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飛び込め!②(スレッタside)

2024-02-10 13:57:08

グエスレ現パロ転生シリーズ③-2 スレッタは追う。一歩踏み込みたいから。その背中は周囲の人間に押されていく――。スレッタside。
すいフラ1〜3話「出会い編」完結。

Posted by @CChacoru




前略

スレッタ、新しい学園にはもう慣れたかい?
僕の方と言えば、プロジェクトの進行で慌ただしい毎日だよ。だか水星に送る探査機の開発は順調だ。近々新たなフェーズに入れる。わくわくするよ。
さて、そんなことよりもだ。どうせ君のことだから、きっと学園生活で何か困りごとにぶち当たっているんじゃないかと思ってね。君はポテンシャルは高いのに、不慣れな環境だと空回りすることがあるからね。
スレッタ、青春とは出会いだ。もし君が進みたい相手がいるのなら、迷わず飛び込みたまえ。
逃げたら一つ、進めば二つだ。
君の成功を祈っている。

草々

追伸
そうそう、君におまじないの言葉を教えておく。
それはね、ーー

「おねえちゃん学校遅れるよ!」
「ソフィ!」
玄関で手紙を読んでいたら、ソフィに後ろから勢いよく押された。
足癖でモゾモゾと靴を履きながら、片手にはトーストを持っている。
「ベタ
「ん?」
「おぎょうぎわるいソフィ」
どこの少女漫画だろう。曲がり角で素敵な人とぶつかりそう
素敵な人
この一週間返信をくれない人のことが頭をよぎった。
学園ではなんとか会って話を聞こうとしてるけど、ずっとーー。
ふるふると首を振る。
バシン、と今度は背中を叩かれた。
「やれるだけやってみればいーじゃん。ツッコむときはとことんツッコむ、それがおねえちゃんなんだしさ」
「ソフィ
考えてること、義妹いもうとには筒抜けみたいだった。
「さ、行こ!」
ソフィが玄関の引き戸を開けたから、私も頷いて、手紙は下駄箱の上に置いて、一歩外へと踏み出した。

差出人 アシナガ

***

今日は午後のホームルームが長引いて、グエルさんの教室に行ったときには、姿は見当たらなかった。
「また、逃げた
逃げたら一つ、なのに。
なんだかちょっと腹が立ってくる。
いい言葉だって、言ってくれたのに。
ううん、これは私の勝手。グエルさんに押し付けるのは、違うよね。
自分を正す。
なら、今日はあそこに行ってみよう。
今日の休憩時間、小耳に挟んだのは、生徒会役員に空きがあるらしいってこと。
それだけじゃなくて。推薦状を書いて提出すれば、誰でも役員になれる、らしい。推薦者と生徒会長ーーつまりグエルさんのサインが必要だけど。
今の私には推薦者のあても、グエルさんが認めてくれるかどうかもわからないけど。
でもやって、みなくちゃ。
「たしか生徒会室の前に紙があるって
生徒会室の近くまで行くと、扉の向かいに机があった。前来たときには気が付かなかったけど、目安箱の隣に紙の乗ったトレーが見える。一枚。きっとあれだ。
そのとき、廊下の反対側から男子生徒が現れた。制服を着崩して、肩に学ランをかけた、ちょっと怖そうな人。
肩に上着をかけたスタイルに、夢の中で見たグエルさんを思い出す。
思わず柱の影に隠れる。
その人が先に生徒会室前に着いて、立ち止まった。
机の上のトレーを、見てる。
もしかしてーー
「ま、ままま待ってください!!」
「?」
「そ、その紙、わ、私が先に目をつけてたんです!!」
「何?生徒会に入りたいの」
男子生徒に聞かれた。
「は、はい!私、グエルさんにじゃなくて、生徒会長の、そばにいたいんです!」
何回も深く頭を下げた。
やっと見つけたチャンスかもしれないんだから、逃したくない。
「ふーん……。ま、顔を上げたら」
促されて、男子生徒の顔を見上げた。
キレイな顔の男の人だな、と思った。紺色の髪で、全然違うはずなのに、なぜか面影が重なる気がした。
「君が学園中で噂になってる、今兄さんを追いかけ回してるっていう女子生徒か」
「追いかけ回してだなんて……ってオオオ、オニイサン!?」
に、兄さんって
「グエルさん、のことですか
その人はあからさまに不機嫌そうな顔をした。思わず身を縮こまらせる。
「だったら何。この紙に用があるんだろ」
パッと紙をとると、トレーの横にあったペンでさらさらと書き込み始める。
「あ、あああ!」
先、越されちゃった!
だけどしばらくしてペンを置くと、その紙を私の方に差し出してきた。
よく見ると、推薦者の欄に名前がある。
「らうださん?」
状況が飲み込めない。
ラウダさんはいらだちを隠そうとしない。
「書くんだろ、それ。どうせ推薦してくれる人いないんじゃない」
「あーー!」
推薦者になってくれる、てこと
確かに今推薦者のあてはない。転校してきたばかりで、まだ頼み事をできるような友達もいないから。
正直、助かる。でも、なんで。
顎で促されて、私は机で自分の名前を書き始めた。
「兄さんはさ、本当は向き合えばちゃんと応える人だから」
……
「ぽっと出のよくわからない奴に変えられるなら」
「お兄さん思い、なんですね」
ラウダさんが何故こんなことをしてくれるのかわからないけど、でもそんな気がしたから、思った通りのことを口に出した。
名前を書き終えて視線を上げると、ラウダさんはそっぽを向いて、前髪を手癖でいじっていた。
「あの!」
「兄さんは今温室にいる。第一温室。大きい方の建物だから」
「は、はい!ありがとうございます!」
私は推薦状を鞄にしまうと、一礼してくるりと踵を返して、足早に歩き出す。
振り返らなかったけど、ずっと見守られてる気がした。

