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2023.11.18ゲゲゲ忌presents『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』スペシャルトークショーレポ【映画本編ネタバレあり】

全体公開 96 605 5692文字
2023-11-19 00:07:26
Posted by @nukarumi_h

2023.11.18ゲゲゲ忌presents『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』スペシャルトークショーの記憶を書き留めたものです。
ネタバレがあるし映画を見ていないと訳がわからないので映画を見てから読んでください!
記憶のまま勢いで書き連ねているので正確ではないですし、何か間違いやニュアンスの違いなどあるかと思いますがご容赦ください(可能な限り発言者の言い回しをそのまま書くよう努めています)。

そして改めて古賀監督、脚本の吉野さん、キャラクターデザインの谷田部さん、水木先生の長女の尚子さん、アニメ史研究家のデータ原口さん、本当にありがとうございました!濃密な時間だった






最終加筆修正:2023.11.30 18:18


登壇者:
古賀豪さん(監督)、吉野弘幸さん(脚本)、谷田部透湖さん(キャラクターデザイン)、原口尚子さん(水木しげる先生の長女)、データ原口さん(アニメ史研究家)


◉映画を作るまでの経緯
>尚子さん
そもそも鬼太郎が墓場から生まれる前の作品は水木しげるは描いてない。
あの衝撃的な6期14話で出た人間サイズの親父さんの姿はこちらも放送で初めて知った。びっくりしたし話題になってよかった。
紆余曲折あって、映画を作ることになったとき鬼太郎が生まれるまでの話をやりましょうと言うことになって、一緒に作っていきましょうということで水木プロダクションも今回初めて主体的に映画制作に携わってる。

◉声がかかった経緯
古賀監督、脚本の吉野さん、キャラデザの谷田部さんは6期を一緒に作ってきたメンバーでもある。
今回このチームにしようとお声がかかったのはどういう経緯だったか?

→まずは脚本の吉野さんに声がかかり、次に古賀監督、そしてキャラデザの谷田部さんという順番。

6期14話のまくら返しの話(鬼太郎の父の人間サイズの姿が初めて出た回)と93話まぼろしの汽車は吉野さんが脚本を書いている。
本当はまぼろしの汽車で鬼太郎誕生の話を書いてほしいと言われていたが、短くまとめるのは勿体無いし、ねこ娘の話を副案として持っていたのでそっちを推して実際の放送ではああなった。
そして今回映画を作ることになり、最初はキービジュアル(鬼太郎の手が墓から飛び出している絵)とタイトルだけ渡されて、これになりましたので鬼太郎が誕生するまでの話を書いてください、と。
「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」、、ってキービジュとタイトルだけ渡されてもこっちが謎だよ!!!、と、、
まあ最後は鬼太郎が墓から出てくるところで終わるんだろう、という。

次に古賀監督に声がかかったときに決まっていたことは、①人間サイズの父を出すこと②水木を出すこと③大人向けのホラーであること④水木しげる先生生誕100周年企画としての作品であること、が条件で、それ以外は好きに作れた。
何も決まってなかった。
今回昭和30年代の空気感を色濃く出したいと言うのは監督の案。

昭和の邦画のような、横溝正史作品の犬神家や八つ墓村みたいな因習村が舞台で、父と水木が探偵役的な感じで物語が進んでいくところまでは決まった。

そのあたりでキャラデザの谷田部さんが参加。
打ち合わせに毎回参加して隣で絵を描いてこんなのはどうですか?みたいなやり取りが生まれた。
普通はなかなかそんなことはできない。
キャラデザを発注する段階ではないのに打ち合わせに加われなんて言ったら通常断られてしまうだろう。
幼い頃から水木先生のファンである谷田部さんだからできたこと。
ビジュアル面はもちろん、キャラクターの性格なども谷田部さんの提案が大きい。
ファンの心理もわかる谷田部さんだからこそ「こういうものが見たい!」がたくさん出てきた。

◉没案
・鬼太郎が過去にタイムスリップして記憶をなくして父と水木と一緒に戦う。
・半分くらいが過去パートで、そのあと現在に繋いで、今は病床の水木に鬼太郎が会いに行く。
・マルチバースとして1期〜5期の鬼太郎を鏡爺とかをつかって呼び出して、6人の鬼太郎連合で戦う(会場にどよめきと笑いが起こった)。

