学生コラボのカーディガン+制服のヒナイチくんを見た勢いで書いたΔドラヒナです。
この時期なら、体育祭かなぁ…と、定期的に書きたくなる、20代後半のΔ隊長×高校生ヒナイチくんのお話です。勿論(?)、両片思い時期ですね。
捏造設定で、隊長は飛び級でエリートコースを駆け抜けてきたので、普通の高校生活をしているヒナイチくんを眩しく思っている。自分の子供時代、学生時代の話をする時、どこか寂しそうな顔をするイメージで書いてます
体育祭リレー本番で、隊長の前でテープを切るシーンを追加しました。
2023/10/11に上げました。
@kw42431393
「こんばんは。隊長さん。」
「ヌンヌンヌ。」
「あぁ、ヒナイチくん。これから、帰る所かね?」
もうすぐ、体育祭なんだ。クラスで期待されてる運動部員は、練習に本腰が入ってくる。
だから、暗くなっていたのも忘れていたんだ。でも、ラッキーかもしれない。
こうして…うん!ラッキーだな!
こうして、憧れの隊長さんに会えたんだから。
うだる様な暑さが続いた8月、9月…それがいつの間にか涼しくなって、部活中にグラウンドの照明が付くのも早くなって…聞こえるのはセミの鳴き声じゃなくて、コオロギや鈴虫になっている。
いつの間にか10月に入っていた、ある夕方の事だった。
「練習で遅くなってしまったんだ。もうすぐ、体育祭だしな。」
「そうかね。でも、暗いから気をつけ給えよ。私も、これから退治人ギルドに向かう所だから、一緒に行こう。」
「はい!!」
隊長さんの横に並んで、家までの帰路を一緒に歩く。最近多忙だったらしくって、顔を見れなかったんだ。
知らず、上機嫌になる。自分では見えないが、ペルソナと冗談で言われる頭のアンテナも嬉しそうに揺れているに違いない。
「体育祭って、楽しいかね?」
「ん?隊長さんの学校は、体育祭なかったのか?」
「向こうにはないね。それに、私は体が弱かったもの。体育の授業は見学組だったから、興味があっただけ。」
あ、そうか。悪い事を聞いてしまったな。
そう思って俯いていると、頭をそっと撫でられた。
「ウフフ、気にしないで。それにしても、若さかな。体を冷やさないようにね?」
「何がだ?あっ、そうか。」
元々、冬でも薄着で歩いている私だ。まだ、半袖を着ている事を言っているのだろう。
そうだな。今度の土曜日にでも、衣替えをしてもいいかもしれない。
「いつ寒くなってもいい様に、カーディガンぐらいは持っておきなさいよ。」
「ヌンヌン。」
困った様にお小言を言うあの人を、上目遣いで見る。
この間まで、半袖の夏服でも『暑くて死にそう』と言っていた隊長さんは、今は白いコートを羽織っていた。吸血鬼対策課のコートは、吸血鬼の目を引く為に夜中でも目立つ白い色をしている。
私は、このコートを着た隊長さんも大好きだ。
黒髪に白いコートが映えて、とてもよく似合っている。
勿論、冬に着ている黒いコートもかっこいいと思う。色白な肌によく似合うんだ。
「う~ん。まだ、皆こんなもんだぞ。」
「おやおや。年長者の言う事は、聞いておきなさい。じゃあ、ここで…。」
いつの間にか、ギルドの前。まだ高校生で退治人になっていない私は、退治人と吸対の会合に参加出来ない。
だから、せっかく会えた憧れの人とはここでお別れになってしまう。
寂しいな。早く高校を卒業して、退治人になって、皆と一緒に街を守りたいな。
「うん、それじゃあ。おやすみなさい。」
「おやすみ。あと、これ。お兄さんに見つかる前に渡しておくよ。」
そう言って、カバンから取り出されたのは、隊長さんのお手製クッキー。
私が、一番大好きなお菓子。
幼い頃、貴方と出会った時に貰った思い出のクッキー。
「クッキー!!ありがとう、また頂きます!!」
「フフ、元気出たね。クッキーモンスターは、そうでなくては。」
ところで…と貴方は微かに笑って続ける。
「ヒナイチくん、その体育祭っていつかね?」
体育祭は、来週の日曜日だ。もしかして、見学に来てくれるのかな?
