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いつまでも小さなお雛様

全体公開 本編ドラヒナ(両思い期) 1 16 2298文字
2024-02-11 10:48:54

みんト参加作品1作目。
本編、というより30年後ドラヒナで、ヒナイチくんの誕生日のお話です。
署から帰ってきて眠っている、ヒナイチ隊長の寝顔を見つつ、出会った頃の、そして結ばれてからの、娘が生まれてからの彼女との日々について、思いを馳せています。
捏造で、ドラヒナ夫妻は拡張された床下で、ロナサン夫妻は事務所で、2世帯暮らしをしています。ドラヒナ夫妻には娘が、ロナサン夫妻には息子が生まれ、同い年で双子同様に育った事にしています。

Posted by @kw42431393

 「すぅ、すぅ。」
 「折角の誕生日なのに、大変だったね。ヒナイチ隊長殿。」
 
 今日は、3月3日。世間では、ひな祭り。
 女の子なら憧れの、可愛いひな人形を飾って、桃の花を愛でて、甘酒を飲んで。
 家族でちらし寿司や菱餅、雛あられを食べて、健やかな成長を願う日。
 私にとって、この世で最も大切な女性が生まれた日。
 私達夫婦に生まれたのは娘だったから、ずっと君の誕生日と娘のひな祭りを一緒に祝ったよね。
 
 「うん。くきー、おいしい。」
 「ウフフ。ヒナイチくん、ったら。」



 変わらない、ずっと変わらない。
 私と君が出会ったのは、30年前のこの事務所。
 長年住んでいたドラルク城が、ロナルドくんの勘違いで爆破されて、シンヨコに転がり込んで、間がない頃。君の思い込みが激しいのは、今もだね。時々、「また、仕事でやってしまった。」と落ち込んでいるもの。
 でも、思い込みが激しかったから、ミミズ以下のクソザコの私を『強大な力を隠した、危険な吸血鬼』だと言ってくれたんだよね?
 そして、母国の文化では挨拶に過ぎない手への口づけで、魅了にかかってくれたんだよね?

 師匠みたいに、何かした訳じゃない。正直、これは誇らしいよ。
 だって、正々堂々と君の心を射止めたんだよ?
 あの髭は「私の教えた賜物だ、感謝しろ」って、今でも言うけど。本気でもないくせに、誰彼構わず口説くあいつと同じにして欲しくない。

 君に言うと怒っちゃうから、言わないけれど。
 あの頃の私は、君に対して『美味しそうな血を持った、私好みの美少女』としか見ていなかった。『お嬢さん』呼びだって、躾けられたもの。

 子供の頃から鍛錬に夢中で、『お嬢さん』扱いされなかった女の子だったなんて、当時の私は知らなかった。
 そんなに食いしん坊な少女だと、私は知らなかった。

 だから、君が私の言葉とキスにときめいて。さらに、私のクッキーに魅了されてくれるなんて、考えていなかったんだ。
 私は、「手懐けて、いつか美味しい血を貰う」目的を忘れる程に。君への思いが、クソデカになっていくなんて、考えていなかったんのだ。
 君がいつの間にか「一緒にいて楽しいんだ」「お前と一緒にいたいんだ」と言ってくれる様になるなんて、考えていなかったんだ。
 
 女の子扱いされずに育ってきた君が求めていたものを、出会った私が持っていて。
 私が見る事も出来ない、欲しいと思っていた太陽への憧れを、君が持っていて。

 そして、私達は結ばれた。



 私の体が弱いから、本当は諦めていたんだけど可愛い娘にも恵まれた。
 生まれた娘の顔はお会いした事がないから分からないけれどお祖母様にそっくりらしい。
 だから、お祖父様のはしゃぎようはすごかったね。
 15世紀の女性は勉強も旅行もさせて貰えない者が多かったから、私の超ハイスペックな頭脳を受け継いだ娘には、お祖母様がやりたかっただろう事を経験させられた。
 お父様はここぞとばかりにベタベタに甘やかすし、お母様は私にしてやれなかった事を、この子にしてあげる事が出来た。
 棚の上に目を向ける。
 そこには、顔に『楽しい』『幸せ』『可愛い、尊い』しか書いてない、両親と幼い頃の娘がヴィッキーくんと撮った写真が、飾られている。

 私にとって、いかに世界が平和になった事が実感できて、この写真を見るたび誇らしい気持ちになるよ。
 かつての悲惨な時代に戻さない様に、頑張っている君の寝顔を見るたび誇らしい気持ちになるよ。

 え、30年後のロナルドくんはどうしてるかって?彼も勿論幸せにやってるよ。
 私のクソゲーコラム担当のサンズ女史と結ばれて、息子にも恵まれたとも。

 私達の奥さん同士も親友で、同じ事務所で双子の様に育った子供達。
 ずっと、一緒に過ごした家賃8000円のこの事務所。
 ドラルク城が爆破されたのは、災難だったけど。全員にとって、こんなに素晴らしい未来の始まりの始まりはここなんだ。
 そして、全員が幸せになれた、二つ目の切っ掛けが、君が私の監視任務に就いてくれた事。ずっと、継続してくれた事。

 これって、運命だよね?



 「うぅあれ?ドラルク?」
 「ごめん、起こしてしまったかね?私の可愛いお嬢さん?」
 目を覚ましたヒナイチくんが、体を起こす。
 心身共に成熟し、隊長に就任して新人育成に積極的で、今も鍛錬を怠らない彼女は、妖艶さも加わってますます魅力的な女性に成長した。
 正直、日中、出歩けない私は心配だよ。影でファンクラブまであるの、知っているのかい?
 「お嬢さんはそろそろよせ。今日で、49歳になったんだぞ。世間では、『おばさん』だ。」
 ムッとした様に頬を染めて。ほら、そんな事を言う。困った子だ。
 「君こそ分かってないね。私は、238歳だよ?仮に、ヒナイチくんが100歳になっても『お嬢さん』って呼ぶもの。」
 「むそれは、よして欲しいな。ホームや病院で呼ばれたら、恥ずかしいじゃないか。」
 「だ~め、よさないよ。じゃあ。」
 
 今も小柄な君を抱き寄せる。
 小さな小さな可愛い、私のお雛様。
 何十歳になっても、美味しいクッキーを食べさせてあげる。
 私が縫った、綺麗な服を着せてあげる。

 出会った頃も手のかかる子だったけど、今も、何十年後の先までも、私の手を煩わせておくれ。

 「私の大事なお雛様って、呼ぶけどいいのかな?」

 
 
 
 


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