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孫と私はよく似ている

全体公開 反転ドラヒナ 6544文字
2024-02-01 18:30:30

続いている反転ドラヒナのお話です。この話の、ご真祖様とお嬢ルドくんのシーン(近づいてくる最後のピース https://privatter.net/p/10651252)から直接続いております。
どの世界線でも、孫と祖父・ロナルドくんとヘルシングは似ていると思うので、反転真ミナの関係も無理矢理から始まった事、ヘルシングが両種族が共生する時代を築く為に、ご真祖様と友人になった事、になっております。そして、捏造しかない設定にご注意下さい。
竜に変身したドラルクさんが、ヒナイチくんを乗せて城に帰るシーンを加筆しました。
2023/10/30に上げました。

Posted by @kw42431393

 『信じてくれないの?私は、ミナと対等でありたい。ずっと、そう思っていたのに。』      
 『君はそのつもりだろうな。そのつもりで、いつか僕を吸血鬼にすると言っていたんだよな。でも、今の君には無理なんだ。鏡に映らないから、見せられないけど。その目は、対等な相手に向けたものじゃない。』
 
 そう言う君の顔色は、ますます私達に近くなっていく。
 まだ間に合う、竜の血族の真祖である私なら。
 君を吸血鬼に出来る。母親としてだけでなく、同胞としてこちらの世界に永遠に留めておける。
 君だって、最近、私を『嫌い』だと言わないじゃないか。

 だから、意志を無視して、死にゆく君の首筋に牙を突き立てる。あとは、私の血を打ち込むだけ。

 『吸血鬼になっても、僕と君は対等になれない。僕も君と対等になりたかった。だから

 全部、吸ってくれ対等どころか、神様すら僕達を離す事は出来なくなる。

 その言葉に打たれた私は、自分の血を打ち込まなかった。虫の息の君の血を全て吸い尽くした。
 その時の姿は、恐らくこの世で最も美しいもので、500年経った今でも鮮明に思い出せる。
 『ごめんな、これが僕の呪いだ。僕から誇りと自由を奪った君への。最強の夜の子は、永遠に僕のモノだいや、僕自身だ。もう君には、誰も襲う事は出来ないはずだ。』
 ニイと口角を上げたその顔は、何故か私によく似ている。そう思って見ていると、後ろで生まれて間もない息子が泣き出した。
 残酷無比な串刺し公と吸血鬼殺しである彼女との間に生まれた、ドラウスと名付けたダンピール当時の我が子への認識は、その程度だった。
 成長してどれほど素晴らしい力を見せてくれるのか、という興味しか当時の私は持っていなかった。

 そのはずだったけど

 『ドラウス、お腹が空いたのか?待っててくれ、お母様が今
 そう言って、黙ってしまったミナの瞼を閉じさせた。慌てて、私は泣き止まない息子を抱き上げる。
 突き上げる衝動のまま、柔らかい赤子に頬擦りをした。そんな気を起こしたのは、この時が初めてだった。

 『おい、誰か!』
 『ひっ!!×××××様!お坊ちゃまの
 『そうだ。ドラウスの乳母は、どこだ!?早く連れて来い!』
 その時、急に彼女から言われていたお小言が脳裏に浮かんだ。



 『お前は強面だし、最近まで恐怖政治をしていた元独裁者だ。せめて、人を怖がらせない言葉遣いをしてみたらどうだ?素の喋り方も、唐突で端的過ぎてどうかと思うけど、皆に対しては高圧的過ぎるぞ。』
 『吸血鬼には、畏怖欲がある。やらないよ。これだって、以前思わず素が出た時に、ミナが笑ってくれたからしてるだけ。』
 『君は、領主だろ?怖がらせてどうするんだ。僕限定じゃなく、皆にも優しくしろ。』
 恐怖政治を辞めたのは、君が嬉しそうな顔をしたからだ。言葉遣いだって、ミナの怯えた顔より笑った顔が見たかったから。
 ただ、その一心だった。君がいなくなったなら、どうでもいい。

 そのはずだけど。

 『来い?連れて来て欲しいす?』
 『えは、はい。お待ちくださいませ。』
 彼女の血を吸って、私と彼女は一人となった。いつしか、私の人格は変わっていった。
 退屈しのぎに誰かを襲おうとしても、どこかで『やめろ!』という君の声が聞こえる気がした。
 怯えている相手を見ると、振り上げた手を止める様になった。