一瞬、期待に心が躍る。頭のアンテナが、ピクッと反応したのが分かった。
でも、今の吸血鬼対策課は人手不足で、隊長さんがほぼ署に詰めている事は聞いている。いいのかな?
「全部は無理だけど、昼間だから少しは時間がありそうだ。空いてる時間に、寄せて貰うよ。」
「ヌンヌッヌヌ!!」
そう言って、ジョンを肩に乗せた貴方は、ギルドの中に消えていく。
「よし、がんばるぞ!」
元々、手を抜く気なんてないけど、憧れの人が見学席にいる姿を想像すると、ドキドキするな。
花形のリレーで、私はアンカーなんだ。
皆から受け取ったバトンを握って、ダントツで皆を引き離してみせて、最後にテープを切った時…貴方とジョンは、どんな顔をしてくれるかな。
いい所を見せたいな。
それで、見学席に行ったら…「お疲れ様!」ってハイタッチして貰ったり、「頑張った君に。」って、クッキー貰ったりして…
「はいはい、ヒナイチ。百面相してないで、家に入れ。あと、一枚もらいっと。」
後ろから急に聞こえた兄の声で、我に返る。脛に蹴りをいれるが、遅かった。
悔しがる私を尻目にクッキーを片手に、ひらひらと手を振る兄の姿も店の中に消えていく。
「あ~、もう!!兄さんったら!!」
甘い幻想から覚めると、冷たい風が吹いてきて、不意に寒気が襲ってきた。
『年長者の言う事は聞いておきなさい。』
隊長さんのさっきの言葉を思い出す。
そうだな。部屋に戻ったら、やっぱり、カーディガンぐらい出しておこう。
折角来てくれるのに、風邪でも引いて、私が休んでいたら申し訳ないもの。
『体育の授業は見学組だったから、興味があっただけ。』
昔の話をする時、いつも貴方は妙に寂しそうな顔をする。何かを置いてきた様な…さっきの顔もそうだった。
子供の私に、出来る事は何もない。
でも…せめて、見学席にいるあの人を、笑顔にする事ぐらいはできるかな…いや、してあげたいと思うんだ。
「お~い、こっち!こっち!」
「いけ、いけ!!」
「はい!頼んだよ!」
「手ぇ抜くなよ!」
「わーってるよ!うるせえっつの!!」
次から次へ、アンカーにバトンが渡される。それまで突っ走ってきた者達は、ヒイヒイ言いながら蹲ったり、仲間の元に駆け寄ったりしてる。
まずいな…最初に走り出した者は、もう最初のコーナーを周ってる。
責める訳にはいかないけど、私より2人前の子がこけちゃってな。引き離されてしまったんだ。
「はぁ、はぁ!ヒナちゃん!悪ぃ!!」
「OK!!あとは、任せろ!!」
顔にも出さずに、バトンを握る。バタンと倒れこむ同級生に笑いかけて、私は思いっきり地面を蹴った。
大丈夫だ!このぐらい、全然平気!だって…
観客席の一部に目立つ、白い長い影。その肩で、小さなマジロが必死に手を振っている。
「ヒナイチくん!」
「ヌンヌヌ~!!」
だから、全然平気!!半分の所で一気に距離を詰める。そして、最終コーナーで先頭に追い付いて…
「ヒナちゃん、おかえり~!」
「やっぱ、凄いよな!」
「そりゃ、そうだよ。未来の売れっ子退治人だもんね!!」
テープを切った勢いのまま、私は待ってた同級生の中に飛び込んだ。もみくちゃにされながら、皆とハイタッチしながら駆け抜けて…観客席の一番見たい笑顔を探す。いた!!
「隊長さ~ん!」
控え目に拍手をしていた貴方に駆け寄ると、いつも眠そうな目が驚いた様に開かれて…
パアン!!
上げてくれた骨ばった大きな手に、思いっきりハイタッチをした。
しまった…なんかテンションおかしくなっちゃって。痛くなかったかな?
「ヌフフフ」
「アイタタタ。」
「す、すまん!つい、嬉しくって。」
赤くなった手を振りながら、私に向けてくれた貴方の笑顔は。
「おめでとう。最後の追い込みはすごかったよ。」
今まで見た中で、一番嬉しそうな笑顔だった。