グエスレ現パロ転生シリーズ①-1
転生後世界のグエルとスレッタの出会いのお話。
始業式。雨、バス停。転校生のスレッタは今朝見た夢のことを思い出す。それは自分に真剣に告白してくる青年の夢だった…。スレッタside。
@CChacoru

花の雨っていうらしい。
桜の咲く頃に降る雨のこと。
私の周りはしとしとと降る雨で静かで、頭上のビニル傘からぽつ、ぽつ、ぽつ、と雫が増えては混じり合って、垂れていく。
目の前にゆっくりとバスが停まる。
バス停。
このバスは、違う。
ぞろぞろと、他校生や大人たちが入っていく。
扉が閉まり、ちょっと間が空いて、バスが動き出す。
再び静かになって、辺りには私の他に数人、並んでいるだけになる。
私は浮かれた気持ちと、ちょっぴり残念な気持ちと、今朝見た夢のドキドキとで、足元の小さな水溜りを、周りに散らさないようにぴちゃぴちゃさせた。
特におろしたての白いセーラー服には、かからないように。
今日は、始業式。今日から私は、新しい学校に通う。そう、転校生。初めて。ちゃんと、新しい友達作れるかな。クラスメイトと馴染めるかな。
田舎から持ってきたお気に入りの少女漫画では、転校初日は、青々と晴れていて桜吹雪の舞う道の下で、ヒロインが運命の人と出会ってた。そんな、漫画みたいに上手くいくわけないってわかってるけど、でもやっぱり、雨だなんて。
「あ」
なんとなく見上げると、ビニル傘に、小さな薄ピンクがひとつ、くっついていた。ハートの形みたいに見えた。
『今日のあなたのラッキーカラーは…ずばり、ピンク!素敵な出会いが待っているでしょう!もしかすると一生ものの出会いかも。絶対にチャンスを見逃さないで』
今朝テレビで見た星座占いが頭に甦る。
「う、占い…」
もしかして…
もしかして、本当に…?
そして、もう一つ、今朝見た夢のことを思い出す。
『俺はお前に、感謝している』
夢の中で、その人は私にそう告げた。
『大切なんだ』
頭の中でリプレイするだけで、茹でダコみたいに頬が真っ赤になる。
すごい夢だった。
真剣に、告白される夢。知らない男の人だった。たぶん…。
真正面から自分を貫くその言葉に、晴天のようなブルーの瞳に、まるで吸い込まれるように、片時も目をそらすことができなくて。
起きたときの心臓のバクバクが、思い返すと再び甦ってきて、私は胸にギュッと手を当てて、目を瞑った。
転校初日にこんな夢を見て、きっと何かあるんじゃないかって、期待しちゃうのは。
「仕方のない…ことだよね」
バスの音がして、私は目を開けた。
スマホで時間を確認した。このバスだ。
ぞろぞろと人の列が動き出す。
「あっ、えっと…ああ!!」
慌ててスマホを鞄にしまおうとして、傘を盛大に落としてしまった。アスファルトの上で水飛沫が起きる。たぶん、周りの人にかかった。
「ご、ごめんなさい、ごめんなさい!!」
「大丈夫か」
隣の男の人が、親切に傘を拾ってくれる。黒い傘をさして、白い学ランを着た、私と同じ学校の男子生徒。
「ほら」
「あ、あああ、ありがとうございます!」
差し出されたものを受けとって二度三度と頭を下げると、相手の人からのリアクションはなかった。不思議に思って顔を上げると。
音が止んだ。
その人は、私と同じように、目を見開いて固まっていた。
晴天のようなブルーが二つ、くらりと揺れて、真っ直ぐ、真っ直ぐ、射抜かれて、私も返すように、彼の顔に釘付けになった。
ピンク色の前髪をしていた。私はそれを、すでに今朝の夢で見ていた。
夢では、肩よりも長い髪だったけど、目の前の彼は、さっぱりとした短い髪。
でも、顔は同じ。背の高さも、長いまつ毛と、右目の泣きぼくろも。
夢と同じ人。
「あの…!」
声を上げたものの、続かない。
心臓のドキドキが、今朝飛び起きたときよりもずっとずっと、騒がしい。
なんで?どうして?
理解が追いつかないまま、固まっていると。
ひらり、はらりと、ビニル傘についていた薄ピンクの花弁が、彼の黒いローファーの上にゆっくりと着地して。
「スレッタ・マーキュリー…」
彼の口からこぼれ落ちた言葉に、今度こそ私は、言葉を失った。
だってだって、それは。
私の名前、だったから。