊びに行ったり、ただゆっくり時間を過ごしたかった。だから…
さあ、行こう。母さんと一緒に…。
同居人達の目の前で、子供にしたお前を連れ去った。
ミラ様、待ってヌ!ドラルク様を連れていかないでヌ!
悲痛な泣き声を上げるジョンも無視した。すまないな。でも、お前は実母の私より、ずっと長い時間をドラルクと過ごしているじゃないか。だから、少しだけなんだ。私にもお前のご主人様を一人占めさせてくれ。
「ジョンは、どこに行ったのでしょう?」
「あ…、ど、ドラウスとお留守番だ。そ、それより…。」
私の術で、精神も8歳程度に戻っているはずだ。だから、ジョンの事を知らないはずだが、さっきから泣きそうな顔で、ずっとジョンを探している。それだけ、彼との絆は深いのだ。知っている、知っていたはずだ。
だけど…母さんを見てくれ。ゲーム画面ばかり見ないでくれ、お前に何もしてやれなかった事実を突きつけられている様で辛いんだ。
この前の事だ…いや、ずっと前だった気がする。ドラルクが遊んでいるゲーム機の形が違った…ファミコンが出たばかりの頃だったか。ならば、1980年代の事だ。
ドラルクが虚弱な体質なのと、世界大戦の終了を待って、息子が埼玉県のドラルク城で独り暮らしを始めたのは戦後だった。それは、やっと人類と吸血鬼間の関係も穏やかになった頃だった。
私の仕事も、そこまで忙しくする必要はなかったはずだ。しかし、息子が安全に外に出られる世界を作る為にガムシャラに走ってきた年月は、私にとって仕事を生き甲斐にしていた。
どこかで、構ってやれなかった埋め合わせを、と考えていても手を抜けない。どんどん詰めてしまう。
それでも、その日は、なんとか休みを取って、独り暮らしの息子の元に遊びに行ったのだ。
「いきなり来たから、びっくりするだろうか?」
お土産を抱えて、心が踊る。ドラウスは、しょっちゅう栃木から会いに来ているから元気な事は知っている…でも、この目で見たいものだ。
扉の隙間から、ブラウン管の光と電子音が聞こえる。最近、ドラルクは人間達の作った『ふぁみこん』とやらにハマっているとか…その音だろうか。
「ぱぱー!」っと、叫びながらドラウスは扉をよく開けるのを知っている。私も真似て、ドラルクを脅かしてみようか。
「ま、まま…」
あれ?ミラ様?お久しぶりだヌ。
急に後ろから聞こえた愛らしい声に飛び上がる。息子の使い魔のジョンが首を傾げていた。
「あ、ああ。ジョン、久しぶりだな。元気か?」
ヌン、相変わらずドラルク様とのんびりしてるヌ。さっ、どうぞヌ。今、ドラルク様はクソゲーしてて手が離せないヌけど、どうぞヌ。
ガチャリと扉を開けると、いつも通りの息子の不健康そうな顔が、テレビの逆光に見えた。
「おや、これはお母様。いつの間にいらしたので?」
ゲームを一時停止して、ドラルクがこちらにやってくる。
「ドラルク、やっと休みが取れたので会いに来たぞ。なあ、お母様とどこかに…」
「連絡がなかったので、何の準備もしてなくてすみませんね。ちょっと、座って待ってて下さい。セーブポイントまで、やってしまいますので。」
「せ、セーブ…何だって?」
隣に座って見ていたが、このクソゲーとやらは全く分からない。むしろ、なんとも心が疲れる代物だが、息子はとても楽しそうだ。早く終わる様にと、ジョンがもう一つのコントローラーで手伝っていた。
「お母様もいかがです?」
ドラルクが気を使って勧めてくれたのだが、イライラと虚無が溜まるばかりで、何だか何をしに来たのか分からずに、その日が終わってしまった。
「ジョンもすっかり上手になったねえ。」
ヌフフ…伊達に毎日つき合ってないヌ!
