@DangeSSReunioN
キャラクター名
歌沫 人禦(ウタカタ ヒトメ)
プロフィール
名前・歌沫 人禦(ウタカタ ジンゴ)
体に鱗ができ、皮膚が乾燥に弱くなる奇病『晶結鱗化症候群(メロウシンドローム)』を患う少年。鱗が主に脚を中心として広がり顔には達することがないこと、症状が悪化し続けると体がほとんど鱗に覆われ、固まってしまい人面魚に近い見た目へと変貌してしまうなどの要因によりこの名前が付けられた。鱗を構成する主な物質はケイ素であり、病気の原因は不明。一説には、ある種の先祖返りではないかと推測する学者も存在する。
今のところ治療法が確立されていない…噂―根も葉もないものだが、最愛の恋人を刺し殺した血で治る、という都市伝説が存在する。故に、彼女は恋をする。熱烈に、狂烈に。
能力名
『災禍、我を招きて泡となれ(アンディル・グロリアス)』
能力内容
水、及びそれに生息する物を操る。この力が及ぶ水は人禦自身が水と思っているものである。また力を使用するたびに体が泡となっていく。泡となった部位は一定時間で元に戻る。
プロローグ
薄暗い部屋の中、まっさらなカーテン越しに青白い月光が部屋の中に充満している。その中心で、影の塊が蠢いていた。
濡れた人体が触れ合い、互いをむさぼるその姿は酷く艶めいて見える。
糸を引いた唾液に濡れる唇も、紅潮した頬も、結びついた肉塊も。すべてがあまりにも啓蒙的な美しさとはかけ離れた原初の姿を映し出していた。声の美しさも容姿の端麗さも、今この場に満ちる快楽の前にはあまりにも無力である。
鱗に覆われた体が柔肌を少し切っても、君は痛みに声を上げることもない。
「人禦…人禦…ッあ…」
俺を求める声がする。俺も君を求めている。これこそ相思相愛だ。嗚呼、そう。
初恋にとらわれ続けることはない。俺はこうして相思相愛の相手と結ばれている。俺が腰を振れば君は喜んでくれる。どこまでも純粋に求めてくれる。伸ばされた腕をしっかりと体に這わせ、俺もまた君を抱く。
がくがくと脚に伝わる名状しがたい感覚。この一瞬のために、こうして俺は君と愛を紡いでいる。
「―――」
なんて言ったのか、言葉になっていたかどうかすらわからない。だけど、その一瞬で、俺の頭は溶けだしそうな快楽に落ちていた。
俺に覆いかぶさる君の顔が見える。今にも溶けだしそうな顔で笑っている。幸せそうだ。とても。
「人禦じんごの、いっぱいもらっちゃったね」
君はそういって俺から離れた。一仕事終えて疲れ果てた肉塊は別々の物となり、俺の股座からだらしなく頭を垂れている。
腰が抜けているのか、動けない俺をしり目に君はカーテンを開ける。穏やかな、一陣の風が部屋の中へ舞い込んできた。もうすぐ夜が明ける。淡い桃色に染まった空が太陽の到来を心待ちにしている。
「あのさ――」
「どうしたの?」
軽く体を起こすと、君の顔が風で靡いた髪に隠された。けれどその口元はしっかりと見えている。
ありがとう。そう言っているのが見えた。
「こっちの方こそ…ありがとう」
最近相手が構ってくれないからと、俺に目をつけてくれて。こうして2人きり秘密の夜を過ごした。これはもう絶対に言えない共犯だ。
まあ、ばれることはないだろう。俺のやり方に抜かりはない。だって俺は君を好きになることができたし、君も俺を好きになってくれたんだから。
にこりと笑った表情其のままに。君は目の前でナニカに切り裂かれた。
「――?」
何もわかっていない呆けた顔で、君の体が崩れ落ちる。スプリンクラーのように血をまき散らした君の体がそのすべてを俺へ降り注がせた。
頭から全身を赤く染まるほどに血を浴びた俺は呆然と立ち尽くす。理解が追い付かない。なぜ目の前で彼女は切り裂かれたのか。そもそも何にやられたのか。
「なんで…」
俺の口から自然と言葉がこぼれていた。
「なんで――治ってない?」
俺の手は依然鱗に覆われている。赤く染まった部位に変化は見られ――
うん?いやそうじゃない。俺が驚いているのは今目の前で人が死んだことであって『晶結鱗化症候群』がどうということではない。そもそも、血がかかって治るなんて根も葉もない只のうわさだ。俺はそんな噂を信じていない。
理解の追い付かない頭が、薄く鱗に覆われた体に視線を落とす。もはや俺の意思に反して体が動いていた。指が鱗の上を這う。不自然に、一部の鱗が泡となっていた。泡になっている部分は皮膚にも届いているみたいで、赤いグロテスクな肉が顔をのぞかせていた。
「やっぱり一夜だけの関係じゃだめなのかな?」
ダメも何もそれは只のうわさだというのに。自分の体の制御が効かない、こんなことは初めてだ。何やら冷たく頬を撫でる感触。俺の手はその物体をなんのためらいもなく撫でた。
俺の傍らに、ウミヘビのような…いや、どちらかといえば龍のようなものがいた。俺の手はそいつをなでているらしい。そいつはまるで俺になついているかのように顔をこすりつけてきた。
「ごめんね、あまりおいしくはなかったでしょう?それにしても――
いつまでたっても、私はこの忌々しい呪いから逃れられないのね」
呪いとはこの鱗を言ってるのだろうか。これは呪いなんかじゃなくて只の病気だ。というか…俺の体を動かしているコイツは…なんなんだ?
