今年の夏は、異常でしたね。ヒナイチくんとロナルドくんは体力がチートだけど、隊長はキツいに違いない…と思って書いた土用の丑の日ネタのお話です。
皆で食事するみっぴきのシーンを追加しました。
冷やしうどんに梅干しを入れたかったのと、みっぴきが漬けるシーンを入れたかったので、梅干しが出ています(私が好きなのもある)。
うなぎと梅干しの食い合わせは迷信らしいので、そこはスルーでお願いします。
2023/07/23に上げました。
@kw42431393
「隊長。今日の報告書を…わっ、どうしたんだ!?その顔は…。」
「なんっつーか、ゲームに出て来るゾンビだな。何とかウィルスにでも感染したような。」
まぁ、まぁ。ロナルドくん。言わないであげて欲しいヌよ。
いつもなら、「喧しい!」の一言ぐらい出てきそうなものだが、机に突っ伏したままだ。その元気もないらしい。よく見ると、額と首に冷えピタが貼られ、髪も濡れている様だった。
「いや…まぁ、夏バテかねぇ。」
机からフラフラと立ち上がって、クッキーを出してくれようとする隊長を止める。置いてる場所は、分かっている訳だし。
「はい、隊長。今回はコーヒーをやめておいた方がよさそうだ。」
そう言って、冷えた麦茶を出す。熱いコーヒーに大量の角砂糖を入れる主義なのは知っているが、利尿作用の強いコーヒーを脱水症状を起こしている人に、飲ませてはいけないんだ。
「う、うん。ありがとう。ヒナイチくん。」
「コーヒーの方がよかったって顔してんな、ドラ公。」
小突くどころか、恨めし気に睨むだけだ。私達がクッキーの奪い合いをしている最中でも、彼だけ何も食べる気配がない。
「もうすぐ大暑か、早いもんだな。」
そう、急に暑くなってきたヌからね。夜でもこんなだし…体に堪えるヌよ。
「俺、昼間でもなんともないけど?」
「少しぐらいへばり給え。吸血鬼らしく。」
「なんだよ~、言うなよな。気にしてんだからさ。しかし、ドラルクが、夕方のパトロール中に座り込んだのは驚いたぞ。」
「ヌンヌン。」
なんでも、急に眩暈を起こしたのだそうだ。本人は夏バテと言うが、いわゆる熱中症だったのだろう。
「ジョンが水をかける様に指示したら、私をいきなり川に放り込んだりするものだからね。殺されるところだったわ。」
「悪ぃ。なんか、テンパっちゃって。」
あぁ、やりかねないな。道理で、髪が濡れてると思ってたんだ。
「隊長、もう早退したらどうだ。送っていくぞ。」
「ん…ミカエラくんが、外回りから帰ってきたら変わって貰う予定だ。ところで…」
職業病だな。まだ病み中なのに、ちゃんと報告書に目を通してくれている。カレンダーを見ながら、彼は続ける。
「ヒナイチくん。来週、うちに来れるかね?」
「ん?あぁ。来れると思う。飛び入りの仕事がなければ。」
来週…?何かあっただろうか。
「土用の丑だからね。実家のつき合いのあるウナギ屋さんから、出前を予約してあるのだよ。うちで、一緒に食べよう。」
「やった!ヒナイチも来るのか。」
「ヌフフ。」
思わず苦笑いする。ロナルドは、私達みっぴきが一緒にいる時が楽しいと言って、私が隊長室や隊長の家に来るのを楽しみにしている。
それは、私達も同じだ。それは、いいのだが。
「いいのか?今日日高いだろう?」
「いいの、いいの!高給取りだもんな?隊長さん?」
君のお金じゃないでしょ、と続ける隊長に少し安心する。いつものやり取りをする元気ぐらいは出てきたらしい。
その時、コンコンっとノックする音が鳴った。ミカエラ副隊長が戻って来たのだ。
「隊長、具合はどうですか?」
「あぁ、少しはよくなってきた。心配させてすまないね。」
大儀そうに立ち上がる隊長から引継ぎの書類を受け取りながら、「ゆっくり休んで下さい。」と言うと、彼は部屋を出て行った。
素直ではないが、兄のケンさんに言わせれば、本当は仲間思いで心配性なのだ。今回も顔に出ていたな。
「じゃあ、帰ろうか。少し待っててくれるかね?」
「いいぞ。途中で倒れたら心配だから、私も送っていく。」
「え~、俺もいるし。ヒナイチも心配症だなぁ。」
うん、お前に任せると病人を雑に扱うからな。それは無理。
「来週までには治しておいて欲しいな。美味しいものは、やっぱり皆と一緒に食べたい。」
この状態だと、隊長だけうどんか、梅干し茶漬けで済ませてそうだ。
まぁ、現代人だとウナギしかピンと来ないが、『う』がつく食べ物なら何でもいいらしい。あながち間違いではない。
「アハハ…そうだね。善処しよう。」
「いや、まあ。予想通りっちゃ、予想通りか。」
「返す言葉がないね…私の分は、三等分おし。」
そして、一週間経った。暑さは本格的に夏の呈を示してきており、特に今年は異常だったからな。
「隊長も何か食べないと…。」
「ん…そうだね。冷やしうどんでも作ってくるよ。」
フラフラと立ち上がろうとする隊長を止める。
「いや、私がやる。キッチン借りるぞ。」
そう行って、居間を出る。私だって、バーの娘だから手伝いぐらいは元々してるし、最近は隊長からも習ってる。少しぐらいは、な。
冷蔵庫を開けて、うどんを取り出す。茹でている間に…何かあっさりして、食べやすいトッピングを…。
「『う』がつけばいいんだっけ。」
正直、素うどんでもクリアなのだが、多少は精をつけて貰いたい。
「あ、梅干しだ。皆で作ったよな。」
ヘタを取る時にロナルドが握りつぶして、掃除の手間が増えたり、干してる横からつまみ食いしようとしたりで、大変だったな。
一粒摘まんで、口に入れる。酸味が口に広がる、まだ干し終わってから日数が浅いから、もっと置いててもいいのだが。
「うん、美味しい!冷しゃぶもつけよう。キュウリの糠漬けも添えればいいかな。」
これで、『う』がつく食べ物が三つは揃ったのだ。
冷しゃぶと大葉に梅干しをトッピングした冷やしうどんと、皆で浸けた糠漬けを持って、居間に戻る。
「待ってたぜ、ヒナイチ。」
「ヌヌヌイヌ!」
追加の冷やしうどんに糠漬けを、皆の前に並べて、やっとみっぴきで夕食となる。
「ありがとう、おかげで元気が出たよ。」
「それはよかった。上手く出来たよな、この梅干し。」
「面白かったよな、来年も作ろうぜ。」
うん、そうしよう。そして、来年の土用の丑の日もこうして集まろう。
「ところで、皆まだお腹に余裕はあるかね?」
食べ終わって、お茶を啜りながら隊長が切り出した。食後のデザートは、作ってなかったと思うが。
「実は、餡と練乳と宇治金時の蜜を買ってあったのだよ。これから、かき氷も作ろう。」
「「さんせーい!!」」
「ヌヌヌーイ!」
これで、『う』のつく食べ物がさらに増えた。今年の夏は、問題なく乗り切れると思うんだ。