ご真祖様の誕生日企画『#ハローエブリワン』に参加したお話です。
本人がドラヒナの人間なので、ドラヒナ要素ありの真ミナのお話になります。
さらに、100年後(?)のロナルド事務所に遊びに来た、落ち着いた隠者となったドラルクさんとご真祖様のシーンを追加しました。ドラヒナ夫妻の娘とロナサン夫妻の息子が結婚して、孫息子(顔はロナルドくんに瓜二つ)が生まれている、捏造設定で書いています。ご注意下さい。
2024/11/10に上げました。
@kw42431393
『見てくれ、綺麗だな!×××××!』
キラキラした君の瞳を思い出す。
10月半ばの頃だった。急に強い風が吹いて、吹雪みたいに紅葉が舞っていた。
満月の下で嬉しそうにクルクル回るミナこそ、紅葉そのものに見えた。
後になって思うと、紅葉の様に地味だけど、儚くて、厳しい冬の前に一番綺麗な姿を見せてくれた所なんか、そっくりだと思う。
『どうしたんだ?』
踊っている途中の君を抱き締めた。力強いけれども儚い君が、急に消えてしまいそうで。
『何でもない、心配になっただけ。』
ずっとここにいて、どこにもいかないで。
続く言葉を飲み込んだ。おかしな話だ。
ミナは、最強の夜の者である私とずっといてくれると言った、勇気ある昼の子だ。
今思うと、それは予感だったのかもしれない。
大きくなったお腹を撫でる。来月生まれる予定の息子に触れた。
私には透視能力があるから、ミナの中にいるドラウスの顔が見えている。
笑っている顔に、母親と同じアンテナが、僅かに動いているのが見えた。楽しい夢を見ているのかもしれない。
私達夫婦とマジロ2匹に加えて、この子が生まれてくれば、今ドラウスが見ている夢が現実になるはずだ。
15世紀のルーマニアは、人間と吸血鬼の関係性も悪く、そもそも祖国は、外政も内政も不安定な状態が続いていて、平和と言える時代ではなかった。
それでも、強大な力を持つ私なら、ドラウスが今見ている幸せな夢を現実にしてやれる。
…そのはずだった。
『過保護だなぁ、足元はちゃんと気を付けるぞ。お父様は心配性だな、ドラウス。』
お腹の中で息子が見ていたであろう、夢が現実だったのは、短い間だけだった。
悲しいだけの現実にさせない為に、病床でミナはある事を私に頼んだ。
おそらく、その執着は私に勝るとも劣らない。私が、この世で最も嬉しかった事を。
ドラウスには聞こえないけれども…ドラウスと食事をする時も、勉強を教える時も、遊びに行く時も…私の耳にはミナの声が聞こえている。
今も目には見えていないけれども、あの時のドラウスが見た夢は、現実として存在している。
「たまにはこんなのも悪くないでしょ?お祖父様。」
「うん、ありがと。おかげで暇じゃない。」
「折角の誕生日だもんな、じいさんの。おヒマなんて、言わせねえよ。」
今、目の前には紅葉が舞っている。
違うのは、ここが日本で、一緒にいるのは孫の友人達で、今日は10月でなく、私の誕生日だという事だ。
「『急に、おヒマですか?』なんて、RINEが来たから驚いたよ。」
「いつも驚かされてますからね。たまには、お返しです。」
ワクワクしながら、シンヨコのロナルド吸血鬼退治事務所に向かったら、レンタカーの前にドラルク達が、立っていた。
『お待ちしていましたよ、お祖父様。さぁ、行きましょう。』
『どこ行く?』
『アハハ。ウキウキしてるな。私もだ。バスケットの中は、吸血鬼用と人間用のご馳走だもんな。』
『後ろで大人しくしててくれよ。折角の紅葉狩りが、ハントになっちまう。』
『わかった。』