「まあいいわ。それよりこの貧相なものは早々に隠しましょうか」
何が貧相だ今はただ萎えてるだけで――
「随分意識がはっきり残っているのね?お陰様でいいものが見つかったわ…」
もしかしてコイツ、俺のこと認識してるのか?しかしいいものとは…
そこまで思案を巡らせてある一つの結論に到達した。それは、確実に考えうる限り最悪の。
コイツは、『晶結鱗化症候群(メロウシンドローム)』が最愛の恋人を刺し殺した血で治るという都市伝説を信じている。そして、俺には以前から思いをはせていた人がいる。あの人はずっと振り向いてくれない。だから、俺もこうして遊んでいたのだ。
「貴方にとっての最愛…絶対に招待する方法を…私は知っているわ」
かけてあったコートを羽織り、俺の中の何かがほくそ笑んだ。
「この方法なら…あなたの思い通りにできるわよ?振り向いてほしいのでしょう?愛してほしいのでしょう?なら――私が、協力してあげる」
拒否権なんてなかった。俺の体は既に。この怪物に乗っ取られていたのだから…
『――晶結鱗化症候群、という奇病をご存じですかな?』
『ええ、もちろん存じておりますが』
『この奇病には都市伝説があります。一つは…』
『恋人を刺し殺した血で治る、とかいう物騒な奴やろ!あんなの信じるやつおらへんて』
(笑い声)
『はい、確かにそういった都市伝説も存在します。しかし今回取り上げたいのはこちら』
『なんや新しい噂でも立てられとるんか』
『世間を揺るがす事態の裏側にいる患者たち?これは、どういった意味合いなのでしょうか』
『文字通りでございます。ではこちらの映像を見ていただきましょう』
(テレビに映る白黒写真。あまりはっきりとは見えない)
『この写真、真ん中に映っている男の子の腕をよーく見てみてください』
『ん…なんやささくれ立ってるように見えますな』
『もしかして…こちらが患者の鱗だと?』
『ご明察。そう、そしてこの男の子はとある事件の加害者なのです。その事件は…レッドキャップ事件。山中に立てこもり若い女性を手にかけていったという恐ろしい事件です』
『実際、レッドキャップ事件の犯人は晶結鱗化症候群であったことが確認されています』
『まだまだあります。こちらの写真をどうぞ…この少女にも、鱗がついています。そしてこの少女は、オネルの悲劇事件の犯人でもあります』
『オネルの悲劇は村の子供が集団でスケート中に冬の湖へ落ちてしまった事件ですね。こちらもこの少女が確かに犯人として、氷を溶かしていたという事実が存在します』
『ほかにも類例はあるのです…これらのことから導き出される答えは一つ』
(デデン、という効果音)
『晶結鱗化症候群罹患者は、衝動に駆られやすい…そのうえで、重大な大量殺人を犯している…もちろん多感な思春期時代に恋人の血で治るという都市伝説の影響やもしれません。しかし、あまりにもこれは不可解ではないでしょうか?』
『このお話』
『信じるか信じないかは』
『『貴方次第です』』
閉幕、番組終了後の楽屋にて
「なんだか、あまり気持ちのいい話題ではなかったですね」
「何よりも、まるで晶結鱗化症候群の患者を狂人扱いしているようだ」
「普通に胸糞悪いわ」
テレビ番組、『オカルト報道部』は多数のクレームにより姿を消した。