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三雲修と〇〇する流れになった二宮匡貴の話

全体公開 二修 4102文字
2023-06-30 19:05:59

不憫な二宮匡貴と三雲修
カッコイイ二宮匡貴は不在

Posted by @wtkotaji



「・・・何で俺だけこうなんだ、説明しろ三雲」
「何の話ですか、二宮さん」
 他の面々と違ってどうしてという二宮の言葉の意味がわからず、修は背後にいる二宮の方を振り返りそうになった。しかし、今はそんなことに構っている暇はない。
「! 今です二宮さん、行きましょう!」
「・・・・・・・」
 壁に隠れて周囲を伺っていた修がそれっとばかりに飛び出す。二宮は言いたいことは沢山あったが、背に腹は変えられぬ現状に口を閉じた。
 とても走りにくい格好で修に続いて走りだした二宮は、ものの数メートルで間抜けにも転けたのだった。
 
 普段なら絶対こんなことにはならないだろう。
 通常のトリオン体なら勿論、生身の身体でもだ。いやいっそ生身の身体の方がマシだ。しかしながら今はそんな贅沢を言ってはいられない状況だった。
 現在、修と二宮は全力で逃げていた。それだけならまだいい、問題は格好だった。
 モフモフしているだけで短い手足。
 大きいが可動域が皆無で何も掴めない手のひら。
 息苦しくて最悪に狭い視界。
 可愛らしいだけで全体的に役に立たない形状。
 二宮匡貴と三雲修は、何故か今着ぐるみを着ている状態だった。
「大丈夫です、似合ってます二宮さん」
「・・・喋るんじゃねぇ」
 よく分からない励ましをされ、二宮の苛立ちがいや増した。
 そんなことは誰も気にしていない。大体フルフェイスの着ぐるみなのだから似合う似合わないなどないだろう。
 ずももと最悪な機嫌を隠そうともしないので、きゅるるんとしたうさぎの着ぐるみが、二宮が着ているだけで魔界からの使者のような凶悪な表情をしているように見える。因みに修はネコの着ぐるみである。こちらは呑気で何も考えていないように見える。
 差し出された手を掴む事も出来ないので(本当に何も役に立たない手だ)断ってから何とか立ち上がる。無様という言葉がぴったりな現在の己の姿に、二宮は何度目かもわからない苛立ちを振り払った。
 
 なんでこんな事になった。
 

 
 *
 
 

 ここ最近、どうでもいい情報が二宮の耳には入って来ていた。
 
「風間さんが玉狛の三雲と食事に行ったらしいぜ」
「来週も行くんだろ」
「諏訪さんとは喫茶店で読書する仲らしいな」
「それより隠岐先輩に猫になって抱きしめられてたってほんとか?」
「いやどんな状況だよそれ、」
 こっちが聞きたい。
 会話をするC級隊員に訊ねたい衝動に駆られたが、二宮は直ぐに考え直した。馬鹿馬鹿しい。
(何故俺があんな眼鏡なんぞに、)
「へぇ、俺は犬飼先輩となんか部屋に閉じ込められて暫く出て来なかったって聞いたけど」
 
 
 ばん!と音を立てて扉を開いたのに驚いて二宮を見たのはオペレーターの氷見。どら焼きを取り落としそうになったのはアタッカーの辻だった。
 その向かいに座った犬飼が、ぽかんとしてカップを口に付けたまま二宮を見ている。
 相手が影浦などの気性が荒い者ならこんな反応はしないだろう。しかし入室してきたのがまさかの二宮だったことに驚いていた。
 それからずかずかと入室して犬飼に詰め寄ったのだから堪らない。
「──犬飼、どういうつもりだ」
「顔が怖いですよ、二宮さん」
 飲んでいたカップが零れないよう犬飼が「おっと」とバランスを取る。
 主語がない二宮に、らしくないなと犬飼は目を瞬く。しかし次に言われた言葉に予想していなかったのかびしりと固まった。
「お前が三雲と部屋に閉じ込められたってのはどういうことだ」
「・・・・それ、は、えーっと、」
 いつも流暢に話す犬飼が、目を泳がせらしくなく詰まりながら話している。その様子にぴくりと二宮の眉が動いた。
「三雲くんが何か言ってたり、しました?」
「俺が知る訳ないだろう」
「ですよね・・・」
 気にしてる訳ないか、はははと乾いた笑いを浮かべて心無しか気落ちしている犬飼に、二宮の眉間に皺が寄る。
「何があった」
「大したことじゃないんですよ、」
 話しにくそうに斜め上に視線を投げていた犬飼が、そこでふと気付いたのか二宮の眼を真正面から見つめた。
「何で三雲くんのことを二宮さんが気にしてるんですか?」
 不思議そうにする犬飼に、二宮は「・・・・お前の名前が出たから、気になっただけだ」と言ってふいと離れる。見え透いた嘘だが他に言いようがない。
 何故こんなにも気にしているのか、二宮自身でもよくわかっていなかった。
(諏訪さんや風間さん、隠岐などと同じに時間を共有すればわかるのか?)
 確かにそんなことをぼんやり考えては打ち消していたのは二宮だ。
 
 ・・・・・だがこんな状況を望んだ訳では無い。
 
 
 
 
 
