@kumaoi0625
ふゆタケwebオンリー開催おめでとうございます!
書き終わらなかったのですが、オンリー開催中に何か載せたくて…!
途中までですみません。書き終わり次第twitterとpixivにもアップします~。
「12年後(10年後)から中身だけタイムスリップして未来に来てしまう攻めたちの小話集」のふゆタケ編です。
※時間軸はふんわりです。
※シリーズタイトルに反して攻めの皆さんは大抵いい思いをします。
※シリーズですがCPごとに話は独立しています。
「っ、ん?」
千冬はがくんと膝が抜けるような心地がして、慌てて体勢を立て直した。一瞬居眠りをしていたらしい。はちはち、と猫目を瞬き渋い顔をする。気を引き締めなくては――と思ったところで、緑の目が見開いた。
「――は?」
目の前の夜景がすごい早さで下方へと消えていく。いや、千冬の足元が上昇している。エレベーターだ。振り向けばエレベーターの扉があり、上方には階数表示があった。三十二、三十三……。
――違う! どこだここ!?
突然知らない場所に飛ばされて千冬は混乱した。どこかの高層ビルのエレベーターであることに違いないが、中学生の自分はそんな場所に縁など無い。
自分を見下ろすと、お気に入りの私服ですらない、スーツを身に纏っている。それもリクルートではなく、袖を通したこともないような高価そうなブランドもの。
半信半疑で両手を持ち上げ、握って開いてを繰り返してみる。間違いなく自分の身体だ。
――なんだこれ……っえ!?
ふと顔を挙げ、千冬は度肝を抜かれ固まった。良く磨かれたエレベーターのガラス。夜の帳の向こうに、自分の姿が浮かび上がって見える。そこに映っていたのは知らない男だった。二十半ばくらいの、黒髪でツーブロ、耳にピアスをした、猫目の、高いスーツを着た、あまり堅気には見えない――。
「お……オレ……?」
思わず口から出た声にすら驚いて、自らの喉に触れる。思ったより随分と低い声が出た。やはり大人になっている。
混乱は続いていたが、千冬は冷静でなくても冷静であろうと努められる男だった。
――落ち着け、オレ。何が起こってんのか全然わかんねーけど……もしかして、未来に来てる?
――そうだとしたら、もしかしたら相棒もそばにいるかもしれない。キョドってらんねえだろ。
ガラスの向こうの自分を睨みつけて叱咤する。高級なスーツに高層ビルと来れば、自分の人生で縁があるのは東卍が反社になった未来のみ。いつか相棒である花垣武道が話していた所謂武道が東卍の最高幹部の一人となっていた世界線である可能性が高い。もしくはそれによく似た別の世界かもしれないが、なんとなく、今の自分は武道と離れていない気がした。ただの勘だが、千冬は勘を軽視しないことにしている。
チン、という音を立てて、エレベーターが該当階に到着した。千冬はごくんと唾を飲み込んだ。ここからは何が起こっても不思議ではない。それこそ、扉が開いた瞬間撃たれてもおかしくないと、四肢に力が入った。
「……」
エレベーターから降りる。撃たれることはなかった。というか、誰もいない。出るとすぐ壁が目の前一面に広がり、そこには扉が一つだけあった。扉の隣にカードキーをかざすためなのだろう、黒い機械がついている。インターホンもあるにはあるが、触れた太腿辺りに硬い感触があり、ポケットに手を突っ込んだらカードが入っていた。黒くて何も書いていないが、ここまで条件がそろっているのだからこの部屋の鍵なのだろう。
ホテルのようにも見えるが、こんな部屋ドラマや漫画でも見たことがない。かなり怪しい。入らないという選択肢もある。しかしもはや現実感が無さ過ぎて、恐怖や不安よりも好奇心が勝った。
武者震いを、ぱんっ、と両手で頬を打って止める。
――覚悟決めろ、松野千冬!
カードをかざす。かた、と小さい開錠音がして、千冬は扉を押した。
廊下にライトが灯る。両側に扉が並び、一番先にまた扉。まだ部屋に辿り着かない。恐らく正面だ、と当たりを付けて、そのまま進みまた開ける。
「――っ?」
そこは、千冬の知らない世界だった。
ビルの一階分まるほど一つの部屋にしたのではないかというほど広い部屋に、重厚な設えの調度品。右手一面が全てガラス張りの窓で、東京の夜景らしきものがきらきらと輝いている。美しい摩天楼の中、部屋の中央にある大きなベッドが存在感を醸し出していた。千冬にだってわかる。そういうことを目的として置かれたものなのだろう。シャンデリアの灯りを受けたベッドには誰もいない。一歩踏み出したカーペット――いや、絨毯でさえ、重みを優しく受け止められて心地がよく、逆に怯んだ。
所謂VIPルームと呼ばれるようなものだったが、千冬はそんなものの存在を知らなかった。動揺する千冬に、追い打ちをかけたのは。
「千冬! おかえり!」
「っ!?」
よく知っている、けれど全然知らない声で呼ばれた。声の方を見たら、突然抱き着かれた。慌てて受け止めた相手が顔を挙げる。千冬は息を飲んだ。
――相、棒?
黒髪のオールバック。あの頃より大人びた面差しでも、間違える筈がない。夜景の中で煌めく宝石のような青い瞳が、千冬を映していた。
間違いない、ここはどこかの未来だ。千冬が頭の中を整理しようとした時だった。
「っ、ん!?」
「んっ……ふぅ……」
背伸びをした武道に、唇を奪われた。キスなんてしたこともない千冬は固まったが、相手は慣れているなんてものじゃない。ちゅ、ちゅ、と唇をついばんでから、ばかみたいに薄く開いた千冬の唇の狭間へと舌をねじ込もうとしてきたのだ。
「~~~~~っ!!!??」
「ぷあっ……な、なに? どうかした?」
慌てて肩を押して距離を取れば、武道はきょとんとした。えっ、可愛い。千冬の素直な感想である。未来からやってきた武道の話によれば二十六歳とかの筈だが、今と、いや過去と? いやいや未来と? とにかく千冬の知っている武道と変わらない可愛さである。
――オールバックでこれって、ほんとに反社やれてんのか?
本気で心配した千冬だったが、ふと武道の着ているものが目に入り、絶叫した。
「あああああああ相棒!!?」
「ひぇっ……な、なんだよ突然!」
「そ、それ、そそそ、下は!?」
人を指さしちゃいけません、なんて反社にはきっと無関係だし緊急事態だから今は許してほしい。だって、だって。
大きめの白いワイシャツ以外、相棒は何も身に纏っていなかったのである。
武道は首をコテンと傾げ、当然のように言った。
「え~? 彼シャツだけど」
「か、かかか、かぁっ!?」
ひひ、と口元に手をやってニヤニヤする様は確かにかつての武道ではない。どっちかというと小悪魔である。悪魔の尻尾とか見える。それはそれでエロくて可愛いかも。いやそうじゃなくて。
――彼! 彼!? オレら付き合ってるってことか!? イヤ、キスしたんだから当たり前か!?
「こういうベタなの千冬好きじゃん。……好きにしていーよ?」
「~~~~~っ!!」
続く?