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「新説・前門のチワワと後門の小姑」(黎明の星の下にて2)

全体公開 25 2528文字
2023-10-07 10:40:37

赤焔 エーデルガルト+ヒューベルト+モニカ+シェズ♀
ある日の何気ない馬鹿話。城下の下世話な話から、シェズは過去に仕えた貴族のことを思い出す。

Posted by @w_nssg

 その日、シェズはほろ酔いになってアンヴァルの宮城に帰還した。

 一杯の水を求めて厨房に向かう途中でエーデルガルトとすれ違う。
 伴うのは、ヒューベルトとモニカ。シェズにとってはもう見慣れた光景だ。
「三人揃ってまた徹夜?」
「それが今日はちゃんと眠れそうよ。今から夕食なのだけれど、貴女もどう?」
 前線基地で活動していた頃よりは周囲の体制も整っているというのに、皇帝は誰よりも意欲的に働いている。シェズも度々周囲に任せろと進言しているが、そうも行かぬらしい。
「今さっき飲んできたから、軽くでいいなら」
「仕事の話をする余力はあるかしら?」
「あー、構わないけど……
 ほろ酔い気分もそこそこに気を引き締め直すが、仕事の話というのは小さな確認がいくつかあった程度であり、食後の甘味と供に話題は今日のシェズの飲み会への興味に転換して行った。
「金払いの良くない家の情報交換でもしていたの?」
「そういうのもまぁあったけど、今日はなんかエーデルガルトの話してたわね。もちろん機密なんか喋ってないわよ。でもその、皇帝って本当に大変よね……
 果物を口に運びながら、薄ら笑いで目を逸す。
「あら。民の不満なら参考にさせて?」
「あぁいや、不満とかじゃ……ないんだけど……
 先ほどまでのことを思い出し苦笑いをしながら、飲み込みにくそうにしていた果物を飲み込んで、重い口を開いた。
「ヒューベルトとモニカが今の側近なことぐらいは知ってるやつが相手でね。結局皇帝の本命はあの二人のどっちなんだ?!って、酔っ払いの激しい妄想を聞かされてたのよ……
「シェズ殿、それを陛下本人に伝えることは大変な不敬に当たりますが」
 仕事の話題の時点で疲れが見えておりあまり会話に参加していなかったヒューベルトが、顔色をさらに悪くしながら久しぶりに口を開いた。
「私から聞いたんだからいいのよ。どうせ昔からあったことじゃない」
 エーデルガルトは肩で笑う程度で動揺もしない。
「モニカの名前が挙がるということは、そういう末端の噂話でもちゃんと今の情勢を把握して反映されるのね」
「あ、あたしはとても光栄です陛下!! 陛下が手を取ってくださるなら、身も心も全て捧げる、皇配に……!」
 モニカにとっては甘い妄想渦巻くきっかけになってしまったようで、その目は輝いてもいたし、濁ってもいた。
「あー……。思い出した。いたわね、そういう貴族」
 この話題を振っていいものか悩んでいたはずのシェズが不意に笑う。
「昔ある男性貴族のところにいたんだけど、その人には正式な妻と、愛人の男の両方がいたの。本人は真剣に考えたけどどうしても選べなかったんだって。先代が死んで当主になったらもう自由でしょ? そこだけ無理を通して両方を囲って暮らしてたんだけど、傍目には本当にどちらも同じだけ愛していたように見えた。あの人、戦争になってどうしてるのかしら……
「第二夫人はたまに聞く話ですけど、両性囲っている実例は初めて聞きますね」
 モニカが興味深そうに返答する。帝国のことを満遍なく把握しているであろう彼女も、小家の個人的な事情までは網羅できているわけではない。
「まあもちろん大っぴらにはしてなかったわよ。私は雇われてたから聞いてただけで。だから、」
 急に明るい表情で顔を上げ、朗らかに提案した。
「皇帝なんだから、迷ったら堂々と両方選べばいいのよ!」
……シェズ殿。酔いが回っておられるようです、もう就寝された方がよろしいかと」
 ヒューベルトは話の飛躍に呆れ果てていたが、その隣のエーデルガルトは話の中心ながら一番涼しい顔をしている。
「どちらが本命かって話のはずが急に大きく出たわね」
 少々困惑はしているようだが、面白そうでもあった。
「そういう、なんでも手に入るかのように振る舞う貴族は私達の考えで行けばもう古いの。……ただ、最近は縁談の釣り書きの数が馬鹿にならなくなっているのは事実なのよ。実際の婚姻までは行かなくても噂話程度で両脇を固めておけば、戦争の間だけでもそういう雑事に振り回されないのかしら……?」
「陛下?」
「私は別に、私にとって魅力的な相手であれば性別なんて気にしないし……
「陛下!」
 妙に真剣に考え始めるエーデルガルトに、シェズはさらにからからと笑う。
「あら? 面白いじゃない! 前門は気の強い子犬みたいなモニカが吠えながら守ってて、後門には小姑みたいに控えるヒューベルト! 虎も狼も申し分ない実力者! これで帝国もずっと安泰よ! あ、私もちゃんと戦うから解雇しないでね! あっはっは!……ぅ、あはは……
「大笑いしながら寝落ちなどと器用な真似を……
 豪快な案を出して眠りこけたシェズにヒューベルトはげっそりとし、モニカは心ここに在らず新婚生活を夢見る。
 エーデルガルトはとうとう堪えきれずにくすくす笑い始めた。
「ふふふ……前門の子犬、後門の小姑、ね……面白い喩え」
「真剣に取り合う話ではありませんよ」
「陛下、あたしは真剣に取り合ってくださっても!」
 目を輝かせたモニカがエーデルガルトに熱い視線を注ぐ。
 エーデルガルトはもう一度肩を揺らして笑った。

 この提案がその後どうなるのかはともかく、同世代の友人たちとのなんでもない深夜の雑談に興じたこの時間そのものは、エーデルガルトにとって非常に愉快なものであった。
 新たな側近であるシェズの遠慮のなさも、奇跡のような確率で共に歩むことができたモニカからの重い親愛も、ヒューベルトとの長年の信頼関係も。
 エーデルガルトはその全てを、大切に想っている。



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だいぶ頭のゆるい、夜中の若者の与太話です。
たぶん弊サはエーデルガルトさんの束の間の青春を確保していて欲しいんです。

真モニカ、可愛くて小さくて気の強いチワワみたいだなという印象でした。
まぁフォドラに「チワワ」はいないと思うのでタイトルは意訳であるということでよろしくお願いします。

陛下?陛下!はヒュとモニどっちがどっちでも面白いと思います。
この三人、四人がもっと見たい!!!


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