1ページ - ワンクッション
2ページ - HO.童子
3ページ - HO.篤学者
4ページ - HO.美術家
5ページ - HO.異邦人
@nier_trpg
Welcome to the Museo Eterno .
2ページ - HO.童子 天羽 セツ
3ページ - HO.篤学者 越鳥 究
4ページ - HO.美術家 時雨 聖
5ページ - HO.異邦人 アドラー・アクイラ
1d100 (1D100) > 22
・シナリオ諸注意 : 個別導入では、なぜPCはエテルノ美術館へ向かうことになったのか、その動機や目的が説明されます。
また、個別導入での内容は、すべて秘匿HOに含まれています。あなたがこれから見聞きするものは、全て"新しい"秘匿HOになり得る、ということです。
心臓の鼓動。
それはあまりにか細い、繊細な響きの連続。
しかし、それでもその小さな生はまだ見ぬ世界を求めている。
休みなく懸命に。たった一つの光を求めて。
『今、お腹の中で何か聞こえたぞ』
『本当? でも、まだこんなにお腹は小さいのよ』
『間違いないさ。あぁ、待ち遠しいな』
『えぇ、私たちの新しい家族だもの』
家族。家族。ああ、それはあなたが心からほしいと願ったものだ。
だが、あなたの記憶には父と母は存在しない。
そして、この考えに至る時、いつもあなたはこれらの情景すべてが幻だったことに気づくのだ。
――これはある事件を物語るまえのあなただけの序幕。
あなたは知っているはずだ。この世界はとっくに穢れてしまっているということを。
[2019年3月下旬]
少女 : 「だいじょうぶ?セツくんー?」
あなたが瞼をもたげると、目の前には心配そうに見つめる少女の姿があった。
その少女は心配そうにあなたの顔をのぞきこむと、そのまま額を合わせてくる。
そうしていると鈍く残った頭痛は徐々に引いていく。
少女 : 「おーい、おーい!起きてる、だーいじょーうぶー?...ん~、」
「ん…、おはよ……?」
少女 : 「また頭いたかった?もうだいじょうぶなのー?」
「…うん、だいじょうぶ」
少女 : 「本当?いたいのいたいの、とんでけー!...いらない?いらないか」
「ふふっ、ありがとう。いたいのとんでったよ」
少女 : 「ふふっ、よかったー!」
ここはとある児童養護施設の一室。あなたは物心ついた時からこの施設の中で育ってきた。
幼いあなたにとってここが世界のすべてであり、目の前にいる少女もまた、この世界の一員であった。
そして、今日はあなたがこの施設にやってきた特別な日であり、両親を知らないあなたに代わり施設で決められたあなたの誕生日でもあった。
少女 : 「あ、それでね、セツくんセツくん!」
少女 : 「―――おたんじょうび、おめでとーう!」
「――ありがとう!」満面の笑みを浮かべながら
少女 : ふふーっ、と無邪気な笑みを浮かべながら
少女 : 「今日は3月のたんじょうびかいだから、みんなでお祝いできるね!」
少女 : 「あ、でも。3月ってセツくんだけだったよね?じゃあ...主役じゃん!」
「そっか。3月ってボクだけか…」
「主役かあ。なんかちょっとうれしい…かな?」
そう言葉を返せば、少女は曇りのない笑顔であなたの生誕を心から祝福しているようだった。
誕生日会。それはここでは月に一度だけ開かれる特別な会。
だが、本日の主役はあなたである。
もう数時間もすれば、誕生日会は開かれる。その前に色々と準備することもできそうだ。
ここから調査開始です。探索可能な施設は以下の通り。
・探索可能な箇所 :
▽共同部屋
あなたが主に生活する部屋。数人の子供たちと共に使用
している。主役だからこそ今日ばかりはオシャレに気を使わなければ。
▽厨房
子供たちのために料理する場。今夜はきっとごちそうが振舞われるはず。料理を手伝うのも面白そうだ。もしくは一足先に味見をしてみてもいいかもしれない。
▽職員室
職員たちの部屋。いつも、心優しく子供たちに接してくれている。改まって、礼の一つでもしてみるのもよい。
少女 : 「ふふっ、そっか、よかったー!」
少女 : 「―――あ、わたしはセツくんに”おめでとう!”って言いに来ただけ!たんじょうびかいまでは時間あるし、ゆっくりしてたらどう?」
「うん。でも、ボクもみんなのことお手伝いしたいな」
少女 : 「えー、ほんとに?そっか...んー、でもなあ....」
少女 : 「まあ、とりあえず後でみんないるお部屋においでよ!みんなもセツくんに会いたがってるよ~」
「わかった。また後で行くね」
少女 : 「はーい!それじゃねー!」
というと、少女はとたたと走り去ってしまった。はやい。
「…足はやいなあ。ボクもあれぐらいはやかったら、おにごっこも楽しいのに」
「えっと、みんなお料理つくってくれてるのかな?」厨房の方へ行ってみます
《厨房》
中からいい匂いが漂ってくる。
調理師のおばさんたちが今夜のごちそうに向けてせっせと腕を振るっている。
いつもは中に入るとカンカンに怒られるが、料理に熱中しており、こちらには気づいてはいないようだ。
入口からそろ~っと覗き込みます
「おばちゃん、こんにちは…」
あなたが調理師に声をかければ、言葉を返した。
「あら、セツくんじゃない!びっくりした。あんまり火に近づいちゃダメよ、誕生日にケガをしたら悲しいでしょう」
「えっと…ボクのためにお料理つくってくれてるのかな……って」
「ええ、そうよ。今日の夜は...ごちそうにしなくちゃいけないからね」
「それで、セツくんはどうしたのかな?いい匂いにつられちゃった?」
調理師のおばさんは調理を中断し、あなたの方に寄って会話を続けた。
「あの、お手伝いしたくって…ダメ、かな?」
あなたがそう提案すれば、調理師のおばさんたちはやや驚いたように目を見張る。
「まさか誕生日のあなたがそれを言い出してくるなんて...、気持ちはとっても嬉しいけどどこか怪我したらいけないわ。」
「―――おばさんたちがその代わりにめいっぱい美味しいのを作ってあげるから、それまで待っていてね」
そこで、別の調理師が言葉をはさむ。
「あら、今日くらいいいじゃない。それにセツくんも今日で8才でしょう。だったらお料理くらい興味を持つのは当然よ。...それに、お料理ができる子は将来モテるわよ!」
「もて…?」首をかしげます
「料理ができる子はかっこいいからねぇ。女の子みんな、あんたにゾッコン、ってこと!」
「ああもう、あなたって人はまったく…、」
「…?」
どうしたらいいか分からず二人を交互に見つめてます
「...こほん、とりあえず分かったわ。...それじゃあセツくん、まずはたまねぎの皮を剥くところからやってみましょうか。」
「うんっ!」目をキラキラさせて厨房の中に入っていきます
ではここで、〈DEX×5〉または〈芸術:料理〉を要求いたします。
CCB<=6*5 【DEX × 5】 (1D100<=30) > 50 > 失敗
CCB<=5 【料理】 (1D100<=5) > 34 > 失敗
CCB<=80 【芸術(料理)】 (1D100<=80) > 36 > 成功
では、あなたは初めて触れる料理というものに苦戦するが、調理師のおばさんたちの適切な指導もあり、すごく美味しそうな料理が出来上がるのを体験する。
〈芸術:料理〉に1d10の成長チェックが発生する。
1d10 (1D10) > 2
「……ぐすっ」玉ねぎが目に染みてる
「おばちゃんたち、いっつもこんな大変なことしてるの…?」
「ふふっ、そうよ。大変だった?」
「それなら、これからも料理にはきちんと感謝して”いただきます”って、しないとね。そうしてくれると、おばさんたちもすっごく嬉しいな」
「…うん、わかった。ちゃんと”いただきます”ってするね」
「うんうん、セツくんはえらい子だね。...あ、そうだ。」
そういうと、おばさんは冷蔵庫の方に向かい何かを取り出してきた。
「セツくん、確かフルーツ好きだったよね?...今日のデザートのいちごがいくつか余ってしまってて。よかったら食べる?」
「わあ…!!やった!」
「あ、でもみんなに内緒で食べるの、よくないかな…?」
「いやいや。元々全員分ないし、みんなに持っていったら取り合いで喧嘩になっちゃいそうで困ってたのよ。セツくんは頑張ってくれたし、ちょうどご褒美ってところ。...どうかな?」
「…けんかになったら悲しいかも。じゃあ、いただきます」
いちごをもぐもぐします
調理師のおばさんは、君がいちごを食べるのを満足そうに見届けた。
口の中で解けるいちごは、甘い感覚を確かに君に届けた。
SAN値を1d3回復させましょう!
1d3 (1D3) > 2
system : [ 天羽 セツ ] SAN : 80 → 82
「それじゃあ、おばさんたちは料理に戻るね。今日一日、楽しんで!」
おばちゃんにお礼を言って分かれます
「…さっき約束したから、みんながいるお部屋に行ってみよう」
それでは、共同部屋へ。
《共同部屋》
あなたが部屋に入れば、同居の子供たちがあなたを祝福してくれる。一足早くバースデイソングが部屋に響きわたるだろう。
少女 : 「ハッピーバースデイ、トゥーユー!ハッピーバースデイ、トゥーユー!ハッピーバースデイ、ディア......ってあれ、これ今歌っちゃっていいんだっけ…」
少女 : 「....うわー!!!セツくん、聞いちゃダメだよ!」
「えっと…なにも聞いてない、かな?」
少年 : 「聞いてないなら...大丈夫。――ねぇみんな、セツ聞いてないってさ。」
少女 : 「ええ、そっか!よかったー!」
少し眉を下げてほほえんでます
少女 : 「ああそう、セツくん!すっごいいい感じのタイミングにきてくれたじゃん!」
少女 : 「今ね、おたんじょうびだからおしゃれしてほしくって、みんなでセツくんに似合う服を探しててね!それでね!」
少年 : 「結局、セツに選んでもらおうって話になった。ほら、あそこにたくさん服がある」
「わっ…!すごくいっぱい…ボク選べるかな?」
子供たちはオシャレのために持っている服を何着か貸してくれるようだ。もし、あなたが気に入った服があれば、誕生日プレゼントとして贈ってくれる。
・〈幸運〉ロールを要求
CCB<=80 【幸運】 (1D100<=80) > 6 > スペシャル
それでは子供たちは、あなたのサイズにぴったりな服をたくさん貸してくれる。
コーディネートがうまくできたか、〈APP×5 + 10〉で判定を行ってみましょう。
CCB<=13*5+10 【APP × 5】 (1D100<=75) > 49 > 成功
それではあなたは、完璧なコーディネートができるでしょう。普段の自分から、生まれ変わったような気さえします。
少年 : 「お、いいじゃん。すっげー似合ってる」
「そう…かな?ありがとう」
少女 : 「セツくん、おしゃれさんだーー!!すごいすごい、かっこいいよ!」
「えへへ……」
「主役っぽい…気がする」
少年 : 「ははっ、そうかも。かっこいい主役だね」
あなたの身を包む衣装はあなたに自信を持たせる。自分が憧れる”主役”の姿に、一歩近づいた気がした。
SAN値を1点回復させましょう!
system : [ 天羽 セツ ] SAN : 82 → 83
「…うん!」とても嬉しそうにしてます
少女 : 「...うんうん!」と一頻りに満足そうに頷いて
少女 : 「あでもセツくん、お部屋の飾りつけとかは終わっちゃったみたい。...2月の分のかざり、誰かが残しておいてくれてたって!」
「そうなんだ。そしたらどうしよう……せんせいにお手伝いないか聞いてみようかな?」
少女 : 「んー、それでもいいかも?わたしたちも早く終わったから、セツくんの服選びに集中できたの!」
少年 : 「気に入る服はあった?」
「うん。みんなが選んでくれたお洋服、すごくうれしい!」
「大事にするね」
少年 : 「うん、よかった。」満足そうに
「じゃあ、せんせいのとこ行ってくるね」
少女 : 「いってらっしゃーい!またあとで!」
《職員室》
あなたにとって親代わりともなる職員たち。今はこの職員室で小難しい書類と向かいあって黙々と事務仕事をしているようだ。
あなたが訪ねてくると、にこりと微笑み、あなたの生誕を祝福するだろう。
先生 : 「ああ、セツくん。お誕生日おめでとう」
「せんせい、ありがとう」
先生 : 「ふふ、お誕生日会はもうすぐだから、もう少しだけ待ってね。...それで、どうしたの。待ちきれなくなっちゃった?」
「えっと…えっとね…」ちょっともじもじしてます
先生 : 少し考えた様にあなたの姿を見て
先生 : 「......ああ、その服かっこいい!いいね、みんなから貰ったの?」
「……!!」ぱあっと笑みを浮かべて
「うんっ!みんながボクのために選んでくれたの!」
先生 : 「うん、ほんとに似合ってるよ。すごくいいものをもらったね。ちゃんとありがとうはした?」
「うん。ありがとうって、大事にするねって言ったよ」
先生 : 「そっか。ふふ、セツくんはえらいね。きっとみんなもうれしかったと思うよ。」にこり、と笑顔で返す
先生 : 「ああ、もうすぐ誕生日会の時間だね。せっかくの記念の日なんだから、素敵な誕生日会を過ごしましょうね」ちらりと時計を見ながら
「あ、あのね…」
「せんせいも、いつもありがとう」
あなたがそう感謝の言葉を述べれば、職員は涙ながらに嬉しがるだろう。
先生 : 「......ええ、ええ。こちらこそ、ありがとうね。」
先生 : 「――ふふ、いけない。つい。」
「えっと、えっと…せんせいどこかいたい?だいじょうぶ?」おろおろ
先生 : 「...そんなことないよ、ごめんなさい。―――人間はね、つらかったり、かなしいとき以外にも、うれしいときにだって涙はこぼれるの。」
先生 : 「...先生、ここでみんなと出会って本当に良かったって思えたわ。...いつか、あなたにもそう思える日がくるといいわね」
「そう…なんだ?」
「えっと、よくわかんないけど…ボクはせんせいとみんなと毎日一緒に遊べて、うれしい…よ?」
先生 : 「ふふ、そうね。...それは、とっても幸せなことだね」
先生 : 「―――セツくん。」
「はい?」
職員は何かを深く考え、改まった様子で告げるだろう。
先生 : 「...今夜の誕生日会が終わったらちょっと大事なお話があるの。」
先生 : 「あなたのこれからについてよ」
先生 : 「...ごめんね。少しだけ覚えてほしかっただけ。...もうすぐ誕生日会の時間だね、先生も準備しなくっちゃ。」
「…?」
「あ、お手伝いある…?」
先生 : 「ああ、そうね。...それなら後で、みんなと食器運んだりするから、セツくんも手伝ってくれるとうれしいな」
「うん、わかった」
先生 : 「それじゃあ、行きましょうか」
すべての部屋を回れば、じきに誕生日会ははじまりの時を迎える。
児童数が多いこの施設では一か月に一度は開かれる定例行事でもあったが、あなたにとっては一年にたった一度だけの特別な日に違いはなかった。
それに心なしか、並べられたごちそうがいつもの誕生日会のものよりもいっそう豪華に見えた。
宝石のように煌びやかな色の輝きを放つゼリーたち、ふわりと雲のように溶けこんだクリームに沈む巨大なケーキ。
そのどれもがあなたの子供心をくすぐった。
正気度が1d3だけ回復する。
1d3 (1D3) > 3
system : [ 天羽 セツ ] SAN : 83 → 86
こうして楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、3月の誕生日会は惜しまれつつも終わりを迎えた。
先生 : 「ちょっと、いいかしら」
近くに寄った職員が耳元で密かに囁いた。/
「なあに?せんせい」
先生 : 「こっち、来てもらえるかな?」
「…? うん」とてとてと先生について行きます
そのままあなたは職員によって手を引かれ、一室の前まで連れられるだろう。
連れられたのは施設の出入口近辺にある来客室の中だった。
そこには二人の見慣れない男女が長机を隔てた向こうで大人しく席についている。
一方は40代後半かそこらの几帳面そうな壮年で、もう一方は30代後半か40代前半ほどの家庭的な印象を感じさせる女性だった。
その二人はあなたが入って来た様子を確認すると、席からさっと立ち、やや緊張した様子で笑みを浮かべた。
新田文昭 : 「はじめまして。私の名前は新田文昭。隣にいるのは私の妻、千春だ。」
新田文昭 : 「今日は誕生日おめでとう。いい誕生日会を送れたかな」
「…はじめ…まして……」先生の後ろにちょっと隠れてます
職員は礼儀正しく一礼だけすると、新田夫妻、そしてあなたにそれぞれ座るよう促した。
その後、あなたへと向き直ると優しく言葉をかけるだろう。
先生 : 「セツくん。この方々はあなたのお父さんとお母さんになりたいって言ってくれている方々なの」
「おとうさんと、おかあさん…?」
千春はできるだけにこやかに笑って話しだす。しかし、その表情の節々や言葉の様子は将来を見据えた真剣さを感じるものだった。
新田千春 : 「急にそんなことを言われても困るわよね。でも、本当のことなのよ。」
新田千春 : 「私たち、ずっと子供に恵まれなくてね。それでも、息子や娘みたいな誰よりも大切にできる子がほしかったの。そんな時、ここのことを知って、あなたについて聞いたのよ」
文昭は小さく咳払う。
新田文昭 : 「…とはいえ、君には君の人生を決める権利がある。これはあくまで私たちからの提案に過ぎない。」
新田文昭 : 「ここでの生活が君にとってかけがえのないもので、離れがたいと感じるのであれば、私たちもそれを応援するだけだ。」
新田文昭 : 「どうか、よく考えて選択してほしい」
「……」困った様子で二人を見上げています
あなたが困惑の表情を浮かべれば、しばらくして職員はある一つの提案をする。
先生 : 「なにも今すぐ決めなくてもいいのよ!かなり大きな決断だもの。」
先生 : 「だから、少しの間、そうね。数か月、新田さんの家でお世話になるはどうかしら。その中で少しでも気になればここに戻ってくればいいわ。」
先生 : 「どうでしょうか。文昭さん、それに千春さん」
新田夫妻は快く頷く。
家族。それは夢にまでみた光景。あなたはその夢のチケットを手にしようとしていた。
その後、数十分の話し合いの末、来月からあなたは新田夫妻のもとで仮ではあるが、家族生活を送ることとなった。
期間は半年間。あなたはその準備を進めるだろう。
[2019年4月上旬]
時が経ちついに約束の日を迎える。
その日、あなたは朝早くに職員に起こされ、来客室で新田夫妻の到着を待ち侘びていた。
すると、じきに扉が開かれる。
しかし、そこから現れたのは新田夫妻ではなく、一度席を外していた職員の姿だった。
職員は両手で小さな小箱を大事そうに抱えており、それを目の前の机へと乗せた。
先生 : 「...セツくん、あなたにどうしても見せておきたいものがあるの。」
先生 : 「あなたの本当のお母さんに関わるものよ」
「ほんとうの、おかあさん?」
先生 : 「ええ、そうよ。」
職員が小箱を開くと、そこには一枚の紙きれと女性用と思われる質素な髪留めが入っていた。
先生 : 「これは今から八年前、セツくんをはじめて施設の前で見つけた時、近くに添えられていたものなの」
先生 : 「――多分、セツくんのお母さんのものだと思う。...ずっと隠していてごめんなさい。」
先生 : 「いつかこんな日が来た時のために、ずっと取っておいたの。よかったら受け取って」
「おかあさんの…」少し震える手で受け取ります
あなたが紙切れを受け取り広げてみれば、そこには乱雑に震えた文字が連なってあった。以下はその内容である。
〔紙きれ〕 : 私の大切なセツへ
ごめんなさい
わたしにはあなたを育てられない
天羽セツ、それがあなたの名前です
どうか、生きてください
ずっと遠いところであなたを見守っています
”天羽セツ”とは確かにあなたの名前だ。
あなたはここで職員によって、あなたの名前はこの紙きれに残されたメッセージから名付けられたことを知らされるだろう。
髪留めを手に取れば、それはひどく薄汚れており、金具の部分が壊れて開かなくなっていることが分かる。
そして、さらにその故障の原因を探れば、金具に人為的に付けられたひっかき傷のようなものがつけられていることも分かった。
そのひっかき傷はある六桁の数字を表しているようだ。以下はその内容である。
〔髪留め〕 : 837378
・〈コンピューター〉を要求
CCB<=1 【コンピューター】 (1D100<=1) > 78 > 失敗
「…おかあさん」ぎゅっと髪留めを握りしめます
しばらくすれば、ノック音が響く。そして、扉の向こうから文昭が現れた。
新田文昭 : 「待たせてすまなかった。それでは、さっそく行こうか。千春が早く連れてきて、とうるさくてな...」
「…はい、パパ」
こうして職員たちと多くの子供たちに見送られ、あなたは施設の門をくぐった。
新世界。
あなたにとっての世界観は今では過去のものとなり、逆に外で輝いている世界すべてがあなたの生きるべき場所だと告げている。
外には一台のコンパクトカー停められていた。文昭は後部座席へと促すと、そこにはきらきらと目を輝かせた千春があなたを待ちわびていた。
新田千春 : 「待っていたわよ!本当にこの日を楽しみにしていたの!楽しみにしすぎて昨日はよく眠れなかったんだけどね…うう、」
新田千春 : 「でも、セツを見たらすっかり元気になったわ。...あ、ごめんなさい。急にセツなんて呼んで。いきなり呼び捨ては馴れ馴れしいわよね...、―――ねえ、あなた! こういう時、くん付けで呼んだ方がいいのかしら!」
新田文昭 : 「千春、少し落ち着きなさい。すまないな。セツ。こいつはいつまで経っても子供なんだ」
新田千春 : 「ちょっとあなた!さりげなく呼び捨てにしたでしょう!」
二人の様子に少し笑みを浮かべて
「ううん。セツで、いいよ。……ママ」
新田千春 : 「きゃー、かわいい!よろしくね...セツ!ほら、わたしの隣に乗って、いらっしゃい!」わきゃわきゃ
新田文昭 : 「すまない、こいつはこうなるとずっとうるさい。...付き合ってあげてくれ。」
新田文昭 : 「車は、乗ったことがあるかな」
「うん。せんせいに乗せてもらったことあるよ」
新田文昭 : 「そうか、よかった。...なら乗り方はわかるな。」
新田文昭 : 「家まではここから2時間くらいだ。...少し長いが、辛抱してほしい」
言葉にならない声を出すテンション高めの千春を横目に、文昭は後部座席に導き、あなたに乗車を促した。
千春の隣に座ってシートベルトを締めます
新田千春 : 「わぁ、えらい!シートベルト、知ってるのね!」
「ちゃんとしめないと危ないよって、せんせいが言ってた」
新田千春 : 「そうね、その通りだわ!ちゃんとお勉強できてえらいねセツ、ちょっと長いけど、おうちまでドライブしようねー!」よしよしする勢い
車に揺られ二時間。窓から見える景色は徐々に自然的なものへと変わっていく。
そして、到着した場所は灯台をシンボルマークにぽつぽつと家屋が建てられた小さな町で、じきにその一軒の前へ車は停まった。
文昭は後部座席のドアを開くと、外へ出るように促すだろう。
新田文昭 : 「ほら、着いたぞセツ。ここが私たちの家だ。」
「わあ…!」
そして文昭はあなたを連れ、民家の扉を開ければ、中へと迎え入れる。
新田文昭 : 「改めて、今日からしばらくここが君の家だ。慣れないかもしれないが、ゆっくりしてほしい」
新田文昭 : 「長い旅路、ここまで疲れたろう。千春、悪いが茶を沸かしてもらえるか」
新田千春 : 「ええ、もちろん。...それに、朝から何も食べていないんじゃないかしら。すぐにお昼にするから少し待っていて!」
千春は一足早く、居間の方へと歩いていった。
見慣れない一軒家の中をきょろきょろしてます
「広い…」
新田文昭 : 「ああ、広さだけは立派な家だ」
新田文昭 : 「私たちはこれまでずっと、2人で暮らしてきたが...、なんというか、子供が欲しい気持ちもわかるものだ。」
新田文昭 : 「施設の子供を連れてくるのは難しいだろうが。...このあたりで友達が出来れば、連れてくればいい。」
「ともだち…」
「できる…かな…」
新田文昭 : 「ああ、セツ。君ならきっとできるさ。」
新田文昭 : 「出過ぎるようだが、私たちは、君がより良い人生を送れるように努力したいと願っているし、その苦労は惜しまないつもりだ。」
新田文昭 : 「...なにかあれば、すぐに相談すればいい。」
「…はい」
新田文昭 : 「セツ、着いてきてくれ。君の部屋を案内しよう」
「ボクのお部屋…!」ちょっとワクワクしながらついて行きます
文昭に着いていけば、広い家の一角、君にあてがわれた部屋があった。
それはいわゆる子供部屋のレイアウトで、かわいらしい雰囲気も混在しているように感じた。
ところどころにはあなたに価値観を合わせようとした努力や工夫が凝らされていることに気づくかもしれない。ここなら落ち着けそうだ。
新田文昭 : 「千春があの日から意気込んで部屋を作っていてな。...セツが気に入るようにと、工夫もしているみたいだ。」
「ひとりのお部屋…うれしい…!」
新田文昭 : 「ああ、施設では共同部屋だったのだな。...それならもしや...落ち着かないかもしれないな。」
新田文昭 : 「この近くには私の部屋や、千春の部屋もある。何かあれば、すぐに尋ねることだってできるさ。...ここは君の好きに使えばいい。」
「えへへ…ありがとう」
新田文昭 : 「気に入ってもらえたならよかった。きっと、千春も喜ぶだろう。―――さっきみたいにな。」
新田文昭 : 「さあ、そろそろご飯が出来たようだ。行こうか。」
「うん!」
それではあなたたちは、居間へと歩みを進めた。
――――――――
静なるテロリスタ
HO.童子個別導入
-1日目セーブ
2019.4.XX.
