Δドラヒナ前提で、ロナルドくんの誕生日祝いに書いたお話です。
朝早くから、ドラルク隊長がキッチンに立って、『今日こそ定時で帰る』と言う。共同任務のヒナイチくんも『早く終わらせて帰るぞ』と言う理由とは?
その理由を本人が忘れている理由とは?
な、お話です。実は、メビヤツちゃんと書いたのあまりなかったかも。好きなんやけどな。
ショットさん達に誕プレを自慢するロナルドくんのシーンを追加しました。
2023/08/09に上げました。
@kw42431393
ん~、もう起きちまった。なんか、騒がしいな。
そう思って、棺桶の蓋を開ける。吸血鬼ってのは、朝日と共に眠りにつく。けど、元々俺は日光平気だし、別に日焼けするとか、気分が悪くなるとか、そういう不便はない。
兄貴やヒマリといた時は、同じ時間に寝ちまうから、気にもしなかったんだけどよ。今の同居人は、ダンピールだ。
あいつもどっちかというと夜型だけど、偉いさんだから、日によっては朝8時に出勤したりする。
俺も一緒に行くわけよ、で、一緒に夜になってから帰宅する。あいつのサイクルに合わせてるから、ついつい早寝になっちまう。
「まだ6時かあ。」
朝の6時なんて、普通の吸血鬼が眠りにつく時間だ。ますます、吸血鬼らしくない、なんて言われてしまうな。
『ビッ?ビビッ。』
「おはよー、メビヤツ。ドラルク、もう起きてるのか?」
使い魔のメビヤツに声をかける、なんだろうな。ちょっと、焦った様な顔をしてる。
『ビビッ!ビッビ!』
「何だ?キッチンに何かあるのか?」
覗こうとすると、向こうからは美味しそうな匂いとカチャカチャと食器の音がしている。
「おはよー!ドラ公。」
キッチンに入ると、不健康そうな顔をした家主が立っていた。いつものエプロンに、肩にはジョンが乗っていて味見をしている。
「やれやれ、大声出さなくても聞こえているよ。」
「ヌンヌン。」
そう言って、冷蔵庫にさっきまで作っていたらしい大量の物を詰め込むと、ドラルクはエプロンを外した。
「あれ?さっきの朝ご飯じゃねえの?」
俺の好物ばっかりじゃん。食いたかったな。
「朝っぱらからあんな豪勢な…君なら平気か。あれは夜の仕込みだ。食べるんじゃないぞ。それに、今日こそ意地でも定時で帰るぞ。」
なんかあったっけ?
そう思って首を傾げると、あいつはジョンと顔を見合わせて呆れた様に笑った。
「明日、私が出張なのは覚えてるか?5歳児。」
「おう。んで、俺はVRCにお泊まりするんだろ?」
「…その明日が、何の日か覚えてないのかね?」
んー、何だっけ。俺も社会人ってやつで忙しくしてると、感覚が鈍っちゃってさ。
「ボケるのはまだ早いぞ。まあ、その方がいいか。」
「ひでーな。まあ、いいや。朝ご飯、何だ?」
さっきの旨そうなのでなくても、こいつの飯は美味いんだ。だから、俺はすっかり忘れてしまってたんだ。
明日は何の日だったのか…なんてさ。
「よっ、ヒナイチ。」
「ああ、ロナルドか。じゃあ、行こうか。」
なんか、休憩なしでサボりもせずに書類と向き合うドラルクがつまらなくてさ。いきなり、変顔して邪魔したら追い出されちまったんだ。
『退屈してるなら丁度いい。ギルドへ行って、ヒナイチくんのお手伝いをして来なさい。』
そう言って、あいつは事務作業に戻ってしまった。つまんねーの。
「やれやれ、お前も邪魔をするんじゃない。隊長は多忙な方なんだ。」
「分かってるけどよ~。んで、今日の仕事は何だ?」
「吸血鬼化したボウフラの駆除だな。たいした手合いではないが、数が多い。昼間の内に殺鬼剤で、生息地を消毒しておこうと思ってな。」
丁度、常に日陰になってる様な排水溝らしい。放っておくと、めちゃデカイ蚊の大量発生に繋がる。
「でも、もうちょい強そうなのがいいよな。ボウフラかあ。」
「いいんだ。今日は早く終わらせるんだろ?私も隊長の家にいくぞ!」
おっ!?ヒナイチも来るのか?そりゃ、楽しみだ。
でも、早く帰る事に拘るな…なんだっけ?
『当日はギルドで、チームの皆がしてくれるが、私は出張だからね。だから、前日の夜に…』
んー、そうだ。ドラルク、なんかこの間言ってた…あれ?
「ロナルド!着いたぞ。」
ヒナイチの声で我に返る。丁度、山手で日陰になっている排水溝。それに…
ガサガサ!