◉古賀監督は「あなた買います」の佐田啓二の昭和の男っぽいイメージを水木に重ねている。声優の木内さんにも事前に見てもらった。

◉ちょっと前に昭和30年代40年代ブームみたいなものがあって昭和はあたたかいみたいなイメージもあったが、実際あの頃の映画を観てみると欲望に塗れたものも多い。

◉小物へのこだわり。クリスタルの灰皿とか、ライターとか、トイレから出たあと手を洗うために吊り下げられてるバケツ(下から押すと水がでる)とか。
昔、おじいちゃんの家に行った時のどこか怖い感じをそういう小物からも漂わせたい。

◉昔の映画の画角、絵作りなども意識した。
>古賀監督
リサーチャーを雇ってその時代のものをしっかり調べて丁寧に反映。
5期の『劇場版 ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!』を作った時は(この時も古賀さんが監督だった)やはり子ども向けを意識しないといけないし鬼太郎が画面にちゃんと大きく映ってないと、みたいな縛りも意識していたが、今回はやりたいようにやった。ロングショット使ったり。
80年代を学生として過ごしていて、その時は実写よりアニメの方が、、という気運もあってアニメ業界に入ったが、やはりテレビシリーズばかり手掛けていると映画は特別な思いがある。
昭和の映画が好きで、ああいう画の切り取り方とか、そういうものをちゃんと継承していきたい。向こうは実写なのにそれをアニメで継承したいというのは烏滸がましいかもしれないが、それでもそういう良いものを次に残していきたい。

◉昔はアニメーションを作るにあたって当たり前のようにスタッフで事前に勉強会をしたりしていた。今回も昔のこの手法をそのままとまではいかなかったが近いような形で制作にあたっている。今はなかなかこういう映画を作るノウハウが残っていない。

◉谷田部さんの衣服へのこだわりもすごい。東映の衣装部に掛け合ってヴィンテージスーツや着物を用意してモデルを使っていろんなポーズを撮影。今のスーツと昔のスーツでは皺の入り方などもちょっと違う。
東映と東映アニメーションがこんなに分かれていると思わず最初は気軽な感じで頼んだが申請が大変だった。 (谷田部さんはフリーランスというか普段は他の会社に所属しているため内部事情がよく分からなかったらしい)
最終的にそのとき撮影した写真だけでは足りず、ヴィンテージスーツはオークションで買って、水木っぽい体格のスタッフに着せて撮影して参考にしてた。

◉鬼太郎の父について
>谷田部さん
丸目にしたかった。
→切長の目のイケオジな6期14話の親父さんより、今回のじめっとした怖さに馴染む。
性格も最初は6期14話のイケオジ的な父だったがもっと穏やかで飄々とした感じに。
原作のミイラ男の姿の父もビジュアルのインパクトの割にどこかそんな趣きがある。
原作のミイラ男姿の父の体格に合わせて、身長の整合性をとって長身となった。

>吉野さん
ホームズ役が父でワトソン役の水木を振り回す感じだったが、それでは物語が回らず、そうではなく父自身も巻き込まれ振り回されるという風にしたところ物語が回り始めた。

吉野さん「鬼太郎の父は最初、攻め(笑)っていうのかな???(笑)ホームズ役が鬼太郎の父でそれに巻き込まれ振り回されるワトソン役が水木という立ち位置で考えていたんだけど、それだと物語が上手く回らず、そうじゃなくて、鬼太郎の父も水木と同じように振り回され翻弄されるように変更したら物語が回り始めた」「イケオジというかもっと周りを巻き込んでいく感じを想定してたけど、そうじゃなくて飄々とした穏やかな感じに変更した」

※この「弱さもある男が頑張るのがいいのだ!」という方向性は谷田部さんの提案です。

※「鬼太郎の父が攻め」発言はシナリオを作る時に父が攻め的性質、水木がそれに振り回される設定だったが、それだと物語が上手く転がっていかなかったので『二人とも振り回される側』にしたら上手く物語が回っていった、という話だと記憶しています。
加えて、後述しますが父の性質がそのように方向転換したから母の性質も「か弱く儚げな囚われの姫」から「精神的にも芯のある女性」に変わった、そういう組み合わせがぴったりとハマった、という、映画のシナリオを練っていくにあたっての『キャラの性質の方向性の変更』を語った文脈だと思います。

◉水木について
>谷田部さん
水木には原作の水木青年に加えて、大海獣の山田秀一的な、野心家の要素を織り込んだ。

◉鬼太郎の母について
>データ原口さん
今回鬼太郎の母のあの新しいキャラデザはびっくりした。健康なときの鬼太郎の母と、血を吸われた後の母のギャップがまたドラマになる。母はどこか猫娘にも似た感じがあるがこの溌剌としたイメージはどうやって生まれた?