・自宅
――――――――
ほどなくして、あなたたちは居間へと集められる。
そこには海近くだからか魚介類を主とした料理が並べられており、誕生日会のものと遜色しないほどのごちそうだった。
新田千春 : 「あ、お二人ともいらっしゃい!」
新田千春 : 「お昼にしては少し豪華だと思うけど、はじめての三人でのお食事ですもの。腕によりをかけて作りました!」
「おさかな…いっぱい…!」
新田千春 : 「ふふっ、おいしそうでしょ!頑張って作ったんだから!」
新田千春 : 「ほらほら、セツもあなたも座って。早く食べましょう。」
新田文昭 : 「ああ、そうだな。頂くとしよう」
「はい…!」ごちそうに目をキラキラさせながら座ります
新田文昭 : 「それでは、手を合わせて。」
新田文昭 : 「いただきます」
「いただきます!」
二人はあなたの方をちらりと伺いながら、食事を始めた。
あなたが目の前の食事に手を付ければ、それらは施設での食事を凌駕するほどに美味に感じた。どうやら、料理の腕は確かなようだ。
「ん、おいしい…!!」もぐもぐ
新田文昭 : 「ああ、遠慮せずに食べてくれ。千春の料理は絶品なんだ」
一家での初めての食事は進み、皆が箸を置いたとき。文昭は一つの包みを手渡した。
新田文昭 : 「...それと、これは私からの少しばかりの気持ちだ。」
新田文昭 : 「誕生日会では、セツにプレゼントも用意できなかったからな」
「…? あけていい?」
新田文昭 : 「ああ、開けてくれ」
その言葉に応えるようにあなたが包みを開けてみれば、そこには小ぶりな地球儀が入っていた。
新田文昭 : 「私はこう見えてもイタリア出身でね。親に連れまわされて色々な世界を見て回ってきた」
「いたりあ…!」
新田文昭 : 「ああ、そうだ。私たちの住まう地、日本からは遥かに遠く、海のさらに先の先。」
新田文昭 : 「だからこそ、私はこの世界の広さを知っている」
新田文昭 : 「...この世界は広い。―――君は今までずっとあの施設で育ってきたのだから、そんなことを考える暇もなかったろう。」
「せかいって、広いの?どんなところ?」
新田文昭 : 「世界は、...此処ではない場所全てだ。施設から我が家までの道のりですら君には長かっただろう。しかし、それだけでは世界は語れやしない」
新田文昭 : 「もっと、もっと広く、多様な景色が、この星には存在しているんだ。」
「…?? えっと、ちょっと…むずかしい、かも」
新田文昭 : 「ははっ、...少しまだ、難しかったか。」少し表情を崩した
新田千春 : 「...彼が言いたいのは多分、この世界は広いから、これから色々な人に出会えて、色々な夢が見れる、ってことよ。―――たぶん!」
新田千春 : 「.....私も勉強はできないから、難しいことはよくわからないけどね」
「ゆめ…」
「…うん。ボク、せかいのこともっと知りたい」
新田文昭 : 「きっと、君に見える”世界”はいままで、あの施設に限られていた」
新田文昭 : 「君は今こうして我が家で食卓を囲んでいる。君はどこへだって行けるし、好きなことを叶えられる」
新田文昭 : 「そして私たちは、その手伝いをさせてほしいと思っている。―――まあ、その地球儀はそういったことの予習のための道具と考えてくれ。......気に入ってくれたなら、いいのだが」
地球儀を眺めながら、
「ありがとう、パパ」
新田文昭 : 「ああ。よかったら、大切にしてくれ」
新田千春 : 「ふふっ、よかったねセツ!...さすがの私でも、国くらいならわかるよ?今度教えてあげようかー?」
「うん!あ、でもね、ボクいたりあは分かるよ」
新田千春 : 「え、本当に!?...すごいじゃない!」
「本で読んだから。きれーなところ!」
新田文昭 : 「そうだな。イタリアは...美しい所だ」
新田千春 : 「......この子私よりえらいかも、どうしよう。...ううん、勉強のことならパパに教えてもらいなさい。私は、お裁縫とか料理なら...教えれるかな?」むむむ、と考え込んだ
「ボク、お料理もやりたい…!」
「お料理できると、もてる?って言われた…!」
新田千春 : 「え。どこで聞いたの?そんなこと。―――まあ、確かに一理あるわね...人の心は...胃袋から?」
新田文昭 : 「さてな。」
新田文昭 : 「さあ、皆での食事も終えたことだ。...きっと各々することもあるだろうし、団欒はこのくらいにしよう」
この日を以て、あなたの見る世界は一変したのだった。
それから半年間、あなたは新田家の一員として過ごすだろう。
その間、職員が何度か新田家を訪ねてきたこともあり、不安を感じるようなこともなくなっていった。
新田家での日々、それは今まで独りだったあなたにとっては感じたことのない刺激の連続だった。
しかし、一日、また一日と過ぎていくごとにその日々は他愛のない日常へと塗り替わっていく。
新田文昭は何者よりも真面目で論理的な思考を持つ。
だが、あなたに対してはあの千春よりも甘く、何かをねだって断れたことは一度もなかった。
特に贈った地球儀をあなたが大事に扱っているのが分かれば、誰に向けるでもない優しい笑みを浮かべるのだ。
新田千春は感情的かつ行動力が非常に高いことから、何かと暴走しがちである。
しかし、それらはすべてあなたのために起こした行動だということは誰でも理解できた。
また、料理の腕は抜群で、文昭だけでなくあなたもしっかりと胃袋を掴まれてしまっている。
あなたがこの半年間で見つけたものの数々はそんな他愛もないことの連続だった。
しかし、それでも肉親の温さを知らないあなたにとって、その当たり前こそが輝いて見えることもあった。
いつの日か、そういった当たり前のことが何よりも美しく、それをできるだけ継続させることに大人は責務を感じるのだと、文昭は語った。
[2019年10月10日]
施設を出て半年が経過する。
あなたはこの日、このまま新田家の子供として生きていくか、児童養護施設の仲間たちの元へと戻るか、決めなくてはならなかった。
朝、目を覚ますと新田夫妻は最初に出会った時と同じようにやや緊張した様子であなたへと接する。
新田千春 : 「お、おはよう!...えっと、今すぐ答えなくていいのよ。晩御飯を食べ終わった後にでも、聞かせてくれるかしら」
新田文昭 : 「そうだな。よく考え、君にとって最善の選択をしてくれればいい。」
新田文昭 : 「どう選択したとしても、決して君のことを責めたりはしない。セツが少しでも幸せに暮らせる道を、私たちは望んでいる」
「……あのね、ボク…施設のせんせいも、ともだちも大好き」
「みんなボクに優しくして、いっしょに遊んでくれるんだ」
「でも――パパとママのことも、大好き」
「このおうちに来て、ボクはたくさんのことを知れたんだ」
「だからね。ボク、もっとパパとママにいろんなことを教えてほしいの」
「せかいって、広いんだよね?」
新田文昭 : 「世界は、綺麗だ。素晴らしいものに満ちているさ」
新田文昭 : 「君が今日の終わり、まだその様に思ってくれているなら。...私たちは心血を注いで、君が新しい世界を拓く、その手助けをしたい。...そう、思っているよ」
「うん!えへへ」
その様な会話を交わせば、あなたはいつも通りの日常を送ることになる。
自室に戻り、椅子に座る。半年間も過ごしたこの部屋は、すっかりあなた色の雰囲気に染まっていた。
あなたたちにとって、極めて重要な意味を持つこの1日の昼。あなたはどのように過ごしているだろうか。/
「……みんなにお手紙、書こうかなあ」
机の引き出しにしまってあったレターセットと鉛筆を取り出します
「えっと…なんて書こうかな」うーん、と唸りながら鉛筆を走らせます
「………うん!あ、これもお手紙に入れよう」
パパにもらったイタリアの風景の絵葉書を一緒に封筒に入れます。
「えへへ。……せっかくだから、パパとママにもお手紙書こうかな」
再び鉛筆を手に取り、時間が過ぎていきます。
あなたは手紙をしたためれば、すぐに夫妻に切手を貰いに行く。2人はいつも通り、あなたの願いをすぐに聞き入れた。
夫妻が不思議そうに、それでもどこか感慨深そうにあなたを見るのを横目に、ぺたりと切手を貼付したあなたは、近くのポストへ投函しに向かうことだろう。
冬が近づく季節、乾いた風がそっと、肌をなぞった。
「……みんなにも、また会えるといいな」
少し背伸びをしてポストに手紙を投函します
そうすれば、確かにカランと封筒が落ちる音がします。
辺りを見れば、少しずつ日は傾いていました。どうやら手紙を書いているうちに、それなりの時間が経っていたようだ。
あなたは夕飯に遅れないよう、足早にその場を去った。
千春が振舞った晩御飯はやはりごちそうだった。
しかし、当の千春はいつものように無暗に騒ぐようなことはしなかったため、少し静かな夕食となった。
それからしばらくし、三人が箸を置けば、文昭は早速切り出した。
新田文昭 : 「...さて、君の考えを聞かせてもらえるだろうか。今朝から、考えることは変わったか。」
新田文昭 : 「くどいようだが、君は君の選択を尊重してくれ。」
「…ボク、ふたりにお手紙書いたんだ」
二人に一つずつ封筒を差し出します。
新田千春 : 「...お手紙書いてくれたの!......嬉しいわ、ありがとう。」
新田文昭 : 「手紙か、...まさか、私たち宛にもあるとはな。全く、嬉しい限りだ」
新田文昭 : 「読んでもいいか」
「うん!」
新田千春 : 「ありがとう。それじゃあ―――」
二人は封を切り、手紙を読み始めた。ぱらり、紙の擦れる音が居間に響く。
天羽 セツ :
『パパへ
パパはいつもボクにいろんなことを教えてくれます。
ボクが知らない景色のこと、食べ物のこと、人のこと。
パパのお話を聞くとき、ボクはいつもワクワクします。
ボクはまだおとなじゃないからわかんないこともあるけど、パパはおこらないでやさしく話してくれるからうれしいです。
パパが教えてくれたことを、いつかボクも自分で見てみたいな。
せかいは広いって、教えてくれてありがとう。
これからも、よろしくね。
セツより』
『ママへ
ママはお料理もおさいほうもとっても上手です。
ママの作るごはんはすごくおいしくて、いつもごはんの時間が楽しみです。
でも、ママの一番好きなところはいつも明るくえがおでいてくれるところです。
ボクがお料理をしっぱいしても、ニコニコしながら食べてくれます。
悲しいことがあってもママといっしょにいると、なんだか元気になってきます。
ボクもいつかママみたいにたくさんの人をえがおにできるおとなになりたいな。
いつも”大好き”って言ってくれて、ありがとう。
これからも、よろしくね、
セツより』
夫妻は、その手紙を読む。
暫くすれば、文昭は何かを噛み締めるような表情を浮かべ、千春の頬には涙が伝っていることに気がつくだろう。
新田文昭 : 「....これが、君のこの半年間の。」
「ボク、パパとママと…もっといっしょにいたいな」
「いい…かな?」
あなたがそう告げれば、新田夫妻の重くのしかかった肩の荷がすとんと落ちたような音を聞いた気がした。
千春は潤んだ瞳はそのままに、温かくあなたへと抱きつくだろう。
新田千春 : 「...セツ、本当にありがとう。――絶対に、後悔なんてさせないわ。」
文昭も優しくあなたの頭を撫でる。そして、柔和な笑みを浮かべた。
新田文昭 : 「...私たちは君を、...幸せにすることができるんだな」
新田文昭 : 「私たちを選んでくれてありがとう。...明日、施設には私から連絡を入れておこう」
二人にぎゅっと抱きついて、幸せそうにしています
「…ありがとう。ボクの家族になってくれて」
あなたがそう零せば、あなたを包む千春の腕の力に、ぎゅっと力が籠った気がした。
そのまま、家族で過ごす幸せな時間が流れる。
しばらく団欒を楽しんでいると、文昭は時間を確認する。そして、千春と顔を見合わせた。
新田文昭 : 「もう、こんな時間か。少し、休もうか。―――これから忙しくなるだろうからな」
新田千春 : 「そうね。セツもお布団に入りましょう。...あ、その前にちゃんとお風呂に入って歯も磨くのよ!」
「はーい!」
あなたは支度を済ませ、布団に入る。布団の暖かい感触が身を包む。
あなたが布団に入れば、その日瞼はやけにすんなりと落ちた。
布団の柔らかな温もりが、より睡眠欲を刺激する。
そういえば、久しく夢を見ていない。あの頭痛と共に訪れるフラッシュバックはもうあなたにとって不要な光景となったのだろうか。
そんな曖昧なことをぐるぐると考えているうち、次第に眠りへと落ちていく。
あなたは夢を見る。以下はその内容である。
波の音。海鳥の鳴き声。夕日に照らされた水平線。二人の男女はそれを真っすぐ見つめている。
『…綺麗ね』
『あぁ、でも、俺たちにとっては見慣れた海だろ』
二人は互いの距離を縮めていく。
『…なあ、あの海を越えて俺と逃げないか』
『無理よ。ここからは決して逃げられない』
『この地中海を渡るだけなら何とかなる!...それからだったら、どこへだって俺たちなら逃げられるはずだ』
ふと女が男の言葉を遮る。
『やめて。お腹の子だっている。危険なことはできない。...それに、とてもこの状況を放置して逃げらない。分かっているでしょ。何か良くないことが起きるって』
『…まったく、君には敵わないな』
『先に行って。私もすぐに行くから』
男は名残惜しそうにその場を立ち上がる。
『分かった。すまない』
『ありがとう。嬉しかったわ。きっと、この子だけでも幸せにしてみせる』
雷の走る音。
あなたは仄かな頭痛と共に瞼を上げる。
視界に入るのは当然、寝室の天井のはず。
しかし、その雷鳴に照らされた現実は想像だにしないものだった。
それは黒く広がる大海。波が岩礁に残酷に叩きつけられる音が一定の間隔で響いている。
そして、はるか頭上では黒く滲んだ雲が青白く嘶き、ぽかりと空いた雲の切れ目から見事な満月がこちらを見下ろしていた。
新田文昭 : 「...おお。目を覚ましたのか。おはよう、セツ」
背後から聞こえた声は文昭のもので間違いなかった。
しかし、身体を動かそうにも、鉄柵に繋がれた鎖で四肢の節々を縛られ、ぴくりとも動かすことはできない。
新田千春 : 「いけないわ!無理して身体を動かす必要はないのよ」
千春の声が聞こえたかと思えば、二人分の影が死角から姿を現し、稲光と共にその正体が明らかになる。
新田文昭に新田千春。二人は鎖できつく拘束されたあなたを見下ろしていた。
「…パパ?ママ?」
新田文昭 : 「...この灯台は、我々にとって象徴的な存在だ。」
新田文昭 : 「だが、皆が頼りにしているのはこの灯台から発せられる光だけで、実際に立ち入る人間はそう多くない。」
新田文昭 : 「しかし、今こうして私たちが立っているこの場所こそ、これから行うことにもっとも必要な要素なのだ」
そう文昭は一方的に告げると、懐から錆びついたナイフを取り出し、
あなたの肩口に勢いよく突き刺した。
あなたから発せられた赤色が鉄柵を汚していく。
・〈CON×5〉ロールを要求します。
CCB<=7*5 【CON × 5】 (1D100<=35) > 61 > 失敗
1d6の耐久力減少を与えます。
1d6 (1D6) > 3
system : [ 天羽 セツ ] HP : 6 → 3
CCB<=7*5 【CON × 5】 (1D100<=35) > 66 > 失敗
1/1d3の正気度ロールが発生する。
1d100<=86 【SAN値チェック】 (1D100<=86) > 82 > 成功
system : [ 天羽 セツ ] SAN : 86 → 85
「ぁ…ぅ……なん、で」
「ボク…の、こと、キライに…なった……?」
新田文昭 : 「そんなことはない」
新田文昭 : 「辛抱してくれ。君の幸せには必要なことなんだ」
一瞬のうちに激痛を受けたあなたの虚弱な身体と意識は、それに耐えきることが出来ずに瓦解する。
視界は一挙に暗黒に転じる。その言葉を最後に、瞼は閉じられる。
SCCB (1D100) > 100
1d3をロールしてください。
1d3 (1D3) > 3
そこで、瞼は閉じられる、―――はずだった。
苦痛から解放される唯一の方法でさえ、彼らは君から奪うのだった。
次に目を覚ませば傷口には半端な治療が施されている。再び君は、意識を取り戻したのだった。
system : [ 天羽 セツ ] HP : 3 → 6
新田千春 : 「よかった、目が覚めたみたい」
新田千春 : 「ごめんね、セツ。....もう少し、もう少しだけ、我慢してね?」
「っ、あ…? や、だ……いたい、の」
新田千春 : 「ほら、あなた!あんまり長いとセツが痛がっちゃう、ほら、はやく。」
二度目の刺突。
文昭はナイフについた血を拭い、次は逆の肩口に突き刺した。
・〈CON×4〉を要求します。
CCB<=7*4 【CON × 4】 (1D100<=28) > 1 > 決定的成功/スペシャル
1点だけ、耐久力減少を与えます。
また、1/1d4の正気度ロールが発生する。
1d100<=85 【SAN値チェック】 (1D100<=85) > 41 > 成功
system : [ 天羽 セツ ] SAN : 85 → 84
system : [ 天羽 セツ ] HP : 6 → 5
「いっ…!!っあ……、ごめん、なさい…!」
新田文昭 : 「何を謝る必要があるんだ。君は悪くない。もう少し、もう少しだ」
新田文昭 : 「千春、早く。」
千春はあなたから噴き出た血を雑巾で拭う。そして、要領よく足下に置かれたバケツへと入れていく。
新田千春 : 「頑張って。私たちはセツを愛してるの。本当よ」
新田文昭 : 「君はまだ、8歳だ。きっと私たちがすることの意味は理解できないだろう」
新田文昭 : 「...だが、これは確かに君のためなのだ。―――耐えてくれ、”行くぞ”。」
三度目の刺突。
膝に勢いよくナイフが突き刺さり、刃と骨が擦れる音をリアルに感じ取る。
・〈CON×3〉を要求します。
CCB<=7*3 【CON × 3】 (1D100<=21) > 48 > 失敗
1d6の耐久力減少を与えます。
1d6 (1D6) > 4
system : [ 天羽 セツ ] HP : 5 → 1
1d3/1d6の正気度ロールが発生する。
1d100<=84 【SAN値チェック】 (1D100<=84) > 62 > 成功
1d3 (1D3) > 3
system : [ 天羽 セツ ] SAN : 84 → 81
1d3 (1D3) > 3
system : [ 天羽 セツ ] HP : 1 → 4
意識がかすむ中、瞼をもたげれば、心配そうに顔をのぞきこむ新田夫妻の姿があった。
新田千春 : 「ありがとうね。セツ。もうすぐよ。もうすぐ私たちの願いが叶うわ」
新田文昭 : 「その通りだ。ありがとう。セツ。きっと、これから起こることを知れば、我々の正しさが分かるはずだ」
文昭は底が血に塗れたバケツを抱えると、無遠慮に指を突っ込みその血を舐めとった。
新田文昭 : 「変わった臭いだな。...だが、いい臭いだ。きっと、あの方も満足してくださるに違いない」
二人は顔を見合わせて頷くと、奇妙な動作と共に呪文めいた詠唱らしき文言を紡ぎはじめる。何を言っているのかすら、同じ言語なのかどうかも判別は難しい。
だが、その文言が進む度に空の色は紫色に変色しはじめ、雷の勢いはより強まっていった。
視界は白く染まる。
ひと際大きい雷鳴が収まったかと思えば、目の前に現れたのは一人の老人だった。
老人は仄暗いローブを身に纏い、深い眼でこちらを見つめている。
その姿は一見して年老いた浮浪者のようにも見えたが、その常軌を逸した、とも表現できるほどの独特な存在感から同じ人の身でないことはすぐに理解できた。
繧ソ繧ヲ繧」繝ォ?昴い繝医?繧ヲ繝?繝ォ : 「汝、我を呼んだか」
新田夫妻はその場で跪く。
文昭は涙を垂れ流し、千春は絶頂前の生娘のように身体を小刻みに震わせている。
新田文昭 : 「...なんということだ。遂に使命を果たしたのだ!...そうです、その通りです!私たちこそ貴方様の僕でございます」
老人は冷たく告げる。
繧ソ繧ヲ繧」繝ォ?昴い繝医?繧ヲ繝?繝ォ : 「贄を」
新田夫妻はハッとした様子であなたの方へ振り返る。
新田千春 : 「セツ。これはとっても幸福なことなのよ。...あなたの魂は、遠い神様のところに送られるの」
新田文昭 : 「あぁ、神の一部となり見たこともない世界へと旅立てる。一生かけても辿りつけない叡智を体験できるのだ」
「しあ、わせ…?せか…い?」
新田文昭 : 「ああ、確かに君と約束した筈だ。......君に、”世界”を見せてやる、と。」
新田文昭 : 「つまらない此処など捨てて、本当の幸せを掴んでくれ。...君には、その権利があるのだ」
「せかい、見るのって…こんなに、いたいの?」
新田千春 : 「ごめんなさい、痛いわよね。...でも、”大好き”なセツに、私たちは素晴らしい世界を見て欲しいの。向こうにはもっともっと、素敵な場所が待ってるわ。」
新田文昭 : 「そうだ、悲しむんじゃない、セツ。今日は、素晴らしい日になるんだ。私たちは家族となり、セツは素晴らしき、新世界へと旅立つ。...至高の幸福を、君は手にできるんだ。」
「……おかあ、さん、おとう…さん」
「たす、けて」
あなたの悲痛な魂の叫びは、空を切る。
新田千春 : 「...えぇ、ええ。こんな日が本当に訪れるなんて。」
新田千春 : 「これで私たちにも子供ができるのね...」
しかし、それを聞いた文昭は今までの冷静な態度を一変させ、残酷なほど冷たい眼差しを千春へと向けた。
新田文昭 : 「...何を、言っているんだ」
千春は思わぬ返答が聞こえたからか、文昭の袖を強く引く。だが、文昭の眼は冷たいまま千春を見下している。
新田千春 : 「...何って......。最初から約束していたじゃない!願いは、私たちの子供のはずでしょ!?」
新田文昭 : 「子供ならもうセツがいるだろう。それに、あの御身を目の当たりにしても、まだ私情に走るのか」
新田千春 : 「馬鹿なこと言わないで!今まで何人もこの日のために殺してきたじゃない!...無駄になんか、できるわけない!」
新田文昭 : 「だから、お前は...」
新田千春 : 「それにあなただってずっとこの日を…」
新田文昭 : 「黙れ!」
一閃。
文昭の強く握ったナイフは千春の首元をなぞるように引き裂いた。
喉元から鮮血が噴水のように吹き出し、文昭の半身を濡らしていく。
1/1d4の正気度ロールが発生する。
1d100<=81 【SAN値チェック】 (1D100<=81) > 89 > 失敗
1d4 (1D4) > 2
system : [ 天羽 セツ ] SAN : 81 → 79
千春は力なく崩れ去る。
しかし、文昭はそれを受け止めるでもなく、ふらふらとあなたの前へと歩み寄った。
新田文昭 : 「見苦しいところを見せてしまったな。すまない。...知っての通り、私の妻は少し取り乱しやすい性格なんだ」
「あ、ああ…!!!!」
「なん、で……やだ、やだぁ…!!!」
老人は目前の惨劇に一切反応を示すことはない。ただ、機械のような語調でまたも冷たく告げる。
繧ソ繧ヲ繧」繝ォ?昴い繝医?繧ヲ繝?繝ォ : 「贄を、捧げろ」
その老人は鎖に縛り付けられた血塗れのあなたのことを指したのか、または喉を引き裂かれ瀕死の千春を指しているのか。それはまったく不明瞭だった。
ただ、何者かの命を絶つことを文昭に強要しているように見えた。
新田文昭 : 「千春は贄として相応しくない。この私が君を神のみもとへ送ってあげよう。」
新田文昭 : 「分かってくれるね」
「あ…ぁ、ごめん、なさい。ごめん…なさい、」
「しあわせ、に…なりたくて、ごめん、なさい」
新田文昭 : 「―――、」
文昭は使い古され、赤黒くなったナイフを振りかざす。
そして、その切っ先をあなたの心臓へ突き立てるべく、迷うことなく振り下ろした。
瞬間、断末魔が響く。
恐る恐る目を開けば、そこにはひどく怯えた様子で震える文昭が佇んでいた。
そして、辺りを確認すれば、すぐにその異常を感じ取ることができた。
目にした物体のすべては瞬きの内に、完全に、そう、一分の乱れもなく停止していたのだ。
それはほとんど比喩表現ではなかった。
それは物理的活動を行うほぼすべての物体に該当しており、荒狂っていた波のうねり、天から降り注いだ青白い稲妻、千春の喉から零れ落ちる血液の流動、そのすべてが静止画の中の出来事のように動きを完全に止めていたのだ。
だが、いくつか例外を挙げるとすれば、この場にいる文昭とフードの老人、そしてあなただけは常識的な物理的法則に則って動いている。
まるで、自分たちの方が完全な世界に紛れ込んだ場違いなバグのように。
1/1d4の正気度ロールが発生する。
1d100<=79 【SAN値チェック】 (1D100<=79) > 55 > 成功
system : [ 天羽 セツ ] SAN : 79 → 78
「……え? な、に?」
しかし、文昭の恐慌の対象はこの世界の異常のみでなく、あなたの背後に対しても向けられているようだった。
文昭は握りしめたナイフをあなたの背後へ向けている。
新田文昭 : 「な、何だお前は...。いつからそこにいた!?」
その時、ふとあなたの背後から朧げな黒い煙のような何かが湧き上がったかと思えば、形ともいえない曖昧な塊が浮かぶ。
その塊は徐々に巨大な人の輪郭を形成していった。
だが、その節々はキュービズム絵画を彷彿とさせるように角ばっており、その造形は劇的に変化し続ける。
次元や常識をはるかに超越する歪に捻じ曲がった理外の存在。そう表現する他なかった。
1d2/1d12の正気度ロールが発生する。
1d100<=78 【SAN値チェック】 (1D100<=78) > 93 > 失敗
1d12 (1D12) > 11
system : [ 天羽 セツ ] SAN : 78 → 67
「――――ッ、」
新田文昭 : 「一体何なんだ、お前がっ...お前がこいつを呼んだのか!」
文昭は震える手でナイフを改めて握りしめる。
そして、あなたへと襲いかかった。
だが、振り下ろされたナイフの切っ先は二度とあなたの肌に触れることはなかった。
怪物は大木のような腕を伸ばし、文昭の上半身をたやすく薙ぎ払う。
その凄まじい衝撃は背後の鉄柵を破壊するほどで、あなたは強く前方へ投げ出された。
そして、次に顔を上げてみれば、そこには空中に固定されたまま動かない文昭の上半身があった。
そこから滴り落ちていたであろう血潮の粒は一種の近代芸術のように完全に静止している。
1d2/1d4の正気度ロールが発生する。
1d100<=67 【SAN値チェック】 (1D100<=67) > 51 > 成功
1d2 (1D2) > 1
system : [ 天羽 セツ ] SAN : 67 → 66
「ひッ…!!あ、あぁ……!!!」
その後、怪物は一連の破壊行為に満足したのか、その顔とも取れない頭部をこちらへと向けてくる。
そして、しばらく沈黙が続いた後、またもどこからか黒い煙が噴き出してくる。
じきにその黒ずんだ瘴気に溶け込むようにして、目の前の怪物は消えていった。
次に辺りを見回した時、あのフードの老人も姿を消していた。
そして、あなたは気づいてしまう。
あなたはたった一人、
この静止した世界に取り残されたのだと。
「……ひっく、う、ぁあ……!!」
その場でへたりこんで泣きじゃくります
[2019年10月10日]
あの日からどれだけの時が経ったのだろうか。
いや、まったく時など進んでいないのだ。
ある時、眠気に促されて眠りにつく。
しかし、次に目を覚ましたところで朝日は見えず、同じ色の夜が延々と繰り返されている。
気まぐれに人々に声をかけてみたこともあったかもしれない。
しかし、完全に静止した人々は声を返すどころか、瞬き一つ反応を示さない。
例えその人物がどれだけ親しく感じられたとしても、もはやよくできた人形か、ただの死体と変わりなかった。
0/1の正気度ロールが発生する。
1d100<=66 【SAN値チェック】 (1D100<=66) > 83 > 失敗
system : [ 天羽 セツ ] SAN : 66 → 65
「……今日も、ボクだけだ」
[2019年10月10日]
体感で一か月は経過しただろうか。
だが、2019年10月10日23時32分59秒は未だに繰り返されている。
じきに身の回りの食糧は尽きていく。
しかし、この世界においては経済も法律も存在しない。
どこかの民家や商店から何かを盗んだとしても、誰も咎める者はいなかった。
はじめは罪悪感の伴う行為だったかもしれない。
だが、さらに時が経つにつれ、それはこの世界で生き残るための唯一の方法へと変わっていく。
そんな常識の変化があなたの精神を蝕んでいった。
1/1d3の正気度ロールが発生する。
1d100<=65 【SAN値チェック】 (1D100<=65) > 17 > 成功
system : [ 天羽 セツ ] SAN : 65 → 64
「……ボクの、ボクだけのせかい」
[20■9年1■月10日]
ここしばらく気づいたことがあった。
それはこの世界ではまったく歳をとることはない、ということだ。
体感でおよそ三百日以上は経過しただろうか。
しかし、身長や体重を筆頭とした身体的な特徴は、一切変わる兆しもなく、ただ精神だけが老いていく。
食欲や便意、睡眠欲もある。乱れた生活習慣のせいで熱にうなされたこともあった。
だが、そういった経験が成長の糧になっている様子もない。
しかし、そんな医学的な疑念より先に、永久にこの世界に取り残されるのかもしれないという絶望が身を包むだろう。
1/1d4の正気度ロールが発生する。
1d100<=64 【SAN値チェック】 (1D100<=64) > 77 > 失敗
1d4 (1D4) > 3
system : [ 天羽 セツ ] SAN : 64 → 61
「……ふふ、あはは。ボクがこの世界の主役なんだ」
[2■■9年1■月1■日]
日による記録をつけていれば、もう数年はこの世界が静止していることが分かった。
今まで子供らしく大声で泣いた日もあるかもしれない。助けを求めて、あてもなく彷徨い続けた日があるかもしれない。
だが、この完全なる無音こそが与えられたもののすべてだった。
ふと鏡を見てみると、身体にある変化が訪れていた。
それは髪が白く染まったり、目元に濃い隈が浮かび上がったり、尋常でない変化。
その現象は加齢の影響ではなく、明らかに精神的な影響が色濃くにじみ出ていた。
1/1d6の正気度ロールが発生する。
1d100<=61 【SAN値チェック】 (1D100<=61) > 13 > 成功
system : [ 天羽 セツ ] SAN : 61 → 60
「…ボク、は」
[■■■■年■■月■■日]
この世界に長くいると、肉体が未成熟にも関わらず、様々な知識だけが身についていく。
それは一般常識や専門的な学問のみならず、あの新田夫妻が追い求めていた黒魔術についても含まれていた。
“ヨグ=ソトースの招来”。
文昭の書斎には小難しい本がたくさん並べられていたが、ひと際厳重に管理された古めかしい本にその記載はあった。
石造りの建物。そして、生贄。いつかの文昭が言った通り、それらは神を呼び出すために必要なものだった。
ただ、生贄に関しては未成熟な子供を好むだとか、孤児でなくてはならないといった記述は見当たらない。
ただ新田夫妻は本心から生贄に捧げられることが幸福だと考えており、我が子とも言えるあなたを儀式に使おうとしたのだ。
あなたは数十年越しに新田夫妻の狂気を知った。
〈クトゥルフ神話〉に2d6の成長チェックが発生する。
また、1d4/1d10の正気度ロールが発生する。
2d6 (2D6) > 6[2,4] > 6
1d100<=60 【SAN値チェック】 (1D100<=60) > 15 > 成功
1d4 (1D4) > 3
system : [ 天羽 セツ ] SAN : 60 → 57
あなたは呪文「ヨグ=ソトースの招来」を習得する。以下はその内容である。
〔ヨグ=ソトースの招来〕 : ヨグ=ソトース
全なる神、外なる虚空の闇、門にして鍵とも呼ばれる存在。
石造りの建築物にヨグ=ソトースをただちに呼び寄せる。ただし、その建築物は野外になければならず、日光、または月光が見えていなければならない。
呪文の使い手は1d10正気度ポイントと任意の値のマジック・ポイントのコストがかかる。そして、この呪文の成功率は消費したマジック・ポイント×10%となる。
また、呪文をかける度に召喚されるヨグ=ソトースの使者に生贄を捧げなければならない。
生贄は人間でなくてはならず、死体にしてから差し出さなければならない。
「……幸せって、なんだっけ」
[■■■■■■■■■■■]
世界のいくつかの場所には無響室というものがあって、ギネスに登録されたものだと入ってから一時間もしないうちに気が狂ってしまうのだそうだ。
しかし、あなたはすでにおよそ百年間をこの脱出不能な無響室に閉じ込められてしまっている。
もはや正常であることを正常であると認められない。
意識が遠のく。身体的な変化も顕著になってきた。
不老はあっても不死はない。己の魂が死んでいく様がやけに鮮明に理解できた。
1d6/1d12の正気度ロールが発生する。
1d100<=57 【SAN値チェック】 (1D100<=57) > 62 > 失敗
1d12 (1D12) > 6
system : [ 天羽 セツ ] SAN : 57 → 51
「…………」
「...ちょっと...ちょっと、そこの君!」
人の声、だろうか。だが、百年ぶりに聞く人の声はあまりに現実味がなく、幻聴と片付けても違和感はない。
次の瞬間、あなたの身体は何者かによって力強く抱きかかえられた。
曇った視界でその正体を判別することは難しい。
だが、かけられた言葉の色と細い身体つきで女性だということは辛うじて分かった。
身を寄せた褐色の肌から小麦のようなどこか安心する匂いが漂ってきている。
しかし、もはや言葉を返す余力は残っていない。
褐色の女性 : 「動いている…、それに生きてもいる……」
褐色の女性 : 「まさか、ずっと一人で動き続けていたのか!なんて残酷な......」
その女性の左肩を見てみれば、大きく包帯が巻かれている。
しかし、何重かの包帯越しにも、そこに青紫色に縁どられた黒ずんだ穴が空いていることが分かった。
血は出ていないようだが、痛々しくも肉が抉られている。
褐色の女性 : 「...すまない、私じゃ君を救えない。だが、安心してくれ。」
褐色の女性 : 「きっと、すぐに君はこの世界から解放されるはずだ」
「……キミは、死神?それとも天使?」
褐色の女性 : 「私は、...天使みたいにキュートだぞ?」
彼女の声を聴く。ふと、急激に身体が重くなっていくのを感じた。
その感覚は精神の摩耗によるものではなく、全身に巡る時間が鈍化しているのだと分かった。
女性はその様子を見てわずかに微笑む。
褐色の女性 : 「…よかった、あいつもやればできるじゃないか」
褐色の女性 : 「この百年間が現実か空想か判断するのは君自身。」
褐色の女性 : 「空想だと思うなら、きっぱり悪い夢だったと忘れて好きな人生を生きればいい。」
褐色の女性 : 「だが、現実だと思うなら―――」
褐色の女性 : 「地中海。ミラノ。大時計。この言葉を忘れるな。きっと、そこに君の謎を解くヒントがあるはずだ」
視界の霧が晴れていく。
その女性は晴れ晴れとした笑顔を浮かべていた。
だが、その刹那。彼女の左肩がキュービズム絵画のように部分的に拡大し、すぐに戻ったのを見た。まるで、あの怪物のように。
そして、それを見た直後、あなたの動きは完全に周囲へと同化した。
褐色の女性 : 「さようなら。君の健闘を心から祈っている」
[2019年10月中旬]
あなたは目を覚ます。
そこは見知らぬベッドの上だった。
さらに、人々の足音。風が窓を叩く音。一定周期で鳴り続ける機械音。
その音たちが耳の中で弾ける度、現実世界へ戻ってきたのだという溢れんばかりの安堵感に繋がった。
そして、すぐに慌てた様子をした医師が何人かの看護師を引き連れてあなたの前へと現れる。そこで、今までの状況を知らされることとなるだろう。
10月10日深夜二十四時前、あなたは意識不明の状態でこの病院の前で見つかったそうだ。
その後、一週間近く寝たきりだったらしく、検査の結果、ひどい栄養失調が認められた。しばらくは安静にするよう釘を刺される。
次に、児童養護施設の職員がこの場へと駆けつける。
職員はあなたを抱きしめる。
先生 : 「......セツくん!」
先生 : 「ごめんなさい、先生...!辛かったでしょう、苦しかったでしょう。...ごめん、ごめんね...、」
「……先生」
「…ううん。ボクが、悪いから」
先生 : 「そんなことないよ、セツくん。無理しないで、本当に、ごめんなさい...」
先生 : 「もうこれからは、先生とみんなが味方でいるからね。......一緒に居ましょう、これからも。」
「…うん。ボクの味方は、先生とみんなだけだから」
先生 : 「そうだよ、...これからも、ずっと私たちは―――」
先生が涙で言葉を詰まらせる。百年前は感じることのなかった、”大切に思われている”、そんな実感が駆け巡る。
「――そう。あんな大人を信用した、ボクが間違ってたんだ」
そしてその後、あなたには新田夫妻について語られた。
新田夫妻はあなたが病院で保護された翌日、あの灯台で無惨な死体となって発見されたことが分かった。
一時は通り魔による犯行かとも思われたが、その後の家宅捜査で新田夫妻による多数の犯罪の証拠が見つかった。
そのことから、新田夫妻によるあなたを巻き込んでの無理心中として捜査の舵は切られているようだ。
地中海、ミラノ、大時計
ふと、思わずその心の中に留まったキーワードを口ずさむ。平穏な生活に戻った今もこの三つの単語が頭から離れない。
そんな時、二年後にオープンする、とある美術館の噂を聞くことになる。
エテルノ美術館。
それはイタリア共和国ロンバルディア州、ミラノにてオープンする予定の美術館。
世界的な資産家であるカミロ・ヴァンニが蒐集した数多の美術品が展示される予定で、中には地中海で発見された古代遺物の数々も含まれているようだ。
そして、その内の『眠らない大時計』こそがあなたの狙いである。
『眠らない大時計』。この遺物を目の前にすれば、すべての謎が解かれるのだろうか。
それとも、この美術館そのものに――。
様々な思考が脳内で交錯する中、いずれプレオープンのための抽選が行われることを予期していたあなたは周到な準備を進めることとなる。
すべては壮大な家出計画に向けて。
[2021年10月10日]
あれから二年が経つ。
あなたはミラノ行きの航空チケットと共にエテルノ美術館の入場チケットを手にしていた。
あなたの知識量はもはや子供の域を大きく抜きんでている。
その知識を活用すれば、大人の目を欺くことはそう難しいことではなかった。
あなたは一人、航空機に乗りこんで海外へと旅立つだろう。
あなたは己の使命のため、ミラノへと向かう。
エテルノ美術館。
そこにすべての謎を解く手がかりがあると信じて。
「――もう、誰にも期待なんてしない。ボクの幸せは、ボクが見つけてやる」
HO.童子 使命 : あなたの使命は「二年前の真相を暴く」、
そして「母の行方を探る」だ
これまでの百年間の経験があなたの糧となる
EDUが4d6だけ成長する(上限なし)
――――――――
静なるテロリスタ
HO.童子 個別導入
2021.10.10
▽終了 - 継続可能
To be continued...
