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カイノ

全体公開 4492文字
2024-02-18 20:40:09

キャラクター名
カイノ



プロフィール
正式名称は『汎用対全宇宙脅威アンドロイドχ』。カイノは愛称。
かつて何処かの並行世界で人類を守護するために作られた元・つよつよ戦闘アンドロイド。カタログスペック上は滅茶苦茶に強いが、いまは長年の闘いでほとんどの機能が壊れ、活動限界も近い。外見よりはるかに年代物。製造元もとっくに滅んだため、彼女に使われた技術の全てはロストテクノロジーと化している。
外見は高校生ほどの少女の姿であり、パッと見では人間と区別がつかない。白髪青眼。中肉中背。長年の闘いで右腕部は脱落し、左脚の脛から下はローテクな義足になっている。
製造当初はまさしく戦闘機械といった人格であり、無慈悲、無感情、無表情であったが、今は長年の学習によりとても表情豊かで明るい。
長年(少なくとも100年以上)数多の並行世界を転戦してきたが、とうとう活動限界が近い。死期を悟り、最後くらいは平和な余生を過ごそうとしているところ。なぜか大昔の希望崎学園の学籍がまだ生きていたので、束の間の平和な学生生活を過ごしている。
それでも、根底では自分の存在意義を戦闘に置いている。



能力名
『汎用対全宇宙脅威アンドロイドχ』



能力内容
ありとあらゆる敵と戦うために作られたつよつよ戦闘アンドロイドの各種機能。
・次元跳躍装置
並行世界にも跳べるワープ機能。完全に壊れている。
・全対応観測装置
あらゆる情報を感知するセンサー。ほとんど壊れていて人間くらいの知覚力しかない。
・全敵滅殺武装
小さなものから大きなものまで数々の破壊兵器。全て弾切れしたり壊れたりで使用不可能。
・超合金フレーム
つよつよ素材で作られた全身。劣化が酷いが、流石に生身の人間よりはまだ頑丈。運動性能も昔に比べてがた落ちしているが、まだ並の魔人くらいの運動能力はある。がんばればもっと瞬発力は出せそうだが、多分壊れる。
・無限ジェネレータ
謎技術により無限にエネルギーを生み出す装置。長年の酷使で酷く劣化しており、カイノ自身の連続稼働時間もそれに伴って制約されている。稼働時間の倍の時間はスリープ状態での休息が必要。連続稼働は通常状態は6時間、戦闘状態は10分まで。
・自己修復機能
読んで字のごとくの機能。長年の酷使の結果とうとう完全に止まった。
・剣術
昔どこかで覚えた特技。まだ辛うじて忘れていない記憶。
・笑顔
自分が笑うと、誰かも笑う。カイノ自身の一番のお気に入り機能。



プロローグ
沢山の記録はすり減って、もう正常に再生できるデータは少ない。
ノイズに埋もれた映像。
ノイズに埋もれた音声。
ノイズに埋もれた誰かの笑顔。
ノイズに埋もれた誰かの笑い声。
ノイズに埋もれた誰かの手の温度。

すり減ってしまった、暖かな記憶の数々。
思い出せないことは少しだけ悲しいことだけれども、嘆くことではない。
それで過去にあった出来事の価値が損なわれるわけではないのだから。

ノちゃーん、カイノちゃーん」

ぱち、とカメラアイを開く。少しノイズが混じった視界に、クラスメイトの顔が映っている。
昼休み、希望崎学園高等部の教室。うららかな日差しが差し込む、平穏そのものの光景だ。
「これはうっかり。寝ていました」
「もー、カイノちゃんはぽんこつロボなんだから」
「むかしはつよつよスーパーロボットだったんですけどねー」
「うっそだー」
軽口を交わしながら、自己診断プログラムを走らせる。

『ジェネレータ出力:規定値の0.008%』
『武装:1番から208番まで使用不可能』
『次元跳躍装置:致命的なエラー』
『フレーム損耗度:96%』
『自己修復開始失敗』
『早急なベースへの帰還及び修理が必要』

やはり、もう長くない。1年は持たないだろう。いや、もっと短いか。
壊れてしまうのが怖いわけではない。元より恐怖しないことが売りの戦闘マシンだ。人間が死ぬように、機械にも寿命が来た。それだけだ。むしろちょっと人間みたいで、少しだけ嬉しくすらある。
でも、それで悲しむ人間がいることは、自分も少し悲しい。それだけだ。

「ねえねえカイノちゃんが昔はつよつよスーパーロボットだったってホントなの~?」
「ホントですよー。昔は

断片的な、戦いの記録。
命令のままに戦った。
自分の意思で戦った。
滅ぼすために戦った。
守るために戦った。
怒りに任せて戦った。
笑顔のために戦った。
沢山の人のために戦った。
ただ一人のために戦った。
勝った。
負けた。
敵を殺した。
仲間が死んだ。
傷つけた。
傷つけられた。
壊して。
壊れて。

戦い続けて。
何があったのかもわからなくなるくらい、ずっと戦い続けて

「昔のことですよ。昔のことです。戦いなんて、無い方がいい」
きっと、そんな陳腐な結論を得た。
「平和が一番ですよ。ね?」
「なにそれー。スーパーロボットだったんじゃないの?」
「もう、ただのポンコツロボットに過ぎませんよ。昔はつよつよロボでしたけどね」

ひらひらと空っぽの右袖を振って、軽い調子で言った。
「平和が一番」。戦い続けて得た結論は、そんな陳腐な言葉だった。それでよかった。
そうだ。それでいい。もう、戦わない。

