グロ描写雰囲気SF
@tkhsaa
「あーあー。人間の苦手なことほんとにぜーんぶ、AIが代わりにやってくれたらいいのに」
AIが流行り始めてからというもの、彼女はもう口癖みたいにそればっかりだった。
「たとえば?」
「勉強、事務手続き、あと生きること」
あたしは変わり映えのない答えを聞いて小さくため息をつく。
彼女のお父さんがどこかの国の技術を盗用したとかで捕まってからは、ほんとうにそればっかり。
***
「…………は?」
ため息のような声だった。自分のとは思えないような腑抜けた声。
「だれ?」
ベッドの上に、彼女の死体にしか見えないものが転がっていた。
私は大急ぎでデータベースを探り、トラックに撥ねられたときのことをおもいだす。そう、このときだ。
私の血液は巧妙にそれに似せた組織液になり、毛髪や爪、皮膚は代謝の方法をプログラムされたナノマシンにより一定期間で伸びたり剥がれ落ちたりをし、さらには誰もが持つ期限付きの圧縮情報すらそのナノマシンと同じ技術で複製されてその後の私を形作った。
ほとんど同じ技術と設計思想で作られた私にだけは、それが作りものであるとわかる。
いましがた動脈を切って殺したと思った「彼女」は、実際のところそんな「もの」だったのだ。
「あたしあの子がずっとあんなふうに言うのが嫌でさ」
私の動作確認を終えた親友はそう言った。
「でもきっとあたしのために生きる気にはなってくれないんだ。だから、あんた代わりに生きてあげてよ」
彼女=あの子の細胞から復元した記憶が私のすべてだ。彼女は――親友が言うところのあの子はあの大きな事故で自分が死んだことを知らず、ひいては自分が誰であるのかも知らず、ただ父を失くした喪失感だけを引き継いで彼女の代わりをしていたのだ。
私――私は?
「だ――誰なのよ!!」
悲鳴だった。私の声だ。
「あんただれなの!? 私にだれの代わりをやれってのよ!!」
パニックを起こした私の手は、不意にそのヒトモドキに叩きつけられていた。握りっぱにしていた包丁が深々とその胸に刺さって、掛け布団に赤いシミを広げていく。その光景に神経を逆なでされ、私の手はまた包丁を抜いて振り下ろす。
骨や肉を断ついやな手応えが手首をきしませるくらい強く、何度もそうした。苦痛のない殺し方を選んで、馬鹿みたいだ。
「がんばって作ったんだよ。あの子のお父さんの資料こっそり拝借したりして。だからあんたならあの子になれる。これからはあんたがあたしの親友になるの。
苦楽を分かち合ったほんとの親友だよ」
彼女の親友だったひとは、そう言って私を送り出した。