――――――――
・シナリオ諸注意 : 個別導入では、なぜPCはエテルノ美術館へ向かうことになったのか、その動機や目的が説明されます。
また、個別導入での内容は、すべて秘匿HOに含まれています。あなたがこれから見聞きするものは、全て"新しい"秘匿HOになり得る、ということです。
1d100 (1D100) > 62
「約束だ。お前がいい子にしていれば、必ず帰ってくるさ」
思い起こされるのは父とのかすかな記憶。
だが、その約束はきっと果たされない。
次に父と顔を合わせた時、その身体は凍えるほどに冷たくなっていた。
約束、それはあなたにとって呪いの言葉。
――これはある事件を物語るまえのあなただけの序幕。
あなたは知っているはずだ。歴史は必ず繰り返されるということを。
[2016年10月10日]
父の死から十年。
その節目、家族に頼まれてか、或いは自ら進んでか。あなたは亡き父の遺品の整理をしていた。
やや茶色に変色したアルバム、そして壊れた懐中時計。
そのすべて一度は目に通したもののはずが、今となっては掘り起こされたばかりの化石のように新鮮で、また古ぼけて見えた。
「久し振りに見ると懐かしいのやすっかり忘れてたものも多いな…あ、これもこんなとこに」思い出深い品を手にとって埃を払いながらひとつひとつ眺めます
それではあなたが父の部屋を物色、...もとい掃除を行っていれば、ふと指先に一冊の手記が当たったことに気が付きます。
「…こんなのあったかな」表紙を確認してページを開こうとします
さらに手にとれば、その感覚はなぜか今までのどの物品よりも馴染み深く感じた。
ページを開こうとする前に、あなたの脳裏にふと過去の思い出が甦る。
[2006年9月下旬]
「今帰ったぞ、いやはや。」
「どこを巡り歩いたって、やっぱり我が家が一番だな」
父はいつも夜おそく家に帰ってきた時、決まってそう独り言ちる。
だが、数週間もすれば出て行ってしまうので、本気でそう思っていたのかどうかは分からない。
しかし、ただひとつ確かなことはいつもあなたのことを気にかけ、心から愛していたということだ。
そして、幼いあなたに気づくと、無邪気な笑顔を浮かべて頭をわしゃわしゃと撫でてくる。
「なんだヒロム。まだ起きてたのか。」
「―――おぉ、大きくなったな。...どうした。何かいい事でもあったのか?」
「何言ってるの!今日帰ってくるかもしれないって聞いたから待ってたのに!」
「おかえりなさい!お父さん!」
「ねえ、今回は何見つけてきたの?」
「あぁ、そうだったのか。悪いなヒロム、」
「―――ただいま。」
「...今回の旅ではな、”たくさんの頭を持つ怪物”について、情報を集めてたんだ。ははっ、また寝る前にでも話してやるよ」
「…お化けの話?寝る前に聞いたら夢に出てきちゃわない?」
「お化けなんかじゃないさ、...とっても強くて、それでいて恐い。継ぎ接ぎのモンスターが世界にはいたんだ。―――頭はライオン、尻尾はスネイク。」
「見つかったら食べられちゃうよ」想像して顔を顰め父親の服にしがみついて
「ははっ、そうかもな」
「――だが、ロマンがある。」小声で、呟くように言い放った
「......って、俺の話は良いんだ。...長いこと会えず話さずだったんだ、次はヒロムの話を聞かせてくれよ。」
「ええー?ちゃんと後で他の話もしてね?…えっと、小学校の運動会!もうすぐでね!リレーに出ることになった!!」
「リレーか、いいなぁ。...お前、走るの得意だったもんな。いいじゃないか、チームで駆け、勝利を掴み。いい響きだ」
「えっと、…来週?の日曜日!お父さんいつまでいるの?見にこれる?」指を折って数えながら見上げます
「そうだなぁ、一先ず探検に一段落はついたから、しばらくはここに居るだろう。―――来週の日曜日か、...悪くない。見に行こうじゃないか」
「ほんと?初めてだね!お父さんが来るの!」
「絶対だからね!」
「ああ、もちろんだ。」
父はいつもあなたの話に興味津々だ。
例えそれがどんなに些細なことでも、シアターに食い入る熱烈な観客のように話を聞いてくれる。
そして、逆にいつもあなたの方が話疲れてしまって眠りに落ちてしまう。
「おっと、こんなに夜更かしさせたんじゃ、母さんに怒られるな」
「それじゃ今度は父さんが子守唄代わりに面白い話をしよう。全部、この目で父さんが見てきたものだ。......聞きたいか?」
「…うん、聞きたい。だいじょうぶ、おきてられる、よ…」うとうとと目を擦ります
「よーし、それじゃあ。......これは、この前の夏に行った、―――」
父は懐から一冊の手記を取り出し、その内容を一つずつ読み上げる。
微睡みの中で語られたその話は今でもやけに記憶に残っている。
それは例えば、“空飛ぶ絵具と画家の話”、または“人の言葉を喋る猫とその裁判の話”など。現実味の欠けるものだったからだ。
「―――と。...当面は、こんな感じだ。今日は、これでおしまい。」
「とうめん…?」
「...ああ。」
「まだ父さんには、行きたいところが山ほどある。...それこそ、時間が足りなすぎるくらいに、な。」
「そっかあ…ぜんぶいかないでね。おおきくなったら、いっしょにいくから…」
「ほう?...つまり。ヒロムも大きくなったら、父さんと同じく、考古学を学びたいのか?」
「うん、…いっしょにいろんなものみてみつけるんだ」
「ははっ、そりゃあいいじゃないか!」
「これからの父さんの人生、解き明かしたい場所は幾らもあれど、ヒロムと行きたい地もたくさんある。.....これはこれは、未来が俄然楽しみだな。」
「さいしょにいくところ、かんがえててね。やくそく…」瞼が耐え切れなくなってきました
「ああ、”約束”だ。」
「―――おやすみ、ヒロム。」そっと、頭を撫でた。
その後、数週間を父と共に過ごした。
その間も父はあの手記を取り出して、いくつもの摩訶不思議な冒険譚を語ってくれた。
やはり、その内容はあからさまな作り話にしか思えなかったけれど、不思議と退屈しなかったことを覚えている。
しばらくして、父は身支度をはじめ、また別の場所へと旅立つことをあなたへと告げるだろう。
「それじゃあ、行ってくる。まあ...いつものことだけど、母さんのことよろしく頼んだぞ」
「うん!任せて!次のところの話も楽しみにしてるから!」
その時、良い子にすることを条件にまた土産話を持ってくることを約束されたけれど、そのにかりと笑った父の顔があなたにとって、父との最後の思い出となった。
[2016年10月10日]
そして、今まさに手にした手記こそ、その思い出の中にあった父のものであると直感する。
開けてみれば、やや乱雑な筆跡ではあるが中を読むことができた。
そのページの大半は考古学に関する研究資料が主であり、あの夢物語めいた冒険譚については大まかな内容が記されているだけに留まっていた。
ペラペラ、あなたは資料を読み進める。その過程、最後のページから一本の小ぶりな鍵と共に一枚の紙片が落ちたことに気づく。
「何だろう、鍵…とメモ?」本を脚に広げたまま置いてそれらを拾い上げます
紙片を広げる。それは、父があなたに向けて残した手紙のようだった。以下はその内容である。
父からの手紙 : ヒロムへ
この手紙をヒロムが見るのは一体いつになるのだろうか。数年後か、数十年後か。
もしかしたら一生ヒロムが目にすることもないのかもしれない。
だが、今まで父としての役目を十分に果たせなった後悔もある。だからこそ、ここに密かに残しておくことにする。
さて、父さんはこれから、かの地中海へ赴こうとしている。
目的はある古代遺跡だ。沿岸に住む人々はその名もなき古代遺跡は地中海のどこかに存在し、かつて古代の人類はある目的のため、そこで未知の文明を築いていたと信じている。しかし、多くの専門家はこれらの噂話を海中帝国アトランティスやバビロンの空中庭園のような夢物語であると片付けている。
だが、父さんにはこれがただのおとぎ話には聞こえなかった。
古代より現代まで伝わった伝説。ただならぬ何かがあの広大な地中海のどこかで起きたのだ。どちらにせよ、真偽を確かめるにはこの足で赴き、この目で目撃するのが一番だと考えた。
おっと、ついつい仕事の話ばかりになってしまうのは父さんの悪い癖だ。今、ヒロムは何か夢中になっていることはあるか。
もし、考古学に熱中しているのだとしたら、しっかり父さんの血を受け継いでいるようだ。
そうでなくとも、岸本千里、彼女がヒロムの助けになってくれるはずだ。千里は父さんの教え子で優秀な助手でもある。きっと、話が合うことだろう。
さて、そろそろ向かうことにしよう。ヒロムと母さんが見送りの準備をしてくれている。
ああ、今から帰りが待ち遠しい。
きっと、今度はたくさんの冒険譚を聞かせられるだろう。
それでは、行ってくる。
また、紙片の裏にはある有名大学の考古学研究室について刻まれていた。そして、その隅には太文字で大きく“ヒロムに捧ぐ”と書かれている。
・〈アイデア〉ロールを要求します。
CCB<=80 【アイデア】 (1D100<=80) > 98 > 致命的失敗
「メモに書かれてる人に見せたら何か分かるかな…?助手さんなら父さんに何があったかも知ってるかもしれないし」鍵とメモを一緒にして保管します
手記も一緒に鞄にしまいます
それでは、あなたは手記と鍵を懐にしまい、掃除を再開する。
持ち前の物色癖が災いしてか、ある程度の難航ののち、掃除に一段落が付いた。時計は、昼過ぎくらいを指していた。
「大分かかったなあ…話を聞きに行くのは今からでも大丈夫かな?続きは…まあそのうち」立ち上がって埃を払います
有名大学の考古学研究室は、ここからそう遠くはない。あなたは、徒歩、あるいは公共交通機関を用いて向かうことになるだろう。
研究室へと向かえば、妙な騒ぎを目撃する。
「? なんだろ」
その部屋の前では一人のがっちりとした警備員、そしてやや肌色の多い、というよりかやけにフランクな恰好をした女性がいた。
その二人は何やら言い争いをしているようだ。
女性 : 「何度言ったら分かるんだ!アンタは黙って部屋の鍵を持って来ればいいんだ!」
「ですから、入館許可証も携帯していない不審な方にはお渡しできません!それに、なんなんですか。さっきから越鳥って...」
その咄嗟に警備員の口から出た、越鳥とは確かにあなたの苗字であった。
急に聞き馴染みのある単語が聞こえたかと思えば、二人を渦巻く口論はさらにヒートアップしていくようだった。
女性 : 「越鳥先生を知らない?!一体何年この仕事をやっているんだ!信じられないな!」
「知っていますとも!二十年ここで仕事をしていますから!そうではなく、一体あなたは越鳥先生の何ですか!」
女性 : 「私は岸本千里。越鳥先生の助手だ」
「助手ですって?聞いたことないですよ。それに越鳥先生はもう...」
「…あの、お話中済みません」近づいて二人に声をかけます
「越鳥、と聞こえたのですが…お二人は父をご存知で?遺品整理をしていたらここのことを書いた手紙を見つけて伺ったのですが」
「岸本さんのお名前も存じています。そのお話、本当だと思いますよ」
・〈説得〉または〈言いくるめ〉を要求します。
CCB<=15 【説得】 (1D100<=15) > 93 > 失敗
「ああ、また面倒が増えた...」
「知ってるも何も、昔にお会いしたことがありますから!...ですから、貴方たちは越鳥先生とどういうご関係なんですか!」
「息子です。ええと…」手紙と鍵と学生証を出して警備員さんに見せます
「ははぁ、まさか。」あきれたように
「......悪戯じゃ...なさそうだ。」
「?はい」
「まさか、十年になってまた越鳥先生のお名前を聞くとは思いませんでした。...ううん、息子さんが何の用ですか。この面倒な女性は知り合いですか?」
「岸本さんについては…えっと、手紙の最後の方に。僕も初対面なのでお顔は初めてなんですけれど」
「岸本さんに会いに来たので、そう長居はしなくて済みそうかと…あ、鍵ってこれだったりしますか?家では見たことがなくて」鍵を警備員さんに改めて見せます
「は、はぁ...」
と警備員は困惑したような顔を見せた。さなか、岸本はあなたへ顔をグイと近付ける。
岸本 千里 : 「君、”越鳥 究”と言ったな?」
「わ、はい」頷きます
岸本 千里 : 「まさかヒロムくんと会えるなんて!しかも、この時間、この場所で!...まさに運命だな。」
岸本 千里 : 「ああもういい、最高だ!君さえいれば、こんなポンコツ分からず屋のfuckin'警備員なんてオサラバだ!」
岸本 千里 : 「...ああ、一応名乗っておこうか。私は岸本千里。さっきコイツには話していたんだが、越鳥先生の助手をやらせてもらっていた身だ」
「駄目ですよ、お仕事しっかりされてるのに…ええと、初めまして。越鳥究です。岸本さんはこの鍵が何だかご存知で?」
岸本 千里 : 「キミ...それを知らずに来たのか!?」
にこにこしながら首を傾げています。
岸本 千里 : 「まさしくこの、先生の研究室の部屋のキーだよ!私はそこに立ち入るため此処に来て、こいつとバチバチやってたのさ!」
「あ、そうなんですね。それじゃあ警備員さんは戻ってもらってよさそうですね?」
警備員は難しそうな顔で岸本を睨んでいた。あなたがそう告げれば、警備員はつらつらと注意事項を説明し始める。
「―――、ただ、歴史科はもうずっと前に無くなってしまいまして。ほとんど物置に近い状況です。足下に気をつけて。」
「...以上です、お気遣い痛み入ります」
「こちらこそありがとうございます。父がご面倒をおかけしました」
「父よりも、その助手さんが―――、いいえすみません、失礼しますね。」
警備員はあなただけに会釈をして、その場から去った。
にこにこと見送ります。
「お待たせしました、岸本さん。中で何をするのか分かりませんけれど、行ってみましょうか?」
岸本 千里 : 「ああ、ありがとう!早速入ろうじゃないか!」
研究室の中へと入れば、そこは無数のダンボール箱で埋め尽くされ、足の踏み場さえ見つからなかった。
岸本 千里 : 「ケホッ、こほっ、――うう...わ。これは、何というか...ひどいな」
岸本 千里 : 「私も君にしたい積もる話があるが、その前に...この部屋には積もる物が、...多すぎる...!」
「窓とかあるのかな…十年近く開いてないなら仕方ないですね。それにしても物が多い…」ハンカチで口を押さえて見回します
あなたたちの入ったその部屋は、もはや部屋としての機能を成していないように感ぜられた。
・〈DEX〉×5または〈芸術:掃除〉で、「部屋」になります
CCB<=(14*5) 【DEX】 (1D100<=70) > 29 > 成功
では、何とか部屋の体をとらせることができるだろう。
〈芸術:掃除〉に1d10の成長チェックが発生する。
1d10 (1D10) > 8
「ちょっとはマシになりましたか?」整理をしながら岸本に視線を向け
岸本 千里 : 「ふう、こんなものか。...ああ、こっちも大丈夫そうだ!」
岸本 千里 : 「...だが、これは定期的に掃除しないと、またゴミで部屋が埋まる日も近いだろうな」
「……ゴミなんですか?」周囲のダンボールを見回します
岸本 千里 : 「ゴミだろう。...まあ、私は先生が何をしていたかは......ほとんど知らないけれどな!」
「そうなんですね。じゃあ一緒に現地に行ってただけとか?」
岸本 千里 : 「ううん、そうだな。...とはいっても、先生がバリバリやってたころは私も若かったし、先生の後ろをついていっただけで、助手らしいことをしてたわけじゃなくってだな...いや、今も若いけどな!?」
岸本 千里 : 「増してや地中海での調査に至っては、キミの父が単独で行ってしまったから、...詳しいことは何も分からない。」
「へえ…。―――――いいなあ、一緒に行ってたんだ」
岸本 千里 : 「ああそうだな、後ろをついて回ってた。」
「でも最後のところは一人で行ったんですね。どうしてだろう…?」
岸本 千里 : 「......なあヒロムくん、”無名神殿”って知ってるか?」
岸本 千里 : 「私がこの研究室を訪れた理由は、そこなんだけどな。」
「…そういう具体的な事とかってあまり話してくれない人だったので、ふわっとしか覚えてませんけど」
岸本 千里 : 「まあ、具体的なことは誰も知らないさ。矛盾に満ちた、地中海孤島の謎の神殿!ってとこだな。」
岸本 千里 : 「ここしばらくは死亡事故もあって現地での調査は滞っているようだったが、近々また本格的な調査がはじまるそうだ。......もちろん調査隊の一員に志願したが、先生と交流があったことを知られ、断られてしまったんだ」
岸本 千里 : 「そこで私は、わずかな手がかりを求めてここまで足を運んだ!...って話だよ」
「ああ、岸本さん…暴走しそうですから仕方ないでしょうね。それなら…家になくてもここになら何か見つかるかもしれませんし、ちょっと探してみましょうか」
岸本 千里 : 「ああ、手伝ってくれるのか!...それじゃあ、早速――」
ふと、チャイムが鳴る。
外の様子を確認すれば、すでに日は傾きつつあった。
岸本 千里 : 「っと...ここの大学はチャイムが鳴るのか。うんうん、高校時代を思い出すな......…ってもうこんな時間か!」
岸本 千里 : 「結局、掃除だけで終わってしまった....、...ヒロムくんはまたここに来れるか?」
「大丈夫ですよ。僕も気になりますし」
その言葉に頷けば、岸本はにかりと笑う。
その笑顔は思い出の中の父とよく似ており、彼女が父の助手であったことは嘘ではないと実感する。
岸本 千里 : 「そうか、良かった。...ああそうだ、帰りは私が送っていこう!」
「いえ、結構です」
岸本 千里 : 「って...ええ、、?バイクだぞ、早いぞ~?」
「母達の目に留まると説明がちょっと…父の死からは立ち直ってきてますが、それでも気にするでしょうから」
岸本 千里 : 「ああ、なるほどな。...それなら、仕方ないか。」
岸本 千里 : 「まったく、ヒロムくんは家族思いだな!誰に似たんだか、うにゃうにゃ...」
「父じゃないですか?家には居ませんでしたけど」
「明日もよろしくお願いしますね、岸本さん」
岸本 千里 : 「ああ、また会おうじゃないか!」
こうして、あなたは研究室を後にするのだった。
[2016年某月某日]
次に研究室へと赴いた時、既に岸本は掃除をはじめているようだった。
先ほどまで換気をしていたのか、徐々に室内が新鮮な空気へと変わっていくのを感じるだろう。
岸本 千里 : 「お、来たね。それじゃあ今日も手伝ってくれるかな。」
岸本 千里 : 「...まったく、大学からバイト料をもらいたいくらいだ」
「おはようございます。…大分片付いてますね」部屋を見回して昨日と比べています
岸本 千里 : 「そうだな、...とはいえ、まだまだ物は...たくさん、ある!」
「掃除しながら探しましょう。始めますね」
・〈DEX〉×5または〈芸術:掃除〉を要求します。どうぞ!
CCB<=(14*5) 【DEX】 (1D100<=70) > 94 > 失敗
CCB<=13 【芸術(掃除)】 (1D100<=13) > 67 > 失敗
それではあなたは掃除中、隅を走るネズミを見つけます。
正気度が1だけ減少する。
system : [ 越鳥 究 ] SAN : 60 → 59
びくっとネズミから目を離せずに硬直します
あなたが驚き硬直していれば、後ろから岸本がネズミを追い払う。
岸本 千里 : 「....あー、こら!しっしっ、紙食うな!もう!」
岸本 千里 : 「......まったく、先生の研究室、放置されているにも程がないか!?」
「ありがとうございます…えっネズミって紙食べるんですか?」
岸本 千里 : 「食べるっていうか...齧るな。それはもう、ガジガジと」
「…荒らされちゃいますね」
岸本 千里 : 「まあ、ヒロムくんの奮闘あって今日で大分きれいになったし...暫くは大丈夫じゃないか?」
「そうだといいんですけれど。床も広くなりましたし、片付けながらになりますが、何を探したらいいかとか聞いても?」
岸本 千里 : 「ああ、その件についてだが...ヒロムくんが纏めておいてくれたダンボール、中に興味深いものを見つけたんだ。...よければ、後で一緒に見てみないか?」
岸本 千里 : 「探し物のオーダーについては...そうだな、”気になったやつ、全部”だ!」
「見つけた後に中身の整理も要りそうですね。ええと、ダンボールの中、と。あの辺一帯ですか」雑巾でテーブルやらを拭いながらダンボールを見ます
岸本 千里 : 「そうだな、あのあたりのやつだ。」
岸本 千里 : 「.....と、その前に。」
あなたたちが一息ついてれば、岸本は何かを取りに行く。
コーヒーを差し入れてくれるようだ。
岸本 千里 : 「掃除も骨が折れるな。ちょっとコーヒーブレイク、どうだ?」
「わ、ありがとうございます」受け取ります
「じゃあ、ちょうどいいですね」鞄からごそごそとランチボックスを取り出して「母が持たせてくれたので一緒にどうでしょう」
「サンドイッチみたいです」
岸本 千里 : 「うわぁ、最高じゃないか!いいのか、私も食べて!」
「はい、手伝ったら少し多めにしてくれました。」
岸本 千里 : 「それはうれしいな。感謝の気持ちをよろしく伝えておいてくれ」
「ちゃんと伝えますね。…あれ?こんなカップありました?」
岸本 千里 : 「ああ、頼むよ。....って、ああ。そうなんだよ!」
岸本 千里 : 「どうせ長くなるだろうし、コーヒーサーバーを持って来たんだ。」
岸本 千里 : 「将来的にはオシャレなデスクとか、観葉植物とか...あっ、シアターも欲しくなるな...」
「…ちゃんと大学側に許可取ってからならいいんじゃないでしょうか…?」
岸本 千里 : 「ああ、そうだよな!...、まあ、この部屋は先生がヒロムくんに送ったものなんだろう?それなら...君に許可さえとれば?」
岸本 千里 : 「とりあえず、ヒロムくんも好きなものを持ってくればいい。あの警備員がきたら、私が追っ払ってやるさ!」
「(後で大学側にもどういう扱いになってるか聞いておかないとなあ…)」
「好きなもの…うーん…」
「僕はここにある資料が読めればそれで。そのうち休みとかを使ってそこに行ってみたいと思いますけど」
岸本 千里 : 「...ふぅん、なるほど。...まあ、君の研究室なんだから、君がリラックスできるようにすればいいさ」
岸本 千里 : 「――もぐもぐ。....んっ、ごちそうさま。すっごく美味しかった、君の母親の料理は絶品だな!」
「それは良かったです。コーヒーもご馳走様でした。美味しかったです」
岸本 千里 : 「ああ。割と無尽蔵にあるから、疲れたら勝手に入れて飲んでくれ!」
ランチボックスを片付けながら頷きます。
あなたたちがつかの間のブレイクを過ごし終えれば、岸本はいくつか、ダンボール箱をこちらに寄せる。
あなたの片づけが終わったのを見計らえば、そのうち一つを開けた。
そして、中から白い包装紙に包まれた何かを取り出すと、あなたへと差し出した。
岸本 千里 : 「それで、ちょっと真面目な話だ。」
岸本 千里 : 「掃除の時にいくつかダンボールの中を見てみたんだが、その大体が学校の備品や、先生の研究資料でごった返していたんだ。」
岸本 千里 : 「でも、その中に一つだけ変わったものが紛れ込んでいた。...見てみてくれ」
「変わったもの…?」覗き込みます
包装紙には見慣れないラベルが貼られてある。
それは海外からの郵便物で、後ほど調べたところ地中海沿岸近くの郵便局の名が書かれているようだった。
そして、もっとも特筆すべきところはこの郵便物が送られた日付である。
その日付は父の命日である、今より十年前、2006年10月10日の日付であった。
岸本 千里 : 「やはりな。」
岸本 千里 : 「恐らく先生は何か伝えたいことがあって、わざわざこの研究室まで送ってきたんだろう。」
岸本 千里 : 「...ずっと思っていたんだ。先生に限って事故で死ぬようなことはないって。......きっと、先生の死には何か...裏があるはずなんだ」
「最後の手紙…家じゃなくて、ここに送ったってことはあまり人に見られたくなかった…?」
岸本 千里 : 「...或いは、君がいずれここに来るのを見越して――」
岸本 千里 : 「いいや、どれもこれも憶測にすぎないな。...さっそく、開けてみようじゃないか。」
「そうですね。郵便局の名前も後で地図で調べてみましょうか」丁寧に手紙を開封します
包装紙の中にはケースによって丁重に保管されたmicroSDカードが収められていた。
しかし、そのケースには“開封厳禁”と念入りにマジックで記されており、ひどく荒れた筆跡だが父の書いたものだと確信する。
岸本 千里 : 「どういうことなんだ。誰かに向けて送ったものではないのか...」
「こういうのは勢いで開けない方がいいと思います。そうなると手がかりが減っちゃいますね…」しげしげとケースをひっくり返したりして眺めます
岸本は少しだけ考える素振りを見せる。
だが、それでもこのmicroSDを詳しく調べるべきだと主張するだろう。
岸本 千里 : 「開封厳禁、か。この記憶媒体以外に、中身は入っていなそうだ。」
岸本 千里 : 「.....とすれば、しかし。この中に保存されているデータだけが先生の足取りを追える唯一の手がかりになる。先生の死に迫れる、唯一のキーなんだ。」
岸本 千里 : 「...ここは勇気を出して、中を見てみないか。」
「構いませんけど。…誰に対して禁止したんだろう」PCがあったかなと室内を見回します
岸本 千里 : 「ああ、ありがとうヒロムくん!...とすれば、先生の不審な事故死、それにつながる情報が出てくるかもしれない!」
岸本 千里 : 「読み取るハードについては心配無用だ。この私のデジタルカメラに、microSDは挿入できるからな!」
「それじゃあ、お願いします」カードを渡します。
岸本 千里 : 「ああ、確かに受け取った!」
そのmicroSDカードを岸本の持つデジタルカメラに挿入してみれば、そこには数十枚の画像データが保存されていた。
だが、その大半のデータは破損しており、部分的にしか記録を辿ることはできなかった。
そして、無事だったデータもこれまた多くが暗闇の中に包まれ、何が写っているのかいまひとつ不明瞭だ。
だが、拡大して見てみれば、辛うじてその正体を掴むことができた。
そのほとんどには複数の巨大な柱が写りこんでおり、未だかつて見たこともないような文字とも記号とも判別がつかない妙な紋様の連続が刻まれていた。
・〈考古学〉を要求します。
CCB<=70 【考古学】 (1D100<=70) > 76 > 失敗
さらにデータを探ってみれば、赤色に輝く見事な宝石が写されていた。
その宝石は水晶にも似たきれいな丸型をしていたが、画面越しでも分かるほど圧倒的に放たれる光彩はただの水晶と表現するにはあまりにも眩く見えた。
この世のものでない美しさを感じるだろう。
・〈博物学〉を要求します。
CCB<=10 【博物学】 (1D100<=10) > 19 > 失敗
・続けて、〈POW×5〉を要求します。
CCB<=(12*5) 【POW】 (1D100<=60) > 36 > 成功
「多分これが最後に行った神殿の写真で…開封厳禁はこの宝石のせい…?妙に気になるというか…」
岸本は赤い宝石の写真を見ると、思わず後退って顔をしかめていた。
岸本 千里 : 「...いや、気のせいか。」
岸本 千里 : 「何か、この宝石から視線を感じたような気がしたんだが...」
「視線?」
岸本 千里 : 「いいや、なんでもない。すまないな、精査を続けよう」
すべてのデータを確認すると、岸本はどこか腑に落ちたような様子で、興奮気味に声を上げた。
岸本 千里 : 「はっ、...これ!」
岸本 千里 : 「ま、...まさかこれ、すべて“無名神殿”の写真なんじゃ!」
「…そうなんですか?」
岸本 千里 : 「その証拠に、この柱に刻まれた模様。まったく知りもしない古代言語だ。」
岸本 千里 : 「この私とヒロムくんでさえかすりもしない言語だなんて、相当限られるはずだ。そうだろ?」
「僕そこまで詳しくは…でもそれなら父さんは探していた神殿に辿り着いていて、そこで何かがあったことになるんですね」
“無名神殿”。
それはあなたにとって忘れられない言葉だ。
その“無名神殿”を発見した父の功績は今までの文明史に革命を与えるようなものだった。
だが、最後に語り継がれる父の死は、あくまで不幸な事故として現地では片づけられている。
岸本 千里 : 「ああ、そういうことになるな。...やはり先生は、無名神殿で...事故死を?」
岸本 千里 : 「くそっ、もう少しで...もう少しで真実に辿り着けそうなのに...!」
「事故かどうかってどう判断したんでしょう。機械のトラブルとは聞いてますけど…普通きちんと整備したり確認もしますよね」
岸本 千里 : 「ああ、その通り。私はそこに、ずっと疑念を抱いているんだ。」
岸本 千里 : 「先生に限って、事故死なんてあり得ない。...きっと、あの死には裏があるはずなんだ」
岸本 千里 : 「...だが、それを解明するには――...あまりに、手がかりが少なかったみたいだ。」
「そう、ですね。これだけでは足りませんね…」カメラのデータをもう一度見ていきます
「岸本さんは現地に行ったことはあるんですか?」
岸本 千里 : 「ない。前も言った通り、先生との関連が割れているから、...きっと立ち入りもまだ難しい」
「ああ、そっか。じゃあ他の方法を考えないと…?」
岸本 千里 : 「とりあえず、先生の死は不明のまま置いておく他無いだろうな。」
岸本 千里 : 「それで、だ。」
「はい?」
岸本 千里 : 「話は変わるんだが、...一つ頼みごとがしたいんだ。」
岸本 千里 : 「死の真相こそ暗雲に消えゆく今、....私は、先生がやり残した研究を最後までやり遂げたい。」
岸本 千里 : 「だからこそ、優秀な仲間が必要なんだ。」
岸本 千里 : 「ヒロムくん。私と一緒に、この古代言語を解読してみないか」
「それは願ってもないことですけど」
「父が最後に見た場所にも行きたいですし。折角行くなら…父が見た物を理解したい」
岸本 千里 : 「ああ、それについては私も同感だ。」
岸本 千里 : 「先生が何を求めたか、先生がなぜ単独で行ったのか。それが知りたい気持ちは、もちろん理解できる」
「事故なら諦めもつくんですけれどね。そうでないなら―――」
「父を、…僕の夢と父との約束を奪ったことを、許せませんので。」
岸本 千里 : 「......ヒロムくん。私と組んで、”無名神殿”について、一緒に解き明かそう。」
岸本 千里 : 「先生の追い求めた真実を、私たちが暴くんだ。」
そう言えば、岸本はあなたに右手を出し、握手を求めたようだった。
「全て暴いて、奪い返してやりましょうね」握手に応じて微笑みます
岸本 千里 : 「ありがとう。優秀な君が味方なら、まさに千人力だな!」
岸本 千里 : 「これからよろしく頼むよ。ヒロムくん」
「はい、よろしくお願いします。色々と教えてくださいね」
こうして、あなたと岸本は前人未踏の境地、“無名神殿”に刻まれた古代言語の解読に挑むこととなる。
[2019年9月下旬]
あなたが岸本と出会ってからおよそ三年が経った。
今や二人だけの秘密基地は互いの私物で溢れかえっている。
今日も岸本は研究に打ち込むべく、机上に書き出された文字群の前に身を乗り出していた。
〈考古学〉に3d6の成長チェックが発生する。
3d6 (3D6) > 6[1,2,3] > 6
岸本 千里 :
岸本 千里 : 「ふむ...“戦”...“戦”か...」
