みずいこお題部第一回より「はじめて」「赤」をお借りしました
関西弁非ネイティブのため口調は勘と変換機頼り
@a_yuuzora
「ご存じの通り、水上が俺のはじめての恋人なわけやけど」
「はい、存じておりますよ。モテないって話散々聞かされましたからね」
「お前は俺がはじめて、ではなかったりする……?」
おそるおそる訊ねてみると、水上は苦い顔をした。何言ってんだコイツみたいな顔しとる。
「何言ってんですかアンタ」
顔と同じこと言うた。おもろ。
「隠岐ならともかく、俺にそういうの居るように見えました?」
「いや地元とかでな」
「いないっすよ。こんなモサくて性格悪い陰キャにモテる要素ないでしょ」
「別にモサくも性格悪くもないやろ。脚長くてシュッとしとるし、賢くて気が利くとことか普通にモテ要素やと思うんやけど」
「背ぇ伸びたのこっち来てからやし、賢い云々はともかく、気ぃ効かすのはイコさん相手だけすよ。他の奴らに甲斐甲斐しく世話なんて焼きませんて」
うっ、キュンときた。こういうとこやねんなー。
「何が『こういうとこ』なんすか」
声に出とったか、今の。
「あのな、お付き合いはじめてからお前のやることなすことにキュンが止まらんねん」
「きゅん……」
「さっきみたいに、『優しくするのはイコさんだけ』とか言ったりな、人目のないところで急にチュッてしてきたりな、ふたりきりになるとくっついて離れんとことかな」
「あーあーあー、そのへんでええです。で、それの何が問題なんです」
「こう、あまりにも手馴れとる気がして……カノジョとかおったんちゃうかと……いやおってもええしそこを詮索するのはお行儀悪いのは知っとんねん。けど」
なんか知らん間に先越されてたような気ぃしてな? 年上としてはちょっとフクザツっちゅーか。
「もっかい言いますけど、そういうのはいませんしイコさんが初めてです。あー……どう言えばええかな」
俺に待ったをかけるように手を突き出して水上が数秒考えこむ。目がちょっと泳いどるけど、なんか隠そうとしとる?
「分かりやすいとこで言うとですね、那須ちゃんおるでしょ。女子部隊の」
「おるなあ、あんま本部に来んレアキャラのえらい美人さん」
「本部に来んの、那須ちゃんが病弱やからっていうの知ってました?」
「聞いたことはあるな」
「学校おるとき以外はほとんどベッドの上におるってくらい体弱くて、運動なんてとてもとてもって感じらしいねんけど、ランク戦のときはめちゃめちゃ足早いやないですか」
「せやな! 壁走ったりな! あれどうやるんやろ」
「そう、トリオン体での運動能力は生身の感覚にひっぱられるって言うでしょ。でも生身で運動できない那須ちゃんが、生身の運動能力高い奴らでも出来んような壁走りできるの、なんでなん? って聞いてみたんですよ」
聞いてみたって本人に? えっ、スゴいな? スゴない? 俺あんな美人さん目の前にしたら絶対緊張して上手く話されへん気ぃすんねんけど。と思ってたら、「貴重な同ポジションなんで多少話すんすわ」と補足が入った。なるほど。
「そしたら、身体が上手く動かせない分、自由に動かせる身体をもってたらこういうことがしたいっていうの、昔からずーっとイメージしとったんですって。今できないことが、もしできるようになったらどうしたいか何したいか、何度もイメージを繰り返すと『できるようになった』ときにサッと動けるようなる、と」
「ほぉん、ためになるわ」
「そういうことです」
「……え、今の話繋がっとった?」
俺が振った話と那須ちゃんの話、全然違う気ぃするんやけど?
「繋がってますよぉ」
水上はちょっといたずらっぽくクスクス笑って、正解を教える気はなさそう。あんま嘘はつかんけど、煙に巻いたり誤魔化したりはするねんなあ、コイツ。
えーっと何の話しとったっけ? 元々は、水上が彼氏としてスマートすぎひん?って話で、水上からの返答が、那須ちゃんは運動できひん分めっちゃイメトレしとったって話?
……もしかして水上、恋人ができたとき(更にもしかすると「イコさんと恋人になれたとき」)どう振る舞うか何したいかってことをめっちゃイメトレしとった……ってコト!?
なにそれ、えっ、それめっちゃ可愛いな! サッと行動にうつせるくらい何遍もイメージ繰り返してたん想像したらめっちゃ可愛いしいじらしいねんけど!
しかも、俺が結論に気付いたことに気付いたのか、水上の耳の端がちょっと赤い。顔はスンとしとんのに。あらぁ、ほんっっま可愛い。
この可愛さ今すぐ誰かに共有したいのに、今ここに可愛さの張本人しかおらんのちょっと困るわ!
いやしかし、何度もイメトレしたからってスマートな言動が実際に起こせるの凄いな。俺そんなこと出来る気せえへんもん。やったことないことを鮮明に頭の中で動かすって、やってる本人は簡単そうに言うけどそれって才能やんな。
「はぁ~、やっぱ射手って頭良ぉないと務まらんねんなあ」
心からの感嘆を口にすると、水上は「結論そこなんすか」と言ってけらけら笑った。