 相手を怖がらせない様に努力をしていると、彼女の呆れた様な笑い声が聞こえた気がして

 相手を怖がらせない様に試行錯誤している間に、身に沁みついて今の性格になった。
 だから、ドラウスもドラルクも本当の私を知らない。
 私がかつて退屈なだけで、他国まで飛んで行って同胞も人間も虐殺して、喰らい尽くして、それを止めに来た勇気ある女性に執着して嬲り尽くして、子供まで産ませた最低な男だと思いもしていない。
 実を言えば、孫の問題行動に若い頃の自分の影を見たけれども、幸い、彼は不死身ではなかった。
 いつか限度がくるはずだから、放っておいた。
 それから、どれだけ経ったっけ

 『はじめまして、竜大公。』
 眼鏡をかけた恰幅のいい中年の男性初めて出来た私のマイフレンド。
 品よく笑って、手を差し出してくれた勇気ある紳士。
 『ハワユー!よく来てくれました、歓迎シマース!座って、座って!今、イギリスから取り寄せた、いい紅茶を
 『はい、頂きましょう。ところで、×××××さん。さっきから、無理しなくていいんですよ。』
 思わず、ずっと被って来た仮面が剥がれる。かつて恐れられた串刺し公の顔に戻っていたと思う。
 なのに、彼の顔は穏やかだった。
 『ふうんどういう意味?』
 『私は、貴方と友人になりたくて来たのです。私は全ての吸血鬼と友人になりたい、それには最強最悪の貴方から始めるのが一番だ。貴方が今私を殺そうとしても、恐ろしくありません。』
 『そう。こんな風にっ!?』

 竜に変化させた鋭い右手を振り下ろす。しかし、彼は何でもない様に躱してみせた。
 舞踏会で女性をエスコートするかの様に、軽やかに優雅に。
 『そういう野蛮な事は辞めましょう?』
 『そうだね。アポを取ってまで、私に会いに来たのは何故だっけ?』
 『貴方と友人になりたいから、です!そして
 彼は、そこで屈託なく笑う。

 二つの種族が共生する時代の礎を築く為に、貴方達に協力して欲しい。その契約を取り付ける為に来ましたと。



 「さすが、ヘルシング様ですわ。そのお時代は、今とは比べ物にならないぐらい、お吸血鬼さん達と私達の関係は、酷かったと聞いておりますもの。」

 目の前の青年が、紅茶に口をつける。日本の新横浜からやってきた、吸血鬼退治人。
 東欧をヒッチハイクして語学研修をしている男。
 私に怯えずに、この喋り方が作ったものと見抜いた、どこかマイフレンドに似ている男性なのかな。
 変な喋り方をするね。
 「そ。実は、その当時の私は別に親人間派ではなかった。ドラウスは、狭間の子だった時期もあったから。ミラは、吸血鬼が生きていくには人間と関わる必要性があると、考えていたからそういう理由で、両種族の関係調整に奔走してたけど。私は、別に熱心じゃなかった。」
 その二人にしても、愛息子が不死身でない事が分かってから、心配で心配で。
 今や、ほぼそちらの問題には関知していない。
 孫は甘やかされ過ぎてグレちゃって、反人間派の同胞とヤンチャばかりしている。
 私は私で、真面目な息子に丸投げして遊びまわっていた。
 誉められたものではなかったよね。

 「さっきも言ったけど、君はマイフレンドに似てる。変な喋り方だけど。ロナルドくんは、男じゃないの?」
 「まぁ、変とはお失礼ですわ。私はお嬢です!」
 「ふ~ん、昔から?」
 「さぁ?そこは覚えておりませんの。いつの間にか、この様なお感じでしたわ。」
 頬に手を当てて、首を傾げる姿は上品だった。おネエはよく聞くけどまぁ、人それぞれだし。
 私のミナも当時としては珍しい『僕っ子』だった。
 白い羊膜を被って生まれてきた吸血鬼殺しとして、抜きんでた戦闘力の持ち主として、周りは期待をしていたけれども、そこはいい目で見られていなかったらしい。
 「でも、職業柄良かったと思いますわ。女性の方のお気持ちも多少は察しもつきますし、男性にはご遠慮するお内容でも、私には心安く、ご相談して頂けます。」
 そうかもしれない。だからこそ、これから私が相談する内容もしやすいかもしれない。
 「ねえ、ロナルドくん。私は君が気に入った。君の望みを叶えてあげたい。」
 「それは光栄ですわ。」
 「君は、世界中の吸血鬼と人間が共生する時代を築きたいそう聞いている。私なら出来るよ。」
 それを聞いた時、彼の眼付が変わった。当時のアルミニウスにも同じ言葉をかけた。
 彼の返事は