ジョンに負けた気がして、肩を落としてドラウスの元に帰ったのを覚えている。
そこはまだ諦めがついたのだ。何しろ、ジョンはドラルクを慕って、海を越えて会いに来たマジロだ。それに、城に引きこもって出ないので、いつでも会えるし、埋め合わせもしてやれる。そう思っていたのだ、ドラルクがシンヨコで人間達と住むまでは。
『誰でもご自由にお入り下さい』の看板…ロナルド吸血鬼退治人事務所はここか。勘違いでドラルク城が爆破されてしまい、ご真祖様に怒られると思った息子が転がり込んだ退治人の家だ。「早く『ドラルクキャッスルマーク2』に変えろと言ってるのに…あのクソポール。」とドラウスが言っていたな。
インターホンを押そうとしたが、生憎『退治中』の札がぶら下がっている。冷たい床で座って待ってるのも、高等吸血鬼として格好がつかない。どうしたものか…。
「探しに行くか…難儀だな。」
全身を霧にして街を探索する。全く、ドラルク城にいた頃はこんな必要がなかったのに。それにしても、吸血鬼向けの娯楽施設や飲食店も多い。道行く吸血鬼達も楽しそうだ。
『息子はこの街が好きなのだ。』
ロナ戦を読みながら、ドラウスがそう言った。しかし、虚弱なドラルクが退治に同行して大丈夫なのだろうか。同居している退治人は粗暴な男だと聞く。
「撮影してるんじゃねえ!お前何もしてないだろ!このクソ砂!」
「してましたー。ロナルドくんがリンボーダンスしている間に、ヒナイチくんに連絡取ったの私ですー。」
聞き覚えのある声に、安心する。ドラルク、今母さんはそっちに行くぞ。
空から見ると、息子は赤い服を着た退治人とじゃれあっている所だ。少し離れた所で元の姿に戻る。普通ならじゃれ合いなのだろうが…
「おらっ!消せっつってんだろ!?」
「グエーッ!何回も殺すな、再生するのも大変なんだぞ!」
「ヌー!」
そうだ、何回殺す気だ。息子は、その程度でも死んでしまうんだぞ。全く、一言言ってや…
「ご婦人、どうかなされたか?」
後ろから凛とした声がした。振り返ると、赤毛に白い制服を纏った少女が立っている。胸に十字架をモチーフにしたバッジが光っている…吸血鬼対策課の者か。
「ああ、いや。その…。」
「うん?貴女とは、どこかでお会いしたか?」
頭のアンテナが?マークを描く。ドラウスみたいだな、少し親近感が湧いた。口を開こうとすると、向こうから息子の声がした。
「おお!ヒナイチくん、さっきはありがとう。若造ったら、術にかかって当てにならなくて。」
「ドラルク!それにロナルドも!協力を感謝するぞ。」
失礼…と私に軽く敬礼して、少女は息子達の元に走っていく。
「ヒナイチ、こいつに何とか言ってくれ。…ったくよ。」
「アハハ、相変わらずだな。奴は、確保してVRCに送った。そのまま、お前達の家に行くぞ。」
「それじゃあ、みっぴきで帰ろうではないか。ヒナイチくん、何が食べたいかね?帰ったら、夕飯にしよう。」
「ヌーイ!」
満面の笑みに、楽しそうな会話…あの子のそんな姿を見たのは、いつだったか。そして、何より…本物の家族みたいだ。
「ドラルク、母さんが会いに来たぞ。」
ただ、その一言が言えなかった。なんだか、置いていかれた気持ちだ。転校した子供が、友人に会いに来て、その子には新しい友達が出来ていて声をかけられない…そんな感じだった。
「あ~あ、腹が減ったと思ったらそんな時間だったか。俺、オムライスな。」
「クッキーが食べたい!」
「ヌンヌヌ、ヌーヌ…」
「はいはい。ちゃんと、私に畏怖の念を持って食べる様に。」
遠ざかっていく楽しそうな声が、さらに私の心を追い詰めていく。
私は、昨日今日会った様な者達にも負けてしまうのか?お母様は、もうお前に何もしてやれないのか?