その一語はこの三年間の成果をたった一語でまとめたものだった。
あなたと岸本はこれまで地中海近辺の古代文明やそれに近しい言語形態を調べ上げ、近隣の国々に実際に赴くことで“無名神殿”の柱に刻まれた謎を暴こうと躍起になっていた。
だが、その結果として解読できたのは“戦”を意味するたった数文字の記号だけだった。
岸本 千里 : 「まるで暗号だな。これじゃ、すべて解読した頃には私はよぼよぼのお婆ちゃんだ......」
「……何か全然想像できないけど、まあ確かに解読が進まないというか」
岸本 千里 : 「私がよぼよぼなところがか?」
「千里さんそのまま100まで生きそう」
岸本 千里 : 「ははっ、そうだと嬉しいねぇ!これからの私の人生、解き明かしたい場所は幾らもある。...もちろん、ヒロムくんと赴きたい地もな?」
岸本 千里 : 「100年程度じゃ...足んないよな!」
「あー…父さんも似たような事言ってたけど。やっぱり助手も親子も似るのかなぁ…」資料をぱらぱらと捲りながら笑います
岸本 千里 : 「ああそうかい。...先生、こんなクサいこと言うんだな?」
「…結構クサいというか冒険小説みたいな言い回し多かった、かな?」
岸本 千里 : 「ああ、なるほどな。あの人、冒険譚とか大好きだもんな!」
「ね。ちょっと大げさに言うところとか」
岸本 千里 : 「ははっ、間違いないかもな。...ま、それは本人のみ知るってことで」
岸本 千里 : 「...さ、解読の件。まーるで進捗は亀さんくらいに遅いわけだけど」
「何か別のアプローチでも思いついた?」
岸本 千里 : 「いーや?正直手詰まり。」
岸本 千里 : 「ただ....ああ、今からクサいこと言う警報。」
「え、録音しておく?」
岸本 千里 : 「やめてくれ。」
岸本 千里 : 「......”君と過ごしたこの三年間、無駄だったとは思えないな。”って、そう言いたかっただけだ。」
「…一人で乗り込むつもり、じゃないよね。千里さん」
そうあなたが返した途端、岸本は動きを止める。
すると、改まった様子であなたに向き直った。
岸本 千里 : 「やっぱり、君に隠し事はできないか」
岸本 千里 : 「...実は来月、あの“無名神殿”の現地調査へ行ってくる。」
「許可、出たんだ」
岸本 千里 : 「実は向こうの責任者ともう十年近く交渉を続けていてな。やっと首を縦に振ってくれたんだ。」
岸本 千里 : 「...カミロ・ヴァンニ。あちらの国では有名な投資家で、先生が“無名神殿”を発見した時も多大な支援をしてくれたそうだ」
岸本 千里 : 「.....もしかすると、先生の死について何か知っているかもしれない。たった一度きりのチャンスだ。必ず、手がかりを掴んで君のもとへ持ち帰る。」
岸本 千里 : 「だから、それまでここで待っていてくれないか」
「一緒に解き明かす、にはそれも含まれてる?」
岸本 千里 : 「もちろん。全部全部、ヒロムくんと解き明かしたいことだ。」
「じゃあ仕方ないね―――なんて言わないよ」
「約束もしないから」
「絶対に待たない」
岸本 千里 : 「......ははっ、なるほどな。」
岸本 千里 : 「それじゃあ、”期待せずに待っててくれ”。―――また、あんたにこの笑顔を向けてやるよ。...意地でも。」
「そうだね、期待しないでいるよ。どうせ迎えに行く事になるんだから」
「もう連れて行ってもらうとか、付いていくだけの子供でもないし」
岸本 千里 : 「ふーん。...この3年で、随分男らしくなったじゃないか」
岸本 千里 : 「まぁ、そう心配するな。私一人だけで“無名神殿”に乗り込むわけじゃない。...現地に頼れるヤツがいてな。帰ってきたらヒロムくんにも紹介しよう」
「へえ…じゃあまだ……」安心だなと口にしかけてやめます
岸本 千里 : 「それじゃあ行ってくるよ、ヒロムくん。」
「父さんみたいに一人で飛び出したら駄目だよ。ちゃんと周りを見て人を使ってね」
岸本 千里 : 「ああ、わかってるさ。」
あなたがその頼みに頷けば、岸本は確かな覚悟を秘めた笑みを浮かべ、あなたに右手を差し出した。
岸本と三年前に交わしたかたい握手を思い出す。
これは岸本にとって、あなたに対する二度目の願いだった。
岸本 千里 : 「思い出すな。...三年前もこうやって、握手を交わしたな」
「そうだね」ゆっくりと手を握り握手を返します「行ってらっしゃい」
岸本 千里 : 「こんなことに、ここまで付き合ってくれるのも君くらいだ。」
岸本 千里 : 「行ってくるよ、最高の相棒。」
「三年前は嫌いだったけど。千里さんも僕にとっていい先生だったしこれからも100歳まで相棒してよね」
岸本 千里 : 「おうおう、衝撃のカミングアウトだな。...ま、そのラブコール、心に留めとくよ。」
「そういうとこは今もちょっと嫌いだよ。まあ間違ってはいないから…いいか」
[2019年10月10日]
あれからしばらくして、岸本は日本を発った。
今頃、もう現地に到着している頃だろうか。
あなたは少しだけ広くなった研究室で、確かな期待と共に一抹の不安を心の中で感じるかもしれない。
時刻は二十時過ぎ。あなたは自宅で思い思いに過ごすだろう。
その時、あなたの携帯電話から着信音が鳴る。
「…はい?」電話を取ります
出れば、そんな不安を吹き飛ばすように、明るく弾けた岸本の声が聞こえてきた。
岸本 千里 : 『もしもし、ヒロムくん?元気にやってるかー!』
「着いて直ぐにかけてきたの…?元気も何もないよ」
岸本 千里 : 『こっちは大体十三時。時差は七時間...ああ、大分夜分になってしまった、悪いな!』
岸本 千里 : 『今、地中海を渡るためのクルーザーに乗るところなんだ!』
「へえ…用意してもらったの?すごいね」
岸本 千里 : 『思いのほかすごく上等だ。...ああ、これからのことを思うと、正直、ワクワクが止まらない!』
岸本 千里 : 『隣にヒロムくんがいないことだけが凄く残念だな...』
「…テンション上げすぎてお酒とか飲まないようにね」
岸本 千里 : 『ああ、分かってるよ...!さすがに、神殿を出てから―――』
そう話していると突然、重みがかった男の声が聞こえてくる。
『そろそろ行くぞ』
岸本はその声に応じるとやや残念そうに声をすくめた。
岸本 千里 : 『えっ...あぁ、そうだな。こちらの日が暮れてしまっては大変だ。』
岸本 千里 : 『それでは、行ってくる。そちらが朝になった頃に、また連絡するとしよう!』
「うん、気をつけてね」
間もなくしてその通話は切れる。
その後、あなたは朝に備えて寝る準備をはじめたり、夜を通して何かに熱中したりするかもしれない。
どちらにせよ、その約束まではしばらく時間を持て余すことになる。
「何か目が冴えちゃったな……父さんの手記でも読み返そうか」
ベッドの上でごそごそと手記を手元に引き寄せます
あなたの父親の手記は、いつもと変わらない感触であなたに触れる。
中身を見れば、その変わらない荒唐無稽な内容に、思わず笑みがこぼれるかもしれない。昔を思い出すようだった。
寝る前にいつも聞いていたからかうとうとしながらページをめくります
気づけば、時刻は二十三時半過ぎ。
今夜は特別に静かな夜だ。柔らかな眠気があなたを包むだろう。
・〈聞き耳/2〉を要求します。
CCB<=53/2 【聞き耳】 (1D100<=26) > 71 > 失敗
[2019年10月11日]
翌朝。携帯電話の着信履歴を確認しても記録はない。
九時。十時。十一時。
とうに朝と呼ばれる時は過ぎている。
現地は深夜二時頃。未だに連絡はない。
十二時。十三時。十四時。
不安、もしくは疑念。
そういった明るくない感情が心の中で浮かび上がってくるのが分かる。
こちらから連絡を試みようとしても意味はない。ただ無情に時間だけが過ぎ去っていく。
「つまり、―――そういうこと、だよね」
それからはただの空白の時間だった。
時折、携帯から通知音が鳴るが、そのどれもが何の由縁もないメールや着信ばかりだ。
時間が経てば経つほどあなたの中で渦巻く焦燥感を煽るかもしれない。
・〈アイデア〉を要求します
CCB<=80 【アイデア】 (1D100<=80) > 7 > スペシャル
あなたは外の景色を見た時、郵便受けに何かが入っていることが分かる。/
「…そんなところまで似なくて良くない?」郵便受けの中身を取り出して眺めます
郵便受けにあったのは差出人不明の一通の封筒だった。
どうやら直接ポストに投函されたものだと分かるだろう。
封筒には一枚の手紙が入っていた。記された文字はひどく震えている。以下はその内容である。
〔差出人不明の手紙〕 : ヒロムくんへ
約束を果たせず、本当にすまない
私は、何も成すことはできなかった
それに、君を大変なことに巻き込んでしまった
心の底から、悔しく思う
だが、君にはいずれ来たる困難に立ち向かう力がある
どうか、君の夢を諦めないでほしい
私も決して君との約束を忘れない
三年間、本当に楽しかった
ありがとう
また、封筒には手紙の他に一冊の手帳も入っているようだった。その手帳は岸本のものとよく似ていたが、実際よりかなり使い古されているように見えた。
「こっちには帰ってきているの…?父さんと同じで文字がおかしいし…一体何にそんなに怯えて…?」手紙を小脇に挟んで訝しげに手帳を開こうとします
その手帳には余白はほとんど残されておらず、文字がひしめき合うようにして書き連ねてあった。
それは“無名神殿”に遺された古代言語に関するものだった。
この記された情報とあなたの知識を照らし合わせれば、あの暗号のようにも見えた古代言語を解読することができる、そう感じるだろう。
だが、この膨大な情報を一体どのような手段でこの書き手は得たのだろうか。
0/1の正気度ロールが発生する。
「あれだけ難航していた解読がほぼ網羅されている…これがあれば無名神殿に行ったときに全部分かるだろうけれど。どうしてここまで詳細に…本当にこれは千里さんが…?」
CCB<=59 【SANチェック】 (1D100<=59) > 65 > 失敗
system : [ 越鳥 究 ] SAN : 59 → 58
その後、どれだけの時間を費やしたとしても、岸本から連絡が来るようなことはなかった。
目の前には手がかりとも言えない意図不明な贈り物。それからは手帳を使って古代言語の解読を試みることになるだろう。
・〈考古学〉に成功すれば、古代言語の解読に成功する。
CCB<=76 【考古学】 (1D100<=76) > 28 > 成功
〔解読内容〕 : 戦争
全なる神へ祈りき
すべては穢れし王を討つために
我らは勝利せり
されど、我らはやむごとなきものを一つ失い
全なる神の力で一つ得き
失われし理は今、動きそむ
「勝利と引き換えに失う?―――そんなこと、認めない」
「全部、暴いて奪う。神も王も無い。全ての真実を白日の下に晒してやる」
「戦争したいなら受けて立つ。待っていろ、無名神殿。」
[2021年10月10日]
あれから二年が経つ。
あなたはミラノ行きの航空チケットと共にエテルノ美術館の入場チケットを手にしている。
この二年間、関係者に岸本について問い合わせても、知らぬ存ぜぬを繰り返し、彼女の足取りを知る者はいなかった。
現地の警察も表面上は捜査を続けているが、その捜査状況はお世辞にも芳しいとは言えなかった。
そんな時、エテルノ美術館の噂を耳にする。話によれば、カミロ・ヴァンニ主催のその美術館は“無名神殿”から発見された古代遺物を多数展示するというのだ。
カミロ・ヴァンニ。
いつか岸本が話していた資産家の名だ。
きっと、この美術館には何か重大な秘密が眠っているはず。
そんな予感を秘め、あなたは高額で取引されていたエテルノ美術館のチケットを落札した。
あなたは一人、航空機に乗りこんで海外へと旅立つだろう。
いずれ、いつかの約束が果たされると信じて。
「―――約束の地、戦場。そう呼ぶのが相応しい。さあ、全員で凱旋しよう。全てを手に入れるんだ」
HO.篤学者 使命 : あなたの使命は「岸本の行方を探る」、
そして「父の死の真相を探る」だ
これまでの五年間の経験があなたの糧となる
EDUが1d6だけ成長する(上限21)
1d6 (1D6) > 2
――――――――
静なるテロリスタ
HO.篤学者 個別導入
2021.10.10
▽終了 - 継続可能
To be continued...
――――――――
1d100 (1D100) > 94
・シナリオ諸注意 : 個別導入では、なぜPCはエテルノ美術館へ向かうことになったのか、その動機や目的が説明されます。
また、個別導入での内容は、すべて秘匿HOに含まれています。あなたがこれから見聞きするものは、全て"新しい"秘匿HOになり得る、ということです。
その記憶はあなたにとって罪の記憶。
共犯者、それはもっとも親しい者へ送られる偽りの関係。
呪いのように血が纏わりついた両の手は、もう二度と元には戻らない。
だが、美術には魂を売るだけの価値があるのだと、ある者はうそぶいた。
――これはある事件を物語るまえのあなただけの序幕。
あなたは知っているはずだ。傑作は、罪なくして生まれることはないということを。
[2006年10月下旬]
あなたは世間から認められず孤立した美術家として暗い日々を送っていた。
路上で作品を売りに出しても、実際に売れた作品は無きに等しく、自ら展示展に売りに出しても、ほとんど評価されることはなかった。
あなたは今日もいつも通り、路上での販売を続けていた。寒くなり始めた季節の風が、あなたの体と心を冷やす。
さらに追い打ちをかけるように、街行く人、或いは評判。
いきすぎた批判や誹謗中傷、数々の人たちからかけられる重く厳しい言葉はあなたを傷つけた。
しかし、あなたは未だに作品を作り続けている。
その目的はあなたの胸の内でしか分からないことだ。
本格的な冬のはじまりを感じさせる寒空の中、あなたは今日も都内の路上で作品を売っている。
”売れたい” その焦燥が募ったある昼のこと、あなたの作品の前で、1人の男が足を止めた。
「こんにちは。良かったらポートフォリオ見て行って下さい」自身の作品集を差し出す
男性 : 「...ほう。へえ、なかなか面白いものを売っている。」
男性 : 「ポートフォリオか、見せてもらおうじゃないか。」さっと本を手に取り、読み始める。
「ギリシャ神話の怪物を制作しています。この作品は…」男性が見ている作品の説明をします
あなたの作品について話せば、男は深く頷いた。
男性 : 「ほう、なるほど。ギリシャ神話の。...あまり見ないコンセプトだ、ますます気に入った。」
「ありがとうございます…!ドローイングや手軽なサイズの作品も販売をしているので良かったらそれも見ていってください」
男性 : 「...ほう、なるほど?」
男性 : 「ではこの中で、君が最も”自信のある”作品はどれだろうか。教えてもらおうじゃないか。」/
「自信があるもの…そうですね、」ポートフォリオをパラパラとめくり
「…これはキマイラをモチーフにしています。ライオン、山羊、蛇が一対になっていて
彼らはギリシャ神話の英雄「べレロポーン」に悪として殺されてしまうのですが、僕はキマイラが恐れられずに自由に生きることができていたなら、その造形の美しさで多くの人を魅了すると思いました。
草原を悠々を駆け巡るキマイラを楠木という自然と共にある素材で表現した作品です」
2m程の木彫作品を見せます/
あなたの語りとともに作品を見れば、男はさらに満足そうにそれを見た。
男性 : 「ふむ、なるほど…良いじゃないか、気にいった。」
男性 : 「せっかくだ。その作品、ひとつ戴こうかな」/
「えっ…本当ですか、ありがとうございます!」
そんな様子の君を一瞥すれば、男はそれを手に取った。
その後に言葉は続かない。/
「…?え、っと…今日契約されますか…?」男性の様子を伺います
男性 : 「契約?何を勘違いしている。」
男性 : 「私はひとつ“戴こう”と言ったのだ。君はこんな粗末な作品のために、私に金を払えと?」
「…え?え…っと…」
「…僕の作品は、売り物なので…」思わず俯きます
突如としてかけられた心無い言葉。反応を返せば、目の前の男は立派な黒コートをはためかせ、言葉を返す。
上質に磨きがかった靴やちらりと輝きを放つ高級な腕時計から一目で、庶民離れした生活を送っているのだと分かる。
男性 : 「――――はっ、」
男性 : 「何とも傲慢なやつだ。いいか、君にとってこれがどれだけの価値を持つのかは知らないが、赤の他人にとってみれば、取るに足らない凡作に過ぎない。」
男性 : 「……多少は光って見えた石だが、どうやら見当違いだったようだな」/
「…ま、待ってください、貴方がお金を出したいと思える作品を作って見せます!ですので、連絡先だけでも…!」
黄金色の瞳の男 : 「すべての作品にはあらゆる角度で検証し、適正な価値を付けなければならない」
ふと、男の背後から凛とした声色が響いた。
男は思わず後ろへ振り替えると、そこにはその男とは対照的な眩しく白に染まったシャツを身にまとう男が立っていた。
その男は外国人特有の綺麗な黄金色の瞳をしていた。
しかし、男の整った鋭い口調は、まったくなまりを感じさせないごく端正なものだった。
黄金色の瞳の男 : 「そして、適正な価値に対しては、必ず相応の対価をもって支払われる。」
黄金色の瞳の男 : 「……しかし、貴様はそのどれにも該当していないようだな。物の価値も見抜けない節穴には、当然と言えるかもしれないが」
「…?あ、あの…、そうだ、貴方も良かったらポートフォリオを…」作品集を手に取り差し出そうとします
君が目の前の黄金色の瞳の男から目を背ければ、それを聞いた黒コートの男は目に見えて顔を赤くさせているのが見えた。
男は、その外国人へと掴みかかろうとする。
だが、すぐにその勢いは止まってみせた。
男性 : 「お前…ヴァンニの…!――ッッ、クソッ!」
そう捨て台詞を残し、黒コートの男は去っていく。
その後ろ姿を眺めた後、白シャツの外国人はふっとため息をつき、こちらへと歩み寄ってくる。
黄金色の瞳の男 : 「……すまない、邪魔してしまっただろうか」
「あっ……ありがとうございました…」去っていく男に声をかけておきます
「いえ、そんなことないです…良かったら作品見て行きませんか?」慌てて向き直ります
黄金色の瞳の男 : 「いや、それならよかった。接客中に見えたが...どうも対等な交渉で無いように見えてしまってな」
黄金色の瞳の男 : 「ああ。...私にも、君の作品のことを教えてくれないか」/
「ありがとうございます、ぜひ…!」作品集を手渡し説明を始めます
「…これは僕が1番力を込めた作品です。少し大きいですが実物はより精密で目が合いそうなリアリティがあると自負しています。あ、これが作品のドローイングで…」先ほどの作品や、その作品のスケッチ画などを広げ
「動物が得意ですが、人体彫刻も気に入っていただけると思います。
これはラミアというゼウスに認められるほど美しい女性が蛇の怪になってしまった神話生物なのですが…」無限に語っています
黄金色の瞳の男 : 作品集を手を取り、キマイラのページに目を留める。
黄金色の瞳の男 : 言葉に頷いて「ああ、素晴らしく精巧にリアリスチックに描かれている。空想上の生物をよくも躍動感を殺さず、こうも彫刻に閉じ込められたものだ」
黄金色の瞳の男 : 「―――スケッチも美しい。...究極に妥協を排除して造形を成した、その過程が目に見えるようだ」/
「…ありがとうございます…!
スケッチやマケットの販売もしているので、良かったらお手にとってください」
「そうなんです、躍動感や生命力を表現したくて…!」
黄金色の瞳の男 : 「動物だけでなく、人体の表現、果ては絵画の技術ですら卓越しているなんてな。...脱帽、といった所だ。非の打ちどころがない。―――これらは疑う余地もなく、素晴らしい作品だ。」
あなたの作品について改めて話せば、目の前の男は黒コートの男がとったようなうわべだけの相槌ではなく、度々質問を飛ばしながら、その言葉に熱中している。
黄金色の瞳の男 : 「…やはり、声をかけて正解だった。素晴らしい。」
黄金色の瞳の男 : 「…あぁ、どこの誰が口を挟んできたところで私の意見は変わらない。君の作品は、心から美しいと感じるんだ」
外国人の男の白く透き通った肌に静かに涙が伝う。
その様子はやや大げさに感じてしまうかもしれないが、それはあなたの機嫌をとるための演技などではなく、ただ純粋に感動しているのだと分かるだろう。/
「あ、ありがとう…ございます…」少し驚きますが嬉しそうにします
CCB<=5 【心理学】 (1D100<=5) > 1 > 決定的成功/スペシャル
〈精神分析〉〈心理学〉成功情報 : それはあなたに対してのものではないが、どこか罪悪感めいた感情を心の中で渦巻かせていることが分かる。
黄金色の瞳の男 : 「自己紹介が遅れてすまない、早く君の作品が見たくて仕方がなくてな。」
カミロ・ヴァンニ : 「私の名前は、カミロ・ヴァンニ。イタリアでちょっとした事業をやっている。君の名を教えてくれないか」
「僕は やく…時雨聖です。よろしくお願いします、ヴァンニさん」
カミロ・ヴァンニ : 「カミロでいい。ヒジリ、心に留めておこう。」
「わかりました、カミロさん。…ありがとうございます!良かったら、またぜひ。」
カミロ・ヴァンニ : 「またじゃなくても良い。...もう少しだけ、君と話がしたいんだ。」
カミロ・ヴァンニ : 「近くの店に場所を移さないか」/
「!…勿論です!すぐ準備しますね」急いで作品たちを片付けます。バタバタ
カミロ・ヴァンニ : 「急かすつもりはない。ゆっくりでいい、作品に傷がついてはいけないだろう」
「そ、そうですね。すみませんお待たせして…」ハッとして丁寧に作品をしまい
「…お待たせしました」
カミロ・ヴァンニ : 「いや、待っていない。むしろ今は、私が時間を”奪う”側だろう」
カミロ・ヴァンニ : 「では、ついてきてくれるか。もちろん、君がここを離れることで発生する金銭的損失は私が支払おう」/
「いえそんな。僕もカミロさんとお話したいので。
…申し訳ないですよ」と言いつつお財布は厳しいので多分甘えます
カフェに場所を移したあなたたちは、見晴らしのいい席に着いた。
カミロ・ヴァンニ : 「飲みたいもの、食べたいものはあるか?...好きなものを頼んでくれ。」/
「…すみません、ありがとうございます。それじゃあ、ホットコーヒーを一つ」
カミロ・ヴァンニ : 「わかった。」
この時間帯は客足が少ないのか、客はあなたたち2人だけだ。君の分のホットコーヒーと、自分の紅茶を頼めば、カミロは君へと向き直る。
カミロ・ヴァンニ : 「さっきは君のことばかり聞いてしまって、私のことは何も話さなかったな。悪かった。」/
「コーヒーごちそうさまです。
いえ。…すみません、お恥ずかしながらカミロさんのことを存じてなくて…」コーヒーを一口すすり
カミロ・ヴァンニ : 「無理もない。私はイタリアの資産家だから、この国で知られていないのも頷ける。まあ、あの黒コートの男は知っていたみたいだが。」
カミロ・ヴァンニ : 「曾祖父の代から続いている、美術関係を取り扱う事業が主でな。その跡取りになるべく、今はその手腕を磨いているところだ。」紅茶を啜りながら彼は語る /
「そうなんですね。それで日本まで…?」
そう君が言えば、カミロは目線を外し、少しだけ沈黙する。
「…?」
カミロ・ヴァンニ : 「贖罪かもしれない。」ぼそりと呟いた
カミロ・ヴァンニ : 「――――いいや、こちらの話だ。聞かなかったことにしてくれないか。」再び紅茶に口をつけた /
「…あ、はい。もちろん。」なんとなくコーヒーを飲みます
カミロ・ヴァンニ : 「私について話せるのは、これくらいだろう。作品の話に戻ろうか。」
カミロ・ヴァンニ : 「単刀直入に言おう、...私は君の作品を買い取りたい。」/
「ぜ、ぜひ…、是非!」少し声が大きくなり
「…どの作品がお気に召しましたか?」ガサゴソとポートフォリオを取りだし机に出します
カミロ・ヴァンニ : 「全てだ。」
「……え?」
彼は、作品に対する評価点を丁寧に挙げていく。
その全ては君によって尤も足り得るものばかりで、彼の観察眼の鋭さを肌に感じる。
カミロ・ヴァンニ : 「君の作品を、...君の手腕を買い取りたい。」/
「……も、勿論、僕からすればとてもありがたいのですが…」
「すみません、今まで…その、こんなことなかったので少し動揺してて…」
カミロ・ヴァンニ : 「そう。そうなんだ、ヒジリ。」
カミロ・ヴァンニ : 「―――仮に、さっきの男に君の”キマイラ”が買い取られようとしていたとしよう。...その時、君はいくらの対価を要求したんだ?」/
「あの作品は、えっと…日本円で170万です」
カミロ・ヴァンニ : 「......からかっているんじゃないだろうな」訝しんだ /
「え?あ、でも…それくらいは頂かないと材料費とかもあるので」わた…
カミロ・ヴァンニ : 「―――...すぎる、」
「え?」
カミロ・ヴァンニ : 「私がそれを買い取るにあたって、君の提示する金額はあまりにも安価だと言っているんだ」
カミロ・ヴァンニ : 「ここまで話しておいて、冗談はよしてくれ。それとも、君は本気で170万とそれを等価だと見ているのか」/
「…それは………いいえ。
ですが…今まで他の作品もこのくらいの値段で売っていたので、急に値段を変えるわけにもいかないですし…」
カミロ・ヴァンニ : 「......」少し考えこんで
カミロ・ヴァンニ : 「まぁ、無理もない。...それは君の限界ではなく、君の立っている舞台の限界なのだから」
カミロ・ヴァンニ : 「―――それこそ、キミがその金額を、”妥当”だとせざるを得ないほどに。」
カミロ・ヴァンニ : 一呼吸おいて
「......私には、夢があるんだ。」/
「…」
「夢…ですか?」
カミロ・ヴァンニ : 「ああ、そうだ。......それは、私だけの美術館を開催すること。そこにぜひ、君の作品を展示したいのだ」
カミロ・ヴァンニ : 「だが、そのためにはまず、世間に君の作品を認めさせなければならない。...まさしくこれは、君の立つ舞台の問題だ。...そうだろう」/
「………」息を飲み
「カミロさんの美術館…に…僕の作品を…ですか?」
カミロ・ヴァンニ : 「ああ、そうだ。私が選び抜いた素晴らしい芸術のみを連ねた、私の資産家としての一世一代の牙城。......開催はまだ何年も後になるだろうがな」
「………それに、僕を…選んでくれる、ということですか?」
カミロ・ヴァンニ : 「ああ、まさしくそうだ。そこに加えるに、君の作品はふさわしい。そう心から思ったのだ。」
カミロ・ヴァンニ : 「それに、時に私は思うのだ。―――たった一つの“美術品”に対する下らない偏見、作者のこれまでの肩書き。一体これらに何の価値があるのか。」
カミロ・ヴァンニ : 「私たちが目を向けるべきなのは、その作品に向けられた研ぎ澄まされた技術、作者の内に秘められた類稀なる創造性、そういったもののはずなのだ。」
カミロ・ヴァンニ : 「だが、この狭い国では君の“美術品”を正しく評価するものは一人としてい
ない。これほど残酷なことはないだろう」/
「……、ありがとう…ございます…。…僕の作品は、いつも正しく見られなかった。…作品だけを見て評価してくれる人はいなかった、それが苦しくて…」
カミロ・ヴァンニ : 「それには同情する。辛かっただろう。......本当に、ここまで君の世界を作り上げ続けてくれて、ありがとう」
カミロ・ヴァンニ : 「突飛な話になるのは、わかっている。―――しかし、私は君を世界に認めさせたいのだ。...だから、」
カミロは真剣な面持ちであなたを見つめる。
カミロ・ヴァンニ : 「どうか、私の故郷ミラノへ来てくれないか」
「…ミラノ、へ……」
「…少し考え…………、…い、いや…。…わかりました。」
「僕は、カミロさんの…貴方のために、そして僕自身のために作品を作る。…ミラノへ連れて行ってください」
その言葉に頷けば、カミロは先ほどまでの仏頂面をわずかに解き、小さく笑みを浮かべる。
カミロ・ヴァンニ : 「そうか。良かった。」
カミロ・ヴァンニ : 「きっと長い付き合いになるだろう。ヒジリ、これからよろしく頼む。」/
「はい。よろしくお願いします、カミロさん。」しっかりと見つめて応えます
カミロ・ヴァンニ : 「さて、あの”キマイラ”はやはり、今ここで買い取ることにしよう。...だが、これはあくまで前金だ。残りの金額は君が名を上げてから、“相応の対価”をもって支払おう」
カミロは取り出した小切手に、すらすらとその金額を連ねていく。
その額はあなたにとってあまりに現実感のない数字だった。
ゼロが横一列に並んだその金額は、これまで一度に手にした額のどれよりも大きかった。/
「なっ………………」
カミロ・ヴァンニ : 「......足りないだろうか?」申し訳なさそうに
「え?!いやいやいや…へ…?????」かなり大きな声が出ます
「流石に多すぎます…!こんな額…」
カミロ・ヴァンニ : 「これが”相応の対価”だ。受け取ってくれないか。...そうでなければ、私は君の作品を受け取るに値しない」
カミロ・ヴァンニ : 「私は君が、世界が認める美術家として大成できると確信している。...その初めの段階として、君が、君自身の芸術の価値を理解する必要がある」
「…世界…ですか」噛み締めるように
「……………わ、わかりました。…貴方の期待に応えて見せます。必ず。」
カミロ・ヴァンニ : 「そこまで気負う必要はない。...と言っても、そうだな。その重圧すら、美術家としての君の刺激になれば良い。」
カミロ・ヴァンニ : 「それでは一週間後、またここで会おう。私もそれまでに手続きをしておこう。―――きっと、しばらくは日本に帰れない。君も未練のないよう準備を整えておいてくれ」/
「…はい。問題ありません。…よろしくお願いします」
君たちはカフェを出る。外の天気が、いつもより青く目に映った気がした。
――――――――
静なるテロリスタ
HO.美術家個別導入
-1日目セーブ
2006.October
・喫茶店
――――――――
[2006年11月上旬]
あれから一週間、約束の場所へと向かうとすでにカミロが君のことを待ちわびていた。
カミロ・ヴァンニ : 「来たか。それでは、さっそく向かおう」/
「お待たせしました。…はい」
カミロ・ヴァンニ : 「待っていない、大丈夫だ。ついてきてくれ」
カミロは君を連れて待ち合わせの場所を離れる
そして、カミロが君を連れて真っ先に向かったのは空港だった。
そこには長い黒髪を留めた一人の女性がスーツケースを引いて二人の到着を待っていた。
国府レイ子 : 「あ、カミロヴァンニさん。」
カミロ・ヴァンニ : 「こんにちは。待たせてしまってすまないな」
「…初めまして、時雨聖です。」女性にぺこりと会釈をします
国府レイ子 : 「国府レイ子と申します。よろしくお願いします」
君たちが挨拶を済ませれば、カミロはその国府と名乗った女性を紹介する。
カミロ・ヴァンニ : 「彼女はとある企業で研究職として働いていたが、君と同じくその才能を妬まれて界隈を追放された人物だ。」
カミロ・ヴァンニ : 「彼女も私の故郷に招待したのだ。」
カミロ・ヴァンニ : 「とはいえ職場の都合上、ヒジリとは接点は少なくなるだろうがな。」
「…成程。よろしくお願いします国府さん」
君がそう言えば、国府は軽く会釈を返した。
カミロ・ヴァンニ : 「ああ、とはいえこうして同じ便を共にする仲だからな。よろしく頼む」
カミロ・ヴァンニ : 「それじゃあ2人とも、時間が迫っている。早速ボーディングを始めよう。付いてきてくれ」
「わかりました」ついて行きます!