***

敷地をだいぶ歩いたと思う。
やっと、見つけた。
「大きい
小さな温室の隣に、見上げるような高さの三角屋根。このガラスハウスの温室の中に、グエルさんが
一度深呼吸をする。
よしっ。
扉を押して中に入った。

目に飛び込んできたのは花畑。
空間の右半分は、背の高いピンク色の花で埋まっていた。
二メートルくらいかな。長い茎の先に、圧倒するような背丈とは裏腹に、ふわりと可憐な一重の花がついていた。
まるでーーそう、乙女みたいな。
少し奥の脇に、グエルさんがしゃがんでいるのを見つけた。
白いジャージ姿で、苗植えをしてる。
こんなところで、悠々としてたのかと思うとまた腹が立ってくる。
ズカズカと近づいていった。
「スレッタ!」
グエルさんも私に気がついた。
彼の横まで来て、すうと息を吸い込むと、ずっと言いたかったことを口に出した。
「なんで、逃げるんですか」
少しの沈黙があって。
………お前には、関係ない」
グエルさんは私の方を見ないまま、そう答えた。
「あの日の夜のこと、迷惑でしたか」
「そんなわけない!」
大声でそう否定された。今度は私の方を向いていた。真剣な顔つきだった。
てっきり迷惑だって言われると思ってた。
嫌われてたわけじゃ、ないんだ。
荒んでた気持ちが、少しだけ和らぐ。
でもますますわからない。
私は隣にしゃがみこんだ。
「わけがあるなら、教えてほしいです」
………
また、沈黙。
ずるいです」
俺とは、関わらないほうがいい」
「そんなのイヤです」
ぐっ」
肩にかけた鞄を下ろして、中から推薦状を取り出した。グエルさんにそれを見せる。
「私、生徒会に入ります」
「なっどうしてそれを」
驚いたみたいだった。
「ラウダに会ったのか」
そう聞かれて、コクリと頷いた。
「役員になるには生徒会長の承認が必要だ。俺が承認すると思うか」
「ラウダさんが言ってました。グエルさんは、向き合えばちゃんと応えてくれる人だって」
……っ」
私は立ち上がると、まだ手つかずの苗ポットが入ったトレーの方へ行って、それをもう一つの段の横に移動させた。
「勝負、しませんか!今からこの苗を、どちらが早くたくさん植えられるか。私が勝ったら承認のサインを書いてください」
ここに来るまでに考えていた作戦。グエルさんなら、乗ってくれると思った。
けれど。
「俺が勝ったら?」
「えっとそれは」
「俺に金輪際近寄らない」
「ムリ、っです」
「話にならない。勝負する気はない。だいたい、苗植えはーー」
「だって、同じ学園の生徒じゃないですか。たとえ私の方から行かなくても、会うことはある、と思います」
「話しかけないだけでいい」
今度は胸をえぐられるような気持ち。下唇を噛んで、溢れてきそうなものを堪える。
「だいたい、なんでそこまで俺に構う?少し会っただけの……こんなにヒドい奴なのに」
「グエルさんはわけ、わかんないです」
正直な想い。
親切にしてくれたり、かと思えば突然突き放したり。嫌ってるわけじゃないのに、わけも教えてくれないし。でも。
夢の中で、大切なんだと言ってくれたこと。バスの中で、私の大切な言葉を肯定してくれたこと。あのメッセージのやり取りだって、お互い楽しかったって信じたい。
わけはわかんないけど。
一歩進みたい、って思ったから。
もっと踏み込みたいって思ったから。
「でも!わかりたいんです」
「!」
一歩前に踏み出す。
「それに、少し会っただけじゃないです」
工具箱から道具を取ろうとする。そのとき、段差につまずいて転びそうになった。
「スレッタ!」
「うわあおわわっ!!」
咄嗟に両腕が伸びてきた。
自然な、落ち着く深い香りがふわっと鼻をくすぐって。
気がつけば全身を力強く受け止められていた。
思わずビクッとして、反射的に突き飛ばそうとして、でも力強い抱擁と、そうしたくない気持ちで思いとどまって、私はされるがままになった。
男の人とこんなにも近く密着するのははじめてだった。だけど不思議と怖くはなかった。
愛おしいものを包み込むように。大事そうに抱えられて、とても温かくて。安心して。でもその体は強張っていることに気がついた。
大きな背中が、泣いている気がした。
私は宙ぶらりんになっていた両手を、ゆっくりと、その背に置いた。
少しだけ彼の緊張が解かれたのを感じた。
「グエルさん
この人は、私にとって何なんだろう。
夢に現れて、ほんの少ししか知らない人なのに、すごく気になって、放っておけなくて。
泣いてないけど、泣いてるような気がするから。私のこと、たとえ夢の中でも大切だって言ってくれた人に、ただ笑っていて欲しいんだと思う。
「グエルさん」
私はもう一度呼びかけた。
背の高いピンク色の花が、私たちを覆い隠すように。
このとき、私たちは二人きりだった。

