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夏市/裏

全体公開 創作話 912文字
2023-09-04 10:56:02
Posted by @lianmiso

 多喜が迷い込んだ小学生の手を引いて去る。
「これで多喜さんも出られなかったってオチがついたら、笑えますねぇ」
 くつくつと笑う霧凍の仮面についた羽飾りが揺れる。
「いや、笑えねぇから。ちゃんと買い物してただろ。迷うって事たぁねぇだろ」
「不安にさせるようなこと言うな」と壱樹が霧凍をど突く。ジロリと霧凍は壱樹を睨むと、ずれた仮面を戻した。
「異世界の商業の神が開く祭りか。正規参加者にレートわかるようにしてくれるから便利っちゃあ便利なんだけどな。」
 壱樹の鞄からは知らない種類の植物がパンパンに詰められていた。
「花粉も種もきっちり管理するよ」
「こっちの世界で面倒ごとが起きてはたまりませんからねぇ。ドジなんですから気をつけてくださいよぉ?」
「わーってるってば!オメーもたくさん売り買いしていたはずなのに何処に………それよりなんか食おうぜ。お腹ぺこぺこだよ。俺たち正攻法で入って来たから、別になんか食っても問題ないんだろ。そこに売ってる水晶苺のかき氷なんてじつにうまそうじゃねぇか!なぁ湊?」
 湊はというと、いつまでも2人の去った方角を見ていた。
「大丈夫だって!多喜がきっちり送ってくれるって!心配すんな!あの杖だって案内向きだろ?」
「さ、仕入れも終わったし、帰りますよ。こんな所、長居はごめんです」
「待て待て。多喜に連絡してからだな。入れ違いになる。それに柳の舞を見なくていいのかよ。もうすぐだぞ!」
 スタスタと霧凍が立ち去るのを壱樹が追った。
 売り買い、いや、取引をすれば問題なく帰れる。
 決まり事さえ守れば祭り内で殺生沙汰があっても無かった事になるという。
 破れば大変な事になるらしい。誰も細かい内容を知らない。
 でも、迷った人はそれすらわからない。
 取引を重視する割には不親切だけど、人外が考える事だからと誰しも複雑な顔して湊に返した。
―――大変な事って何?迷い込んだ人は、何処に行くんだろ。
(柳、もしかして人目が嫌いな君が毎年この祭りに付き合っているのは、帰れなくなった人たちのために―――
 鈴の音と共に歓声が沸く。始まったようだ。
 見逃してはならない。湊は櫓へと駆け寄った。


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