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イグノラビムス 書いたとこまでver(にゃむさき/恋愛感情なし)

全体公開 4 3096文字
2023-10-04 20:36:33

……で、よかったのさきこ。そんな簡単にあたしと、完全密室な個室に入っちゃって。何するかわかんないでしょ、あたし」
……そういう契約、ですから。それに二時間後に私から連絡がなければ、警察に通報するように初華に伝えてありますわ」
「うわぁ、信用ないなぁ。大丈夫だって、二時間後にはちゃんと無事に帰すよ。……さきこの足腰がふにゃふにゃになっていないかは別にしてね」
「私が嫌だと言ったことはすぐやめてくださいね。そういう契約ですわ」
「はいはい。契約、ね。じゃあそれ以外のことは、あたしの好きにしていいんだよねぇ?」
 部屋に入るなり、さっそく。ユニットバスに通じる扉に、祥子を押し付けて詰め寄る。壁ドンならぬ、ドアドンだ。
 こちらがにやけた顔で見下ろしても、彼女は毅然とした表情を崩さない。その視線はやや動揺しつつも、ちゃんとこちらから目を逸らさなかった。
(なぁんだ。こういう予想外のことされてびびるかと思ってたけれど。並みの女とは違うってわけね。……愉しめそう)
 にゃむは心の中で更にほくそ笑んで、舌なめずりをする。
「わざわざ制服から着替えてきてくれたんだ。たすかるぅ」
「こういう場所にはそんな恰好では入れないでしょう。それくらい心得てますわ」
 祥子が不服そうに目を逸らす。世間知らずだと思われたと機嫌を損ねたのだろうか。子供っぽく思われたくないその様子がまだまだお子様で、にゃむは笑ってしまう。「何が可笑しいんですか」と横目で睨まれたので、「んーん?」と愉快に応じた。
 にゃむは祥子をラブホテルの一室に連れ出していた。
 ここは受付も無人でセルフ、シームレスなので、女の子が気を変える前に部屋に連れ込めて便利なのだ。にゃむも何度もそうやって利用している。だがさすがに監視カメラくらいはあるはずなので、制服で入室は不可だ。
 前に連れ込んだ子は、近くの公衆トイレでわざわざ私服に着替えてもらったこともあったっけ。ついでにそこで軽く前戯した。ああいうのも、結構楽しいもんだ。
 室内はそれなりに広く、普通のホテルと内装はそこまで変わらない。ただベッドはかなり大きくて広くて、そしてたった一つ。部屋の中ではかなり目立つ。
 これも女の子を気後れさせないための策略。ただのホテルだと思わせる。ちなみにベッドの頭にあるスイッチを使えば音楽を掛けることも、照明をそれなりにいやらしく演出させることもできるのがお気に入りポイント。暗くないと嫌がる子もベッドの上から逃がさないまま明かりを落とせるから便利だ。
……じゃあ。さっそく始めよっか。覚悟いい、さーきこ?」
「えっ、先にシャワーを浴びさせてくれるんじゃ……っ」
「そんなの後々。まずはご挨拶。それが基本、でしょ?」
 祥子の顎を人差し指で持ち上げて、更に顔と顔の距離を詰める。
 初めてかもしれないから、奪う時はとりあえず優しく、丁寧に。一生刻んでやるくらいの想いで、口付けてやる。
 こっちはバンドに一生捧げる契約をしている。安くはないだろうけれど、それくらい、いいじゃんね?
「んっ……!」
 急激ではなく優しく、唇を啄まれる。彼女はそれに動じたみたいだった。
 上唇、下唇。ねちっこく含んで、吸って、舐めた。
「っ…………っ。祐天寺さん。あなた、手慣れすぎです……っ。何人の女の子に、このような行いを……っ」
「んー? 両手の指で足りなくなってから数えてないかなぁ。あたしのチャンネルのリスナー、コラボ相手。おかげさまでお相手には困らないもんで」
「あなたね……っ。言っていくけれど、最低な行いをしていることは自覚しなさい……っ」