その後君たちは、当然と言わんばかりにファーストクラスの席へと促される。
約十五時間のフライト。
それらを経て、君たちはミラノ空港へと到着した。
芸術都市ミラノ。ミラノ大聖堂やブレラ絵画館をはじめとした観光名所に、それに並んで立つゴシック様式の数々の建物。
そのどれもがあなたの琴線に響き、白黒だった景色が突如として色彩を帯びはじめたかのように感じるだろう。
カミロはその壮大な街並みを前にして、誇らしげな笑顔を浮かべてみせた。
カミロ・ヴァンニ : 「素晴らしいだろう。ここが芸術都市と名高いミラノだ。」
カミロ・ヴァンニ : 「よく私の故郷へ来てくれた。心から感謝する」
「…本当に、きたん、だな…」街並みに圧倒されます
カミロ・ヴァンニ : 「君たちが暮らした日本とは、きっと街並みも文化も全てが異なるものだろう。是非、此処での暮らしに慣れてもらえたらと思う」
カミロ・ヴァンニ : 「さて、君たちの新居はすでに用意してある。」
「…何から何までありがとうございます。」
カミロ・ヴァンニ : 「当然のことだ。気にしないでくれ」
カミロ・ヴァンニ : 「だが、このまま解散しては少し味気ないだろう。...この町を、私に案内させてくれないか」
「いいんですか?是非…!」声が弾みます
あなたが肯定の返事を返す中、国府は申し訳なさそうに首を横に振った。
国府レイ子 : 「すみません。少し長いフライトで疲れてしまって…。今日はこの辺りで失礼します。」
国府レイ子 : 「ヒジリさん、でしたか。...応援しています。どうか頑張ってください」
「あ、そうですよね。ゆっくりなさって下さい。」
「ありがとうございます。レイ子さんも、お互い頑張りましょう。」
君たちは国府の後ろ姿を見送った。
カミロ・ヴァンニ : 「仕方ない。すべての人間にとって必ずしも美術は興味を引く対象とはなりえない。」
頷きます
カミロ・ヴァンニ : 「君はどうだろう。行きたい場所はあるだろうか。...無ければ、私が連れまわそう」
探索可能な施設 :
▽観光名所
ブレラ絵画館には“死せるキリスト”をはじめとした多数の貴重な絵画、ミラノの顔であるミラノ大聖堂にはナポレオンが命じて施されたという高名なステンドグラスが飾られている。
また、それらに限らずともこの町には様々な美術に関するものに溢れている。
▽カフェ
歩き疲れたなら休憩も大事だ。美味しい飲料と、小腹を満たす食事を提供してくれる。人目が気にならないこの場所では、落ち着いた話でもできるだろう。
「いいんですか?ロンダニーニのピエタが見たい…です!」キラキラ
カミロ・ヴァンニ : 「ああ、スフォルツァ城か。......確かに、君らしいリクエストだ」
カミロ・ヴァンニ : 「それならば、ここからもそう遠くはないだろう。...そこらを軽く回って、軽食でも取ろうか」
カミロ・ヴァンニ : 頬を緩め、君に語り掛けた。
「ありがとうございます、嬉しい…」嬉しそうに笑います
では、あなたたちがそう会話を交わせば、カミロは足早に君を導く。
カミロ・ヴァンニ : 「こっちだ、来てくれ」
駆け寄りつつ着いて行きます
その後もカミロは、ミラノ市街を迷うことなく進むだろう。
時折背後のことを気にかけては、君が逸れず、この新天地できちんとカミロに続けているかを確認しているようだった。
中心地のドゥオーモから歩いて5分。
綺麗な石畳の広々とした通りを君たちは通っている。両脇で立ち並ぶ、おしゃれな店が視界を彩った。また、そのすべてはガラス張りだ。
突如、空に伸びる高い塔が目に飛び込んでくる。
街中に聳え立つシンメトリーのその姿は、まるで空と大地を繋ぐ巨大な柱のようにも見えるだろう。...それが、スフォルツェスコ城の入り口だ。
カミロ・ヴァンニ : 「着いた。ここがスフォルツァ城だ。...ロンダニーニのピエタを保存する美術館も兼ねる、かつてのミラノ公国の要塞だ。」
心ここに在らず、というように目の前の建物に目を奪われているようで
「………毎日これる…」
カミロ・ヴァンニ : 「目の前の塔や要塞は、確かに美しい。」頷いて
カミロ・ヴァンニ : 「かのミケランジェロの好敵手、レオナルド・ダ・ヴィンチも建設に加わったとされる、かつてのスフォルツァ家の居城だからな」
カミロ・ヴァンニ : 「ああ。それに...この場所のみならず、ミラノには彫刻が溢れている。―――実際この広場にだって、乗馬する、かのスフォルツァ公爵の彫刻があるはずだ」
「い、行きましょうカミロさん…!」ソワソワと様子を伺う
スフォルツェスコ城の入り口前、円形の噴水の傍らには、確かに馬に乗ったスフォルツァ公爵の彫刻が置かれていた。
そんな光景を遠くから眺める。まるで映画の中に迷い込んでしまったかのような錯覚が、君に走るかもしれない。
カミロ・ヴァンニ : 「ゆっくりと見ればいい」
カミロ・ヴァンニ : 「それに、君はこれから、ミラノの人間になるんだ。......好きなタイミングで好きな場所に行き、好きなだけ刺激を得てほしい。それが、私が君に期待することだ」
「……はい、ありがとう…ございます…」
カミロ・ヴァンニ : 「ただ。ここの広場でゆっくりと時が流れるのを感じるのも結構だが、チケットの時間が迫っている。...生憎だが、そろそろ入ろうか」
「…はっ!そ、そうですよね…!」
「すみません、行きましょうか」カミロに視線を戻し
カミロ・ヴァンニ : 「ああ、付いてきてくれ。」
スフォルツェスコ城に併設される市立美術館は、多くの人でにぎわっていた。観光客の国籍は様々で、いかにこのミラノの芸術が人を惹きつけるかを肌身に感じた。
多くの作品が展示されているが、君たちは一つの作品の前で最も長く足を止めることになるだろう。
『ロンダニーニのピエタ』。――ミケランジェロが生前最後に手がけた、大理石彫刻だ。
「………わ……ぁ…」
「僕、王道すぎて恥ずかしいんですがずっとミケランジェロが好きで…
彼と同じ地に、来たんだなって……夢みたいだ」
カミロ・ヴァンニ : 「君は、ミケランジェロが好きなのか。」
「…はい。実は一度幼い頃に家族に連れられてイタリアに来たことがあって…それまで日本では仏像とかを…よく見たりしてたんですけど」
「教会や美術館だけじゃなくて街中にも沢山の芸術に溢れていて…本当に全部感動したのですが、サン・ピエトロ大聖堂でミケランジェロのピエタを見て、こう…ありきたりですが言葉を失ってしまって…」
「そこからミケランジェロの作品を模刻したり、中から掘り出すような彫刻を試してみたり…そんなことはできなかったですけど」ちょっと早口
カミロ・ヴァンニ : 「ああ、君は彼に多分に影響を受けていたんだな。なるほど、通りで」
「西洋の美術に興味を持ったのはミケランジェロのおかげですね」恥ずかしそうに笑う
カミロ・ヴァンニ : 「素晴らしい。私も彼の美術と、伴う思想が好きだ」
カミロ・ヴァンニ : 「―――ミケランジェロは、紛うことなき天才だ。」
カミロ・ヴァンニ : 「若き頃の彼はその驚異的な腕を持って、人間の”若さ”からくる美しさを描くことに恐ろしく秀でていた。......時間が奪う刹那の美しさを、”永遠”へと変貌させたんだ。」
カミロ・ヴァンニ : 「だが打って変わって、彼の晩年に作り上げられたこの作品では、若さの美しさは微塵も存在しない。或いは、意図的に描かれていない」
カミロ・ヴァンニ : 「悲しみと、聖母らの慈愛。それらを湛えて、確かにこの作品たちは生きている。―――彼の作品はまるで、残酷に流れる時間、運命の写し鏡のようだ。......私はそれに、胸が詰まるような思いを抱くんだ」/
「…そうですね。確かにこの作品は未完で、細部も甘いし構成も変える途中で粗が残っている。
…ミケランジェロの晩作とするには美しさは欠けているかも知れないですね。」
「ですが…僕は自身の死と共に彫り上げたこのピエタこそが、彼の生涯の答えでああり…彼自身なんじゃないかなと…まあ勝手な解釈なんですが。
…この作品に出会って、僕も死ぬまで手探りで自分を探し続けたいと思って…
…えっと、だからこの作品、1番好きなんです」
「僕も、作品は生きていると思ってます。…このピエタは生きている…僕なんかよりずっと、力強く………」
「…えっと、なんか…語っちゃって…すみません」我に返って恥ずかしそうに肩をすくめる
あなたがそう言えば、カミロの表情が少し綻んだ気がした。
カミロ・ヴァンニ : 「...そうだな、そういう見方もできるだろう。間違いなく、かの天才の人生の命題は、これに描かれている通りだ」
カミロ・ヴァンニ : 「――だからこそ私は、君の作品を、これからも沢山見てみたい。....そうも心に願うんだ」
カミロと君はその作品の説明と共に、美術に対する真摯な思いを語り合った。
〈芸術:任意〉に1d10の成長チェックが発生する。
1d10 (1D10) > 1
カミロ・ヴァンニ : 「ここに居られる時間も限られている。そろそろ、次の箇所に向かってもいいだろうか」
「はい、次はどこにいくんですか?」
カミロ・ヴァンニ : 「サンタ・マリア・デッレ・グラッツィエ教会。壁画、”最後の晩餐”のある地と言えば馴染みがあるだろうか」
「ああ、ダヴィンチの。あそこって予約…」初めてチケットのことに疑問を抱きます
「…ここもチケット…は!す、すみません全然気づかなくて…!」
カミロ・ヴァンニ : 「ああ、押さえている時刻なら1時間後だ。...そろそろ移動しないといけない時間だろう」
カミロ・ヴァンニ : 「いいんだ、君がミラノに来るにあたって、ある程度 ”おもてなし” をする必要があるだろう?」軽く笑みを向けた
「…、も、もてなされすぎな気がします……ありがとうございます…」
カミロ・ヴァンニ : 「では、行こうか。」
君たちが次に向かうは、同じくミラノ、サンタ・マリア・デッレ・グラッツィエ教会。
ルネサンス様式を取り入れたゴシック様式の教会は、よく街中に順応しており、暖かく君たちを迎えているようだった。
カミロ・ヴァンニ : 「着いたな。ここが例の教会だ」
カミロ・ヴァンニ : 「この町は著名な美術品で溢れている。私も来るのは久々になるが、足が自然と道のりを覚えていたみたいだ」
「…ここに足を踏み入れるのは初めてです。」チケットを握りソワソワしています
君たちは観光客たちの列に並び、順番を待つ。
やがて指定された時間になれば、君たちは中へ入ることになる。
暫く時が流れた。君たちは、代表的な作品『最後の晩餐』の前に立っている。
カミロ・ヴァンニ : 「”最後の晩餐”。絵画自体は写真などの媒体で見たことがあるだろうが....こうして、壁画を見る者は多くはないだろう」
カミロ・ヴァンニ : 「ああ、しかし...君とは分野が少し異なるだろうか。君はどこまで、この絵のことを知っている?」
「…そうですね、キリストと裏切り者のユダが描かれていて…一点透視図法が美しいと…」
カミロ・ヴァンニ : 「さすが、詳しいな。」
カミロ・ヴァンニ : 「その通り、この絵画は使われている技法の水準の高さ、描写の緻密性ももちろんだが、...13という数字の所以、宗教的にも強い意味を持った絵画だ」
「予備校で習ったくらいの知識ですが…。13ですか?」
カミロ・ヴァンニ : 「ああ、そうだ。様々な宗教神話。或いは古代科学において、13というのは往々にして忌み嫌われる未知数だが」
カミロ・ヴァンニ : 「この話に限れば、裏切者たるユダが座るのはこの会席の13番目の席だ。また、ユダの後にマティアが12番目の使徒となったことから、ユダを”13番目の使徒”と扱うことも多い」
「聞いたことある気がします」
時間が限られていることもあり、それは断片的であったが、カミロはその作品の説明と共に美術に対する真摯な思いを語る。
〈芸術:任意〉に1d10の成長チェックが発生する。
1d10 (1D10) > 8
カミロ・ヴァンニ : 「...長らく語ってしまって、すまない。私はこの絵が好きなんだ」
「いえ、知らないことや…カミロさんの話が聞けて嬉しいです。」
カミロ・ヴァンニ : 「そうか、それなら...嬉しい限りだな。君が今後描く作品の、インスピレーションの一片にでもなれば良い。」
カミロ・ヴァンニ : 「そろそろお腹が空いただろう。このあたりに行きつけのカフェがあるんだ。軽食でも取りながら、話をしないか」
「…そういえばお腹すいた気がします」へへ、と笑い
カミロ・ヴァンニ : 「それなら丁度良い、行こう」
君がカミロに続けば、教会を後にしてカフェに向かうことになる。
カミロは、行きつけのカフェに君を案内した。
そこは意外にも庶民的なカフェで、慣れたように奥の座席へとあなたを促すだろう。
カミロ・ヴァンニ : 「私が幼い頃、よく家を抜け出してな。」
カミロ・ヴァンニ : 「それでめいっぱいこの町を満喫し、そして帰りにこのカフェに寄ったものだ」
「雰囲気の良いカフェですね。…家を抜け出したくなる時があったんですか?」座りながら
カミロ・ヴァンニ : 「ああ、...そうだな。若い頃私は、己の人生に課せられた重い使命に息が詰まりそうになっていたこともある」
カミロ・ヴァンニ : 「誰だって、自分の出自、或いは環境から―――生まれながらにして、或いは後天的に。使命を背負うことがあるだろう」
「…そう、ですね」
「………わかります、多分」
カミロ・ヴァンニ : 「...今になっては、この使命も辛いものではない。全ては、私に夢が出来たお陰かもしれないが」
カミロ・ヴァンニ : 「さあ、好きなものを頼むといい」
彼が一瞬、何かを思い返すように目を細めたのが見えた気がした。
彼はメニューを君に見せてくるだろう。
「…、ありがとうございます。」メニューを受け取り
「………あ、っえーっと…すみません、僕イタリア語…読めなくて…」申し訳なさそうにメニューから目線を上げます
カミロ・ヴァンニ : 「.....ああ、そうか。そうだったな、すまない。――すっかり失念していた」
「…勉強しなきゃですね」
カミロ・ヴァンニ : 「イタリア語に不自由することもあるだろう。......この町が気に入ったなら、私でよければ少し教えよう。自慢ではないが、人に何かを教えることは得意なのでな」
「え、良いんですか…お時間があれば是非…お願いしたいです」
カミロ・ヴァンニ : 「ちょうど良い機会だ。今、少し教えよう」
君は、短い時間のレクチャーではあるが、彼から言語を習得する。
〈ほかの言語:イタリア語〉に1d10の成長チェックが発生する。
1d10 (1D10) > 3
「…成程。カミロさん教えるの上手いですね
…難しいけど、復習しておきます」
カミロ・ヴァンニ : 「ああ。今の内容さえきちんと習得できれば、最低限の注文、生活なら問題なく送れるだろう」
「え、っと…じゃあ、これ?ナポリタンにしようかな。あとコーヒーを一つ。」
カミロ・ヴァンニ : 「...折角だ、早速自分で注文してみればいい」
「えっ…そうですよね。…やってみます」
カミロが店員を呼べば、彼は紅茶を頼んだようだった。
あなたも、彼から学んだ知識を総動員させてにはなるが、望むものを注文できただろう。
カミロは注文した紅茶をすすると、少しだけ懐かしそうな表情であなたを見つめる。
それはどこか羨望にも似た眼差しにも見えたが、優しく微笑んでみせた。
カミロ・ヴァンニ : 「....これも私の幼い頃の話だ。当時、私は君のように美術家だった。」
カミロ・ヴァンニ : 「…いや、美術家と自称するにはあまりにもお粗末ではあったが。どちらにせよ、父に連れられ“最後の晩餐”を見せられた時から、私は画家に対して強い憧れを抱くようになっていた」
カミロ・ヴァンニ : 「思い出すな。あれは…クジラの絵を描いた時だったか、父にそれを見せた時、とても喜ばれてな。その笑顔を見て、一種の才能を私の中に感じた。」
カミロ・ヴァンニ : 「だが、それはただの勘違いだった。気づくのに大分時間はかかった。それでも、筆をとるのはやめても、この世界から離れることはできなかった。」
カミロ・ヴァンニ : 「だからこそ、君のような才能ある者を見た時、つい思い出してしまった」
カミロ・ヴァンニ : 「すまない、私の話ばかりしてしまったな。」
「いえ。お話が聞けて嬉しいです。」
「…今は全く描かれていないんですか?」
カミロ・ヴァンニ : 「描いていない」
カミロ・ヴァンニ : 「己にその才能がないと気づいてからは、芸術を味わい、見出す方へと忠心してきた」
「そう、なんですね…。」
「僕も、この世界から離れられなくて、藻がいていたんだと…思います」
カミロ・ヴァンニ : 「私の話ばかりするのも悪いな。」
「君のミケランジェロへの話を聞いたとき、近しいものを感じたんだ。それでつい、思い出してしまった」
カミロ・ヴァンニ : 「...君はなぜ、ここまで作品を作り続けてきたんだ?―――それも、”離れられなかった”というのが正着になるのだろうか」
「僕…は…」
「…作家名と本名を分けていることは少しお話したかと思いますが、僕の家はまあ所謂芸術一家で…祖父が日本では有名な彫刻家で」
「父も母も界隈では名の知れた美術家で…当然僕も芸術を極めていくのだろうと、幼いながら自身も思っていて…それに値する支援ももちろん受けていて」
「当たり前のように評価されて、自分の作品を名だたる評論家に見てもらえることもあって…。
僕もそれを享受することは悪いことではないと、これも才能なのだと思っていたのですが」
「…ある時ふと思ったんです。“薬師家の娘の作品“は、本当に僕の作品なのかと…、家の名がなくても自身を証明できるはずだと」
「…僕は、誰でもない僕を証明したいんです。僕にはそれができるはずだと、思って、いて…」
カミロ・ヴァンニ : 続きを遮るように言葉を続ける
カミロ・ヴァンニ : 「それ以上はいい。」
カミロ・ヴァンニ : 「君は、そういう境遇の人間だったんだな。...通りで、君の作品以外の一面にすら、私が惹かれたわけだ」
彼は一呼吸を置いた。それに続ける言葉を、ゆっくりと吟味しているようだった。
カミロ・ヴァンニ : 「それならば私が、君を、...”シグレ ヒジリ”を世界に導こう。」
カミロ・ヴァンニ : 「君の掲げるその命題の証明は、この世界で、私と君自身にしか出来ないことだ」
カミロ・ヴァンニ : 「世界で輝く、君の作品が見たいんだ。」
カミロ・ヴァンニ : 「―――見せたいんだ、君が、世界に認められる瞬間を」/
「…世界に、証明…する…」
「…証明します。僕は…貴方と世界に立ちたいです。」
カミロは確かにあなたに笑みを向け、紅茶の入ったカップを空にした。
カミロ・ヴァンニ : 「やはり、長い付き合いになりそうだな」
カミロ・ヴァンニ : 「懐かしい空間で、良い時間を過ごせた。...さて、そろそろ新居を紹介しようか」
「はい、…楽しみです」最後の一口を飲みきり席を立つ
こういてあなたたちは、カフェを出ました。
こうして車に揺られること数十分、そこは高級住宅街の一角だった。
戸建ての豪邸が立ち並んでいる。その内の一軒へと止まった。
カミロ・ヴァンニ : 「ここだ。」
「…………え?」
「…さ、流石に、…違くないですか…??」
カミロ・ヴァンニ : 「ああ、そう言われるのももっともだろう。」
カミロ・ヴァンニ : 「かなり急なスケジューリングだったからな。辺りと比べると多少グレードが落ちてしまった」
「え?いやいやいや、違います、こんな…豪邸みたいなとこ…」
「す、住めませんよ!こんなとこ…!!!!」
カミロに紹介された豪邸も、また当然ながら豪邸に違いはなかった。
グレードが落ちていると表現した住宅だが、辺りの豪邸と見比べても遜色はしていない。
カミロ・ヴァンニ : 「やはりそうか、失礼なことをした。....すまない、今は我慢してほしい」
カミロ・ヴァンニ : 「必要なら、時間さえ貰えればにはなるが、よりよい物件に取り換えよう」
「…………いえ、あの、本当に…
……あ、ありがたく此処に住まわせていただきます…」
カミロ・ヴァンニ : 「よかった。不満があれば、すぐに言ってくれ。改善できるものであればすぐに対処しよう」
「無いです!本当に!とても満足してます…!」珍しく大きな声で
カミロ・ヴァンニ : 「もちろん、家事や掃除の類は全てハウスキーパーが執り行う。君は、制作や息抜きに専念してくれれば良い。」
「ハウス…?あ、ああ、なる…ほど…?」理解を放棄した顔
そう言えば、彼は君を中へと導くだろう。
玄関ですらも、君の常識とは規格外に広い。びっくりしちゃう。
中へ入ると、下手をすれば子供部屋ほどの大きさはあるトイレや開放的にデザインされた二段構造のリビング。君ほどの出自の者ですら、どれもドラマや映画でのみでしか見ることの叶わない光景ばかりだろう。
言葉を失ってます
カミロ・ヴァンニ : 「集合住宅ではなく、こうした戸建ての住宅であれば、君も作品制作に没頭できるかと思ってな」
カミロ・ヴァンニ : 「このような物件ではあるが、頑張って繕った方だ。許してくれないか」
「…そ、そうです、よね…騒音を気にしなくて良いのはとても助かります…ね…?」
「夢…?いやいやいや…」独り言のように呟き
一通り物件を回り終える。
あまりにも現実離れした彼の常識に、すでに君の脳のキャパシティーは不足し、悲鳴を上げているかもしれない。
カミロ・ヴァンニ : 「―――さて、地上はこんなものか。」
「チジョウハコンナノモカ…?」
カミロ・ヴァンニ : 「ああ、決定的に足りないものがあるだろう。地下は、君のアトリエだ。」
カミロ・ヴァンニ : 「こっちに地下室へ続く通路がある。来てもらえるか?」
「…」言われるがままに着いて行きます。もう、わかんない。
カミロはそう言って地下室を案内する。
そこにはあなたが作品を作るのに最適な環境が整えられていた。
カミロ・ヴァンニ : 「ここが君の工房だ。君の創作に必要と思しきものはすべて取り揃えた」
カミロ・ヴァンニ : 「もし、他に必要なものがあれば、こちらがいつでも用意しよう」
「…広すぎる、こんなところで制作ができるんですか…?」
カミロ・ヴァンニ : 「ああ。満足のいく制作にはこの程度の広さが最低限だろう」
「最低…?」少し怖くなってきている
カミロ・ヴァンニ : その言葉を聞けば、少し考えて返す
カミロ・ヴァンニ : 「確かに、君はこれまで慎ましい生活を送ってきているからな、...驚くのも理解はできる」
カミロ・ヴァンニ : 「だが、君はいずれ、世界に名を轟かせる芸術家になるんだ。...であれば、この程度の暮らしに慣れることは、必要なことだろう」
「…成程…?…そう、ですよね。」無事言いくるめられました
カミロ・ヴァンニ : 「ああ、理解してもらえたようで嬉しいよ」
会話を終えると、カミロはふと腕時計で時間を確認した。
カミロ・ヴァンニ : 「さあ、君に新居を紹介するという目標は終わったな。...今日はこのくらいで解散にしようか」
「…もうこんな時間…。長い間付き合って頂いてありがとうございました。」言われて時計を見ます
カミロ・ヴァンニ : 「また何かあれば連絡してくれ。...あと、これからは定期的にこちらから顔も出すとしよう」
「はい。…正直今すぐ制作したいくらいなので、次会うときにはまた色々見せられると思います」
カミロ・ヴァンニ : 「君の成長を、楽しみにしているよ」
カミロ・ヴァンニ : 「...それじゃあ、良い夜を」
「はい、おやすみなさい。」
こうしてしばらくの間、あなたはこの工房を拠点として創作活動に精を出すことになる。
ミラノでは美術的な観点において様々な刺激に溢れている。アイデアに
困ることはないだろう。
――――――――
静なるテロリスタ
HO.美術家個別導入
-2日目AM. セーブ
2006.November
・自宅
――――――――
[2011年3月初旬]
あれから五年が経つ。
あなたは洗練された環境で実力を向上させ、着実に世間の評価を伸ばしてきていた。
あれだけ広々とした工房も今ではかなり雑多としている。
〈芸術:〇〇〉に+3d6の成長チェック、さらに〈ほかの言語:イタリア語〉に2d6の成長チェックが発生する。
3d6 彫刻成長 (3D6) > 14[2,6,6] > 14
2d6 イタリア語成長 (2D6) > 7[3,4] > 7
そんな時、カミロがあなたのもとへ訪ねてくる。
カミロ・ヴァンニ : 「精が出るな。」
カミロ・ヴァンニ : 「…いや、それも当然か。来週にはミラノ美術公募展だ。君の作品を楽しみにしている。」
「ああ、カミロ。
お疲れ様です。…はい、必ず貴方が望む以上の作品を完成させて見せますよ。」
そう、来週に控えるのはミラノ美術公募展。著名な美術家たちが審査員を務めるこの企画は、あなたにとって一世一代のチャンスだ。
この日のためにあなたは魂をもこめた作品を完成させていた。
ではここで、〈芸術:彫刻〉を要求いたします。/
CCB<=90 【芸術(彫刻)】 (1D100<=90) > 51 > 成功
では制作中のあなたは、手元の作品に、未完ながらも確かな手ごたえを感じていることでしょう。そしてそれは、今までのどの作品よりも強い。
カミロ・ヴァンニ : 「...実は、ミラノ美術公募展には私も審査員として参加する」
カミロ・ヴァンニ : 「だが、決してひいき目には見ないつもりだ。」
「贔屓されても困ります。…そういうの、僕が嫌いって知ってるくせに」肩をすくめます
カミロ・ヴァンニ : 「ああ、知っているとも」
カミロ・ヴァンニ : 「...だが、そんな杞憂すらも、必要なかったみたいだな」
カミロが、君の手元の作品にちらりと目を向けたのが分かった。
「…本当はすぐにでも貴方の感想が聞きたいのですが…我慢しますよ」
「終わったら是非感想を聞かせてくださいね。」
カミロ・ヴァンニ : 「ああ。当日を、楽しみにしている」
カミロは多くは言わず、ただそう呟くように零す。
確かな緊張感に身を包むあなたは、当日に向けて制作を進めるのだった。
[2011年3月中旬]
ミラノ美術公募展当日。
その日、展示される作品は有力な美術家からかけだしの芸術家まで多くのライバルたちが応募した数百の作品から選抜されたごく一部となっている。
さらに、この展示会ではコンクールとしての一面も強く、その選抜されたごく一部の作品を著明な美術家や評論家たちが審査を重ね、その年の大賞が決定されるのだ。
会場へ赴けば、そこには数々の美術品が展示されている。
だが、それらの作者は有力な美術家たちで多く占められ、どこかで聞いたような名前がほとんどだった。
当然、その向けられた技術や発想力は卓越している。/
「…流石に、見知った名前しかないな。」会場へ足を踏み入れ
その時、どこからか声がかかった。
誰かと思って振り向けば、そこにはカミロが立っていた。
カミロ・ヴァンニ : 「ヒジリ、もう来ていたんだな」
「わっ…カミロ、急に声かけられたら驚きます」
「他の作品も見たくて。」
カミロ・ヴァンニ : 「私もざっと歩いてみて感じたのだが、今年のレベルはかなり高いな。」
カミロ・ヴァンニ : 「去年よりも、作品の質の平均は随分と上がっている。...私も、審査のしがいがあるというものだが。」
「そう…ですね。どれも美しくて見応えがあります。見ていて楽しいです。」
「…僕の作品もカミロの目に留まると良いけど。」作品を眺めながら呟き
カミロ・ヴァンニ : 「ああ、まさしく。回ってみて、全ての作品から美しさや思想、技巧を強く感じたよ」
カミロ・ヴァンニ : 「そして、」
カミロ・ヴァンニ : 「...君は、この五年間で成長した。―――きっと今の君には、この舞台ですら十分戦える能力があるとも。...私は思うんだ」
カミロ・ヴァンニ : 「君に1つ、見せたいものがある。」/
「ありがとう。…貴方が信じてくれる僕を、僕も信じてます」
「…?見せたいものですか?」
カミロはあなたの腕を引き、一つの作品の前まで連れていく。
そこにあったのは見間違うはずもない、あなたの作品だった。
あなたの作品は幾多もの作品から見事選抜されてここに飾られているのだ。周囲にはたくさんのギャラリーで賑わっているようだった。
カミロ・ヴァンニ : 「これが、君の才能だ」
「あ………」
「…本当に不思議な気持ちだ。…僕の作品が誰かの目にふれて、心に残り続けるかもしれない。」
「…いつか覚める夢なのかもしれないと、朝が来る度に不安になって…でも、僕は貴方の期待に応えたくて、…僕自身を証明したくて。」
「…まだこれは小さな一歩かもしれないけれど。カミロ。僕は貴方に会えて本当に良かった。」
カミロ・ヴァンニ : 「これは、夢などではない。」
カミロ・ヴァンニ : 「この場にいる者は皆、君の作品に視線を向けている。...それはあの日、私が君の作品に向けたものと、まったく同じものだ。」
カミロ・ヴァンニ : 「私も、君の才能に出会えてよかったと、そう思っている。......あの路地裏で君を見つけられて、良かった。」
カミロ・ヴァンニ : 「しかしまだ、この展示会には”大賞”が残っている。...ここに展示される名誉はもちろんだが、君はまだ、その命題の解に賭けなくてはならない。」
「…そうですね。たった一作品だけが、選ばれる」
カミロ・ヴァンニ : 「ああ。残りは結果を待つのみと言えば、それまでかもしれないが。」
カミロ・ヴァンニ : 「私も審査員としての仕事がある。全ての過程が終わればまた、どこかで会おう。」/
「…はい。また。」
あなたは、一人残された。
しばらくすれば、中でもひときわ存在感を放つ紳士が前へと歩み出る。
この公募展の責任者だろうか。そして、会場中のギャラリーに向けて言葉を発する。
「はじめまして、私はこのミラノ美術公募展、審査員長を務めます、フェデリーゴ・フライドと申します」
「本日はようこそ、ミラノ美術公募展においでくださいました。今年、寄せられた作品はどれもレベルが高く、去年であれば入賞確実であっただろう作品も、多く選抜の段階で敗れることとなりました。」
「まずは、この厳しい審査を抜け出した作品の数々に大いなる拍手を」
会場に高らかな拍手が響く。
それをしばらくしてから留めると、審査員長は続ける。
「それではさっそく入賞作品を紹介していきましょう。まずはシグレ・ヒジリさんによる作品です。どうぞ」
審査員長はあなたの作品を高く評価する。
その一言一言は今までかけられた罵声や誹謗中傷のどれにも該当しない、あくまで正当な評価だと実感する。
「…以上のことから、本公募展では」
「第1位の作品として祝福致します。」
先ほどよりもさらに高らかな拍手が会場内を響かせる。
ちらりとカミロの方に目をやれば、ただ静かに泣いているのが見えた。/
「ぇ…」咄嗟にカミロを見ます
カミロはあなたに気づくこともなく、手元のハンカチで雫を拭うのみでした。
あなたの脳内では、出会った日のことが反芻され、ふと想起される。
公募展1位の座を得たあなたは、その後様々な人からの祝福を受けることとなる。
”新進気鋭の日本人アーティスト”。あなたの名前は多くの人々に知れ渡り、記憶に痕を残した。
その隙間を縫うようにあなたは、カミロからディナーに誘われました。”また夜落ち合おう”という約束。あなたはどう応じるのでしょうか。/
なんとか会場から抜け出し、カミロの元へ向かいます
では、殺到する取材をかき分け、あなたは1人の男を探す。
しばらく時間が過ぎる。何とか、少し外れた場所であなたたちは会うことができた。/
「………カミロ!」姿を見つけ駆け寄ります
「早く貴方に会いたかった」
駆け寄るあなたの姿を見れば、カミロは少し驚いたようにこちらを見た。
カミロ・ヴァンニ : 「ああ、誰かと思えば。かなりの人に囲まれていたじゃないか。抜け出せたのか?」
「な、なんとか…いや、多分少ししたら戻ります。」
カミロ・ヴァンニ : 「それもそうだろう。メディアが毎年かなり注目する公募展だからな。まあ、夜までは付き合ってあげてくれ。」
「…はい…英語で聞いてくれるんで、なんとかなってるんですけど…」少し困り気味に微笑み
カミロ・ヴァンニ : 「それはよかった。...今や君は、”新進気鋭の実力派”とでも評される身だろうか。」
カミロ・ヴァンニ : 「この5年間、ずっと君を信頼していてよかった。これが、私が見たかった景色だ。」
彼はそっと頬を緩め、暖かい視線で君を見る。その眼は、過去を思い返しているようにも見えた。
「僕も。僕も、貴方に見せたかった。貴方の横で見たかったんです。」
カミロ・ヴァンニ : 「君の夢を、叶えられてよかった。心から、今はそう思うよ。」
「…ありがとうございます。」泣きそうになるのを堪え
カミロ・ヴァンニ : 「さあ、続きはディナーで話そう。君を待っている人がたくさん居る。...涙を零してしまってはいけないよ。」/
「……はい、また後で会いましょう。」恥ずかしそうに目を伏せ、会場に戻ります
あなたはメディアの取材に応じに戻る。
彼の言う通り、この公募展のメディアからの注目度は凄まじいもので、彼らが去るころにはすっかり夜になってしまっていた。
夜、約束の時間にレストランへと向かえば、カミロはそこに居た。
夜のレストラン一人待つカミロは、どこか特別に見えた。
カミロ・ヴァンニ : 「来てくれたか。」
「…お待たせしました。」
カミロ・ヴァンニ : 「いや?時間通りだ。」
カミロ・ヴァンニ : 「かけてくれ。」
「はい。…お疲れ様です。」促されるまま席に着きます
カミロ・ヴァンニ : 「......何という言葉から口にしようか、迷ってしまうな。」
カミロ・ヴァンニ : 「...ともかく、本当におめでとう。まずは、君のこの五年間を称えさせてくれ。」
「ありがとう、ございます。…もう五年になるんですね。
あの広い家で今じゃ当たり前のように生活しているなんて…」
カミロ・ヴァンニ : 「この五年。長いようで、過ぎ去るのは一瞬だった」
カミロ・ヴァンニ : 「この五年間で、君は計り知れないほどの成長をした。それが、私は本当に誇らしい。」
「顔を上げれば芸術が溢れているこの街で過ごせて、集中できるアトリエがあって…全部貴方のおかげです。
僕をミラノに連れて来てくれてありがとうございます。」
カミロ・ヴァンニ : 「むしろ、感謝するのはこちらの方だろう。―――あの時、私を信じてくれて...ありがとう。」
カミロ・ヴァンニ : 「それに、私は5年前に言っただろう。......”君の立つ舞台が、駄目なのだ”と。」
「今考えればカミロ、貴方はだいぶ怪しかったですね?」少し笑って
カミロ・ヴァンニ : 「ああ、正直な感想を述べるなら、”よく付いてきてくれたものだ” という一点に尽きるが」
カミロ・ヴァンニ : 「あの時の私は、どうしても君をミラノに連れてきたかったんだ。少しの無礼の罪は、時効にしてはくれないか。」
「…気にしてると思っていたんですか?
