X以外のSNSでの投稿にはPrivatter+がおすすめです
Xフォロワー限定公開・リスト限定公開の停止について

たくさん思い出を作ろう

全体公開 Δドラヒナ 10 6448文字
2023-07-09 16:49:59

楽天コレクションを見て、やっぱり温泉ネタはやっておきたいなぁと思いまして書いたお話です。
Δドラヒナ成立後で、みっぴきが百和温泉に行くお話です。
Δご真祖様が人間っぽいので、母方が吸血鬼という捏造設定にしてあります。ご注意下さい。
締めが自分達を見送った後のロナルドくんを心配する、ドラヒナ夫妻になってしまいました。本編ドラルクさんよりあっけらかんとしているけど、どうなっちゃうのかな。
帰りの車中での、隊長とロナルドくんの会話を追加しました。
2023/05/09に上げました。

Posted by @kw42431393

 「すまないね。もっと洒落た場所でもいいのだけど、私も一度行ってみたくて。」                 
 「いいんだ。それに、GWは多忙だった。祝日が長いと、羽目を外すやつが多かったな。」       
 全くもってその通りだ。世間はGWでも、我々にとっては地獄もいい所だった。署の仮眠室どころか、疲れて机に突っ伏して何度も寝落ちしては、また仕事に戻る生活はそろそろキツイ。年かな。 

 『ああ。机で寝落ちしているから、体がバキバキにこってしまった。一段落ついたら、私も百和温泉に行きたいね。』
 ただの独り言だったのだ。だが、後ろで無邪気な声が聞こえて、私は青ざめた。
 『そっか?じゃ、俺が揉んでやるよ。』

 「報告書を届けに行ったら、隊長が泡を吹いて倒れていたのは、驚いたよな。」
 「ヌンヌン。」
 助手席のヒナイチくんが、膝に乗せたジョンとクスクス笑う。その後、すぐに彼女達が来て助かったんだっけ。された方は、三途の川を見たのだよ。
 「何だよ~、すぐやめたぞ?骨折はさせてねえもん。」
 「死ぬかと思ったわ、この筋肉ゴリラ。」
 まあ、そんな感じで。今、私達は百和温泉に向かっている所だ。
 「百和温泉か最近、口コミで聞くものな。」
 「これから泊まる宿の仲居さんは、吸血鬼でね。以前、シンヨコでトラブルを起こした事もあったのたが。」

 その仲居さん吸血鬼温泉の人は、強力な念動力を持っていたが、温泉しか操れない事に困っていた。悩んだ挙げ句に、なんかわやわやして、無差別に溢れさせて、街を水浸しにしたり、人を溺れさせたりする事件を起こしたのだ。
 確保するのは大変だったまあ、その辺りの経緯は省略しよう。確保した彼の取り調べに当たったのが、希美くんだった。
 『温泉しか操れない?あら、いいんじゃないかしら?』
 当時、百和温泉は地元民ぐらいしか知らない所で、観光地に出来ないかと審議されている時期だったのだ。

 「町中の温泉宿や足湯で、時間帯によって色んなショーが見られるのか。」
 ヒナイチくんがパンフレットを見ながら、興味深げな顔をする。
 「そう、『温泉なら操れる能力』だからね。空中に湯の形を変えて浮かせたり、お客を持ち上げたりしてみせるらしいんだよ。」
 時間帯で、湯水を竜巻の如く舞い上がらせたり、花や動物の形にして散らせたり時期によってはクリスマスツリーや干支の形にして見せるらしい。
 「スタンプラリーにするのは、いい案だな。温泉街をそぞろ歩きする楽しみもある。」
 「彼、希美くんの案に感激してね。VRCを出所してすぐに実行に移したのだよ。我々も彼の受け入れを、街の方に働きかけた甲斐があったというものだ。」
 これこそが、吸血鬼対策課の本来あるべき姿なのだ。単に吸血鬼犯罪の対処、監督よりもずっとだから、GW前に、希美くんが恋人のアダムくんと百和温泉に行って、彼のその後を聞けたのは嬉しかったね。