「昔は昔はって、カイノちゃんおばあちゃんみたいだねー」
「おばっ!?」
「そういえば、学籍の上ではウン十年留年してた扱いだとか聞いたよ?」
「いえ!私は機械なので!劣化はしても老化はしませんよ!?ノット老人!永遠の16歳とかそんな感じです!多分!留年は事実っぽいですが!よく覚えていませんけど!」
「いきなり早口になるじゃん」

陽の当たる教室の片隅で、機能停止までポンコツロボとして学生たちと軽口を交わし合って過ごす。血塗れの戦闘機械には出来過ぎた余生だ。
もしかすると、清算できていない過去があるかもしれない。すっかり再生できなくなったデータの中に、きっとまだやるべきことが眠っているのかもしれない。

でも、もう、いい。もう戦わない。
そのつもりだった。

「そういえばカイノちゃん。聞いたことある?『薔薇の決闘』の噂」
「いえ、全然心当たりがないですね」
「もう使われてない武道場で、夜な夜な決闘が行われてるって
「決闘」

自己診断プログラムを走らせる。
『ジェネレータ出力:規定値の0.008%』
『武装:1番から208番まで使用不可能』
『次元跳躍装置:致命的なエラー』
『フレーム損耗度:96%』
『自己修復開始失敗』
『早急なベースへの帰還及び修理が必要です』
やはり、もはや長くない。だがそれは問題ではない。機械は死を恐れはしない。

「因縁のある相手に、果たし状を送るんだって」
「勝った相手は、敗けた相手を従わせることができるとか

そんなことも、もはやどうでもいい。大事なことは、そうではない。
自己診断プログラムが、一つの結論を導き出す。
『戦闘続行:可能』
戦える。
武装が壊れても。
何もかもが劣化しても。
製造当初の力は見る影もないポンコツロボになっても。
汎用対全宇宙脅威アンドロイドχは、戦うために作られた機械は、まだ戦える。

「カイノちゃん、どうしたの?顔、怖いよ?」
「おっと失礼、ちょっとプログラムが躓きまして」

笑顔を作る。人を笑顔にする機能だ。
カイノ自身は、この機能を気に入っている。
しかし、戦闘機械には必要のない機能なのだろう。

きっと、じきに果たし状が送られてくる。
戦うのは好きではない。殺すのも、傷つけるのも、やりたくない。勝負事がしたいならチェスかパン食い競争でもやっていればいいと思う。
それでも、戦うために作られた存在にはきっと戦いの定めが来る。既に再生できないデータの中に、きっとその因縁が埋もれている。
カイノは、そう信じている。そうでなければならないと、信じている。

戦うために、作られたのだから。


ふと、夢を見た。
夢というのは正確な表現ではないが、スリープ状態でのデータ整理中に再生された記録であるから夢に近いものではあっただろう。

どこかの戦場だ。確か、くだらない理由で戦っていた時のような気がする。
砂塵、廃墟、怒号、銃声、硝煙、血臭
そして、難敵。
確か、そう、重武装の癖に凄まじく素早い相手だった。
生身の人間では持ち上げることも困難な重機関銃を小型拳銃のように軽々と振り回していたのを覚えている。
確か、左脚を獲られたっけ。別に恨みはない。戦ったなら傷をつけられるのは当然のことだ。
あいつは、戦士だった。私と同じ、この世に存在が定まった時から戦う力を持った存在だったのかもしれない。

殺しては、いないはずだ。あの時は、確か決着がつかなかったはずだ。
あいつは、今何をしているだろうか。

死んだだろうか。そんな考えが真っ先に浮かんだ。
本当に私の同類だったのならば、死んでいる可能性の方が高いはずだ。
もし、生きていたのなら。まだ、戦っているだろうか。それとも

そこまで考えたところで、ふと、違うデータが浮かんできた。
古いすり減った記録ではない。つい最近のことだ。

■■■
京東新聞 〇月×日
両陛下、マリハオ元大統領と会見 宮中昼食会に初出席

天皇、皇后両陛下は×日、来日したマリハオのホセ元大統領と会見し、昼食を共にされた。
陛下はマリハオの公用語で今回の退任に至るまでの貢献に敬意を示した。

ホセ元大統領は謝意を示し、

「この国には楽しみにしているものが沢山あります。本当に。」

と語った。
■■■

「あいつじゃん」
ぱちりと目が覚めた。
そうか。あいつ、大統領になったんだ。
マリハオのデータを検索する。かつては戦場だった国だ。今は、もう戦場では無かった。
“戦う大統領“は、役目を終えて退任したらしい。

戦い、やめたんだ。
やめられたんだ。

少しだけ、不明瞭な感情データが走った。
私は戦闘用の機械だ。
もう戦うつもりはないが。
それでも、私は戦闘用の機械だ。

……
………
「よかったね」

そう言うべきだと判断した。
戦うのは好きではない。殺すのも、傷つけるのも、やりたくないし、やるべきではない。戦っていたものが戦う必要がなくなって、戦うのを止めることができたなら、「よかったね」と、そう言うべきだ。
そのはずだ。

『ジェネレータ出力:規定値の0.008%』
『武装:1番から208番まで使用不可能』
『次元跳躍装置:致命的なエラー』
『フレーム損耗度:96%』
『自己修復開始失敗』
『早急なベースへの帰還及び修理が必要です』

それは、それとして。

『戦闘続行:可能』
私は、まだ戦えるぞ。
お前はどうだ。

だから『果たし状』が届いたとき、私は堪らなく
どうだっただろうか。
その時のデータを再生するのがなんとなくおっくうで、何を思ったのかはわからずじまいである。


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