僕は僕の意志で人生を貴方に賭けたんです。…五年前の僕を褒めてやりたいくらいですよ。」
カミロ・ヴァンニ : 「それならば尚更、君には感謝しなければならないな。」
カミロ・ヴァンニ : 「5年前のあの出会いは、単なる偶然と片付けるには少し... ”運命的”すぎるかもしれないが」
「…そうですね。あの時貴方が僕の前に現れてくれた奇跡が運命なら、…どんなに嬉しいか」
カミロ・ヴァンニ : 「......だが君はこうして、今私と食事を共にしている。それが君の行きついた結論であることは、疑いようもない。」
カミロ・ヴァンニ : 「これらは、君の努力と才能の前では必然だった。公募展での君の作品に対する評価点、例え私が点を出さなかったとしても、この結果は揺るがなかった。」
「…貴方は僕に入れてくれた、というように聞こえます」
カミロ・ヴァンニ : 「やっぱり君は、....鋭いな。」
カミロ・ヴァンニ : 「ああ、私は君の作品に手を挙げた。...だが、それに君との交流は関係がない。5年前の自分でもまったく同じ選択をした、と。...そう、神にも誓える。」
「それが聞けて良かった。…貴方の評価は僕にとって何よりも価値がある。
…次の作品も、必ず。貴方を唸らせてみせます。」
カミロ・ヴァンニ : 「楽しみにしているよ。」
カミロ・ヴァンニ : 「それでだ。これは、頼みになるのだが」
「はい、なんですか?」
カミロ・ヴァンニ : 「単刀直入に言おう。...今日入賞したあの作品を、私の美術館で展示したい。私に、買い取らせてくれないか。」/
「…勿論です。間違いなく今の僕に作れる最高の作品になったと言い切れます。
誰でもなく貴方に…買って頂きたい。」
カミロ・ヴァンニ : 「......よかった、ありがとう。」
彼はそう言うと、安堵交じりに嬉しそうな顔を浮かべてワインを傾けた。
楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、夜も深まっていく。
ディナーが終われば、カミロはある提案する。
カミロ・ヴァンニ : 「この後、君に見せたいものがあるんだ。少し時間をもらってもいいだろうか」
「見せたいものですか?…気になります」
カミロ・ヴァンニ : 「...わかった。それでは、行こうか。」
カミロ・ヴァンニ : 「アルコールが入っているんだ、足元には気を付けてくれ」/
「ありがとうございます。…エスコートされるのはいつまで経っても慣れないです。」
「カミロも飲んでるんですから。気をつけて」
カミロ・ヴァンニ : 「....5年も一緒に居たんだ、そろそろ慣れてくれないか」
「そう言われても…あと十年は難しいかもしれません」
あなたとカミロは、2人でレストランを後にした。
こうしてしばらく車に揺られていると、ある立派なクラシック調の建物が見えてくる。
規模としてはなかなか大きく、中規模な建物であれば、庭にすっぽりと収まってしまいそうだ。
カミロ・ヴァンニ : 「ここだ。あれはヴァンニ家の所有する別荘の一つ。」
カミロ・ヴァンニ : 「そして、いずれ改装を予定している。私の夢のために」
「…別荘…の規模…?…いや、うん、成程。」
「…ということは、此処を美術館に?」
カミロ・ヴァンニ : 「やはり、察しがいいな。」
カミロ・ヴァンニ : 「君には話していなかったが、ここ数年で興味深いものを見つけてな」
カミロ・ヴァンニ : 「“無名神殿”、という遺跡を知っているだろうか。」
「…無名神殿?いえ。聞いた事もないと思います」
カミロ・ヴァンニ : 「それもそうだろう。近年まで伝説上の産物だと思われていたが、一人の探検家によって存在が発覚した。」
カミロ・ヴァンニ : 「そこで見つかった数々の工芸品を私の美術館、“エテルノ美術館”で展示することに決まったのだ」
「…エテルノ美術館……」
カミロ・ヴァンニ : 「もちろん、その中には君の作品も含まれることだろうな。」
カミロ・ヴァンニ : 「いずれ、この別荘も相応しい装いへと変わるだろう」
「…その工芸品たちはもうカミロの元にあるんですか?」
カミロ・ヴァンニ : 「いや、それはまだだ。もう少し時間がかかるだろう」
「そうなんですね。届いたら僕も是非見てみたいです」
「あ、エテルノってどういう意味なんですか?イタリア語かな」
カミロ・ヴァンニ : 「ああ、おおむねその通りだ。君にはまだ教えていなかったか。....”永遠”、日本語ではそう訳すのが、最もベターだろう。」
「永遠…。とても良いですね。僕の作品も…エテルノ美術館で永遠に生き続けてほしいです」
カミロ・ヴァンニ : 「ああ、―――そうだな。」
カミロ・ヴァンニ : 「だがその前に、どうしても君に伝えておきたいことがある。来てくれ」
「伝えておきたいこと…?わかりました。」頷きます
その後、カミロは館の中へと入っていくと、そのまま三階へと上がっていく。そして、ある廊下の前まで促される。
しかし、それまでの間に人とすれ違うどころか、気配もすることはなく、照明もほとんど落とされていた。
その廊下は子洒落た絵画に装飾された、一件変哲もない造りに見えたが、カミロは徐にその絵画を取り外す。そこにはアナログ式のテンキーが埋め込まれていた。
カミロは慣れた手つきでそのテンキーに何桁かのパスワードを打ち込む。
すると、カチリとどこからか金属音が響いた。そして、カミロはそのまま壁を押すと、突如として目前に螺旋階段が現れた。
カミロ・ヴァンニ : 「さあ、入ってくれ」
「…此処まできたらもう驚くことはないと、思っていたんですけど…。」
「………はい」入ります
螺旋階段はひどく錆びついている。
しかし、カミロはそのまま躊躇うことなくその段差を下っていく。
あなたもそれに続くと、やがて扉が見えてくる。
カミロはそのまま扉を開く。
すると、そこには先ほどの古びた様相とは対照的に、白く清潔に保たれた廊下が続いていた。
辺りには白衣に身を包んだ研究者然とした人々が行き交っており、誰もが恭しくこちらに頭を下げていった。
カミロ・ヴァンニ : 「私の家系は“美術”だけでなく“科学”に対しても深い造詣を持っている。」
カミロ・ヴァンニ : 「何代にも渡って続くこの研究室だが、今は私がここの責任者だ」
「…し、知りませんでした…」驚いた様子ですれ違う人に頭を下げながら
「科学って…一体…」
カミロは歩みを進めていく。
カミロ・ヴァンニ : 「“無名神殿”の話はしただろう。あの話にはまだ続きがある。」
「はい…」着いて歩きながら
カミロ・ヴァンニ : 「“無名神殿”で発見されたものは工芸品ばかりではない。...そこには人の血液と思われる痕跡と共に、ある未知の液体が一帯に広がっていた」
「…?はぁ…」
カミロ・ヴァンニ : 「不思議に思わないか。....人の血液などとうの昔に干からび、もはや化石の一部となっていた。」
カミロ・ヴァンニ : 「しかし、その液体は決して干からびることはなく、“永遠”にそこに存在していたのだ。」
「…」
カミロ・ヴァンニ : 「......もし、どれだけ時を経ても劣化しない、といった性質を他の物質に施せば、どれだけ人類の進歩に貢献することができるのだろうか」
丁度その時、一つの部屋の前まで到着した。
“Laboratory1”と表記されたプレートが付けられている。
中へ入ると、いくつかの透明なガラスケースが並べられていた。中には果物や野菜をはじめとした様々な植物が入れられている。
カミロはその内の一つに指を指すと、そこには赤々しい林檎が入っていた。目に見えて新鮮さを感じるだろう。
カミロ・ヴァンニ : 「あの林檎、よく見てくれ。まるで今朝採れたばかりに見えないだろうか」
「そうですね。瑞々しくて美味しそうだと……」
カミロ・ヴァンニ : 「だが、事実は違う。あの林檎は収穫してからおよそ二年が経過している。」
カミロ・ヴァンニ : 「...もちろん、あのケース自体に特別な仕掛けはない」
「二年…」
カミロ・ヴァンニ : 「すべてはあの液体、――いや、我々は時を止める薬、“止薬”と呼んでいるが、...それをあの林檎に注入したのだ。」
カミロ・ヴァンニ : 「その結果、あの林檎は永久に朽ちることはなくなった」
「…そんな、ことが…本当に……?」
カミロ・ヴァンニ : 「......次だ。」
次に隣の部屋まで歩いていく。
“Laboratory2”と表記されたプレートが付けられている。
中へ入ると、そこには設置された小さなケージの一つ一つに実験用マウスが入れられていた。しかし、そのすべては息絶えている。
〈目星〉または〈アイデア〉
CCB<=70 【アイデア】 (1D100<=70) > 83 > 失敗
CCB<=69 【目星】 (1D100<=69) > 55 > 成功
・〈目星〉〈アイデア〉成功情報 : 一つのケージの中にまだ蠢いているマウスがいることが分かる。
だが、その体の節々はキュービズム絵画のように四角く歪み、その都度形を変えているように見えた。
>>1/1d3の正気度ロールが発生する。<<
1d100<=50 【SAN値チェック】 (1D100<=50) > 91 > 失敗
1d3 (1D3) > 1
system : [ 聖 ] SAN : 50 → 49
「か、カミロ…?これ、は…」
カミロ・ヴァンニ : 「だが、万物が“止薬”の影響を受けるとは限らないようだ。」
カミロ・ヴァンニ : 「現状、無機物には無反応。そして、果実の適合確率は3%未満。しかし、マウスに“止薬”を注入した結果、適合確率は0.01%未満まで落ち込んだ。」
「……」
カミロ・ヴァンニ : 「思うに、生物に“止薬”を注入した場合、何らかのトリガーが引かれ、その性質を発揮するのだろう。しかも、その生物の知能指数とも関係があるようだ。」
カミロ・ヴァンニ : 「もし、これらの条件を解明し、知能のない無機物にも作用させることができれば―――」
カミロ・ヴァンニ : 「話が脱線したな。だが、考えてみてくれ。」
カミロ・ヴァンニ : 「もし、我々の研究が発展し、数多の美術品へ応用することができたなら.、――その価値は永久に保たれるのだ」
カミロ・ヴァンニ : 「しかし、まだまだ精度が足りない。未知なる部分があまりにも多いのだ。」
カミロ・ヴァンニ : 「そのすべてを解明するためには、――― 実験は続行しなければならない。」
カミロ・ヴァンニ : 「次の部屋を案内しよう」
「…永久……」
あなたの背筋にぞわぞわと悪い予感が付きまとう。
そして、その予感は何の捻りもなく的中し、すぐにあなたは知ることになる。
“Laboratory3”と表記されたプレートが付けられた扉を飛ばして少し歩く。
すると、“特別実験場”。そう意味するプレートが付けられた実験室まで案内される。
そこは目の前のガラスパネルによって大きく二分され、あなたのいる内側の部屋には小難しい機材が並べられ、その中央に一本のマイクが伸びていた。
さらに、ここには先ほどの部屋よりも多く研究員たちが揃っており、誰もが緊張した様子でガラスパネルの向こうを凝視している。
釣られたように向こうの部屋を見てみれば、何もない真白の部屋の中央に椅子が置かれ、一人の男がそこに拘束されていた。
「…此処は…、…あの男性は…?」
男の口には猿ぐつわが噛まされ、声にならない悲鳴を上げている。
しかし、カミロはその様子を見てもまったく鑑みる様子はなく、
カミロ・ヴァンニ : 「これで何人目だ」
と近くの研究員に声をかける。
その研究員は目を伏せ、「十二人目です」と告げる。
そして、カミロは冷酷に言い放つ。
カミロ・ヴァンニ : 「では、やれ」
次に、研究員は遠慮がちにマイクの方へ寄って何がしかの指示を飛ばした。
すると、どこで控えていたのか、死角から現れた防護服を身に着けた一人の研究員は、その拘束された男へと近寄っていく。
その研究員は薬瓶に入った青く濁った液体を注射器へ充填する。
そして、そのまま機械的に男の肌に針を突き刺した。
すると、その男は間もなく激しく暴れまわり、ガタガタと拘束具を揺らす。
しかし、じきに大人しくなると、目と猿ぐつわの隙間からおびただしいほどの血を垂れ流し息絶えた。
1/1d4の正気度ロールが発生する。
1d100<=49 【SAN値チェック】 (1D100<=49) > 31 > 成功
system : [ 聖 ] SAN : 49 → 48
カミロ・ヴァンニ : 「ヒジリ、私を悪だと思うか」
カミロはここではじめて君と顔を合わせた。
カミロの瞳は確かな信念の中に、狂気的とも言える執念が渦巻いているように見えた。
「カミロ、今のは…。い、今、貴方の指示で人を……殺した…のですか…?」
「貴方が悪か…?そんな、こと…考えたことも…なかった……」
カミロは君の声を聞くと、わずかに沈黙する。
だが、間もなくして口を開いた。
カミロ・ヴァンニ : 「......では、質問を変えよう。もう一つ聞かせてくれ」
カミロ・ヴァンニ : 「君は、何事も終わりがもっとも美しい、と思ったことはあるか」
「それは…」
「…わ、わかりません。…ただ、いつか終わるのならば、最も美しく終わりたいと…そう、願っています…」
カミロ・ヴァンニ : 「...そうか」
カミロ・ヴァンニ : 「だが、私はそうは思わない」
「…。」
カミロ・ヴァンニ : 「君は“最後の晩餐”をよく見てみたことはあるか。或いは、君ならばミケランジェロのピエタ彫像でもいい。」
カミロ・ヴァンニ : 「私はあの作品を見た時、深い憧れと共に心の底から絶望した。......度重なる劣化、そしてその修正の痕。」
カミロ・ヴァンニ : 「どれもが、いずれ来たる終わりの日を示していた」
「…………それは、わかります。作品は永遠であるべき…だと…いや、でも…」
カミロ・ヴァンニ : 「ミケランジェロは、時間が奪う”若さ”を描いた。彼は、過ぎゆく時間が殺す、一時の美しさを石に封じ込め、永遠の物へと昇華させた。」
カミロ・ヴァンニ : 「だが、そんな彼の彫刻美術すら、時間には抗えない。」
カミロ・ヴァンニ : 「形ある人類の美の産物は、いずれは風化し、価値を落とし、やがては美術品の消滅へ至る。」
カミロ・ヴァンニ : 「それが最後の晩餐という壁画にしろ、彫刻にしろ。....その時、私がいなくなっていたとしても、それから紡がれる人類史には、私がその作品に感じたような深い感情を抱くものは一人としていなくなるのだ」
カミロ・ヴァンニ : 「そして、いつかその作品を誰しもが忘れてしまった時、“美術品”は完全なる死を迎える。」
「…そのために、罪のない人を使って実験を…?」
カミロ・ヴァンニ : 「すべての作品にはあらゆる角度で検証し、適正な価値を付けなければならない。」
カミロ・ヴァンニ : 「そして、適正な価値に対しては、必ず相応の対価をもって支払われる」
カミロ・ヴァンニ : 「これは“対価”だ。彼らは肉体を捧げ、私は魂を捧げる。」
カミロ・ヴァンニ : 「...人類が永遠を達成するには、これしかないのだ」
「…貴方が言いたいことは…わかる。…わかってしまう。愛する芸術作品が永遠に衰えなければどれほどいいか…。」
「…すべての作品が永遠であるべきだと思うのは、間違ってない。…でも、貴方のやり方が正しいのかどうかは…僕には、わからない…」
カミロ・ヴァンニ : 「人類の科学が大きく進歩するときは、基底科学の倫理やモラルを、誰かが破壊したときだ。 ―――もしここが、それら倫理が絶対の世界であれば、未だに回っているのは地球ではなく天の方だろう」
カミロ・ヴァンニ : 「無論、研究の終着点。私の追い求め希う”永遠”が証明されたとき、私は如何なる罪や裁きを受け入れよう。」
カミロ・ヴァンニ : 「――― その覚悟は、5年前に出来ている。」
「……五年前…?…カミロ、何故僕に…こんな話を…」
カミロ・ヴァンニ : 「君の作品と出会って、この思いはより強くなっていった。」
「…!」
カミロ・ヴァンニ : 「私は君の創造物が、君の産み出したChimæraが、いつかこの世界から消え、死を迎えることを考えると、...耐え難い苦痛がこの身を襲うのだ」
「…僕の、作品に出会って…、これを…」
カミロ・ヴァンニ : 「次だ。」
そのカミロの指示と共に向こうの部屋に現れたのは、見覚えのある人物だった。
国府レイ子 : 「やめっ!離して!あなたたち狂ってるわ!私には――」
すぐに研究員によって国府も猿ぐつわを噛まされると、中央の椅子へ縛り付けられていく。
「…ぇ?ま、まって、レイ子さんですよね?カミロ?」
「…や、やめて…カミロ、お願いします…」カミロの腕を掴みます
カミロ・ヴァンニ : 「彼女は私たちにとって障害だった。」
カミロ・ヴァンニ : 「五年もの研究を、たった一人の要因で無に帰すところだったのだ」
研究員は国府の拘束を終える。
国府は依然として抵抗を続けているが、たった一人の女性の力では、その拘束に何の影響も及ぼすことはできなかった。
カミロはその様子を確認して、改めてあなたに問いかけた。
カミロ・ヴァンニ : 「ヒジリ。...次は、私の夢を叶えてくれないか」
「…カミロの…夢…?」
カミロ・ヴァンニ : 「私の求める”永遠”を、理解してほしい。」
カミロ・ヴァンニ : 「君に罪を背負わせる気は一切無い。」
カミロ・ヴァンニ : 「...ただ、私のこの行いを肯定してくれる人間が、私には必要なんだ」
「理解……」
「………僕は貴方を尊敬している。…貴方は僕を理解してくれた…。ぼ、僕は…僕は、貴方を…理解したいと…」
「………」
「…カミロ…貴方は酷い人だ…。……僕には貴方しかいないのに…。
まるで貴方にも、僕しかいないと…そう言われているようで…僕は、それを嬉しいと思ってしまう…」
「それで罪を背負わせる気がないなんて。ずるいじゃないですか…そんなの…」
「…貴方は、僕が何を言ってもやめてはくれないのでしょう?」
カミロはその問いに、沈黙を返す。
「………わかりました。貴方の行いを
…貴方の全てを僕は肯定する。
…僕は、僕の作品たちは…貴方がいなければ今ごろ“死んでいた”んだから。」
「貴方が見つけた命だ。…貴方が僕を殺さない限り、僕は永遠にカミロ…貴方の理解者であり続けます」
カミロはその答えを聞くと、その言葉を深く飲み込むように顔を俯かせた。
直後、ガラスパネルの向こうにいる国府へと視線を向け、ごく冷酷に命令を下した。
カミロ・ヴァンニ : 「やれ」
目を伏せ耳を塞ぎます
その得体も知れない液体を注入された国府は、先ほどの男のように、よりいっそう激しく暴れまわる。そして、じきにぐったりと身体を俯かせた。
遮られた視界の中、鼓膜を劈くような絶叫だけが、微かに君の耳を揺らす。
1/1d2の正気度ロールが発生する。
1d100<=48 【SAN値チェック】 (1D100<=48) > 81 > 失敗
1d2 (1D2) > 1
system : [ 聖 ] SAN : 48 → 47
カミロはわずかに唇を噛みしめる。
だが、その異常はすぐに起こった。研究員が慌てた様子で声を上げる。
「…ッ!何か変だ…!所長、...彼女、まだ生きてます!」
思わず顔を上げます
思わずその場の皆が国府の方へ改めて目をやる。
異常は明らかだった。
身体の節々から角ばった図形が浮き上がるように膨らみ、大小様々な形へと変えている。
実在の人物がキュービズム絵画のような歪な形へと変貌していく様はとても現実の光景とは思えなかった。
1d2/1d12の正気度ロールが発生する。
1d100<=47 【SAN値チェック】 (1D100<=47) > 51 > 失敗
1d12 (1D12) > 2
system : [ 聖 ] SAN : 47 → 45
その屈強となった体躯から一際大きい咆哮音を辺りに響かせると、不定期に変化し続ける巨腕を一息にこちらへと振りかざした。
ガラスパネルはいとも容易に破られ、その衝撃と破片はあなたたちの身へと襲いかかる。
〈回避〉を要求いたします。
CCB<=30 【回避】 (1D100<=30) > 78 > 失敗
あなたはその破壊から逃れようとしたが、身体にガラスの破片が突き刺さる。
1d3の耐久力が減少する。
1d3 (1D3) > 1
system : [ 聖 ] HP : 14 → 13
その怪物の勢いが衰えるようなことはなく、“特別実験場”から無差別な破壊を伴いながら脱走する。
怪物の後ろ姿を目で追えば、時折、華奢な国府の姿へと形を変えているようだったが、すぐに姿形は変貌していく。
一方、カミロへと目を向ければ、ガラスの破片が突き刺さり、真っ赤に染まった右腕をおさえながら、ただ呆然と怪物の去った方を見つめていた。
カミロ・ヴァンニ : 「…美しい」
一言、そう口元から零すように呟いた。
[2021年10月初旬]
あれから十年が経つ。
あなたは美術家として名を上げ、すでにその界隈で知らないものはいないほどに著名な人物へとなっていた。
時折、十年前のことを夢に見る。
結局、あの半壊した研究所を後にしたあなたは、不気味なほど何事もなく日常へと戻ることができた。
実際、あの地下での出来事を知る者はごくわずか。警察に駆け込もうにもあまりに現実味のない内容であることから、その信憑性は低かった。
あの日を境にカミロがあなたのもとを訪ねてくることはなくなった。
あなたの作品に対するアプローチは、すべてカミロの部下を通して事務的に進められている。
そして、あの別荘は装いを新たに、“エテルノ美術館”と名を改めたことを知るだろう。
今では世界中で大々的に広告されている美術館だが、それは決してあなたにとって無関係なものではなかった。
あの忘れられないミラノ美術公募展で展示した作品も並べられる予定だ。
[2021年10月10日]
あなたはエテルノ美術館の入場チケットを手にしている。
すべてのはじまりは郵便届にあった一枚の手紙。
その内容はたった一言、“私の手を取ってくれ”と。
あなたは過去の決着のためにエテルノ美術館へと歩みを進めるだろう。そこに、悪しき友の想いがあると願って。
「……勝手に手を離した気になられても、困るんだが。…なあ、カミロ。」
HO.美術家 使命 : あなたの使命は
「カミロの手を取るか決断する」だ
これまでの十五年間の経験があなたの糧となる
EDUが1d6+3だけ成長する(上限21)
――――――――
静なるテロリスタ
HO.美術家 個別導入
2021.10.10
▽終了 - 継続可能
To be continued...
――――――――
1d6+3 EDU成長 (1D6+3) > 5[5]+3 > 8
CCB<=5 【心理学】 (1D100<=5) > 49 > 失敗
1d10 (1D10) > 7
1d10 (1D10) > 7
1d100 (1D100) > 44
・シナリオ諸注意 : 個別導入では、なぜPCはエテルノ美術館へ向かうことになったのか、その動機や目的が説明されます。
また、個別導入での内容は、すべて秘匿HOに含まれています。あなたがこれから見聞きするものは、全て"新しい"秘匿HOになり得る、ということです。
ふと眼を閉じると、脳裏に浮かび上がる燃える夜。
そこには燃え落ちた故郷、火炎に呑まれる思い出。血に塗れた友人や家族があった。
あなたはその日、すべてを失った。
だが、今思い返せば、それはあなたにとって終わりではなく、ただのはじまりに過ぎなかったのだ。
――これはある事件を物語るまえのあなただけの序幕。
あなたは知っているはずだ。戦火の傷は決して癒えることはないのだと。
[2011年某月某日]
あなたはある国で生まれ育った一般的な少年だった。
昨日のような今日、繰り返されるであろう明日。そんな日々をあなたは享受していた。
家族構成は7人家族。5人兄弟の長男として生まれた君は、今日もなじみ深い食事をとる。
そして、今朝もまた馴染み深い朝食を家族と共に囲んでいた。
その味や匂いをあなたはよく知っている。これといって刺激もないが、ごくごく平和な日常風景だ。
「おはよ~父さん今日は狩り行くの?」
「ああ、おはようアドラー。」
「...そうだな、今日は――まだいいか。ちょうど雨季で、動物たちも居場所が掴めない。」
「じゃぁ、俺は川で魚取ってくるよ!」
「ああ。助かるな、ありがとう。」
そう会話をするあなたと父親を、兄弟たちが遮った。
「ねぇねぇお兄ちゃん、今日、学校に行く日じゃないのー?きょう...火曜日じゃない?」
「あ~そうだっけ?お前たちは行ってきていいぞ~兄ちゃんは大事な仕事があるからさ」
「え~~~、そうなの?.....またおうちの手伝い、するのー?」
「だって、お前たち遊んでばっかじゃん~兄ちゃんが手伝わないと母さんが大変だろ?」
「それに、お前たちはいっぱい勉強して頭良くなって欲しいしな」
「ふーん、、...んん、なら...しょうがない、かも。」
「でも、次のは絶対一緒に行くからね!ふん!」
「はいはい。約束な」
「センセーによろしく言っておいて!」
「「わかった!」」
あなたの兄弟たちは、やんややんやと騒ぎ始める。
それを見ていた母親が、律するように口を開いた。
「ほーら、あんたたち遅れるよ。早くご飯食べちゃいなさい。」
「...アドラーも、今日はお父さんの調達手伝ってくれるんでしょ?この時期は暑いから、早く出て早く帰ってきな。」
「は~い!そうする!」
「さ、父さん行こ!」
「ああ、行こうか。」
にこりと父は微笑んだ。変わらない日常の風景が流れる。
そうしてあなたたちは村の近くの川へ、食料の調達へと向かうことになるだろう。
外へと出てみれば、やけに辺りの様子が騒がしいことが分かる。
行きがかる人々の話を聞けば、だれもが不安そうな顔を浮かべて話していた。
「なんか騒がしいけど何があったの?」
「まーた猛獣が出たとか?」
「ああ、アクイラんとこの長男じゃねぇか。元気してるか?」
「いーや、その数十倍はめんどくさい輩らしいぜ。」
「うん。元気元気!弟たちも元気だよ」
「え、何それ…」
「なんでもここらで、この国の反乱軍...っていうのか…、過激な連中がうろついているらしくてな」
「万一を考えて、日中には国が兵士を何人か寄こしてくれるそうなんだよ」
「…それは、物騒かも…弟達学校に行かせたけど大丈夫かな…」
「何も問題が起きなければいいんだけど…」
「まあ、正規軍が来てくれるんだろ。そんなら表立って活動はしないだろう。まったく、助かるこった」
「まぁ、軍なんていなくても、ここの皆は強いから!いざとなったらおじさんだって戦うでしょ?」
「ああ、そうだな。この村の人間はヤワじゃねぇ。女子供だって、ある程度戦えるってもんさ。」
「...ああ、そういうアンタは父御と狩りか?邪魔して悪かったな。」
アドラー・アクイラ :
「話しかけたの俺だし!気にしないで!!いい獲物取れたらおじさんとこにもお裾分けに行くね!」
「おお、ありがとな。楽しみにしてるぜ」
そういう会話の後、あなたは狩りへの道程へと戻る。
この時期の川は水が深いが、ぬるい。魚は浅瀬を泳いでいるから、容易に捕まえることができるだろう。
・〈DEX*5〉、もしくは〈任意の戦闘技能〉を要求します。
CCB<=75 【ナイフ】 (1D100<=75) > 68 > 成功
「父さん!仕留めたよ」
「おお、さすがだな。...この調子で行けば、この容器なぞ直ぐにパンパンになりそうだ。」
「いっぱいとって皆に分けようね!」
「こういう時に沢山取って保存しとかないと後々が大変だもん」
「ああ、そうだな。乾季になれば、また苦しくも楽しい狩猟の幕開けだ。...まだまだ捕らねばならんぞ?頑張りどころだ。」
「俺も父さん見たいに皆に頼られる強い男になるんだ!いつか、父さんも抜くから見ててよね」
「ははは、その意気や良し!といった所か」
「それに、ああ。......アドラーももう、15になるのか。」
「そうだよ~もう一人前の男なんだから」
「ああ、その通り。お前ごろの者はみなすっかり成人が近づき、一人前の男の顔になる頃合いだ」
「...次の乾季が来れば、獣の狩猟に同行してもらうのも、悪くないかもしれないな。」
「ホント!?やった~!!いつも、解体作業しか手伝わせてくれなかったから、すっごい嬉しい!!」
「ははっ、そうだったか。......武器を操る能力は、この村の守り手となるもっとも明確な証だからな。この時期から振るい、鍛錬するのは善いことだ。」
「皆を守れるような強い男になるからね!任せて!」
そんな他愛もない話をしながら、あなたたちは魚を捕らえる。
なんてことのない未来の話。しかしなぜだか、あなたにはこの会話が忘れられなかった。
用事を終えた頃には日は少しずつ沈みはじめ、鮮やかな夕日がこの土地を照らしていた。