 『ありがとう。でも、それは丁重にお断りします。』
 「ありがとうございます。でも、それは丁重にお断りしますわ。」

 にっこり笑った青年の顔に、かつての友人の影を見る。
 ああ、やはりそうだ。
 彼なら孫を頼める。
 初めての友人になって貰えるかもしれないあるいは、ドラルクも彼を気に入るだろう。

 ドラルク。皆、首を傾げるだろうがお前は、若い頃の私とよく似ている。
 だから、ドラウスから聞いている吸血鬼対策課のお嬢さんに私がミナにしたのと同じ事をしているはずだ。
 お前はそのお嬢さんを心から愛していて、彼女を危険から守る為に、駕籠の中に閉じ込めて、彼女に自分を好きになってもらう為に奔走しているつもりなのだろう?

 「竜大公様。貴方と契約し、一言『人間と仲良くしろ』とお号令をかけて頂ければ、皆様、そのおカリスマに従うでしょう。ご自分のお意志を曲げてでも仮に、反吸血鬼派の人間達にお虐殺されても。」
 『私が、望むのはそうではありません。その齟齬を埋めるのが、擦り合わせをする為の、話し合いなのです。』

 「『時間がかかっても構いません。私が生きている間に実現出来なくても、次の誰かがしてくれる。お互いが納得した上で、共生の時代を作らなければ意味がありません。✕✕✕✕✕、貴方達には、私達が同じテーブルに着く機会を作って頂きたい。双方の犠牲者が少なく済む為の情報提供や、好んで事件を起こす者達の更正プログラムの確立に、ご協力頂きたいのです。』」
 このやり方は、時間がかかる。それでも、反人間派の勢力は激減し、せいぜい事件があっても、小競り合いか地域的なテロリズムまで縮小した。私がアルミニウスと出来たのは、そこまでだった。
 「ところで、竜大公様。貴方が私に頼みたい事とは、何でしょう?」
 「ウッフフフ、さっきの言葉で確信したよ。ロナルドくん。君ならいや、私が頼みたい。」
 背を屈めて、青空の様な瞳を覗き込む。
 その瞳には、迷いがないから。