「おっと!なんだこりゃ、デカイな!」
「喜ぶな!ボウフラだけじゃなかった、吸血ザリガニだ!どちらも駆除するぞ!」
喜ぶに決まってるだろ?だってさ、思い出したんだよ。
『前日の夜に、みっぴきでささやかながら前夜祭をしよう。』
そう言ってくれたよな?それが、今晩なんだろ?
「よっしゃあ!まとめてかかってきやがれ!」
「ロナルド、油断するな!住宅地に逃がすんじゃないぞ!」
「わーってるって!さっさと終わらせて、帰ろうぜ!」
明日は、8月8日。俺の誕生日だったんだよな。忘れてた。
「ただいまー!」
思ったより、数が多くて時間くっちまったけど、駆除もなんとか終わらせたぜ。いつも以上に帰る足並も軽い、ウキウキしちゃってさ。
「ビッビ!」
「よっ!メビヤツ、ドラルクはもう帰ってるのか?」
いつもなら、全然早すぎる夜の7時。
いつもなら、まだまだコーヒーを啜りながら書類と向き合ってるはずの時間だ。
だけど。うん、間違いない。
靴もあるし、何より…すごくいい匂いがしてる。
「隊長、お邪魔します。」
続いて、ちょっとお洒落な服装に着替えたヒナイチも入ってきた。やっぱり、お前もこの瞬間がウキウキするよな?
玄関に入った途端、ヒナイチのアンテナが、くるりとハートマークになってるもんな。
「おーい、ドラ公!ヒナイチも来たぞー!」
奥に向かって声を張り上げると、またいつもの、呆れた様なあいつとジョンの声が返ってきた。
「大声出さなくても聞こえてるよ。さっさと、手を洗っておいで。」
二人ともおかえりヌ。さあ、始めようヌ。
ヒナイチと競う様に洗面台に向かう。手を洗いながら、今朝ちらっと見たご馳走に想いを馳せる。
「ロナルド。明日ギルドで改めて言うけど、誕生日おめでとう。」
「サンキュー!すっかり忘れてた。」
タオルで手を拭きながら、ヒナイチも呆れた…という顔をした。
「やれやれ、忘れるには早いだろ?明日は、半田もいるし、吸対のフォンさん達もいる。無論、サテツ達も来るんだ。」
明日も楽しんでくれ、と言うヒナイチに、口を尖らせてみせる。
畏怖くないって言われそうだけどさ、俺にだって言い分くらいあるぜ。仕方ないだろ?
だって、ここに来てからさ。退屈しないのが、悪いんだよ。
毎日が楽し過ぎて、毎日がお祭りで、何でもない日がなくなっちまったのが…いけねえんだよ。
「な?メビヤツもそう思うよな?」
ガキの頃から、ずっと一緒にいてくれる一つ目の使い魔は、俺の言葉に嬉しそうに目を細める。
そして、ご機嫌そうな『ビッ!』という音と共に頷いてくれた。
おまけ
「あれ?ロナルド、それ。どうしたんだ?」
ショットが、俺の指先を見て目を丸くした。へへへ、気づいてくれたのか?
日付は変わって、今日は8月8日。俺の誕生日。
日が暮れてから、ギルドで開かれる俺の誕生日祝い。チームΔの皆が集まって、美味い飯を食ったり、酒を飲んでるやつもいる。なんか、向こうでケンさんが野球拳大会もしてんな。
「二ヒヒ、ドラルク達がさ。昨日、パーティしてくれた時に塗ってくれたんだよ。」
ショットに両手を広げて見せる。
吸血鬼は血色が悪い者が多い。人間と紛れて生きていた時代は、気づかれない様にマニキュアをする必要性があったらしいんだが、今は畏怖の為…というかファッションだ。
だけど、日光平気な俺は血色もいいんで、あんまり似合わない。それに、ぶきっちょでさ。ガビガビになっちまうんだよ。
『誕生日プレゼントにくれるのはいいけどよ。俺に合わねえし、下手なんだよ。』
ドラルクがくれたシルバーに光るマニキュア。あいつは、下手な吸血鬼よりずっと血色悪いから、いつも鮮やかな赤いマニキュアをしてる。結構、高い奴らしくってさ。同じ銘柄の奴をヒナイチにもあげてた事があったっけ。
『じっとしてなさい。少しずつ覚えればいいんだ。今回は塗ってやるから。』
そう言って、プレゼントにくれたマニキュアを塗ってくれたんだ。それから…
『私も塗ってやろう。隊長に貰ったものだから、色違いだしな。』
『ヌンヌ、ヌンヌ。』
少しお酒が入って、テンション高めのヒナイチとジョンも来ちゃってさ。
「いいだろ?すげえ気に入ったからさ、写メに残したんだ。畏怖い?」
「畏怖いというか…よかったなって思うぜ。」
後ろから急に覗き込んできたマリアが、俺の爪を見てそう言ってくれた。
いつもは、ほとんど手入れもしない俺の爪。
今日は、シルバー・青・赤・薄いブラウンが並んでる。
ここに来てから、俺の大好きになった色で輝いていたからよ。