@azisaitsumuri
不思議そうに、ふとした疑問をほんの口にしただけのように、そいつは言った。
「おまえわたしに好きだって言わないんですか?」
びくりとその儘固まった。奴の仮面を見返して遣ることも出来ない。
自覚は有った。
とっくに。わざわざ本人から指摘して貰う迄もない。
気の迷いでも無い。何かの間違いでも無い。
分かってる。
おれはこいつに惚れている。
分かっている。
「言えない。」
「なぜ?」
「勘違いでもなんでもないから。」
そうだったらどんなに良かったかと思う。
「苦しいのですね。」
リッパーは心底楽しいとでも言うようだった。
「言って仕舞えば、もっと苦しく成ると思っているのですね。」
そう言って仕舞うと、今度はリッパーは少し考える素振りで上方を向いた後、また仮面をこちらに向き直した。なら、そうですね。
「言わずに耐える方が苦しい、とおまえが思い改める迄、もう少し待つとしましょう。」
そう言うと、おれの惚れた男は、一層機嫌良さげに鼻歌を歌い始めた。
胸中の感情が生まれた変化をこの男のように楽しめないおれはまだ、苦しい儘だ。