***

「だから!またそのことを持ち出すのは!」
「聞いてくれないなら言いふらしちゃいます」
私とグエルさんは廊下で横並びになって、言い合いをしながら歩いていた。
あの日。
温室でハグしたことを言いふらすと脅し文句で、私は推薦状のサインを取り付けた。
本当はハグされたこと、全然イヤじゃなかったけど。でもグエルさんにはこれが効くみたいだから時々使ってる。
私は生徒会の庶務になった。
他の役職はグエルさんが兼任したままで、生徒会は今私とグエルさんの二人で運営をしている。
グエルさんは今も少しそっけないけど、前みたいに逃げることはもうしなくなった。
一歩進めたよね?
「そう言えば、あのときなんの花を植えてたんですか?」
「?」
「あの温室で。あの苗」
あの後、一緒に苗植えをした。結局勝負はしなかった。
「あ、ああ………わからない」
「わからないって名前も知らないまま、植えてたんですか?」
「聞いたけど忘れた!だいたい、そういうお前だって一緒だろう!」
「わ、私は!あ、後で手伝っただけですから」
たしか新種で多分、赤だった」
頭を掻いて思い出そうとしている。
「なんとかダ、ダリアだった気がする」
「ダリア
その言葉を聞いて、ピンとあることをひらめく。
「名前。知らないなら、私たちでつけちゃいませんか」
「名前をつける?」
グエルさんは突然の提案に要領を得ないようで、ポカンとした表情で返してきた。それでも、私に話を振ってくれる。
「何かいいアイディアがあるのか?」
「はいアシナガさんこの間言った私の学業を支援してくださっている人が、手紙で教えてくれたおまじないの言葉があるんです」
手紙の言葉を思い出す。

ーーそうそう、君におまじないの言葉を教えておく。
それはね、愛の戦士の言葉。
愛の贈り物の言葉。
きっと君の勇気を後押ししてくれるから、いざというとき唱えてごらん。

「ダリルバルデ。ダリルバルデって名付けませんか」



「すいせいのフラワーワールド」
『出会い編』 完


プチあとがき


お読みいただきありがとうございました!
この後は二人がさらに親しくなった学園生活『生徒会編』を妄想しております。
お話に書くかどうかは現時点ではまだ決めかねておりますが、とりあえず『出会い編』は本にまとめようかと考えています。
御縁がありましたら、その時はぜひ。
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました

追記
とりあえず一話、書きたいお話が浮かんだので小説も続く予定です。
生徒会編か、その前の位置づけとなりそうです。
よければそちらで、またお会いできますように。

こばこ


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