「ミラさん、どうかしたかい?」
顔に出ていたのだろう、栃木に帰ると、ドラウスに真っ先に言われた。
「何でもない。明日必要な書類を思い出してな、ちょっと部屋で作成してくる。」
食事は…と声をかけてくるドラウスを置いて、私は部屋に籠った。昔から私はストレスを感じると仕事に逃げてしまう癖があった。夫の親友で、息子の師匠であるノースディンに言わせると、ドラルクもストレスを感じると家事に逃げるのだそうだ。親子揃って、変な所だけ似てしまったな。
無心にパソコンに向かう。休み明けでいい仕事をここでやってしまうので、またさらに仕事を引き受けて、ドラウスと過ごす時間さえ削ってしまう。
何も言わずにドラウスが夜食と紅茶を置いて、部屋を出ていった。温かい紅茶が身に染みた。優しすぎる彼に甘えている自分が情けなかった。
「ドラウス、すまない。馬鹿な事をした、何の意味もない事に頭を悩ませていたんだ。」
元の姿に戻ったドラルクは、退治人達と新横浜に戻って行った。その後、私とドラウスは、本当は息子と泊まる予定だった温泉宿に向かった。
平和になった後も、ずっと何も言わずに待っていてくれた最愛の人。彼ともちゃんと話し合わなければならない。ならない…ではないな。私が心の中を吐き出したいのだ。
「そんな事ないよ。私の力不足なだけだったんだ。ああ、私は冷蔵庫の奥に押し込まれた消費期限切れの…。」
「ドラウスは、いつだって私の事を考えてくれている。そんな言い方をしないでくれ。」
シュンと下を向いていたアンテナが、私の言葉でパッと立ち上がった。さらに、犬のしっぽみたいにブンブン振っている。変わらないな、お前のそんな所が可愛いのだ。
二人並んで露天風呂に浸かる。何百年も連れ添った夫婦なのに、実際いた時間は少なかったのではないか。今でも高校生の様に、ドラウスは私の方を直視できていないのだから。
「ドラルクは、自分の世界を手に入れた。そんなに心配する必要はなかったんだ。それに平和になったんだから、ドラウスとの時間も取り返さないとな。」
「もう!無理しなくていいのに。私はミラさんが帰ってきて、顔をみられるだけで満足なんだよ。」
嬉しそうに赤面した夫を見返しながら、さっき息子とのやり取りを思い出す。
ずっとゲーム画面しか見ていない。思わず泣きたくなった時、ドラルクが無邪気に笑いながら言ったんだ。
『楽しいので写真を撮っています。』
ピスピスと目を細めて、上目遣いに見上げる幼子に安心する。そうか、私といて楽しんでくれていたのか。でも、その写真を誰に送信しているのだろう。
『見せたいんです。楽しい写真を。だって、きっとお友達だもん。』
眠そうな瞳に意志が宿る。身体も元に戻っていく。あれが虚弱で、私が守ってやらなくてはならない息子だったろうか。
ああ…術が解けていく。待ってくれ、行かないで。
堂々と私に背を向けて、昼の子達の元に向かうドラルクに追いすがる私は、本当に愚かな親だ。息子が言った台詞をよく聞けば、理解できるはずだったのに。
ドラルクは元々、親の言葉に反抗する子ではなかった。悪戯者ではあるが、基本的にはいい子だったのだ。それが、自分の意志で怒れる様になっていたのだな。
そして、自分の意志で見つけた友人を大切にしているのだ。それは、私達が祝福してやる事じゃないか。
そして、友人達も息子を大事に思ってくれているのだ。だって、位置情報もついていない写真だけで、埼玉まで迎えに来てくれたんだから。
今度会う時は、彼らにもちゃんと礼を言わなければならないな。
…ここまで綺麗に締めておいて恐縮なのだが。
我々吸血鬼は執着心の強い生き物だ。確かに息子には怒られたし、悪い事をしたとは思っている。でも…やはり子連れの吸血鬼達を見ると思うのだ。
「あの頃の息子を、もう一度見たい」
ドラルクが生まれた時代は、日本では江戸時代だ。写真なんかないし、あっても今の様に映らない。
それに、あの頃は主にルーマニアにいたから、七五三が出来なかった。心残りが胸に湧く。ドラウスの心配そうな顔をよそに、またソワソワしてしまう。
『せめて口頭でコミュニケーションをとれ!』
あの時、お前はそう言ったよな…30分だけ。30分だけだ…なあ、構わないだろう?
息子が鬼の様な顔になっている。後ろの彼らは、呆れ顔だ。私は何かおかしな事を言っただろうか。
エピローグ
「ミラさん、今夜は楽しかったかい?」
「ああ、休みを取ってよかった。ドラルクだけでなく、彼らとも時間を過ごせて楽しかった。」
ミラさんと揃って、コウモリの羽で空を舞う。「そのまま泊まっていかれては?」と聞かれるほど私達は、ドラルクキャッスルマーク2で時を過ごしたのだ。
ミラさんは表情豊かではないが、長年連れ添った私には分かるよ。こんなに満たされた顔の妻を見るのは、久しぶりだ。
それに、最近シンヨコに来ても『子供時代のドラルク』に拘らなくなってきた。今のドラルクと会話を始めている。とてもいい事だと思う。
「…ポールくんと吸対のお嬢さんには、感謝してもしきれないな。」
お嬢さんはともかく、クソポールはちょっと癪だがな。
「ん…それはそうだが。どうした、ドラウス?」
ミラさんがドラルクを連れ去った事件の後、彼女が事務所に姿を現しても、二人は嫌な顔をせずにつき合ってくれたのだから。
先日など、彼らと一緒に買い物に行って、オレンジピールとジャムを作ってきてくれたのだ…うん、パパも行きたかったな。
『ドラウスがいると甘えてしまうのでな、彼らと一緒に作った手作りジャムだ。使ってくれるか?』
そう言われては仕方がない…ドンドンドラウス、我慢の子。
そのジャムで私はケーキを焼いた。ミラさんと合作だ。これ以上ない絶品ぶりだったとも!