→最初はザ・囚われの姫のような儚げな黒髪ロングの感じだったが、谷田部さんの提案で母も芯があるところをちゃんとだそう、という風に変更。
精神的にも芯が強いし、戦闘能力も高い設定。
鬼太郎の父が当初の予定から穏やかな性格に変更されたことで、逆に母は強く、6期鬼太郎の割と好戦的なところは母譲りなのではないか、とか。
鬼太郎の父が穏やかな性格になった分、そういう父を巻き込んで引っ張っていくような方がしっくりきた。

カットされたが、実は考三と鬼太郎母が島から逃げる時に母が闘うシーンも脚本にあった。
今回、考三については長田が口頭で喋るだけで説明されているが、ただ怯えているだけの人間ではなく考三にも実はそういう物語がちゃんとある。

※本当は120分くらいあったが100分にしろと言われて、どうしてもなんとかもう少し時間をもらえないかと交渉したところ104分まで、105分をすぎたらダメと言われたそう。だからこの映画は104分59秒らしい。

データ原口さん「考三だけでなく長田と乙米の関係も気になる。 」
古賀監督「長田と乙米は谷崎潤一郎の世界で。
長田が10代、乙米が20代の頃からそういう関係で、、、
主従関係で絶対に越えられないけど、、、 」
吉野さん「最期に狂骨に襲われた時、長田が「乙米様」と呼んだけど、実は「乙米様」と呼んだのはあれが最初で最後。 それまで『お嬢様』『奥様』としか呼べてなかった。 」
データ原口さん「書かれていない関係性を深掘りするだけでまだまだスピンオフも作れそう。ディレクターズカット版をぜひ、、」
※それは上が決めることなので、、と言われつつ会場からは拍手が起こる。

◉考三の髪が白髪なのと水木が白髪になったのは同じ理由。
龍賀一族は狂骨に襲われても心と記憶を失くすだけで命までは奪われない、というのは作中で説明されているが、では、なぜ龍賀一族の血を継いでない水木は狂骨に襲われても記憶を失くすだけで死なずに済んだのか。
よく観て考えてみてほしい。

◉水木や鬼太郎父があの島に行って初めて映画で妖怪が出てくるのではなく、実はその前から妖怪は出てきている。よく観てみてほしい。

◉最初に出てきた金魚はなんだったのか?
→チョウテンガンという、目玉が上を向くために人間に無理やり作り変えられた金魚。(つまり犠牲者、搾取された人々の暗喩。)

◉今回覚悟を持ってできるだけ説明を省いた。
世間一般的に客は説明がないと分からないと言われがちだが、敢えて説明はせずに、その代わりいろんな描写を工夫している。
何度か印象的にでてくる日本人形など。

◉実は野沢雅子さんが目玉おやじとは別に兼役で出ている。試写会などでも身内は誰も分からなかった。探してみてください。

◉作中でも「忘れないで」という言葉が出てくるが、昭和30年代を描こうと思ったのは単に監督の趣味だけではなく、「忘れないで」、ということ。
過去を顧みず反省せずがむしゃらに前進し続けたことで何か大切なものを忘れてないか。
戦後そうやってきて高度経済成長は遂げたがその後またどんどん不景気になりいろんな問題も起きているし同じ過ちばかりを繰り返している。

◉本当は昭和だけではなくて明治の頃から描きたかった。この100年を振り返るような。

◉見どころ
谷田部さん「力を入れていない部分がないというか、本気で想いを込めて作ったのでぜひ何回も見てほしい。」
吉野さん「作品のクオリティはその作品に命を賭けた人がいるかどうかというところに左右される。この作品は古賀監督や谷田部さんをはじめ多くの人がみんな本気で命をかけて作ってる。そういう作品の脚本をやれて幸せ。実際このスケジュールで出せるクオリティではない。 」
古賀監督「自分は映画が好きなので映画を見るだけではなく、映画を読むということをするが、この作品もぜひじっくり読み込んでほしい。 」
データ原口さん「実は私が東映アニメーション研究所で教えていた時に古賀監督が受講していたらしい。今回アクションシーンを担当していた太田晃博さんも私の授業を受けていたらしく、広い意味で教え子にあたる2人がこの作品に関わっていて嬉しい。アクションシーンが本当にすごかったと大評判だったのも嬉しい。 」
尚子さん「私はアニメの作業には関わってないしできるのはお菓子を差し入れするくらいだったが、本当に愛ある方々に作ってもらった。出来上がった映画を見て何度も号泣した。一度目はストーリーを追うだけで精一杯になると思うのでぜひ二度目三度目と見てほしい。私は三度目でようやく気づいたこともあった。ぜひ何度も見てください。」


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