 祥子はにゃむの肩を押して距離を取り、濡れた口元を拭いながら睨みつけてくる。
 強がっているけれど、その瞳は潤み、虚勢は崩れ始めている。……これからどんな表情を見せてくれるんだろう。心の中でまた舌なめずり。実際にやると怖がられたから、この前。
「でもその最低な行いに付き合ってくれるさきこもさきこじゃなーい? こんなところまで連れてこられて、キスまで奪われちゃって」
「それはあなたが、Ave Mujicaの神聖なファンに手を出さないために……っ。そんなことをされたらスキャンダルだけじゃなく、世界観が崩れてしまう……っ」
「ふーん、私にアモーリスを与えておいてそんなこと言うんだ。教えといてあげる? あたしは愛のある人としかしないよ? セックスなんか」
 ――だから、続きね。再びにゃむは祥子との顔の距離を詰める。彼女がぎゅっと目を閉じたので笑ってしまう。
「ねぇ、オブリビオニス? 口、開けれる?」
「は……? んむっ……!?」
 怪訝そうに口を開いた祥子に、すかさずにゃむは舌を差し入れる。
 驚いたように再び彼女の手はにゃむの肩に掛かってくるが、押し返さない。そんな力も出ないのかもしれない。
 自慢の長い舌で、口腔をなぞる。歯並びがとても素晴らしいのは生まれつきだろうか。口の中は小さくて期待通り。後で指でも弄ってあげたいな。
 少し縮こまり気味の彼女の舌に、ちょっかいを掛けるようにつつき回す。それからじんわりと絡みついて、強張ったそれをほどくようにくねらせてみる。
……お? 結構やるじゃん?)
 意外と早く、祥子の方からも結び返してくる。そしてしっかりこちらのリズムに合わせてきた。
 唇と唇の間で、舌と舌が戯れていく。彼女も頑張っていたけれど、短い舌はすぐもつれ気味になり息も上がる。こちらの口腔に注がれる彼女の熱い吐息は、とんでもなく甘い。にゃむまでとろかされそうだ。それくらいじゃ、とろけてあげないけれど。
「はぁ……、あまり調子に、乗らないで、くださる……?」
「んふふー、ちょっとした小手調べってやつ。うん、初めてなら及第点あげちゃおうかなぁ。成長の兆しありっつってね」
「何様ですの、あなた……っ」
「にゃむち様ですけども」
 濡れた彼女の口元を指先で拭って、柔らかな唇をぷにぷに弄んで微笑みかけてやる。
 彼女はむっとして、唐突ににゃむの頬を両手で掴んでくる。そして彼女の方からにゃむの唇を塞いできた。
(おぉ? これは思った以上に……愉しめそう?)
 舌が、にゃむの中に入ってくる。短くて小さなそれが懸命に伸ばされているのを感じて、ぞくぞくしながらにゃむからも絡んでいく。
 結局、また息をつかせぬ、そんな糸の張り詰めたようなキスになった。彼女ががっついてくるから、ついにゃむも抗戦に夢中になった。
「はっ……自分だけが優勢だと思っていたら、大間違いですわよ……っ」
……へぇ? いいじゃんいいじゃん。さきこのそういうとこ、あたしすっごく好きになっちゃった、かもねぇ?」
 少し余裕を失ったのをごまかすように、にゃむは綽綽を装った笑みを浮かべる。
 そして祥子から離れると、ベッドの端にどかっと腰を下ろして足を組む。その足に肘を置いて、また突っ立っている祥子に笑いかけた。
「シャワーどうぞ? それとも一緒に入る?」
「っ……バカにして。失礼します……っ」
 彼女はバタンと音を立てて浴室に入っていった。それを見送って、にゃむは横たわり、ため息をついた。満足と、気を緩めるための呼吸。正直言って、さっきのはちょっと驚いた。まさか向こうから反撃が来るとは。
「せいぜい楽しませてね、さきこ……?」
 じゃないとあたし、ほんとにファンの子食べちゃうよ?
 珍しく高鳴った胸の鼓動。にゃむは頭の後ろに手を添えて、シャワーが流れ出した音をリズムに鼻歌を口ずさむ。


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