 「新横浜にいる、私の孫とその監視員の女性に、会ってあげてくれる?」



 思ったより早く済んだな
 ため息をついて、私はもう一つの任務に向かう道を歩く。道すがら、向かう先に連絡を入れた。
 無機質なコール音が、何故か心地よい。

 さっき、下等吸血鬼の駆除と避難させていた市民を帰して来たところだ。
 本当はもっと時間がかかる予定だったのだが裏で動いているはずの高等吸血鬼達の姿はなかった。
 仲間割れや離脱した者がいたのかもしれない。
 『もしもし。ヒナイチくんかね?』
 「ああ、ドラルク。今から、そちらに向かう。思ったより、早く終わったんだ。」
 「それは、何より。」
 背後から降ってくる、低い声に振り返る。
 そこには、大量の買い物袋を念動力で浮かせたドラルクの姿があった。いつも肩にいるマジロの姿はなかった。
 そういえば、今日はフットサルの試合で出かけると聞いていたな。
 「わっ、お前。人が悪いぞ。」
 「君が遅い予定だったから、買い出しに来ていたのだよ。一緒に帰ろう。」
 携帯を懐に仕舞いながら、笑う顔は妙にはしゃいだ子供の様にも見えて私は、彼のこの顔が嫌いではない。
 「帰ろうではない!私は、仕事で行くんだ!」
 だが、素直でない性格でふいっと顔を逸らしてしまう。
 実質、ほぼ寮に戻ってない。
 「そろそろ『ただいま』と言っておくれ」と言われるがそれを認めるのは、あの事件に同意した事の様に思われて、無理矢理、夜の世界に引きずり込まれそうに思われて私にとっては、恐怖だった。 
 「フフ、怪我もなさそうだ。」
 「うむ。裏で動いているはずの実行部隊の連中が、いなかったのでな。荒事も少なかったのだ。」
 「クックックそうだろうね。」
 そうだろうね、とは引っ掛かる言い方だ。『いなかった事』を知っていたかのような。
 「あと、その目立つ格好をなんとかしろ。時々、周りの視線が痛い。せめて、人目につかない様にして帰るとか、考えないのか。」
 「分かった、道を変えよう。それにしても酷い事を。今ある食材の9割は、君のお腹に収まる為に、買った物だというのに。」
 裏道に向かう彼を追う。
 血の濃い彼はこれらを食べないし、ウェイトコントロールをしているジョンも、たいした量を食べない。
 胃袋を掴まれているのは図星だ。返す言葉がない。
 「う、うう分かっているが。お前は、元反人間派に属していた危険度Aの吸血鬼、という自覚があるのか?」
 「あるとも。だから
 ぐいっと腰を引き寄せられる。ふわりと、お香の様な匂いが鼻腔をつく。
 無理矢理から始まったとはいえ、慣らされた体は、こんな時でも次を期待して疼くのが、情けなかった。
 「よ、よせ!人前であんっ!?」
 「そう、人目がなくなるのを待っていた。君の勤務査定に響くと困るからね?」
 チュッとリップ音と共に、唇に湿った感触がする。慣れた様に侵入してくる舌を受け入れる。
 自分からは返さないのが、喜んでいないと示すのが、誇りを奪ったお前への反抗だ。
 「ふっ、くんんっ!」
 クチュと音を立てて、それはやっといなくなる。
 息を整えて見上げると、ドラルクは妙に安心した様な顔をしていた。

 「本当に無事で何よりだ。さあ、帰ろう?」
 「お前の城に『帰る』のではない、あくま任務で『行く』んだ。いつ、お前が人間に害を及ぼす側に戻るか分からないから。」

 ビキビキと音を立てて、私を抱えた手が鱗で覆われたモノに変わる。
 バサリと大きな翼の音が鳴ったと思ったら、私達は夜空を舞っていた。

 『こうして乗せるのは、ジョン以外では、君が初めてだよ。』
 そう言ったのは、いつの事だっただろう。

 竜に変身したドラルクの背中から見下ろす、この街は美しくて大勢の人達の行き交う姿が、見える。
 この風景を守る為に、吸血鬼対策課に入ったんだ。
 時々、ドラルクに空の散歩に誘われて、この風景を見下ろす度、私はそう決意を新たにする。
 「よかったよ、疲れた顔をしていたのでね。君のその顔を見るのは、楽しい。」
 「うん、ありが
 「ん?何だね?」
 「疲れたのは、誰のせいだと思って。」
 疲れたのは、昨夜のこいつがしつこかったのもある。思わず、『ありがとう』と言いかけた言葉を飲み込んだ。
 「お前は、あの後棺桶で眠ればいいが、私は仕事があるんだ。」
 「だからだよ、すまないね。私は、君に対して自制出来ないらしい。お詫びを込めて、城に帰ったら、特別腕を振るわせて貰うよ。」
 「そうしてくれこの景色も見せてくれたんだ。許してやる。」
 ドラルク自身は、私を慰めるつもりでこうしているらしい。
 私を一番傷つけている男が、妙な気遣いをする。しかも、それを理解していない。
 種が違うから仕方ないのだ。しかし、その認識の違いからくる溝は大きかった。
 それが、当時の私を恐怖させ、憎みながらも、彼から離れがたくしていたのだと思っている。
 
 「ところで、半田くんから聞いていないかね?」
 「何の話だ?」
 「退治人ロナルドが、近々帰国するらしい。」
 全ての吸血鬼と友人になるのが夢だという、変わった男の事か。
 彼が退治人と吸対の仲立ちをしていた頃は、問題解決がスムーズで、この町の治安は、今より良かったと聞いている。

 「楽しみだねこれで。」
 姿の変わった彼は、そこでニイと笑う。冷や汗が背を伝うのが、分かった。
 人ならざる者から逃げない選択をしたとはいえ、未だにこれは慣れないものだ。

 「君が心置きなく、私の元に来れるかもしれない。」

 
 
 
 

 







 




 

 



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