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ミコト過去話➁

全体公開 Aegis 2 889文字
2023-05-29 14:13:49

入隊した最初の年くらいの話

Posted by @82sousaku

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『悲しくても、怒っていても、辛くても、どんなに嫌でも、笑って言うことを聞いていれば怒鳴られることなど一つもない。あの人が笑っていればそれが一番平和なんだ』

そうして張り付いた笑顔は癖になった。
別に普通の表情も出来るけれど。

けれど。

「ミコトっていつも笑ってるよね」
「? ええ」

同僚である友人に唐突に言われる。
確かに意識して笑ってはいるけれど。
いや、むしろ癖のようになっている、というのが正しいか。

「封印戦でも笑ってることあるから不思議だったんだけど、でもミコトが笑ってるのはまだ余裕がある時だから安心してる」

そういうつもりではないのだけれど。
と思ったが言う暇もなく、「明日の封印戦もがんばろうね」と自分のデスクへと去っていかれた。

けれど余裕がない時は確かに笑っていないのかも、と頬に触れる。日常でそれは困るが戦闘中はそれでいいか、とデスクに向かった。








彼女との会話はそれが最後だった。








名を呼ばれる。
動けない足が、慣れていない力が
なにも、間に合わなくて

目の前が赤に染まる。


ちのにおい。
あかいいろ。
ひとのなかみ。


鈍いはずの痛みがひどい。
あたまがいたい。
くらくらとする。
目の奥が痛い。
心臓が、ひどくいたい



「■■■……、どうして」


どうして。

なんて。


なんて、もう。


答えはかえってこない。



当たりどころが悪かった。
彼女はもうたすからない。
それだけがわかる。
わかりたくなかった。


それからのことはどうやって戻ったか覚えていない。
彼女をどうしたのかも、自分がどうしたのかも。

いつからかまた笑うようになった。
表情を動かした覚えがないのに笑っている。
張り付けた笑みはもう取れないのだと思う。
それで誰かが少しでも安心するならそれでいいと思った。

私はもっと強くならなければならない。
私を守る人なんかいないくらい、私が守れるようにならなければならない。

いつか、例えば痛みが失われても。
絶対に「守られてはいけない」のだと。


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