 『彼、本当にイキイキしてたわ。皆にも、ここがいかに楽しい場所になったかを知って欲しいんですって。』

 そう言って、お土産の温泉饅頭と一緒に、パンフレットとクーポンを皆に配っていた。まあ、激務で体が疲れていたのもあったが、独り言を漏らしたのはそういう事だ。



 「いらっしゃあ!吸対の隊長さん!」
 「温さん、お久しぶりだね。やっと休みを取れたので、お邪魔させて貰ったよ。」
 「その節はお世話になりまして。お陰様で、皆さん楽しんでくれているんです。」
 ああ、希美くんから聞いた通りだ。確保した時の、病んだ気配は全くなく、楽しそうだ。しかし、彼は吸血鬼なのだ。まだ、日は高い。
 「もうすぐ、こちらの足湯でショーを行いますのでね。控え室から出てきた所なんです。宜しかったら、お連れ様もご覧下さいね。」
 なるほど、その時間帯になると起きてきて、温泉を操作しているらしい。
 「GWは大盛況でしたよ。温泉というと若者向けではない、と言われますが。私の能力で操作した温泉は、SNS映えするとの事でして。」
 彼はスタンプラリーの場所を示しながら、部屋に案内してくれる。早く行かなければ、終わってしまうな。
 「よかったよ、充実しているんだね。」
 「それはおっしゃらないで下さい。『温泉とかクッソ限定された能力』なんて、言ってた昔がお恥ずかしい。」
 彼は頭をかきながら、私達を部屋に案内すると戻っていった。これから、準備に取りかかるのだろう。
 「なあ、ドラ公。これってどうやって着るんだ?」
 感慨に耽っていると、ロナルドくんが浴衣を着ようとしてどうやったらこうなった?おかしな事になっていた。このまま出たら、側にいる我々まで変な目で見られるわ。
 「こら、ウロチョロするな。手を広げてじっとしてなさい。」
 もう一度、初めから着付け直す。旅行先でもゴリラの面倒か。全く、これでは
 「ウフフ、家と変わらないな。隊長。」
 鈴を転がす様な笑い声。振り返ると浴衣に着替えたヒナイチくんが立っていた。いや、これは眩しい。
 鮮やかな赤毛をアップして、綺麗なうなじがよく見えて私があげた血珊瑚のネックレスが首元によく映えている。
 「隊長?」
 思わず見惚れてしまった私を、彼女が覗き込んでくる。おっと、まずい。涎を垂らして、ガン見している場合ではない。
 「カズサさんが言ってたけど。やっぱ、お前ムッツリスケベだよな。」
 「ヌン。」
 「もう、ジョンまで!ほら、後ろを向け。浴衣ぐらいで世話を焼かすな。」
 きっちりロナルドくんの帯を締める。全く我ながら。
 「すっかり、お父さんが板についてしまったな。」
 ヒナイチくんのセリフに、頭を抱えそうになる。そうなのだ。彼を監督する様になって、共同生活をしているのだが図体がデカイだけで本当にお子様なのだ。
 でも、それでいい様な気がする。私がヒナイチくんとつき合う様になった事を、ロナルドくんは「これでもっと俺達、一緒にいられるな」と純粋に喜んでいる。普通の男性なら、少しぐらい気まずくなってもおかしくないだろうに。30そこそこで、こんなに大きな息子を持つのは、心中複雑だがまあ。
 「もういいか?なあ、行こうぜ!」
 「はいはい。じゃあ、この足湯から見に行こう。」
 「なあ、途中でここの温泉饅頭買ってもいいか?」
 「ヌヌヌ!」
 ヒナイチくん達が、はしゃいで飛び出していく。寒がりの私だけ、浴衣に半纏を羽織って彼らを後を追いかけた。
 「ドラルク、遅いぞ。早く早く!」
 やれやれ、そんな事では、畏怖して貰えないぞ。急かすロナルドくんに苦笑する。こんな無邪気に過ぎていく時間を大事にしなければならないのだろう。