この夕日もまたあなたにとって日常なのである。
あなたはそのまま帰路へ着くべく歩みを進めることだろう。
「......おや、もう日が傾いてしまったか。時間を忘れてしまっていたようだ」
「帰ろうか、アドラー。」
CCB<=65 【幸運】 (1D100<=65) > 57 > 成功
採取の成果は上々。この程度取れれば、家族全員分だけでなく、町の人々にも気持ち程度には贈れるだろう。
「今日は大量だね!これなら、皆も喜ぶよ」
「ああ、流石だな。二人ならば能率も段違いに良い。」
「さあ、暗くなってはいけない。急ぐとしよう」
あなたは帰路を進む。
ちょうど少し向こうのあたり、馴染み深い街へとあなたは近づいていく。
その時、遠くから響くようにして聞こえてきたのは一発の銃声。
そして、それを皮切りにしたように幾多もの破壊音が空に轟いた。
直後、路地から溢れんばかりの人並みが現れる。
そして、その誰もが必死な形相を張り付けながら、痛烈な絶叫と共にこちらへと駆け走ってくるようだった。
「アイツ、先に撃ちやがった!...はやく逃げろ!」
その人々はあまりの衝撃に呑まれ、周囲の光景が見えていないようだ。
あなたをはねのけると、一心不乱に反対の路地へと去っていった。
「お、おい。皆どうしたんだよ!一体何があったんだ?」
近くの人に声をかけても、半狂乱で逃げ去るばかりだ。一体何が起きているんだろうか、そんな疑念が心を曇らせていく。
「母さん…!弟たちも探さなくちゃ!!」
はねのけられた体を起こし、家の方を見る。口より体が先行したのだろう。とっくに父は、家の方角へ走り去っているようだった。
あなたの進行方向と逆に働く群衆たちの波が、行く手を阻む。時間にして、数分余り。あなたは街の入り口で揉まれ、押され、方向を失うことになっていた。
「父さんっ…!待って…!クソ…早く探してあげないとっ…!」
その時。
爆発。
それは二度目の衝撃だった。
空に上がった大きい黒煙へと目をやる。
その方角はあなたの家、そして今まさに、あなたの家族がいるはずの場所に違いなかった。
「…っ!嫌だ!!!そんな…嘘だ…!」
あなたはそれでも、その方角へと向かおうとした。
道中を埋め尽くしていたのは、そのたった一瞬で巻き起こった惨劇と、それによって残された痕跡の数々だった。
荒らされた家々、燃え盛る炎、傍らに倒れる人々の亡骸。
滾る炎から逃れようとした人は、近くの”茹だった深い”川にからがら逃れ、無残に死んでいた。
あなたの思い出の数々はもっとも残酷な方法で破壊されていた。
あなたの家に到着する。
だが、それは数秒の間、家だと認識することができなかった。
醜くも半分以上の要素が瓦礫となって崩れ、その残った部分も火炎で燃え盛っていた。
1/1d4の正気度ロールが発生する。
1d100<=65 【SAN値チェック】 (1D100<=65) > 87 > 失敗
1d4 (1D4) > 2
system : [ アドラー・アクイラ ] SAN : 65 → 63
「と…うさん?…かぁさん…?みんな……」
「いや、絶対大丈夫だ…きっと父さんが安全な場所に避難させて…」
諦めきれずに近くで家族を探して彷徨っています
あなたは、その地獄で希望を求めて彷徨い歩く。
「――アドラー!!」
突然後ろから抱きつかれるようにしてかけられたその声は、あなたの母のものだった。
振り返ると、そこにはひどく傷ついた様子で足をひきずるあなたの母がいた。
「本当によかった...!あなただけでも無事で...」
「かぁさん?よかった…!母さん!!!」
「父さんは?学校に行った皆は?」
「無事だよね…?だって、母さんは無事だったんだもん!!きっと、父さんが助けてくれたんだよね!?」
「...この村で一体何が起きたのかは、私にも分からない。広場で銃声が鳴ったかと思ったら、いきなり知らない人たちが家に上がりこんできて....」
「そこで、アドラー以外は――、」
「嘘だ!!!!!そんなの信じない!!!」
「だって、今朝は皆笑ってたじゃん…」
「父さんも、さっきまで一緒に居たのに…」
「母さんは?母さんは……どうしてここにいるの?」
「母さんは、命からがら逃げられたけど、...村の男はみんな、躊躇なく殺された。...私だって、もうそう長くはない。――きっと、きっとね」
「え…それって、どういう…?」
CCB<=50 【応急手当】 (1D100<=50) > 17 > 成功
ふと、君は母親の怪我の様子を観察する。
脚部に酷い銃創が見られ、歩行は困難だろう。
君の狩猟の知識と銃創の角度からして、襲撃者は女性の脚の構造を破壊し、逃走能力を奪うことが目的のように思えた。
「だ、大丈夫…俺が母さんを助けるから…父さんも、皆も…俺が助けるから…」
「だから、俺を、一人にしないで…」
「だめよ。」
「よく聞いて。」
彼女は優しく言い聞かせるように口を開き、そして、ここから遠くに見える背の高い一本の木を指さしてみせた。まだ煙はあがっていないようだ。
「アドラー、かけっこは得意でしょう?」
「あの木を目指すの。その間、誰にも追いつかれちゃダメよ。......私も少しだけ息を整えたら、必ず迎えにいくから...」
「嫌だ…母さんも一緒じゃなきゃ行かない!!!」
「俺が、支えるから…ね…?」
「ダメだって、言ってるじゃない。」
「いつまた此処が危険になるか、分からない。......あんたが巻き込まれたら...世話ないわ。」
「...それに、お母さん、絶対に迎えに行くって、....そう言ってるじゃない。――― いつからそんなに、我儘な子に育っちゃったの。」
CCB<=5 【心理学】 (1D100<=5) > 68 > 失敗
「それでも、行けない…だって…そうしたら…母さんも…」死んじゃうという言葉を飲み込んで、涙を堪えて俯きます
「...馬鹿。縁起でもないこと、言わないで」
「じゃぁ、約束して!!!!絶対、絶対追い付くって!!生きる事を諦めないって…約束して!!」
「アドラー、あんたに涙は似合わない。...さ、涙を拭いて、走るのよ。」
「あそこで待ってて。絶対、また会えるから。」
ぎゅっとあなたを抱き締め、背中を押した。
後ろ髪を引かれながらも、母の言葉にゆっくりと走り出す。
ボロボロと零れ出る涙を拭う暇も惜しみ、ただひたすら前だけを向いてかけていく。
その木を目指して駆け出せば、そのすぐ後ろからすすり泣くような音が聞こえてくる。
「...生きて」
間もなくして複数の銃声がけたたましく鳴り響いた。
この世界であなたを知っている者はもうどこにも存在しない。
そんな直感が心のどこかで囁いたのを感じた。
1d3/1d6の正気度ロールが発生する。
1d100<=63 【SAN値チェック】 (1D100<=63) > 28 > 成功
1d3 (1D3) > 2
system : [ アドラー・アクイラ ] SAN : 63 → 61
走る、走る、走る。
まだ数分も経っていないというのに、やけに時が長く感じる。
休みなく聞こえてくるのは乾いた銃声、悲鳴や泣き声、そんな絶望的な音ばかり。
それでも、この足を少しでも止めてしまえば、きっと瞬く間に殺されてしまうのだと分かった。
あの木のもとへ確実に近づいていく。距離が縮まれば縮まるほど、比例するようにあの絶望的な音が遠ざかっていくのを感じた。
わずかな希望を抱くかもしれない。
だが、天の神は得てして残酷な決断を下すのだ。
爆発。
近くの家屋が勢いよく弾けたかと思えば、路傍の瓦礫を吹き飛ばし、あなたを薙ぎ払う。
・〈DEX〉×1を要求します。
CCB<=14 【DEX × 5】 (1D100<=14) > 74 > 失敗
3d3の耐久力が減少する。
3d3 (3D3) > 6[2,1,3] > 6
system : [ アドラー・アクイラ ] HP : 10 → 4
CCB<=10*5 【CON × 5】 (1D100<=50) > 5 > 決定的成功/スペシャル
あなたは辛うじて受け身を取ることができる。
ただし、降りかかった瓦礫と路面に挟まって身動きが取れなくなってしまう。
絶望、或いは炎が奪う酸素によって、あなたの意識を繋ぎとめる一本の糸がプツリと切れてしまったように感じた。
視界はかすんで行く。
「母さん…父さん…みんな…俺は…必ず…」復讐してやる。そう告げる前に意識を失った。
闇の中で浮かび上がってきたのは故郷での温かな思い出の数々。
もし、この悪夢が終わって自室のベッドで目が覚めたならどれほど幸福だっただろう。
だが、皮肉にもあなたが心の中のどこかで願った非日常は、重くのしかかる現実としてあなたを眠りから引きずり下ろした。
目を覚ませば、炎に包まれ完全に破壊されたあなたの故郷があった。
もう銃声や悲鳴は聞こえない。ただ、ごうごうと燃える炎があなたの顔を照らしていた。
兵士A : 「…おい、まだ生きてるぞ」
声が聞こえる。だが、聞き覚えのない声だ。ぼやける眼をこすれば、そこには二人の男の姿があった。
「…お前らが…俺の家族を…!」恨めしそうに睨みつけます。
その二人は下には何の変哲もない日常的な服を着ていたが、上には防弾チョッキを着用し、両手には小銃を構えている。
一目してこの惨劇の元凶であると分かった。
二人の男は何やら言葉を交わしているようだった。
兵士B : 「そうか。だったらさっさと殺せ」
兵士A : 「だが、まだガキだ…」
兵士B : 「…それじゃ、なぜお前は俺にガキについて知らせた」
兵士A : 「そ、それは…」
兵士B : 「それはお前が、半端もので腰抜けだからだ。この国は腐っている。一人でも生き残らせれば、永遠に未来は変わらない。」
兵士B : 「…それに、先に手を出してきたのは奴らの方だ」
兵士A : 「それは…」
兵士B : 「いいか、銃弾には銃弾をもって応えるのが俺たちだ。お前がそんなだから、当の野郎には逃げられたんだ。」
兵士B : 「そういえば、お前はまだ一人も撃っていなかったな。」
兵士B : 「俺たちは連絡係じゃない。革命軍の戦士だ。その意地を見せられない者は、そこにくたばっている死体と同じだ」
兵士A : 「...クソッ..クソッ!」
一方の男は銃口をこちらへと向け、指先を引き金にかける。あなたは迫りくる確実な死を感じ取る。
兵士A : 「...すまない...すまない」
「人間のクズが…!殺すなら殺せ!!!だが俺は死人になっても、お前らを許さない…!どこまでも追いつめて呪い殺してやる…!」
兵士A : 「―――。」
一発の銃声が燃える夜に響く。
どさり。何かがもつれて倒れる音がする。
そこであなたは気づく。まだ自分には意識が残っているということを。
恐る恐る目を開けてみれば、額から血を流していたのはあなたではなく、あなたの殺害を命じた強気な男の方だった。
銃を構えていた男はひどく錯乱し、辺り一帯に向けその銃を乱射する。
兵士A : 「なんだよ!誰なんだよ、お前...ッ!」
瞬間、一つの影が男の背後を捉えたかと思うと、
一閃。
男の首筋から勢いよく血潮が飛び散った。
兵士A : 「………………ゥ………が」
銃を構えていた男は力なく倒れると、遮られていた視界が開き、その影の正体が明らかとなる。
目の前に現れたのは一人の男だった。
その男の片手には一本のナイフが握られており、先ほどの二人組よりも本格的な装備をしている。
そんな兵士然とした男はこちらへと近寄ってくる。そして、あなたに対して一言だけ投げかけた。
謎の男性 : 「生きたいか。」
「…生きたい…いや、生きなきゃいけない…復讐を果たすまでは死ねない、死んでたまるか!!」
その問いにあなたは叫びを返す。
そこで、またもあなたの意識は遠のき、暗闇へと落ちていった。
次に目を覚ませば、あなたは一枚のシュラフの上で寝かされていた。
ふと空を見上げれば、あなたの母が指さしたあの大木がこちらを見下ろしている。
月明かりがこちらを照らす。
未だに夜は明けてないことが分かった。
そして、身体を動かそうとすれば、その身体には応急処置を受けた数々の跡が残っていた。今まで必死になって気づいていなかった傷も想像より広がっていたようだ。
耐久力を1d3だけ回復してもよい。
1d3 (1D3) > 1
system : [ アドラー・アクイラ ] HP : 4 → 5
「ぅ…っ…ここは…?俺、生きてる…?」
謎の男性 : 「気づいたか」
どこからか声がかかったかと思えば、先ほどの男がその大木に寄りかかってこちらを見つめていた。
改めてその男を見てみれば、その髪色や肌の色、顔つきなどでアジア圏の人間であると分かる。
だが、至って流暢にあなたの母国語で話すだろう。
謎の男性 : 「…傷は痛むか。」
「…痛くない」(嘘)
謎の男性 : 「...そうか、」
謎の男性 : 「いや、今は安静にしておけ。」
「…おっさんは何者?どうして、助けたの」
謎の男性 : 「俺は、馬塚兼次。世界中を渡り歩く傭兵だ。」
馬塚 兼次 : 「今はこの国の軍隊に雇われている。」
「傭兵…?さっきの、奴らは?反乱軍ってやつ?」
馬塚 兼次 : 「ああ、そうだ。」
馬塚 兼次 : 「お前の故郷は、近隣の紛争地域に根付くテロ集団によって、...滅ぼされた。」
「国が兵を寄越してくれるって聞いたけど、おっさんの事?」
馬塚 兼次 : 「ああ、そうだ。俺の所属する部隊をはじめ、いくつかの軍が配備される予定だった。」
「なんで…なんでもっと早く来てくれなかったの…!もっと早く来てくれれば、母さんも、父さんも、弟たちも、隣のおじさんおばさんも皆…皆無事だったかもしれないのに!!!」やり場のない怒りをぶつける。
馬塚 兼次 : 「本来、俺の配属された部隊は日中にはこの町に到着する予定だったが、...その道中で戦闘に巻き込まれて予定が大幅に遅れてしまった。」
馬塚 兼次 : 「その際、先行して町に向かった兵士もいくらかいたが、通信機が破損してしまい、連携が取れずにいる。」
馬塚 兼次 : 「...俺がこの町に到着した時には、すでに手遅れだった。」
「そんなの、そんなの知るかよ!!!俺達は何もしてないのに…ただ暮らしてただけなのに…どうして奪われなきゃいけないんだ…!」
「どうして…」堪えていた涙が溢れ出す
馬塚 兼次 : 「この戦場の発端は不明だ。」
馬塚 兼次 : 「そして、あまり叫ぶな。」
馬塚 兼次 : 「俺たちは今、息を潜める身だ。...ほら、耳を澄ませろ。」
ぐすぐす泣きながらも、言われた通りに耳を澄ます。
それに従い耳を澄ましてみれば、遠くからわずかに銃声が聞こえてきた。
馬塚 兼次 : 「お前は被害者だ。それだけは間違いない。不条理に喘ぐ心も、痛み入るほど理解できる。―――だからこそ、無為に命を捨てるな。...あまり叫んでは、傷が開くぞ。」
「…わかった」
馬塚 兼次 : 「あの地獄の中、俺はお前を、やっとの思いで見つけたんだ。....悪いな、いい子だ。」
「それは、俺以外には生き残りはいなかったって事だね…」心のどこかで受け入れられなかった、家族の死がようやく、腑に落ちる。
馬塚 兼次 : 「助かったのは、お前一人だ。」
馬塚 兼次 : 「......すまない。」
「…いいよ、何となくそうなんじゃないかって、思ってたから」
「なぁ、俺はこれからどうすればいいと思う?」
「どうすれば、おっさんみたいに強くなれる?」
馬塚 兼次 : 「分からない。...だが、今村に戻るのが、得策ではないことは確かだ。」
馬塚 兼次 : 「明日の風は明日に吹く。未来の風は...いつか吹く。―――今は余計なことを考えずに、さっさと寝ちまえ。」
「…村には戻らない。きっと覚悟が揺らぐから。復讐を果たすまでは…」
「…俺、強くなりたい…俺から全てを奪った奴らを許さない……もう何も奪われたくない…」
「助けてくれてありがとう…おっさんの言う通り、今はちゃんと身体を休めるよ」
馬塚 兼次 : 「ああ、聞き分けの良いガキだったみたいだ。」
馬塚 兼次 : 「...ガキ、名はなんて言うんだ。」
「アドラー…アドラー・アクイラ。大空の王者鷲の意味だよ」
馬塚 兼次 : 「アドラー、...いい名だ。」
「うん。力強く、勇気ある太陽のような子になって欲しいって、付けた名前なんだって」両親の事を思い出して、苦し気な表情を浮かべる。
馬塚 兼次 : 「...なら、お前がそれを証明しないとな。」
馬塚 兼次 : 「明日は朝日と共に動く。熟睡は出来ないだろうが、時間は待たない。次の地点へ行くからな」
「…これから何処へ、向かうの?」
馬塚 兼次 : 「補給所を巡る。お前みたいな人間が、まだ居るかもしれないからな。」
「分かった」頷いて言われた通り身体を休めます。
馬塚 兼次 : 「ああ、おやすみ。」
そう呟けば、馬塚はあなたから少し離れ、明日の出立の支度をする。
馬塚 兼次 : 「...すまない。俺の到着が、あと少し早ければ...」
顔を俯かせて、ひとり呟いた。
[2011年某月某日]
朝、日の出と共にあなたは馬塚によって起こされる。
悪夢でも見たのだろうか。お世辞にも目覚めはいいとはいえなかった。
身体を起こそうとすれば、まだ節々がずきずきと痛む。馬塚はあなたの肩を貸すだろう。
馬塚 兼次 : 「アドラー、目が覚めたか。」
「うん…身体はまだ痛いけど…大丈夫」
馬塚 兼次 : 「昨日は、眠れていなかったようだな。」
「…色々考えてたら、あんまり眠れてなかったかも」
「休まないと、出来る事も出来ないってのも、ちゃんとわかってるから。お説教はいらないよ」
馬塚 兼次 : 「いや、叱るつもりはない。...当然だ。」
馬塚 兼次 : 「それだけのことを、お前は経験している。」
「…うん。暫くはこの夢と付き合っていかないと。目的を果たすまで、絶対に忘れちゃいけない」
馬塚 兼次 : 「...そうか。」
馬塚 兼次 : 「ここから補給所まで歩く。」
馬塚 兼次 : 「できるだけ広い道を避けて、隠れ場所の多い獣道をいくつか経由していくことになるだろう。」
馬塚 兼次 : 「その間に、お前は傷を治していけばいい。」
「わかった。足手まといにならないように、頑張るね」
馬塚 兼次 : 「疲れたら言え、休息を取る。――それじゃ、行くぞ」
「…うん」
「いってきます」最後に、村の方を振り返り、そう呟く
こうして二人は遠く響く銃声から背を向け、長い長い道の一歩を踏みだすことになるだろう。
[2011年某月某日]
あれから数日が経過する。
あなたの治療も兼ねたこの旅は軽い足取りとは言えなかったが、馬塚の手厚い援助もあって、あなたの体力は順調に回復していった。
徐々に傷口は塞がっていき身体の痛みも収まっていく。
耐久力を1d3だけ回復してもよい。
1d3 (1D3) > 2
system : [ アドラー・アクイラ ] HP : 5 → 7
そこは深く茂る密林や降り積もる豪雪の中、または果てしなく広がる砂丘といったこともあるかもしれない。
あなたはそんな景色を見ながら、ただ馬塚の後ろ姿を追っていた。
そして、日が暮れはじめると、馬塚は背負っていた小銃を木陰やそれに近しい場所へと置き、腰を落ち着ける。
この光景もまたあなたにとって見慣れたものへと変わっていく。
馬塚 兼次 : 「今日はここでキャンプにしよう」
「分かった」
馬塚 兼次 : 「傷の治りはどうだ、...観察する身からすれば、好調に回復しているように見える。」
「うん。まぁまぁかな。結構普通に動かせるようになってきた」
カンテラの灯りが辺りを優しく照らす。
馬塚は携帯していた食料をいくつかシートの上に広げると、その大部分をあなたへと分けてみせた。
馬塚 兼次 : 「そうか、それは良かった。」
馬塚 兼次 : 「...食え。」
「…ケンジのがいっぱい動くだろ。俺はこれでいい」分けられた分から最小限を取り、ケンジに返す。
「どうせ、これから先長いんだろ?余分な分は要らない」
馬塚 兼次 : 「大人に無理をするな」
馬塚 兼次 : 「お前は怪我を負っているし、育ち盛りだろう。お前が食うべきだと判断した、一日分の食糧だ。...お前の仕事は、”傷を治すこと”、違うか?」
「…違わない」
「分かった。じゃぁ、貰う。後で腹減ったって言ってもあげないからな」
馬塚 兼次 : 「ああ、分かってもらえたなら良い。」
馬塚 兼次 : 「食う体力は残っているようだな、よかった。」
もぐもぐ
「次の場所まで、あとどのくらい?」
馬塚 兼次 : 「この調子ならば、明日には到着する。想定していたよりも早い。」
馬塚 兼次 : 「アドラー、お前のお陰だ。...その年にして、俺のペースについてこれる奴はそう居ない。」
「…褒めても別に何も出ないよ。体力だけはあるから」
「そこでは、俺みたいな生き残りに会えるかもしれないんだよな…早く行って、話を聞いてみたい」
「この国が、一体どんな状況になっているのか、俺の村を襲った原因は何なのか…」
馬塚 兼次 : 「生存者の可能性はある。決して、高くはないがな」
馬塚 兼次 : 「......それなら、明日も早く出立することにしよう。」
「うん。お休み」大人しく休みます
馬塚 兼次 : 「ああ、また明日。」
馬塚はあなたを何かと気にかけ、彼なりに思いやって接しているようだった。
だが、そんなことを子供ながらでも分かってしまうくらい、彼の仕草は不器用だった。
[2011年某月某日]
次の日、目が覚めると馬塚は一冊の本を読んでいた。
あなたが起きたことに気づくと、本を無造作に閉じる。
馬塚 兼次 : 「起きたな。よく眠れたか」
「おはよ。何読んでたの?」
その本について尋ねれば、何度か手に持ったその本とあなたとで視線を交互させる。そして、あなたへとその本を手渡した。
その本は何度も読み返さたのかぼろぼろで、表紙にかすれた文字でタイトルが書かれている。
・〈ほかの言語(日本語)〉を要求します。
1d100 (1D100) > 3
部分的に読み取れる。
タイトルには、“異邦人”と書かれていることが分かる。
「い、ほう…じん?どういう意味?」
馬塚 兼次 : 「......お前、漢字が読めるのか?」
「読めないと思う」
「何となく…そうなのかなって…違った?」
馬塚 兼次 : 「いいや、正しい。...正しいからこそ、驚いているんだ。」
「ふ~ん。中はさっぱりなんだけど…どういう事が書いてあるの?」
馬塚 兼次 : 「”異邦人”、...どこかのろくでなしの物語だ。」
馬塚 兼次 : 「なぜか日本を発つ時、荷物に紛れ込んでいてな。もう何度も読み返して文字もずいぶんと擦れちまってる」
馬塚 兼次 : 「......まあ、暇つぶしくらいにはなるかもしれねえか。だが、気持ちのいい内容でもない。少しずつ読めるようになってきたら、とっとと捨てちまいな」
「ケンジがどんな本読んでるのか気になるし…全部読んでみたい。教えてよ、ケンジの国の言葉」
馬塚 兼次 : 「...ああそうか、お前は日本語を知らない。...俺としたことが失念していた」
馬塚 兼次 : 「簡単にでよければ教えるが。...俺は頭が良くない、俺の続きは補給所にいる、頭の切れる奴にでも頼みな。」
「うん。それでもいい。この本大事に読んでいく」
馬塚 兼次 : 「もうすぐ補給所には到着するが、――まあ、いい。歩きながらでも教えてやる」
「じゃぁ、まず異邦人の意味から教えて」
馬塚 兼次 : 「ああ。まず、初めの文字は――」
あなたは馬塚と共に、”異邦人”を読み込んだ。知らない国の言語が上達するような感覚を覚えるだろう。
〈ほかの言語(日本語)〉に3d6の成長チェックが発生する。
3d6 (3D6) > 13[5,6,2] > 13
その後、馬塚は残り少ない食糧を分け合い、あなたの傷の手当も行った。
数日前と比べると段々と痛みが引いてきているのが分かった。
耐久力を1d3だけ回復してもよい。
1d3 (1D3) > 3
system : [ アドラー・アクイラ ] HP : 7 → 10
アドラー・アクイラ :
「ケンジのおかげで傷も大分癒えてきたよ。もういつもと殆ど変わらない」
馬塚 兼次 : 「そうか。それなら、良かった。」
馬塚 兼次 : 「粗末な処置ではあるから、後遺症などが気になるなら、もっとマシな施設にでも行け。」
「無事たどり着けたらそうする」
「ケンジとももうすぐお別れ…だよね?」
馬塚 兼次 : 「ああ、今日には補給所に到着する。」
馬塚 兼次 : 「そこで、安全な場所までお前を運んでもらうつもりだ。」
「そっか…何だかちょっと寂しいや…」
「ケンジ顔は怖いけど、意外と優しいし…居心地よかったからさ」
馬塚 兼次 : 「そうか。...多少なりとも、俺がお前の支えになれていたなら、嬉しい」
馬塚 兼次 : 「だが、お前もこれまでよく頑張った。体力もある。筋もいい。...お前の両親は、いい子を生んだ」
馬塚の表情は強張ったまま変わらなかったが、わずかにその声色は柔らかいものだった。
「ここで別れても、またどっかで会えたらいいな。そん時は、ケンジがビックリするくらい強くなってるから」
馬塚 兼次 : 「そうだな。...まあ、願わくば、――アドラーが、俺に会わないで済むような平和な地に居て欲しいが。」
「それは、無理かな…俺にはやらなきゃいけない事があるから…」
「ケンジももういい歳なんだからさ、仕事辞めて隠居したら?」
馬塚 兼次 : 「考えたこともなかった。」
馬塚 兼次 : 「俺が戦線から離脱するのは多分、被害者を救い終わった後か、...俺にガタが来たときだけだ。」
「最後にさ、ケンジがなんでこの仕事してるか教えてよ」
馬塚 兼次 : 「...さあ、な。―――こんな仕事を続けている意味を、論理的な言葉で説明できる能力は、...俺にはない。」
馬塚 兼次 : 「人を殺して、人を救う。...全く、変な仕事だよな」
馬塚 兼次 : 「だが、アドラー。お前は、その理由の説明足り得る存在だ。...誰かが殺さねば、誰かが殺される。―――それが、今回はお前と、お前を殺そうとした反乱軍だった。...それだけのことだ。」
「…誰かが殺さないと、誰かが殺される。そうだよな…いたってシンプルな話だ。うん。ありがと、話してくれて」
「俺やっぱり、復讐はする。それで俺みたいに救われる人が居るかもしれないもんな…」
馬塚 兼次 : 「...目的が先行して、意味を見失うなよ。」
馬塚 兼次 : 「俺の話が、暇つぶしにでもなったなら良かった。...さ、補給所はもう少しだ、行くぞ」
「うん」
数時間後、日が沈まぬうちに補給所へと到着する。
しかし、そこはまるで人の気配がない。どこも伽藍としており、ただいくつかの補給物資が散乱した状態で放置されているだけだった。
馬塚は小銃を構え直し辺りを警戒する。
だが、そこにあったのはわずかに残された交戦の痕跡のみ。一刻の安全を確認すると、その銃口を下げた。
馬塚 兼次 : 「...ここも、手遅れだったか」
「…そっか」惨劇を想像し、黙り込む。
馬塚 兼次 : 「戦いの余波は、此処まで来ていたみたいだ。」
馬塚 兼次 : 「...近隣の村や街さえも、もう襲撃されているかもしれない」
「じゃぁ、一体どこへ行けば……」
その物資の残骸を見下ろす哀しい眼を見れば、この先に漂う仄暗い未来を予感してしまう。
もし、この先、無事にこの国のどこかの町に送られたとしても、第二、第三の侵略者が現れるのは時間の問題だと思えた。
ふと、思い出のすべてを焼き払ったあの業火を思い出す。
銃声、悲鳴、こちらを見下ろす冷たい眼。それらが脳裏で縛り付けられたまま離れない。
馬塚は、言葉を放った。
馬塚 兼次 : 「――俺と、来るか」
馬塚は目を伏せて言葉を続けた。
馬塚 兼次 : 「俺の生業は人殺しだ。どんな奴に向かって引き金を引こうとその事実は変わらねえ。」
馬塚 兼次 : 「もし、お前がついてくるなら、その片棒を担がせることになる」
次に馬塚はゆっくりと視線を上げ、こちらの瞳の奥をしっかりと見つめ込んだ。
馬塚 兼次 : 「だが、覚悟があるなら、俺たちの生き方を教えてやる」
「行く」
「どうせ、ここに居たって野垂れ死ぬ。俺はやらなきゃいけない事があるんだ…その為には、どんな生き方だってやってやる」
馬塚 兼次 : 「これからお前は、世界を巡ることになる。きっと、此処までの道程なんて、小さな一歩に過ぎないほどに。」
馬塚 兼次 : 「―――忙しくなるぞ、アドラー。」
「うん。覚悟は出来てる…これからもよろしくケンジ」
馬塚 兼次 : 「ああ。...これから、よろしく頼む。」
その言葉に頷けば、馬塚はこぼすように呟いた。
馬塚 兼次 : 「これで、俺もろくでなしの一人だな」
これがあなたは馬塚と共に傭兵として世界各地を旅することになるだろう。
――――――――
静なるテロリスタ
HO.異邦人個別導入
-1日目セーブ
2011.XX.XX.
