みんト参加作品1作目。
本編、というより30年後ドラヒナで、ヒナイチくんの誕生日のお話です。
署から帰ってきて眠っている、ヒナイチ隊長の寝顔を見つつ、出会った頃の、そして結ばれてからの、娘が生まれてからの彼女との日々について、思いを馳せています。
捏造で、ドラヒナ夫妻は拡張された床下で、ロナサン夫妻は事務所で、2世帯暮らしをしています。ドラヒナ夫妻には娘が、ロナサン夫妻には息子が生まれ、同い年で双子同様に育った事にしています。
@kw42431393
「すぅ、すぅ…。」
「折角の誕生日なのに、大変だったね。ヒナイチ隊長殿。」
今日は、3月3日。世間では、ひな祭り。
女の子なら憧れの、可愛いひな人形を飾って、桃の花を愛でて、甘酒を飲んで。
家族でちらし寿司や菱餅、雛あられを食べて、健やかな成長を願う日。
私にとって、この世で最も大切な女性が生まれた日。
私達夫婦に生まれたのは娘だったから、ずっと君の誕生日と娘のひな祭りを一緒に祝ったよね。
「う…ん。く…きー、おいしい。」
「ウフフ。ヒナイチくん、ったら。」
変わらない、ずっと変わらない。
私と君が出会ったのは、30年前のこの事務所。
長年住んでいたドラルク城が、ロナルドくんの勘違いで爆破されて、シンヨコに転がり込んで、間がない頃。君の思い込みが激しいのは、今もだね。時々、「また、仕事でやってしまった。」と落ち込んでいるもの。
でも、思い込みが激しかったから、ミミズ以下のクソザコの私を『強大な力を隠した、危険な吸血鬼』だと言ってくれたんだよね?
そして、母国の文化では挨拶に過ぎない手への口づけで、魅了にかかってくれたんだよね?
師匠みたいに、何かした訳じゃない。正直、これは誇らしいよ。
だって、正々堂々と君の心を射止めたんだよ?
あの髭は「私の教えた賜物だ、感謝しろ」って、今でも言うけど。本気でもないくせに、誰彼構わず口説くあいつと同じにして欲しくない。
君に言うと怒っちゃうから、言わないけれど。
あの頃の私は、君に対して『美味しそうな血を持った、私好みの美少女』としか見ていなかった。『お嬢さん』呼びだって、躾けられたもの。
子供の頃から鍛錬に夢中で、『お嬢さん』扱いされなかった女の子だったなんて、当時の私は知らなかった。
そんなに食いしん坊な少女だと、私は知らなかった。
だから、君が私の言葉とキスにときめいて。さらに、私のクッキーに魅了されてくれるなんて、考えていなかったんだ。
私は、「手懐けて、いつか美味しい血を貰う」目的を忘れる程に。君への思いが、クソデカになっていくなんて、考えていなかったんのだ。
君がいつの間にか「一緒にいて楽しいんだ」「お前と一緒にいたいんだ」と言ってくれる様になるなんて、考えていなかったんだ。
女の子扱いされずに育ってきた君が求めていたものを、出会った私が持っていて。
私が見る事も出来ない、欲しいと思っていた太陽への憧れを、君が持っていて。
そして、私達は結ばれた。
私の体が弱いから、本当は諦めていたんだけど…可愛い娘にも恵まれた。
生まれた娘の顔は…お会いした事がないから分からないけれど…お祖母様にそっくりらしい。
だから、お祖父様のはしゃぎようはすごかったね。
15世紀の女性は勉強も旅行もさせて貰えない者が多かったから、私の超ハイスペックな頭脳を受け継いだ娘には、お祖母様がやりたかっただろう事を経験させられた。
お父様はここぞとばかりにベタベタに甘やかすし、お母様は私にしてやれなかった事を、この子にしてあげる事が出来た。
棚の上に目を向ける。
そこには、顔に『楽しい』『幸せ』『可愛い、尊い』しか書いてない、両親と幼い頃の娘がヴィッキーくんと撮った写真が、飾られている。
私にとって、いかに世界が平和になった事が実感できて、この写真を見るたび誇らしい気持ちになるよ。
かつての悲惨な時代に戻さない様に、頑張っている君の寝顔を見るたび誇らしい気持ちになるよ。
え、30年後のロナルドくんはどうしてるかって?彼も勿論幸せにやってるよ。
私のクソゲーコラム担当のサンズ女史と結ばれて、息子にも恵まれたとも。
私達の奥さん同士も親友で、同じ事務所で双子の様に育った子供達。
ずっと、一緒に過ごした家賃8000円のこの事務所。
ドラルク城が爆破されたのは、災難だったけど。全員にとって、こんなに素晴らしい未来の始まりの始まりはここなんだ。
そして、全員が幸せになれた、二つ目の切っ掛けが、君が私の監視任務に就いてくれた事。ずっと、継続してくれた事。
これって、運命だよね?
「うぅ…あれ?ドラルク?」
「ごめん、起こしてしまったかね?私の可愛いお嬢さん?」
目を覚ましたヒナイチくんが、体を起こす。
心身共に成熟し、隊長に就任して新人育成に積極的で、今も鍛錬を怠らない彼女は、妖艶さも加わってますます魅力的な女性に成長した。
正直、日中、出歩けない私は心配だよ。影でファンクラブまであるの、知っているのかい?
「…お嬢さんはそろそろよせ。今日で、49歳になったんだぞ。世間では、『おばさん』だ。」
ムッとした様に頬を染めて。ほら、そんな事を言う。困った子だ。
「君こそ分かってないね。私は、238歳だよ?仮に、ヒナイチくんが100歳になっても『お嬢さん』って呼ぶもの。」
「む…それは、よして欲しいな。ホームや病院で呼ばれたら、恥ずかしいじゃないか。」
「だ~め、よさないよ。じゃあ…。」
今も小柄な君を抱き寄せる。
小さな小さな可愛い、私のお雛様。
何十歳になっても、美味しいクッキーを食べさせてあげる。
私が縫った、綺麗な服を着せてあげる。
出会った頃も手のかかる子だったけど、今も、何十年後の先までも、私の手を煩わせておくれ。
「私の大事なお雛様って、呼ぶけどいいのかな?」