@azisaitsumuri
水を飲むのは生きるために必要なことであるから、それに伴いその動作も人生に於いて自然と慣れることだろう。
そのグラスの中身が酒であろうと、動き自体はなんの苦も無く行えることは納得出来る。
しかし不思議なのが、それと同じように澱み無い動きで筆を操りすらすらと絵を描き進めて居ることだ。
酒を飲みながらやって居ると、尚更。
「なんです」
酔っ払いの芸術家がこちらの視線に怪訝そうに振り向く。
「いや、酒を飲むのと絵を描くのを、よく一緒にやってられるなぁと。」
「別に、絵を描くなんて、いつでも出来るでしょう。」
あっさりと言った。しかもそっちか、酒を飲むなんていつでも出来る、じゃないのか。
酔拳、と言うものを思い出す。しかしあれとはまた違う、酔わないと繰り出せない拳とは違う。今本人が言った通り、酔っても酔わなくても、こいつは絵が描ける。
「そう言うおまえこそ、わたしを肴にして酒を飲むのをやめなさいよ。」
自分の口に傾けて居たグラスを、一瞬止める。
「仕方無えだろ。」
そして改めて傾ける。
「おまえ、絵でも描いてないと大人しくして無いんだから。」
こう言う時で無いとこの男を見ながら酒が飲めない。
こっちはいつでも出来ることでは無いのだ。