 楽しい時間は、早いものですっかり日も暮れた。スタンプラリーは昼間の間にコンプリートしたが
 「大丈夫か?隊長。」
 困った様なヒナイチくんの声に、うつ伏せに寝転んだまま、私は顔だけ向けて笑ってみせた。
 「アハハあちこち回って堪能したはいいけど、却って湯疲れしてしまってね。」
 でも、楽しかったのだ。ここ最近で、急にここが人気スポットになる訳である。
 急に湯が鯉の形になって跳び跳ねたり、菖蒲湯がザワザワと騒いだと思えば武者人形の姿になってポーズを決めたり、手の形になって浮いている花を差し出してきたり温さんならではと言える。
 「ロナルドとジョンは?」
 ヒナイチくんが、私の隣に座って半纏をかけてくれる。湯冷めしないか気にかけてくれたのだろう。
 「ああ、ロナルドくんはまだ遊び足りないみたいでジョンにお守りを頼んだのさ。」
 「そうか。あまり、休日にならなかったかな?」
 そんな事はない。私はインドア派だが、こんな日もたまにはなくては
 「あっ?ひ、ヒナイチくん?」
 「ちょっと、失礼するぞ。」
 急に私を股越える様にして、膝立ちした彼女が肩を揉んでくれた。結構、上手い。
 「っくあ!そこもちょっと強めに。」
 「これは、こってるな。ケンさんの見よう見まねだが、ロナルドよりはずっといいと思って。」
 そういえば、退治人のケンくんはあん摩で小遣い稼ぎをしていたっけ。さらに、彼女の手が、背中を擦りながら下に降りる。今度は、肩甲骨の辺りを指圧してくれた。
 「ぁっ、う。」
 おっさんの喘ぎ声を聞かせるのは、ちょっと考えるものがあるがやってくれているのは自分の恋人なのだ。
 「フフフ、耳がピクピクしてるな。隊長、気持ちいいか?」
 耳元で囁かれる彼女の声手の動きと相まって背筋がゾクゾクする。
 「うん気持ち、いいよ。」
 気持ちいいけど二人っきりで、このシチュエーションはちょっとまずくなってきた。今回は、ロナルドくんを連れてきたからそのつもりはなかったんだけど今なら彼らは出かけている。スケベ心が疼くのも仕方がない、と思う。
 「ねえ、隊長。」
 背後のヒナイチくんの声色が少し変わった。少し真剣味を帯びた声だ。
 「んっ!な、何かね?」
 あん摩を続けたままなので、声が震える。平常の声を出すのに苦労した。
 「隊長はお母上が吸血鬼だったな?」
 「そうだが?」
 脊椎に沿ってグリグリと摘まむようにした後、腰全体を擦る様にしている。随分、体が軽くなってきた気がした。
 「隊長は、いつか吸血鬼になる予定はないのか?」



 意図が読めずに、半身を反らせて彼女を見る。そこには、少し泣きそうなヒナイチくんの顔があった。そんな君を見たのは、久しぶりな気がする。
 「どうしたのかね?」
 「うん時々、考える事があって。」
 ロナルドの事なんだ、と彼女は続けた。
 「ロナルドが来たばかりの頃は、あまり考えなかったんだが。こうまで一緒にいると、気になってな。」
 私達がいつか年老いて、あいつを置いて行った場合の事をと震えた声で続けた。
 「それは。」
 考えなかった訳ではない。私は確かに血族の直系だが、親戚は他にも大勢いるし、吸血鬼対策課で私が必要とされているのは『ダンピールとしての探知能力』だ。それを考えるのは、少なくとも何十年も先の話だ。
 何より、私は君と一緒に年老いたい。
 「人間の私があいつを置いていくのは、仕方がない。せめて、隊長とジョンだけでもいてくれればあいつは寂しくないんじゃないかって。」
 「ありがとう、優しいね。」
 起き上がると、小さな体を引き寄せる。上目遣いで見上げる姿がいじらしかった。
 「今のままだと、私達が亡くなった後が心配だね。手放しで泣くかもしれないでも。」
 彼もまた強い血を持った吸血鬼だ。私達が寿命を終えるその頃には、一人前の大人いや、畏怖される吸血鬼になっているのではないか。もしかしたら、リードしてくれる女性を見つけて家族を持っているかもしれない。
 「それまでに、今日みたいな思い出をたくさん作ろう。それぐらいなら、私達にも出来るはずだ。」
 「そうだな。」
 ヒナイチくんが、私の胸に顔を擦り寄せてくる。白いうなじを吸うと、湯上がりの髪からいい匂いが漂った。
 「アハ、くすぐったいぞ。」
 彼女の口元が綻んだ。よかった。やっと、笑ってくれたね。
 「すまないな、急に変な事を言って。」
 「いや、構わないよ。」
 ほっとしていると、彼女が手を伸ばして前髪をかき上げてくれた。しかし、また元に戻してしまう。
 「どうしたのかね?」
 「フフッ。前から思っていたが、湯上がりで前髪を降ろした隊長は、若く見えるな。」
 とても可愛いから、二人きりの時はたまにそうして欲しいと言われた時、またゾクリとした。
 「なあ、隊長。血液錠剤とあれ持って来てるか?」
 一応持ってきてる。ロナルドくんを連れてきてるから、予定はなかった。けど、気が変わる事はあるし。
 「私の部屋でロナルド達が帰ってくる前に。嫌か?」
 結婚を前提につき合っている女性から言われて、嫌な訳がない。私は、そのままヒナイチくんを抱き上げる。そして、彼女の部屋の扉を開けた。
 「ヒナイチくん。」
 鍵をかけて、彼女を布団に降ろす。すると、急に思い出した様にクスクス彼女が笑った。怪訝そうな顔をする私にキスをしながら、彼女は続ける。
 「まだまだ先の話だとは言ったんだがロナルドには兄妹がいるだろう?」
 「お兄さんと妹さんだったね。確かに。」
 困った様に笑いながら、ヒナイチくんがこう締めた。
 「だから、弟が欲しいんだそうだ。私みたいに強くて、隊長みたいに頭のいい弟がいいって。」