「車の中で『お誕生日おめでとう』って言われた時は、思わず、車を壊しちゃうぐらい嬉しかった。」
「大人しくしてろって、言ったのによ。全く、どっかの誰かとそっくりだ。」
「メンゴ。」
肩を竦めて苦笑いをすると、ロナルドくんは席を立った。トイレかな。
「見てくれ、綺麗だな。ドラルク!」
「ヌヌイ!ヌヌイ!」
鈴を転がす様な声に、振り返る。急に風が強くなって、吹雪の様に紅葉が舞っていた。
吸血鬼対策課のお嬢さんが、肩に乗せたジョンと一緒にクルクルと舞っている。
うん、ドラルクは最弱だけど。ちょっと、私に似てしまった。
「これこれ、寒いでしょ?上着を持って来る様に行ったのに、また薄着をして。」
「ちん、そんなに寒くないぞ?」
「口答えするんじゃありません。私のマントを羽織ってなさいよ。」
ドラウスが友人を同胞に迎え、同胞を伴侶に選ぶ事で、避けられた悲しみを…それを迎える運命を選んだ所まで。
『×××××…お前は、後悔しているのか?』
微かに聞こえる声に、私は心臓に手を当てる。
そんな声を出さないで。いつだって、君の笑い声が聞きたい。
「それはない。そして、たぶん。」
もう一度、孫達に目を向ける。
トイレから帰って来たロナルドくんに、二人と一匹が駆け寄る所だった。
「その頃のドラルクもきっと後悔しない。私には分かるよ。」
「ハロー、ドラルク。お暇?」
「やれやれ、仕方ないですね。お暇…にしておきますよ。」
「ヌヌヌヌイヌ。」
お入り下さい…そう言って、孫は『本日休業』のカードをノブにぶら下げる。
私が顔を見せると、「ヴェーーー!!」とか叫ばなくなったのは、いつからだっけ?
数年前?数十年前…百年ぐらい前からだった気もする。
「丁度、娘夫婦が仕事で、遠出をしなきゃいけなかったものでして、私が孫を預かっていたんですよ。あの子も喜びます。私に似ず、元気な子ですから。」
「うん、分かった。楽しみ。」
『誰でもお気軽にお入り下さい』の看板を見る。この看板もここに張られてからどれだけ経ったのかな。
何度も修繕されてボロボロになった看板。これがあるから、私達吸血鬼達も気軽にこの事務所に来れる。
でも、仕方ないよね。ドラルクが、初めてここに入れたのはこの看板のおかげ…だから、使えなくなるまで捨てられる訳がない。私達、人ならざる者の習性だもの。
変わったのは、『ロナルド吸血鬼退治事務所』ではなく、『ドラルクキャッスルマークⅡ』になってる事。
家主が、赤い服を来た人間のロナルドくんじゃなく、真祖にして無敵の吸血鬼ドラルクになっている事。
即死体質は変わっていないけど、伝説の退治人ロナルドのコンビだった吸血鬼、これまで多くの事件を解決してきた、この街の顔になっている事。
だから、ドラルクが声をかけると、同胞、ギルド、吸対の者達が、ここに来た依頼を手伝ってくれる。
だから、ロナルドくんの事務所を受け継いで、忙しい日々を送っている事。
そして…
「あっ!?ひいひいおじいちゃま!いらっしゃい!!」
メビヤツと遊んでいた、銀髪の子供が駆け寄って来る。私はその子を抱き上げると、激しい高い高いをしてあげた。
そう。あと、ドラルクは自分の監視をしていたお嬢さんと結ばれて、娘が生まれた事。
その娘は、ロナルドくんの息子と結ばれて…今や、孫まで出来ている事。
「うん、来たよ。今日は、何して遊ぼ?エベレスト行く?それとも、マリアナ海溝?」
「やれやれ、お手柔らかに願いますよ。ねえ?ヒナイチくん。」
ドラルクが、抱いている小さな骨壺を見る。あの赤毛のお嬢さんが、笑ったかの様に、カラリと乾いた音を立てた。