三次創作、アルコとティアレと果物の話。
※えいさんちの闇を目指した連星オリジナル女主人公(アルコ)をお借りしました。私解釈なので本家とは異なる設定も含みます。
@rondonozatta
「じゃんじゃじゃーん! 愛しい旦那様からお土産だぞー! どう? 嬉しい? 嬉しいよな?」
「うっとうしいかも」
「うにゃー!」
生意気云う相棒はこちょこちょの刑に処す。
こたつみかんを堪能していたティアレが抱えていたネリタンタンクッションを奪い取ってぶんと放り投げ、ちゃっかり膝の上を占拠する。四方のうち三方が空いている? ティアレの膝はアルコ専用特等席なので無問題。
じゃんけんで負けてココアプリンを買いに行かされたついでに、深界四層まで降りて行って遺物稼ぎして帰ってきたところである。そのとき通りがかった大樹にイイ感じにたわわに実っている木の実を見つけたので、お土産に持ち帰ってきたのだ。
アルコの日頃の突飛な行動の数々に馴らされているティアレは、アルコにプリンをあーんで食べさせてもらいながら、アルコがこたつの脇に置いたリュックからこぼれている果物を拾い上げる。
見た目はヘグイの実の色違い。すんすんと嗅ぐとほのかに甘いような匂いがするのが特徴。アビス産にしてはごくごく普通の果物だ。
「……毒入りじゃないよね?」
「食べたら美味しかったからだいじょぶ!」
「いきなり食べちゃだめでしょー‼ ぺっしなさい、ぺっ」
「もう消化されたぞ」
ためらうティアレをよそにむしゃむしゃ丸ごとかじっているアルコ。リコ先輩と違って腹は強いのでなんでも美味しく食べられるし、拾い食いで腹を壊したことはない。密やかな自慢だ。自分用のスイカバーもかじる。メロン味だった。
うにゃうにゃ云うティアレの口に果実を押し込む。なにはともあれ一度食べてみたまえ。
「甘っ!」
「だろー。ヘグイの実って酸っぱいのもあるけど、これすごく糖度高いよな」
糖度十五度くらいあるんじゃなかろうか。おやつに食べたい味。野生の果物にあるまじき甘さだ。
煮詰めるよりはそのまま丸ごとかじりたいし、あるいはバターを挟んで焼いてもいいかもしれない。凍らせて砕いてシャーベットにするのもいいかもしれない。
リュックに詰められるだけ採ってきた果実をアルコとティアレは競うように食べた。たらふくになっても十個ほどまだ残っているが、それは明日以降のおやつになるだろう。ラウルとドロテアを呼んだら喜ぶかな。
「あーお腹いっぱい! ティアレさんや、暑くなってきたから離しておくれ……」
四つ目を食べていたあたりからティアレがぎゅうぎゅう抱きついてきて動きづらい。みかんうまうま。酸味を主張するみかんは甘いものの小休止にちょうどいい。あれ? まだ食べれる気がしてきた。
しょっぱいものがほしいな。柿の種わさびが戸棚に入っていた気がする。立ち上がろうと思ってアルコがぺしぺしティアレの膝を叩くも、ティアレの反応が鈍い。
「あれ? マジで毒入ってた?」
遅効性の毒ならありえなくもない。アルコさんが処置してしんぜよう。決してキスチャンスとは思っていないから。
と、むりやり身体をひねると、ティアレはぼろぼろ涙を流していた。
「どっどどどどうしたの⁉ なんかあったかな⁉」
「……アルコがいる……」
「はいはいアルコさんいますよー! 歯にかけら挟まったんかワレェ⁉」
「……ゲームでアルコがゲームオーバーするたびに、ボクを追いかけたせいでアルコが死んじゃう世界線もあるのかと思ったら、ボクは耐えきれないよ……。デッチュのことすごく恨む……」
「なにもしなくてもデッチュは有罪だよ」
あの男はいい金ヅルだとしても性根がHENTAIなのでティアレには指一本触れさせないとアルコは決めている。
「アルコときたらナキカバネに襲われてピンチになるし、インビョウ狩りまくって後ろに気づかないでうすい本展開するし、三層干渉器戦で弾忘れるなんて要らないドジを発揮するし」
「あのときは痛かったですねー」
「ボクがゴコウゲの糸に絡まったときに『(゚∀゚) エッチナウスイホンキタコレ!!!!』と云ったことは許さない」
「その節はありがとうございました」
おっと思わず本音が。
「全然心こもってない」
ティアレが恨みがましい声と眼で突き刺してくる。あーティアレの泣き顔可愛いな。脳内をよぎるSっ気はさておき、ティアレがこんなにも感情あらわにして泣いているのはめずらしい。なにか変なもん食ったか。
「……あ」
さっき食べた木の実だ。
ぐいと後ろにティアレを押し倒してみれば、ティアレの顔は熱を出したように赤い。
この症状には覚えがある。喫ティアレドリンクした後にアルコールが回っているときのティアレそのものだ。アルコといえば、幼少期から甘酒をたしなんでいながら酔っぱらったという経験が一切ないワクだ。アルコール成分を含んだ果実を食べてまったく平気なのも頷けた。
「とりあえず水かな」
毒でないなら処置は簡単だ。あらためてこたつを這い出てキッチンに行こうとすれば、ティアレが腕を引いてくる。
「ティアレ、ちょっと水取って来るだけだぞ」
「やだ」
「なにこの可愛い生き物」
舌ったらずに頬を染めておねだりしてくるティアレは泣き顔以上にレアだ。SSRだ。最近はスキンシップに慣れきってしまって食卓の塩を取ってほしいときにすら「アルコ、塩」と熟年夫婦かというような態度で命じてくる生意気ティアレが、アルコへ好き好き大好きがあふれ出ている。ちっさいハートがぽんぽん際限なく飛び出しているのが目に浮かぶようで可愛い。
アルコは無言でこたつに入り直し、元のように抱き枕に徹する。ティアレはごきげんにぽっぺたを首に擦りつけて、ふふ、と幸せそうに笑う。泣き上戸の次は笑い上戸かあ。忙しい奴だね。可愛いね。
原因さえわかればアルコはこのめずらしい甘えん坊ティアレを存分に楽しむことにする。今度はアルコがティアレを膝に乗せてあげた。カメラあればいいのに。ビデオで大きく引き伸ばしてティアレアルバム上映会を開催したいくらいだ。
「ティアレ、晩ごはんなんか食べたいものある?」
「ツチバシのレバーやハツの焼き肉詰めたピニャータ」
「やたら難易度高いな。材料はあったはずだし、あとで一緒に作ろ」
「うん」
「ついでにアルコさんの秘蔵ティアレ衣装の着せ替えしたいな」
「……変なのじゃなかったら、いい」
言質取ったぞ。張り切って選ぼっと。アルコがティアレにどんな可愛い衣装を着せるか妄想を繰り広げている間も、ティアレは猫のようにごろにゃんと甘えていた。