『代わりと言ってはなんだが…あの事務所で私の誕生日をしてくれる予定になったんだ。その時は、ドラウスも一緒に行こう。』
それが今日だったのだ。楽しくない訳がない。家族が揃う誕生日も、そう毎年あった訳ではなかったのだ。その上、息子の友人達も参加してくれるという。自分達が目指したものが、この200年程の間に実った事を如実に示していた。
『グガー、ンゴー。』
パーティーも終わり頃、ポールくんは真っ先に酒に酔って、ソファで眠ってしまっていた。それにしても、うるさい鼾だな。
『やれやれ、本当に手のかかるお子様だ。』
そう言って、ポールくんにタオルケットをかけてやるドラルクの手は慣れていた。後ろで、ジョンを頭に乗せた吸対のお嬢さんも一緒になってクスクス笑っている。と、そのお嬢さんのポケットからスマホの呼び出し音が鳴り出した。
『…すまない。署からだ。』
そう言って、お嬢さんはリビングから出ていく。前からなんとなく私も察していたが、その時彼女を見送るドラルクは、複雑な顔をしていた。
ミラさんと顔を見合わせる。そして、お互いクスリと笑った。ドラルクがこんな顔をするのは珍しい…お嬢さんを仕事に取られた様に感じて、ムッとしているのだ。
『私が仕事の電話を取る時のドラウスと、同じ顔をしているな。』
そう言ってミラさんは笑っていた。やっぱりそうなのだね、ドラルク。
『お父様、お母様。私も少し失礼。』
そう言って、ドラルクもリビングを出た。聞き耳を立てなくても、私達は聴覚がいいので聞こえてしまうのに…それを忘れる程、冷静でなかったのだろう。
『すまないな、ドラルク。急遽、応援要請が入ったんだ。着替えて、お父上達に挨拶したらすぐに出る。あとは…』
『非番なのに、君って子は。急ぎでしょ?そのまま行っておいで。二人には私から言っておくから。』
ガタゴトと床板の外れる音がして、再び彼女が出てくる気配がした。
『それでは、あとはたのむ。お父上達によろしく伝えて…。』
『ちょっと、ヒナイチくん。忘れ物だよ?』
サラリと髪をすく様な音と、チュッと微かなリップ音。
『ちーん!お、おまっ…お前!また、そういう気障な事を!む、向こうにお二人がいるんだぞ!?』
お嬢さんの慌てた声。たぶん、頬にキスをしたのだろう。その様子だといつもしているのだね?まだ教えてくれないのは、そのお嬢さんが大人になるのを待っているのだろうか。
『関係ないね。いってらっしゃい、ヒナイチくん。』
私もミラさんも応援しているよ。だって、アンテナ族に悪い奴はいないのだから…何よりお前が選んだお嬢さんなのだから…欲を言えば、近々ウェディングの晴れ姿を見せてくれるとパパ、感激しちゃう。
「なあ、ドラウス。ドラルクは、引きこもってた時間を自分で取り戻している。生涯大事にする友人とお嬢さんを、自分の手で手に入れているんだ。」
そうだね、何も心配いらなかったんだよ。毎日、あんなに楽しんでいるのだから。
「仕事に打ち込んできた200年間、私はお前との時間を犠牲にしてきた。今度こそ、私達も…」
そうだね、取り戻そう。でも、ミラさんの仕事好きも知っている。だから、無理して空けなくても大丈夫だよ?
「明日から、また仕事だ。だが、来月の母の日から長期休暇を取ろうと思っている。」
「母の日…かい?」
もし休めたら、ドラルクと三人…あるいは、ポールくん達とも合流して、夢の国にチャレンジしようと思っていたのだが。
「ああ、お前の祖国へ…ルーマニアへ行こう。祖国のお義母様のお墓に、二人ともずっと参っていないのだし…それが終わったら、ゆっくり二人っきりで旅行しよう。200年は取れないが、少しぐらいは取り返せると思うのだ。」
隣を見ると、少し頬を染めた妻の顔。
ああ、こういう台詞は、私から言うべきなのに。やっぱり私は気の効かない、ゴミムシみたいな…。いや、言ってる場合じゃない。今こそちゃんと決めるべきだ。
「勿論だよ、ミラさん!少しぐらいなんてものじゃない!たった一秒でも君といられる瞬間が、その200年以上の価値があって…えーと、その。」
うん、自分でも何を言ってるか分からなくなってきたな…まあ、それでもいい。
お母様のお墓に白いカーネーションを供えたら、最愛の人と懐かしい故郷でゆっくり過ごそう。うん、シンプルにそうしよう。