 
「二宮さん!危ないです!」
「!」
 飛んできた玉が、二宮が着ていたうさぎの耳スレスレに飛んでいく。
 修に庇われる形でまた間抜けな状態でころりと転がった二宮は、苛立ちを通り越して疲弊していた。
「・・・・さっさと当たってダウンした方が楽だ。俺のことは放っておけ」
「そんなこと出来る訳ないじゃないですか」
 修がむくりと起き上がり、二宮を見つめる。着ぐるみ越しなので表情は不明だ。
「二宮さんからすれば不本意かもしれませんが、ぼく達は今バディなんですから」
「・・・・・・」
 
 
 
 
 *
 
 
 
 
 本来は嵐山隊に来た依頼の広報の一環だった。
 地域にボーダーの親しみやすさを広めようと、近隣の小学生を相手にレクリエーションを行うことになった。レクリエーションの内容は、鬼ごっことドッチボールを一緒にしたようなもので、ボーダーの隊員が決められたフィールド内で鬼として逃げ、参加者は指定されたボールを投げて当てたら勝ちといった企画だった。
 思ったよりも参加者が増え、枠を増やしたまでは良かったのだが。
「人手が足りなくなったから、三雲くん。君も参加したまえ」
「はぁ」
 根付にいつも迷惑をかけている自覚があった修は了承するしかなかった。子供相手のレクリエーションだから、無難に終わるだろうと思っていたのもあった。
 会場に来てから、地獄巡りに来たような顔をして座っている二宮に会うまでの話だったが。
(・・・来る筈だった東さんの代わりで来たらしいけど、これのこと知っていたのか?)
 普段とは異なる今回専用だと配布されたトリガーで換装した修は、異様な感覚に沈黙した。周りをそろりと見て確信する。様々な着ぐるみが困惑したように立ち尽くしていた。
「・・・・んだコレは!?」
「嵐山隊ではないんだ。普段愛想笑いもしない君達がそのまま参加者に相対した場合、阿鼻叫喚になるのは目に見えているだろうからねぇ」
「ざけんなぁ!端から説明くらいしやがれ!」
「したらそもそも換装しようとしないだろう」
「まぁまぁ落ち着きなよカゲ」
 何やら抗議をしているラブリーなクマの着ぐるみから、影浦のような声が聞こえる。まさか、そんな訳がないかと修は無理矢理現実から目を逸らした。
 こんな状況に、いくら東の頼みでも、二宮が進んで着ぐるみになるわけが無い。恐らく東も知らなかったのではないだろうかと修は考えた。
 気の毒にと、ちらと人事のように眺めた修は、二宮がいた筈の場所に出現したうさぎの着ぐるみが、こちらを睨みつけながらやってくるのにたじろいだ。
 同じ造作な筈なのに、向こうにいる「何だか恥ずかしいね」「似合ってますよ」とイヌの着ぐるみと会話をしているほのぼのとした優しい雰囲気の茶色のうさぎ(後から修は知ったがイヌは村上で茶色のうさぎは来馬だったらしい)とは全く違う。明らかにカタギではないようなオーラでずんずんと踏み締めるようにゆっくりこっちに来る白うさぎに、修は知らず足を引きそうになる。
「待て三雲、止まれ」
「は、はい、二宮さん、ですよ、ね」
「バディを置いて勝手に行動するんじゃねぇ」
「・・・・・・・は?」
 動いたら撃つとばかりの声音に修は止まり、二宮が告げた事に衝撃を受けたのだった。
 
 
 
 *
 
 
「・・・では、この着ぐるみはハンデで、中身の身体もいつもと違って普通の身体能力ということですか?」
「あぁ。当然ながら通常のトリガーも使えない」
 使用許可が出ていたら使うつもりだったのか。
 小学生を相手に当然の事を言う二宮に、修は冷や汗が止まらない。
 嵐山隊だけでなく、他の隊員もいるならただの広報活動で終わらすのは勿体ないという本部の意思らしいが、本当なのだろうか。
「・・・・・因みにバディはどういう決め方をしてこうなったんでしょうか」
「知るか」
 忌々しそうに二宮は言うが、本当は何となくわかっていた。恐らく、総合ランクのバランスを見て組み合わせたのだろう。
(おまけに、順位が高い奴には負荷があるのか)
 妙に重い着ぐるみに、二宮は舌打ちした。手足に鉛弾を受けているようだ。
 普通にしている修は恐らく負荷のようなものは何も無いのだろう。意を決したように真剣な顔をして「あの、作戦は二宮さんが立てますか?」と二宮に聞いてくる。
 言ってしまえばたかが広報活動だろう。
 しかも貴重なトリガーを使用して着ぐるみの換装体にするなど馬鹿げている。
 そう、一蹴しても良かった。
 しかし一見巫山戯た事柄でも、遠征組になる糧になるならばと真剣に取り組むのだ。
 この、三雲修という人間は。
(・・・・・確かに。広報活動はボーダーにとって近隣住民の理解を得る為にも、資金源の確保にも繋がることだ)
 二宮とて広報活動自体を馬鹿にしているわけでも軽んじているわけでもない。手段が些か突飛なのはいただけないが。
 
 何事も、やるからには負けるつもりはなかった。
 煩わしい着ぐるみのまま、二宮が訊ねた。
 
「──何か考えついたなら、話してみろ。三雲」
「はい!」
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
三雲修と逃走する流れになった二宮匡貴の話


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