 『ヒナイチと結婚しねえの?俺、妹いたからさ、子供の面倒見るの上手だぜ。』

 そんな事を言ってきたお子様の頭を小突いたのは、いつだったか。
 簡単に言ってくれるね。期待に添えれるか分からないが街の治安がよくなって、私達の仕事に余裕が出来る様になった時善処しよう。



 「もう明日から仕事かぁ。」
 「それはこちらのセリフだよ。まったく。」
 「ヌフフ。」
 楽しい休日はあっという間に終わって、私達は帰りの車中にいる。温さんのショーは日替わりなので、ギリギリまで私達は百和温泉を堪能した。ヒナイチくんに言った様に、少しでも多くの思い出を残してやろうと思ったのだ。いや、違うな。
 「『私』が一つでも多く欲しいんだ。」
 いつ、この時間が終わっても悔いがない様に
 「何の話だ?」
 「お子様は気にしなくていいよ。」
 後部座席から覗き込んで来るロナルドくんを小突く。ぶぅっと、口を尖らせる彼に溜息をつきながら、助手席のヒナイチくんをチラリと見た。
 「ヒナイチ、ぐっすり寝てるな。」
 「そっとしてやり給え。彼女も明日から仕事だ。」
 まぁ。彼女が寝込んでいるのは、今回私のせいというか。いつも体力負けしてる私だが、仕事明けでなければ、彼女を満足させる事は出来る訳で。あと、あん摩が効いたね。
 「ヌー。」
 ジョンの視線がちょっと痛いがうん。
 白状します、ブーストも使いました!だから、まあそういう事だ。

 「そうだ。ロナルドくん。」
 「どうした?ドラルク?」
 私達がいなくなってから、君はどうするのだろうヒナイチくんが眠っている今だからこそ、話しておくべきだろうか。
 いや、言っても「つまらない事をいうなぁ。」か「じゃあ、お前達も吸血鬼になったらよくね?」とかデリカシーなしルドくんをするだけだろう。やはり、もう少し彼が成長してからにしよう。
 「今日も楽しい事があるといいね。」
 「何だ、そりゃ?」
 分からないだろうな、このお子様には。
 「楽しいだろ。もう既に。」
 変な奴だな、と身を乗り出して屈託なく彼は笑う。その頭をクシャクシャとこねくり回すと、文句をいうロナルドくんを無視して、私はスマホの通知を確認した。
  
 『休暇中に失礼します。今日お戻りになるという事ですが、急遽、隊長の確認が必要な箇所が出ました。お手数ですが、署に寄って頂けないでしょうか?』
 
 留守を任せていたミカエラくんからのRINEだ。まぁ、お土産を持って行くついでだしその後きっちり仕事になりそうだけど。

 「クソッタレ、勤労勤労。」
 「なぁ!また出動か!?」
 ウキウキした顔のお子様に笑いかけながら、進路を変える。
 「かもね。ヒナイチくんを家に送ったら、署に向かう。」
 「な?楽しいだろ?」

 私達の心配は、杞憂になるかもしれないな。彼のあどなさに救われた気持ちになりながら、私達の休日は終わりを告げた。


投稿にいいねする


© 2026 Privatter All Rights Reserved.