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初めては君ではなかったけれど。

全体公開 Δドラヒナ 1 3 2475文字
2023-07-18 10:14:57

ふゆるさんのドラヒナキスの日企画に入れて頂いたお話です。
成立後のΔドラヒナで、ロナルドくんとジョンもちょろっと出ます。
隊長の女性遍歴については、Twitterでも多々議論されていますが、捏造でルーマニアにいた学生時代につき合っていた女性がいたけれども、さほど両方とも本気ではなく、日本に来てから忙しさもあって音信不通になって終わったという設定にしてあります。
寝起きのドラヒナ夫妻のキスシーンを追加しました。
2023/05/22に上げました。

Posted by @kw42431393

 貴方とは、幼い頃に出会った。連続吸血事件があった夏の森で。 
 当時20そこそこの隊長は、今よりもっと色白で、華奢でまだ顔に幼さが残っていたと思う。下等吸血鬼から助けて貰った私は、夜の山を下りるのは危険だったので、あの人の膝の上で一夜を明かしたのだ。
 「いい子だね。夜が明けたらご家族の元に必ず連れていくよ。だから、安心しておやすみ。」 
 チュッと優しい音と柔らかい感触。吸対の白いコートに包まれて、私は安心して眠りに落ちた。
 
 「あれが私のファーストキスだった、初恋だったんだ。」
 「それはごめんね、こんなおじさんが貰ってしまって。」

 それが夢だったからいいんだ。そして、ファーストキスも初恋も、初めても貴方のものになった。
 少し嬉しそうな初恋泥棒ドラルク隊長は、クスクス笑った。いつも通りの隊長室での、報告書提出という名目のお茶会。私の憩いの時間。そういえば、ロナルドが見当たらないな先にクッキーを取り分けておくか。
 隊長のクッキーは、魔性の味だ。理性がある内にしておかないと、吸い込んでしまう。
 
 ヌフフ、ヒナイチくん。優しいヌね。

 「アハハ、この前全部食べてしまったからな。」
 笑いながら、湯気の立つコーヒーにジョンが、砂糖を入れてあげていた。その様子を眺めながら、クッキーに手を伸ばす。サクリと軽い感触に、いつものバターの香りがふわりと漂う。
 「じゃあ
 軽く周りを確認すると、隊長は私の側にやって来る。頬を触れ合わせると、軽いリップ音が聞こえた。隊長の祖国ルーマニアでは一般的な挨拶だが、日本人には少し照れ臭い。つき合った当初は、抵抗があったな。
 そっと貴方の頬に手を添える。私からもお返しだ今なら出来るんだぞ。
 触れた皮膚の感触は、当時の様に柔らかいものではなく、虚弱だが、現場を駆け回った固い感触になっていた。
 やがて、唇が塞がれる。ここが署である事を忘れるほどに、頭がふわふわする。
 「っふぅ。」
 「これで何度目かな?」
 絡ませていた舌を離す。間近に、からかう様な隊長の笑顔があった。照れ隠しに、軽く睨む。
 「実は言えるぞ。」
 「嬉しいよ。じゃあカウントを狂わせてあげようか?」
 今日はキスの日だから、それもありだな。うん、そのつもりだったのに。
 「そう、そのつもりだったんだよね。」

 やっぱりな、隊長も気づいていたのだろうな。
 『わー!?』
 『惜しい。もう、いい所でしたのに。』
 『ってかバレてる~。折角、写メ撮ってやろうと思ってたのに~。』
 背後でジョンが、ロナルド、フォン、マナーの三馬鹿トリオの覗いていた扉をガチャッと開けた。吸対もなかなか暇だな。
 「甘いのだよ。つまらない事をしてないで、さっさと仕事に戻り給え。」
 途中まで、隊長も人の事を言えなかっただろう?
 「あと、ロナルドくんはおやつ抜き。」
 「エーン、なんでそんな事言うんだよぉ!」

 ジョンが横でクスクス笑う。いつも変わらないなああと、ロナルドの分もクッキー食べていいかな。



 『初めては全部隊長のものだから、最後のキスも隊長にしたいんだ。』

 さっきそう言っていた君は、今私の隣でスヤスヤ眠っている。いじらしい言葉に、心臓がどうにかなりそうだったよ。
 「でも、ちょっと置いててあげて。」
 そう言って、眠っているヒナイチくんの頬に口づけを落とす。君は生真面目な子だから、釘をさしておかないと本気で実行しそうだもの。
 「私は体が弱いし、君とは一回りも違うのだよ?」
 ダンピールの私は、おそらく見た目は年老いるのが遅いだろう。それでも、寿命は人間とさほど変わらない。君を何年か寂しい思いをさせる確率の方が高いのだよ。でも
 「きっと、君は皆に愛される可愛いお婆ちゃんになるね。そして、私達の孫やひ孫に大好きって言って貰って
 最後は、小さな孫達に囲まれて、キスしてあげて、生を終える。それこそ、太陽の様な君にふさわしいと思うんだよ。だから、その子達の為にとっておいてあげてくれるかい?
 でも代わりといってはなんだけど。

 「私の最後のキスは、君だと決めさせておくれ。」
 
 私のファーストキスは、残念ながら君じゃなかった。でも、初恋は君だとはっきり言える。
 その当時の私にとって、相手の女性は遊びではなかったはずなんだけど何故だろうね。
 今更言っても仕方ないけどこの年になって何度考えても、恋とか愛とか呼べるものでは、なかったんだよ。

 だから、君には止めておいてなんだけど、せめて君にキスをして人生を終えたいと思っている。
 ごめんね。半分彼らの血を引く私も、やっぱり我が儘なんだよ。



 「隊長、おはよう!」
 元気な声に意識が浮上する。
 シャッというカーテンの開く音と、差し込む朝日の逆光が、ますます彼女を太陽の様に見せていた。
 「あぁ、おはよう。ヒナイチくん。」
 彼女とは年齢的にも体力的にも差がある事は知っている。それでも、ヒナイチくんがもうシャワーも済ませて、部屋に戻ってきているのに男の私が疲れてすぐに起き上がれないのは、ちょっと情けない。
 「待っててくれ給え。年かな、すぐ起きれな。」
 「なぁ、隊長。」
 少し甘えた様な声に見上げると、唇にチュッというリップ音と柔らかい感触。

 不意打ちにフリーズしたままの私を置いて、彼女は部屋を出て行った。
 「休んでいていいぞ。朝ごはん用意しておくからな!」
 その一言を残して、軽やかに。
 「フフ、先を越されてしまった。年上の面目丸つぶれだ。」
 クスクス笑いながら、気だるい体をなんとか起こす。今日も8時頃には署に行かなければならない。

 「クソッタレ、勤労勤労。」

 こんな毎日が、これからもずっと続いていくのだろう。続かせる為にも、私達は今日も騒がしい街を駆けまわるのだ。 
  
 
 
 


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