・補給所
――――――――
[2019年10月初旬]
あれから八年。
あなたは馬塚に戦闘能力を鍛え上げられ、共に傭兵として様々な戦線に参加した。
時には互いの背中を預けたことがあっただろう。
時には相棒の窮地をもう一人の相棒が救ったこともあっただろう。
あなたは馬塚と父子との絆にも近い、信頼関係を築いていた。
任意の〈戦闘技能〉に+3d6の成長チェック。
さらに〈ほかの言語:日本語〉に2d6の成長チェックが発生する。
3d6 (3D6) > 15[6,6,3] > 15
2d6 (2D6) > 7[5,2] > 7
しかし、この数年間でどちらかが疲労したのか、あの激しい戦線から一度離れることになった。
ここしばらくはどこかのどかな場所で羽を休めることになるだろう。
その時、馬塚はあなたのもとを訪ねてくる。
馬塚 兼次 : 「...静かな場所っていうのは久しぶりだ。」
馬塚 兼次 : 「いつも俺が望んでいたもののはずだったが、いざ身を置くとなると慣れねえもんだ。」
「ずっと戦場に身を置いていたからな…俺達にこの場所は静かすぎるのかもしれないな」
「8年間アンタと共にいて、俺も騒がしい方が落ち着くようになっちまったよ」
馬塚 兼次 : 「やっぱり、お前もそう思うか。」ふっ、と笑って
馬塚 兼次 : 「...まあ、平和な生活というのもどうせ長くはない、じきに仕事の1つや2つでも、舞い込んでくるだろうよ。」
「まぁ、束の間の休息だ。しっかり休めよ。アンタはもういい歳なんだから」
馬塚 兼次 : 「何言ってんだ、俺はまだまだ、現役だ。...まあ、年の話をされれば、”一理ある”としか言いようがないかも知れねぇが。」
馬塚 兼次 : 「それに、俺たちは男二人で観光、なんてガラでもねぇだろ。」
「はは、確かに!アンタと過ごしていくうちに、すっかり道楽の仕方も忘れたよ」
馬塚 兼次 : 「道楽とは名ばかりの、真逆みてぇな環境だったもんな?」
馬塚 兼次 : 「まあ、キャリアゼロからにしては、お前は上手くやった。...そう思うけどな」
「ここまで五体満足で生きてるんだ、アンタの見立て通り才能があったってわけだ」
馬塚 兼次 : 「ああ、そうだな。筋がいいとは思ってた。...それにお前には、意志も技術もある。」
馬塚 兼次 : 「射撃の腕は、まだまだだけどな。」
「しょうがねぇだろ。ちまちま狙うより、接近戦に持ち込んで一撃で仕留める方が性に合ってるんでな」
馬塚 兼次 : 「”向き不向き”、ってやつか」
「俺はアンタみたいに我慢強い方じゃねぇしな」
馬塚 兼次 : 「...よく分からねぇが、そういうもんなのかもな」
馬塚 兼次 : 「...ともかくまぁ、俺たちにこの土地は合わねぇ。――それだけは、確定事項みたいだな」
馬塚 兼次 : 「第一、こんな市街地でそんな血生臭い話、するか?普通。」
「それこそ職業病ってやつだろ。俺達にはこんな平和ボケした所より、血生臭い戦場の方があってる」
馬塚 兼次 : 「ああ、――」
そこで、馬塚の携帯電話が鳴る。
馬塚は慣れない手つきでタッチパネルを叩き、応答した。
馬塚 兼次 : 「...誰だ。...あぁ、久しぶりだな。...それで、何の用だ」
それから数分ほど、馬塚はその話し相手に対して他愛ない相槌を飛ばしていた。
そうしてやっとその話が終わったのか、じゃあな、と一言だけ告げ、また不慣れな様子でタッチパネルを叩いた。
馬塚 兼次 : 「...悪い。」
「いや、友人か?」
馬塚 兼次 : 「ああ、昔の知人からの電話だ」
「友人なら気にせずもっと話せばよかったじゃねぇか。ゆっくり話が出来る時間なんて今しかねぇんだからよ」
馬塚 兼次 : 「いいや、世間話じゃねえ。」
馬塚 兼次 : 「――どうやら、俺に休息は必要ないらしい。」
馬塚 兼次 : 「仕事の依頼だ。...お前も来るか」
「は、誰に聞いてんだ。当たり前だろ?アンタの後ろを任せられんのは俺しかいない。そうだろ?」
馬塚 兼次 : 「お前はいつも気づいたら突っ走ってるけどな」
馬塚 兼次 : 「それで、仕事の話だ。最低限の共有はしておこう」
馬塚 兼次 : 「依頼者は、岸本千里。考古学者だ。ずっと昔に知り合う機会があったが、もう何年も顔を合わせてねえ。」
馬塚 兼次 : 「“無名神殿”、といったか。まぁ、とにかく地中海の孤島にある遺跡に興味があるらしくてな。その護衛任務ってところだ。」
「へぇ、護衛ねぇ…ぬるそうな仕事だな」
「その、考古学者は命を狙われてんのか?それとも、その遺跡が問題なのか…」
馬塚 兼次 : 「ああ、先の戦場よりかは大分穏やかなところだ。」
馬塚 兼次 : 「聞いてねえが、おそらく後者だ。...まあ、詳しい話は依頼者から直接聞けるだろうよ」
「そうだな…分かった。早いとこ、その考古学先生に会いに行こうぜ」
「いつまでもここに居たら腕が訛っちまう」
馬塚 兼次 : 「いい心がけだ。...まあ、何せ普段とは随分毛色の違う仕事になるだろう。気分転換にでもしてくれ」
馬塚 兼次 : 「依頼に関して、舞台はイタリアだ。明日立つ、準備はしておけ」
「イタリアか、随分洒落た所だな。益々俺らにはお門違いな依頼だ」
馬塚 兼次 : 「地中海なんて、俺も随分と久々だ。ナイフはきちんと磨いておけよ」
「言われなくても抜かりはないぜ。なんせ大事な相棒だしな」
馬塚 兼次 : 「おう。...ラブコールか?結構だ。」
馬塚 兼次 : 「それじゃあまた明日だ、...よろしくな、アドラー。」
「あぁ、また明日。今回も、期待してるぜケンジ」
そのような会話の後、しばらくしてあなたと馬塚は準備を整え、依頼人の待つイタリアまで旅立つことになるだろう。
[2019年10月10日]
約束の場所へと向かえば、そこにはやけにフランクな恰好をした褐色の女性がいた。
二人に気づけば、腕を大げさに振ってこちらへと近づいてくるだろう。
岸本 千里 : 「おー、待っていたよ!いや~、久しぶりだな、馬っちゃん!」
馬塚は見るからに機嫌を損ねたように眉をひそめる。
馬塚 兼次 : 「......その呼び名はやめろと言ったはずだ」
「ぶはっ!なんだその愉快な呼び名は!いいな、似合ってるぞ馬っちゃん」
馬塚 兼次 : 「あ?...殺すぞ」
「いいじゃねぇか、可愛くて。アンタの顔だと、これくらいの愛称の方がバランス取れるだろ」
馬塚 兼次 : 「...なんのバランスだ」
岸本 千里 : 「ははっ、あんたら随分と仲いいんだな!...そこの子、名前はなんて言うんだ?」笑いながら
「俺は、アドラーだ。よろしくなセクシーなねぇちゃん」ハグを求めます
岸本 千里 : 「おい、聞いたか馬っちゃん!....私、どうやらセクシーみたいだ!」
岸本 千里 : 「はじめまして、私は岸本千里だ。馬っちゃ...いや、わかった、わかったって。――馬塚から話は聞いているよ。今日はよろしく頼む」
「お前らも随分仲がいいみたいだな。ケンジにこんなベッピンなしかも、女の友人が居るなんてな」
「隅に置けねぇな~この野郎」
岸本 千里 : 「おいおい、このアドラーくん気に入ったぞ、すごく私のことを褒めてくれる!...全く、いい相棒を持ったもんだな!」
馬塚 兼次 : 「うるせぇ。...今日は雑談をしに、わざわざここまで来たんじゃねぇんだ。仕事の話をしろ」
「はは、そうだな。いい女に気を取られて、仕事の事忘れてたわ。確か、遺跡調査の護衛だったよな」
岸本 千里 : 「ああ、そうだ!...馬塚には既に、”無名神殿”って言葉は伝えてあるが...二人とも、詳しくはなさそうだな」
「そう言うのに関してはからっきしだ」
岸本 千里 : 「”無名神殿”は、地中海に浮かぶ孤島にある神殿だ。13年前に存在が確認された、比較的新しい、伝説の神殿だ。」
岸本 千里 : 「建築様式や建てられた時期や目的、使用されていた言語だって、すべてが謎に満たされてる。だから、名前の付けられない”無名神殿”ってわけだ」
岸本 千里 : 「今日はそこの解明に同行してもらうのに、馬塚と君に護衛してもらうって話さ」
「それはいいが、なんでそんな場所に護衛が必要なんだ?そりゃぁ、アンタはいい女だが、命を狙われるようには見えん」
岸本 千里 : 「ああ、それについては...その海域の海賊をはじめとした襲撃者、島に住み着く危険な野生動物が現れた時には対処を頼みたい、っていうのが、”表向き”の理由。」
岸本 千里 : 「本音を言えば、それにかこつけて、君たちを半ば雑用係として呼んだのもあるな!ははは!」
「雑用…ははっ!俺達傭兵を雑用係として扱き使うとは、良い度胸だ!アンタ益々気に入ったよ」
「ケンジの古い友人っていうしな、今回ばかりは付き合ってやってもいいんじゃないか?だろ?ケンジ」
岸本 千里 : 「いいや、聞いてくれ聞いてくれ。これには、ふっか~い理由があるんだよ!」
岸本 千里 : 「島の管理者と話し合って、島に近づいていいのは”研究者としては”1人のみと言われたんだ。でも、それじゃあ人手が足りなすぎる。......そこで、書面には護衛だと説明して、あんたらに手伝ってもらおう、って。そういう打算が入ってる。」
馬塚 兼次 : 「...まあ、そんなことだろうと思ってたさ。どうせ荷物持ちか、雑用かだろうとな」
「と言っても俺達にはそれくらいしか出来そうにないからな。なんせ、俺達には教養はない」
馬塚 兼次 : 「まあ、学者には少なくとも勝てねぇな」
馬塚 兼次 : 「それで岸本。...単独調査の許可について、カミロ・ヴァンニと決着がついてるんだろうな?...十年くらい前に聞いた記憶はあるが」
岸本 千里 : 「ああ、管理者とはお話済みだ。きちんと許可を得て、今回の調査は敢行されるよ。...だからこそ、絶対にミスできないな」
馬塚 兼次 : 「まあ、俺たちは金を受け取り、仕事を果たす。...それだけだ」
「そうだな。今回はいい女に巡り合えたってだけで幸運だったな。後は、ちゃちゃっと仕事を終わらせればいいわけだ」
岸本 千里 : 「なんか、...ここにいると、自己肯定感が満たされていく気がするよ!」
岸本 千里 : 「...おっと、張り切り過ぎて忘れるところだった。」
岸本ははっとした様子で携帯電話を取り出す。
岸本 千里 : 「一本、電話をかけさせてくれ。悪いな」
岸本は二、三歩下がって一本の電話をかけはじめる。
馬塚はその後ろ姿を横目にしながら口を開く。
馬塚 兼次 : 「......マイペースな奴だ。あまり振り回されるな」
「まぁ、仕事はきちっとこなすさ」
馬塚 兼次 : 「自由な奴だ。いざ護衛となれば、骨が折れるかもしれないが」冗談らしく笑った
馬塚 兼次 : 「しかし、お前が日本語を学んだことが、ここに活きるとはな。驚いた」
「まぁカタコトだけどな。案外覚えやすい響きだぜ日本語ってやつは」
馬塚 兼次 : 「...そうか。まあ、日本語が話せる奴はそう多くはない。立派な能力だ」
馬塚 兼次 : 「...電話、長ぇな。」
「ケンジに褒められるのやっぱ、むずがゆいんだよなぁ…口下手が無理すんな…?」
馬塚 兼次 : 「は?...二度と褒めない方がいいか?」
「それはそれで…イヤかもしれん」
「というか、センリは誰と話してんだろうな」
馬塚 兼次 : 「俺と立つなら、我慢することだな」
馬塚 兼次 : 「ああ、そろそろ声をかける頃合いだろう」
馬塚は時刻を確認する。現在時刻は十三時過ぎ。うかうかしていたら日が沈む。
馬塚は後ろに向かった岸本の肩を叩いた。
馬塚 兼次 : 「そろそろ行くぞ」
岸本はその声に応じるとやや残念そうに肩をすくめた。
岸本 千里 : 「えっ...あぁ、そうだな。こちらの日が暮れてしまっては大変だ。」そちらが朝になった頃にまた連絡するとしよう」
岸本 千里 : 「それでは、行ってくる。そちらが朝になった頃に、また連絡するとしよう!」
そう通話越しの相手に告げると、岸本は携帯電話をポケットにしまいこちらへ向き直る。
岸本 千里 : 「すまない」
「なんだ、恋人か?」
岸本 千里 : 「いいや、そういったのじゃない」
岸本 千里 : 「日本に私の帰りを待っている奴がいてな。これがなかなか可愛いやつなんだ。また帰りにでも紹介させてくれ」
「それは、是非。俺としては、アンタみたいなベッピンさんなら尚よしだけどな」
岸本 千里 : 「.......”男”だぞ?」
岸本 千里 : 「...それじゃ、行こうか!」
「………」
岸本はどこか決意を秘めた表情で近くのクルーザーに乗りこむ。
すでに船乗りには話はつけてあるようだ。あなたたちも乗りこめば、間もなくその船は出発する。
船に揺られていることしばらく。船乗りは操縦室から顔を出してあなたたちに声をかける。
「見えてきたぞ。あの緑っぽいのがソレだ」
しかし、船乗りに言われても一見どこにその島があるのか分からなかった。
だが、指を指されて数十秒後、やっとその存在を認識することができた。
その地表はほとんど海水に呑まれおり、わずかに緑に茂った部分だけがぽつんと浮かんでいる。
「すぐに分からんのも無理はねえ。潮の満ち引きによっては完全に海中に沈んじまうんだそうだ」
「で、そんなところをどうやって調べんだ?」
「潜るのか…?」
岸本 千里 : 「もちろん、上陸するぞ!...一応、この海域なら、数日は島は水没はしないから、安心してくれ。」
「そうか。善は急げだ。さっさと上陸しちまおうぜ」
じきに船は孤島に到着する。
船乗りはあなたたちを陸に下ろすと、船首で腰を落ち着けた。
すべての探索を終えたらここに戻ってくることを約束させた。
島は遠目から見る分には小規模な孤島に思えた。
だが、はじめて足を踏み入れれば、あのちっぽけに見えた緑地帯が広大な密林となって行く手を阻む。
しかし、幸運だったことに、何度か人が出入りした痕跡がまだその場に残っている。
「こんなとこに、人が出入してたんだな」
「今はもう、人は住んでいないのか…?」
岸本 千里 : 「10年くらい前、既にここには発掘隊が調査しに来てるんだ。...その後、カミロヴァンニがどの程度管理していたかはわからないが、おそらくこの痕跡はその発掘隊たちのものだろうな」
岸本 千里 : 「事前情報によれば、この島に居住してる人間はいないぞ。...少なくとも、海で息できるような奴じゃなきゃ無理だ」
「成程な…にしても10年前の痕跡が未だに残ってるんだ。ホントにそれ以外の出入りは無いんだな」
馬塚 兼次 : 「...それなら、この足跡をたどればその、”無名神殿”に辿り着けるんだな」
岸本 千里 : 「ああ、そうだな。...それじゃあ、ここからは私の指示に従って、探索に同行してくれ!」
馬塚 兼次 : 「ああ。依頼人はお前だ」
「あいよ。リーダー」
その後、三十分ほど経過したところであっけなくその“無名神殿”らしき遺跡は見つかった。
それはギリシャのパルテノン神殿にも似ていた。
だが、いくつかの柱はその内部で一本の搭を支えるようにして複雑に曲がりくねり、まとまって球状の空間を形作っていた。
内部は暗闇に満ち溢れており、軽く物音を出してみれば、その反響音が遺跡の広大さを物語るだろう。
岸本は感激のあまり口元を抑えており、今にも涙が溢れそうだった。
岸本 千里 : 「...こ、これは...夢みたいだ。私は現実を見ているのか!」
「何が凄いのか分かんねぇけど、凄い事だけはわかる」
馬塚 兼次 : 「ああ、同感だ。」
「んで、俺達はここで何をすればいいんだ?」
岸本 千里 : 「ああ。...ここで少しだけ構造の解析をするから、待っててくれ!」
岸本 千里 : 「離れなければ、ここらを物色しててもいいぞ。興味があればだけど、な。」
「興味はないが、暇だからな。そうさせてもらうわ」
遺跡を探索すること一時間。目ぼしいものはすべて回収された後なのか、内部はもぬけの殻に近かった。
時折、奇妙な文字のような何かが刻まれた石板や柱が転がっていたが、その意味を理解することは不可能だった。
しかし、岸本はそれらを見ながら一冊の手帳を取り出した。
岸本 千里 : 「やはり、か。だが、見たこともない形ばかりだな...」
岸本 千里 : 「ふむふむ、これは想像以上に....道のりは長そうだ...!」
「こりゃぁ、センリは長くなりそうだな。ケンジどうする?」
馬塚 兼次 : 「ああ、見越していたことだ。」
馬塚 兼次 : 「俺からすれば、全部苔むした棒と点にしか...見えん。」
「俺もだ。これの良さは何も分からん」
「が、センリが楽しそうだからな。暫くはその顔を眺めておくさ」
岸本 千里 : 「考古学者には、その棒や点すら、全部宝物に見えるってもんだ、...線のひとつひとつ、苔に入った線ですら、先人が残そうとした、想いそのものなんだぞ?、....第一、―――」
馬塚 兼次 : 「こりゃあ、長くなりそうだ。...変なスイッチを入れちまった。」
「まぁ、いいんじゃねぇの。好きな事に関しては人は誰だってあぁなるだろ。それが、人生を掛けた大事な事ならなおさらな」
馬塚 兼次 : 「そうだな。...まあ、歴史から物事を理解しようって姿勢も、...理解はできる。」
しばらく、彼女の熱弁は続いた。
岸本 千里 : 「―――って訳だ、...おい、聞いてたか?」
「あぁ。聞いてたぜ。アンタが遺跡の事が大好きだって事は伝わった」
岸本 千里 : 「...うーん、まあいいさ。興味の分野がまるっきし違うってのも、私はわかって、―――」
岸本 千里 : 「なあ馬塚、さっきからなんできょろきょろしてんだ?」
「なんか気になる事でもあるのか?」
馬塚は何度か鼻を鳴らす。そして、何かに気づいたようにして天井にライトをあてた。
馬塚 兼次 : 「...おい、これは何なんだ、岸本」
岸本もその声につられたようにして天井に視線を移す。
そこには異様な光景が広がっていた。
染み、だろうか。青黒く淀む粘液めいた何かが、柱と柱の間で糸を引いていた。
まるで先ほどまで何かが頭上で息づいていたような、そんな新しい痕跡だった。
0/1の正気度ロールが発生する。
1d100<=61 【SAN値チェック】 (1D100<=61) > 21 > 成功
岸本は困惑したように首を傾げる。
岸本 千里 : 「...知らないな。どちらかというと分野は生物学に近いんじゃないか。流石に専門外だ」
馬塚は辺りのままならない雰囲気を感じ取ったようだ。
あなたと岸本に向けて切り出した。
馬塚 兼次 : 「...悪いが、ここで切り上げるぞ。何か、嫌な予感がする」
しかし、岸本はその言葉を聞くと、激しく反発する。
岸本 千里 : 「予感...だって?馬鹿を言うな!そんな曖昧なもので調査を中断してたまるか!」
岸本 千里 : 「十年かけてせっかくここまで来たのに...私には、果たさなければならない約束もあるんだ!」
「いや、こういう時のケンジの意見は聞いといた方がいいぜ。命が惜しいならな」
岸本は、必死に反発を続ける。
そして、岸本が一歩踏み出したその時だった。
張り詰めた糸が切れたような、金属音にも近い何かの音が暗闇の中、木霊する。
あなたはその何かの音を知っていた。
馬塚 兼次 : 「――伏せろッ!」
「っ!」
CCB<=17*5 【DEX × 5】 (1D100<=85) > 49 > 成功
馬塚の雄たけびにも似た荒々しい声。
刹那、凄まじい熱が辺りを包んだかと思うと、激しい衝撃と共にそれぞれ投げ出された。
そして、その衝撃を直で感じたとき、やっとそこから発せられたけたたましい爆発音を聞いた。
・〈回避〉または〈DEX〉×5を要求します。
CCB<=17*5 【DEX × 5】 (1D100<=85) > 34 > 成功
それではあなたは、被害を最小限に留められる。岸本の受ける衝撃も、とっさの行動で全てを庇うことができる。
1d3+1の耐久力が減少する。
1d3+1 (1D3+1) > 2[2]+1 > 3
system : [ アドラー・アクイラ ] HP : 13 → 10
次に目を覚ました時、そこは見覚えのない空間だった。
周囲の壁や地面は土や岩で剥き出しになり、天井にはぽかりと大きな穴が空いている。
どうやら“無名神殿”の地面に穴が空き、そのまま地下空洞へ放り出されてしまったようだ。
周囲にはいくつものへし折れた柱が残骸となって散らばっている。
どこからかすすり泣く声が聞こえたかと思えば、そのすぐ隣に涙を流す岸本の姿があった。
岸本 千里 : 「...すまない。私が無理に先へ進もうとしたばかりに...」
「はは、仕方ないさ。アンタは調査の為に来たんだから。俺が居てよかったな」
岸本 千里 : 「本当にその通りだ、ありがとう。...この高さから落ちて、無事なわけがない。君が庇ってくれたんだろう、助かったよ。」
岸本 千里 : 「...そういや、馬塚は?」
そう言われて辺りを見渡す
馬塚 兼次 : 「ここだ。」
あなたたちが周囲を見回せば、後ろでは壁にもたれかかるようにして馬塚がこちらを見つめていた。
馬塚 兼次 : 「言われなくても、俺はここにいるぞ」
「まぁ、アンタがこんな事でくたばるわけないよな」
「で、ここからどう出るかなんだが…」
馬塚 兼次 : 「ああ、俺は大丈夫だ。お前ら、怪我はねぇか?」
馬塚 兼次 : 「どうやら、あの爆発で地面が崩れて、あそこから真っ逆さまにここまで落ちてきたようだ。...出口は、奥に進んで探す他ないだろう」
「そうなるよな…皆怪我がねぇならいいんだ。またさっきみたいな罠があるかもしれねぇし、慎重に進もうぜ」
馬塚 兼次 : 「ああ、そうだな。...あの金属音は、ワイヤー爆弾のブービートラップ。確実に俺たちを狙ったものだ。」
「10年前に仕掛けられたって事か…?」
「でも、一体何のために…」
馬塚 兼次 : 「分からねぇ。...とりあえず、今後は俺が先導する。付いてこれるか?」
「あぁ、問題な…ぃ…っつ!」先程岸本を庇ったからなのか、肩のに鈍い痛みが走った
「…あぁ…これ、肩ヤったかもな…」
馬塚 兼次 : 「...庇ったときの傷か。無理をするな、見せろ」
「あぁ、すまん。頼むわ」
馬塚 兼次 : CCB<=80 【応急手当】 (1D100<=80) > 83 > 失敗
馬塚 兼次 : 「ああ、すまない。キットが衝撃で使いもんにならねぇ。...少し我慢、できるか?」
「まぁ、こんぐらいなら何とか」
「仕方ねぇ、このまま進むか」
奥へ進むと、どこからか一定周期で機械仕掛けの何かが動く音が聞こえてくる。
よく耳を澄ましてみれば、それは大時計の秒針が刻む音だと分かるだろう。
その音を辿っていけば、いくつかの奇妙な遺物を発見する。
それは先の爆発で紛れ込んできたものではなく、状態から察するに古来よりこの場所に安置されているもののようだと分かった。
岸本はそれらを確認すると、思わず後退って声を上げるだろう。
岸本 千里 : 「...これってまさか...まだ未発見の遺物じゃないか...!」
馬塚はそんな興奮した岸本を見ると、小さくため息を吐く。
そして、しばらく逡巡してみせると、岸本に向けて気を使ったように口を開いた。
馬塚 兼次 : 「俺はもう少し、この辺りを探ってみる。岸本は...好きにしろ。」
馬塚 兼次 : 「その代わり、アドラー、お前も手伝ってやれ」
「げっ…自分だけ逃げようってか…?」
「まぁ、いいけどよ」
馬塚 兼次 : 「逃げる?...何を言ってるんだ、俺は周囲の安全確保をする」
馬塚 兼次 : 「実際、おまえは負傷の身だ。...瓦礫をどかすくらいは手伝ってやれ」
「センリの遺跡トークを容赦なく聞かされる俺の事も考えて欲しいぜ」ぼそっと呟く
岸本 千里 : 「ああもう、悪かったから!...少しは抑えるようにするよ」大声で挟む
「ささ、薄情なパパは置いといて、俺達は調査へと移ろうぜ」センリの肩を押して馬塚から離れる
岸本 千里 : 「ああ。助かるよ、アドラーくん。」
そこには彫像や古代の武具など様々なものが遺されていたが、その中でもっとも特徴的だったものは幅十数メートルもある巨大な壁画に、それを見下ろすように機械的に音を刻む大時計、そして、赤く輝く宝石だった。
・探索可能な箇所 : ・絵画
・大時計
・宝石
あなたたちは、時計に目をやる。その大時計の外装はひどく古びているようだった。
しかし、その古典的なデザインながらも部分的に装飾された金は未だに鈍く光を放っている。
そして、もっとも特筆すべき部分、それは未だに秒針が動いている、ということだ。
現時刻を確認すれば、十六時半頃。
思わず大時計と比較してみれば、そこには一秒足りとも誤差はなかった。
その古代に残されたであろう大時計、その秒針たちは今もなお休みなく時を刻んでいるのだ。
1/1d4の正気度ロールが発生する。
1d100<=61 【SAN値チェック】 (1D100<=61) > 44 > 成功
system : [ アドラー・アクイラ ] SAN : 61 → 60
「時計って、あんなに何年も動き続けるもんなのか?」
岸本 千里 : 「いいや、有り得ない」
岸本 千里 : 「これがどういう機序で、いつから動いているか。...はたまた、そんな昔にどうして、そこまで正確に時を刻めるか...全てが謎に満ちている。」
「1秒もズレがないってのはすげぇな…」へ~って感じで聞いてます。
岸本 千里 : 「...他のところも見てみよう。」
「この壁画はどういう意味があるんだ…?」
その壁画には幾人もの古代民族風の衣装を着た人々が描かれており、その集団を一人のローブを着た老人が先導している。
そして、その誰もが邪悪な瘴気を纏わせた、一匹の巨獣と相対しているようだった。
・〈考古学〉または〈歴史〉を...振ってみよう!
CCB<=20 【歴史】 (1D100<=20) > 49 > 失敗
「この獣と、人が戦ってたとか…?どっかの神話みたいな話だな」
岸本 千里 : 「ああ、そうだな。...ウール布の衣装だから、古代ギリシャの風景だと考えるのが自然、だが...」
岸本 千里 : 「ここは地中海、ギリシャとは...、あまりにかけ離れているぞ...、」
「たしか、上の遺跡もギリシャにあるやつっぽい感じだったよな」
「そういう建造物って何処かしら似てる要素があるのかもな」
岸本 千里 : 「...ああ、そうだな。ともかく、これを断定するのは..まだ尚早だろう。」
岸本 千里 : 「もっと詳しく見てみよう。後気になるのは、...宝石、か。」
「これ、金になんのかね」ナイフで削ろうと近づきます
あなたがそう言って、その赤色に輝く見事な宝石に歩みを進めようとすれば、こつりと足下で何かが当たる。
足下の何かを拾い上げれば、それはデジタルカメラのようだった。
しかし、その大部分は無惨にも破壊されているようで、もはやシャッターを下ろすこともままならないだろう。
また、microSDはすでに抜き取られているようで、正真正銘ただのガラクタと成り果てている。
「んで、こんなもんがここに…?10年前の奴らのか?」
岸本 千里 : 「ん、どうしたんだ?見せてくれ」
「どうぞ」岸本にカメラを投げ渡します
では、カメラを投げ渡したその時。
繝?ぅ繝ウ繝?繝ュ繧ケ縺ョ迪溽堪 : 『来たれ、来たれ、来たれ』
ふと、声が聞こえた気がした。
その声は捉えようのない雑音混じりの声だった。
しかし、度重なって頭の中でその声が反響する度、なぜかあなたはその声の主に従わなければ。そんな絶対的な使命感を覚えてしまうだろう。
あなたの足は自然と赤い宝石の方へと向いた。
そして、一歩ずつ確かに距離を縮めていく。
じき完全にたどりついた時、その全貌を目にした。
その宝石は水晶にも似たきれいな丸型をしている。
しかし、その圧倒的に放たれる光彩はただの水晶と表現するにはあまりにも眩かった。
・〈POW〉×5 を要求します。
CCB<=13*5 【POW × 5】 (1D100<=65) > 54 > 成功
あなたは、頭の中に響き渡る声に、意識を奪われる。
思考能力を奪われ、一歩、一歩とまた宝石に近づく。
岸本 千里 : 「――アドラーくんッ!」
その時、背後から強い衝撃が加わったかと思えば、あなたは近くの壁に勢いよく叩きつけられた。
先ほどまでのもやがかっていた視界が晴れる。
「っが…!声かけるにしては、随分手荒じゃねぇか……」
「まぁ、でも助かった。自分では体の自由が利かなくなってたからな…」
あなたはその言葉とともに、背後へ振り返る。
次に目を向けた時、あまりに現実離れした光景がそこには広がっていた。
それは病的にやせ細った狼に見えた。
しかし、体皮は影よりも暗く、節々には毒々しい粘液が滲み出ている。
そして、無数に散らばった赤色の眼球は目の前にいる岸本を睨みつけ、伸ばされた鋭利な舌は彼女の左肩を貫いていた。
先ほどの衝撃と岸本の傷を見れば、彼女はあなたを庇って深い傷を負ったのだろうとすぐに理解できた。
魔物の青く濁った粘液がその舌を伝ってわずかにその傷口を濡らしている。
1d3/1d20の正気度ロールが発生する。
1d100<=61 【SAN値チェック】 (1D100<=61) > 76 > 失敗
1d20 (1D20) > 3
system : [ アドラー・アクイラ ] クリチケ : 2 → 1
1d100<=61 【SAN値チェック】 (1D100<=61) > 43 > 成功
1d3 (1D3) > 2
system : [ アドラー・アクイラ ] SAN : 60 → 58
「おいおい、何だってんだこれはよぉ…」
馬塚 兼次 : 「...チッ、こいつッ!」
馬塚は構えていた小銃で目の前の魔物に狙いを定める。
だが、その魔物は巨大な棘にも似た尻尾を大きく振り回すと、馬塚と共にあなたを弾き飛ばした。
しかし、それでも馬塚に諦観の表情はなく、銃口の曲がった小銃を捨て、近くの古びた剣を抜き取ると、一目散にその魔物へ向かっていく。
馬塚 兼次 : 「アドラー!...はやく、逃げろッ!」
「っ!俺も戦う!!ケンジだけ置いていけるかよ!!!」
その制止は、届かない。
馬塚の構えていた長剣は魔物の身体を貫いた。
魔物から放たれた絶叫にも似た咆哮。
体皮から分泌された毒液と共に、傷口から青黒い血液が噴き出る。
その血液は馬塚の上半身を真っ青に染め上げた。
魔物は長く伸びた舌を岸本の肩から引き抜くと、体躯を上下させ、空洞内を大きく揺らした。
そして、次にその舌を馬塚へ伸ばそうとした時、
頭上でそびえていた大時計は音を立ててこちらへと倒れ込む。
魔物は抵抗する間もなく円盤に押しつぶされ、青黒い血液を地面にぶちまける。
そして、その衝撃は辺りの瓦礫をも巻き込むと、目前は巻き上げられたちりによって白く染め上がった。
「ケンジ!!!」馬塚に駆け寄ります
白煙たちこめる中、あなたが駆け寄ろうとした。
その時、大時計が鈍く軋んだ音が聞こえた。
数十秒後、ちりは晴れる。
しかし、先ほどまで目の前にいた岸本や馬塚、そして大時計に下敷きになったはずの魔物の姿は忽然と姿を消していた。
ただ、この空虚な空間に大時計の針の音だけが響き渡っている。
・〈アイデア〉を要求します。
CCB<=75 【アイデア】 (1D100<=75) > 8 > スペシャル
〈アイデア〉成功情報 : 軋んだように聞こえた大時計には、どこにも傷が残されていない。
「…ケンジ…?…センリ…あの化け物も…一体どこに…」
「それに、この時計…」
「訳が分かんねぇ…どうなってるんだ」
馬塚たちを探して、他に、壁画や宝石に変化はないか確認しながら歩き出します。
あなたは周りを見てみるが、変化に特に気づくことはない。
そのまま約束の時間を迎えたあなたは、船でイタリア本島へと戻ることになる。
「ケンジ…センリ…必ず、見つけてやるからな…」そう言い残し、遠ざかる島を、その視界から消えるまで見つめています。
あなたがいくら無名神殿を探しても、いくら遠くを見つめても。
彼らが見つかることは、なかった。
[2021年10月初旬]
あれから二年が経つ。
依然として二人の姿を見つけることはできなかった。
だが、それでも懸命な捜索を続けていれば、イタリア北部に位置する街外れのとある廃墟で馬塚に似た男の姿を見たと連絡が入る。
「ようやく見つけた手がかりだ……ケンジ…無事でいてくれ」
連絡があった廃墟へと向かう。
廃墟へ向かえば、そこは近寄りがたいほどに荒れた場所で、人が入る余地など一見してないと思われた。
だが、あなたは馬塚が身を潜める時の手口を知っている。
程なくして精巧に隠蔽された人々の痕跡を発見するだろう。
「…これは、間違うはずがねぇ…ケンジの……生きてるならとっとと顔見せやがれクソ親父が」痕跡を追いかけます
そして、その痕跡を辿るように向かえば、その道中、何人かの男たちとすれ違う。
その男たちは誰もが屈強な体つきをしており、死地を体験した者でしか放てない独特な雰囲気から、あなたと同類、戦場を生き抜いてきた戦士であることが分かるだろう。
その時、集団のうちの一人の男と肩が当たる。
その男は集団の中でもひと際屈強な体つきをしており、顔の半分には大きな火傷跡が広がっていた。
そんな凶暴な風貌をした兵士然とした男は、にやりと薄気味悪く笑みを浮かべるが、ごく紳士的にあなたへと手を差し伸べる。
火傷跡のある男 : 「おっとっと、ごめんね。大丈夫かい」
「あぁ、こっちこそ。わりぃな」
しかし、男はあなたを見ると少しだけ口角を下げたように見えた。
火傷跡のある男 : 「...はは。これも、因果か」
その後、男はそんな言葉を取り消すように、また悪戯っぽく笑みを浮かべた。
火傷跡のある男 : 「いや、何でもないよ。」
火傷跡のある男 : 「ボスに用なんだろう。だったら、この先を行くといい」
「ボス?そんなものに興味はない。馬塚兼次ってやつを探してる」
火傷跡のある男 : 「ああ、そうかい。...それなら黙って、この奥に行けばいい。」
火傷跡のある男 : 「君がどんな立場かは知らないけれど。...君の活躍、楽しみにしているよ。......それじゃ、またね」
「あ、あぁ…道教えてくれてどうも…」よくわかってないが、男の言葉を信用して、奥へと進む
先へ進めば、そこには一人の男がぽつりと瓦礫の上で腰を落としていた。
それはあなたが見間違うはずもない、馬塚兼次であった。
だが、その姿は二年前とまるで変わっていた。
髪は白く染まり、顔もどこかやつれて見える。
馬塚は俯いていた顔をこちらへと上げる。
馬塚 兼次 : 「…………アドラー、久しぶりだな。」
馬塚 兼次 : 「よく、ここが分かったな」
「はっ、アンタが鍛えたんだ。アンタの事なんでお見通しなんだよ。それでも見つけるまで2年かかっちまったがな」あまりの風貌の違いに驚きを隠せない
馬塚 兼次 : 「そうか、...敵わないな。」
「アンタも、生きてたらとっとと顔見せればいいものを、なんでわざわざこんな所に…?」
馬塚 兼次 : 「...さあな。」
「んだよそれ…はっ…とうとう俺は愛想つかされたって訳か?」
「2年前アンタが化け物と対峙した時、俺は結局何もできなかった。アンタもセンリも置いて、とっとと逃げることになった俺に!」
馬塚 兼次 : 「それを言うためだけに、来たのか。」
馬塚 兼次 : 「......まあいい。」
馬塚はその場に手をついて立ち上がいた。
馬塚 兼次 : 「…エテルノ美術館。聞いたことはあるか」
「はぁ?なんだよ急に」
馬塚 兼次 : 「あと数日もすれば、ミラノで大々的に開催される美術館の名だ。」
「それがなんだってんだ」
馬塚 兼次 : 「……俺たちは、その美術館を襲撃する計画を立てている。」
馬塚 兼次 : 「目的は移民問題による示威活動、奴らにはそう伝えてある。」
馬塚 兼次 : 「......しかし、それはあくまで表向きの理由。本当の目的は別にある」
「アンタの事だ、理由なくやってるわけじゃねぇんだろ。聞かせろよ。その目的とやらをよ」
馬塚 兼次 : 「悪いが、その目的もお前には知らせる気はねえことだ。」
馬塚 兼次 : 「だが、アドラー。お前は運悪くここを嗅ぎ付けちまった。無関係とは言えねえのかもな」
馬塚はこちらへと歩み寄る。
そして、懐から一枚のチケットをあなたへ差し出した。そのチケットはエテルノ美術館の入場チケットであった。
馬塚 兼次 : 「アドラー、お前はあくまで一般招待客として振舞え。そこで、ある日本人と出会うはずだ。」
馬塚 兼次 : 「越鳥 究(こしどり ひろむ)という名の、な。」
馬塚 兼次 : 「...そいつのことを守ってやれ。俺の計画に必要な存在だ」
「は?どういうことか、まず説明しろって」
「アンタはいつも一言二言も足りてねぇ!」
馬塚 兼次 : 「説明する気はない。」
「あの島からどうやってここまで来たのか、センリはどうなったのか、それも語る気はないってか…?」
馬塚 兼次 : 「無い。」
馬塚 兼次 : 「...勘違いするな」
馬塚 兼次 : 「今俺が最も願うことは、お前が何も聞かず、これを忘れ、この場を去ることのみだ。....だが、お前がそれで引き下がらないような奴だと言うことは、俺が一番知っている。」
馬塚 兼次 : 「だから俺は今、お前に1つ提案をしている、それだけだ。...乗るなら乗れ。乗らないなら、今日のことは忘れて何処へでも行け。」
「じゃぁ、最後に一つ答えてくれ。アンタに正義はあるのか…?俺は、アンタの事信じてもいいんだよなぁ…親父」
馬塚 兼次 : 「これから行うテロ行為は、私欲のためではない。...俺に課せられた、使命のためだ。」
馬塚 兼次 : 「仲間の連中には、一般客には手を出すな、そう伝えてある。計画通りに進めば、誰も痛い目は見ないはずだ。」
馬塚 兼次 : 「しかし...確実にすべてが丸く収まる保証はねえ。部隊内でおかしな素振りをする奴がいないか見張ること。それが、アドラーに託す二つ目の役割だ」
「……わかった。その言葉、信じるぜ」馬塚の手からチケットを奪い取ります
「そのヒロムってやつを守るってのと、変な奴をが居ないか見張る。この二点。確かに請負ったぜ」
あなたが協力を承諾すれば、馬塚は鋭い覚悟を孕ませた眼を向ける。
馬塚 兼次 : 「……今、話したことは聞かなかったことにしてもいい。」
馬塚 兼次 : 「だが、無事に終えることができたなら、...アドラーにも、二年前のすべてを話してやる」
馬塚 兼次 : 「二点、確かに託したぞ。 ―――”相棒”」
「その言葉、忘れんなよ!!それから………死ぬなよ親父…」
馬塚 兼次 : 「...心に、留めておこう。」
[2021年10月10日]
あなたはエテルノ美術館のチケットを手にしている。
馬塚はただ一言、死んだらきっと、地獄行きだな。
そう微かに呟くとテロリストたちと共にその場を去るだろう。
すべてはエテルノ美術館襲撃作戦に向けて。
あなたは二年前の真実を暴くためにエテルノ美術館へと歩みを進める。
いずれ訪れる嵐について知りながら。
「……ケンジ…俺はアンタを信じてるからな…助けてくれたあの時から、いつだってアンタは俺の標だ……何を企んでるか知らねぇが…そこに乗っかったからには運命を共にしてやるよ…」
HO.異邦人 使命 : あなたの使命は「テロ作戦の目的を知る」、
そして「越鳥 究を守り抜く」だ
これまでの十年間の経験があなたの糧となる
EDUが1d6+3だけ成長する(上限21)
1d6+3 (1D6+3) > 6[6]+3 > 9
――――――――
静なるテロリスタ
HO.異邦人 個別導入
2021.10.10
▽終了 - 継続可能
To be continued...
――――――――