惚れた弱み。
「分かる」を「訣る」って書いたのは折口信夫って人。
@azisaitsumuri
別に今じゃなくちゃならないなんてことはない。
リッパーはそう誰ともなしに脳裏で言い置いた。
しかしその実、これをいつ言ってやろうかと待ち構えていたのが、ここのところの近況だ。
周りには誰もいない。
「おまえ、わたしに惚れてるでしょう。」
ぱっと顔を振り向いた傭兵と、リッパー以外には。
このタイミングなら言っても良いだろう、と思いながらも、それは決してこの男への気遣いなどという無意味なものではない、とまた誰ともなしに言い置いた。
「分かるか。」
「そりゃおまえが黙ってても目が熱烈ですから。」
目と言うより意識みたいなものが。
鬱陶しくて気になるのだ、いろんな意味で注意を集めることに立ち回りの手を返せる筈のリッパーが。
傭兵はへにゃりと相合を文字通り綻ばすように崩した。
「なに。」
リッパーは驚いて訊ねた。
驚くとこんな平坦な声が出るものか。リッパーは自分にも驚いた。
「おれがおまえに惚れてることを、おまえが訣るというのは、嬉しい。」
リッパーは自分が、口を裂いてぱかっと割れば良いのか、それとも歯を鍔迫り合いのようにぎりぎりと噛み締めれば良いのか分からなかった。
何せ、リッパーがこの話題を傭兵に持ち掛けたのは、この鬱陶しい小男に断りを入れるためであったのだから。