ドラウスさんの誕生日に書いたウスミラのお話です。
去年書いた頃は、ファンブックの情報とかなくて、聞けば聞く程、この人ってドラウスさん以外とちゃんと、人付き合いをしてこなかったのかなぁ…と。それと同時に、アカジャでみっぴきと交流しているらしい話題がすごくうれしいので、混ぜ込んでみました。
ホテルに泊まったウスミラ夫妻。そして、ドラウスさんが見た『懐かしい、いつかの誰か』の夢のシーンを追加しました。
2023/11/21に上げました。
@kw42431393
「こんばんは、ドラルク。突然、すまないな。」
「うちの家系は、皆こんなものです。全く…。」
「ヌフフ…。」
この事務所に来るのは、久しぶりだ。そもそも染みついてしまったこの性格で、ドラウスの元にも滅多に帰れていない。
『ミラさんの顔が見れただけで、私は満足なのだよ!気にしないで!!』
そう言って、いつも私が好きな料理と共に出迎えてくれる。棺桶だっていつも手入れが行き届いているし、私が作る真っ黒になったパンケーキも『この世で最も美味しい』と、大喜びで食べてくれる。
明日は、彼の誕生日だ。連れ添って何百年にもなるのに、私の都合で共にいた時間が少ない大事な人。
だから、私の想いを込めておいしい誕生日ケーキを作って食べさせてあげたい。息子に教えて貰おうと思ったのだ。
「あれ?ドラルクのおふくろさん?てめー、来るならちゃんと教えろや。」
「私もさっきRINEが入って、知った事だよ。」
「どうしたんだ?あっ、これはお母上。お久しぶり。」
そうだったな。ホワイトデーに何を作ろうか迷って、ここに来た事もあったな。その時と、全く同じ会話ではないか。
「こんばんは、いつも息子が世話になっている。お邪魔させて頂こう。」
勝手に思いつめた私の身勝手で、迷惑をかけたドラルクの同居人達。気にするほどの事もないと、高を括っていた彼ら。そんな私にも、彼らは気負わず接してくれる。ありがたい事だ。
「あ~、そうっスね。一言言ってやって下さいよ。こいつときたら…。」
「アハハ、おかげで毎日楽しいぞ。お母上、荷物をお持ちしよう。こちらへ。」
「お前もだ、俺んちだろが。」
私の手荷物を持って、リビングに向かう昼の子達を見る。隣の息子に視線を移すと、まるで親の様な優しい目をしていた。三人と一匹の姿は実の家族よりも家族らしくて、以前は寂しい思いもしたけれど、今は…。
「さあ、お母様も着替えて下さいね。私の城に入るのですから、ちゃんとした格好をして頂かないと。」
ウインクをするドラルクに、笑みが漏れる。たまにしか会わない事もあって、昔から少しよそよそしい態度になりがちだったが…最近は、こういう表情が増えた。
本当にいい友人に巡り合ったのだと、実感する。
「ウフフ、そうだったな。お招きに預かり光栄だ。ご教授願おう。」
ドラウス、待っててくれ。今回こそ、見た目も味も美味しいものを作ってやるぞ。
息子の後をついて、リビングに足を踏み入れる。
カバンから、この日の為に何度も読み込んだ『お菓子の作り方』の本を取り出して…
おかしいな…気合を入れて、何度も忘れ物がないか確認したつもりだったのだが。
「あれ?髪を留めるゴムがない。あと、エプロン。」
昔から仕事以外は抜けていてな。何故だろう。
「おやおや、相変わらずですね。少々、お待ちください。私のを調整するので…。」
「いや、ドラルク。私の髪留めとエプロンを使って頂いてはどうだ?お母上と私は、そんなに体格も変わらないと思う。」
呆れた息子と吸対のお嬢さんの声。
まだ報告してくれていないが、この二人はお互い思い合っているのだと、私とドラウスは察している。
それにしても…
「お母上、これを…。どうかなされたか?」
「フフッ、内緒だ。ありがとう。」
お嬢さんが差し出した、赤い小鳥と紫の蝙蝠が刺繍されたエプロンをそっと撫でる。小鳥の頭には、ピョンと小さなアンテナがついていた。
全く、我々のサガだな。
近頃、私もロナ戦や週刊バンパイアハンターを購読する様になったが、時折、写っているこのお嬢さんの服や装飾品に、息子の影が見えるのが微笑ましかった。
「すまないね、ヒナイチくん。」
「いいんだ。よかった、サイズもぴったりだ。」
だから、ドラウスが幼い頃に経験出来なかった事を、お前達の時には実現してくれそうな気がして…
「ありがとう、ヒナイチさん。ありがたくお借りする。」
そして、ご真祖様が僅かな間しか出来なかった日常を、お前達には少しでも長く過ごして欲しい。心からそう思う。
「ドラルクや~!急に呼んでくれて嬉しいよ!!パパ来た…あっ!!ミラしゃん!!ミラさんも来ていたのかね!?」
そして、息子と打ち合わせた本日のサプライズ。時刻は、午前0時。
日付が変わったから、ドラウスの誕生日だ。
「おやおや、お父様ったら。その様子では、お忘れですね。」
「いつ会っても恥ずかしい親父さんだな。高校生のカップルかよ、ったく。」
「何だと、このクソポール!!君には、年長者に対する礼儀というものが…。」
ケンカ腰のドラウスの肩を叩くと、吊り上がった眉毛がくにゃりと垂れる。
クルクルと忙しない、犬の様で可愛いと感じる、変わらない癖だ。
「誕生日おめでとう、ドラウス。」
「え…私の誕生日は明日…。あ、そっか。」
やっぱり、気づいていなかったのだな。日付が変わっていた事を。
パーン!パーン!!
昼の子達から渡されたクラッカーを、私もタイミングを合わせて鳴らす。
そういえば、仕事一筋であまりこういう事をしていなかった気がする。何だか新鮮な気持ちだ。
「「「お誕生日おめでとうございます!!」」」
「ヌンヌーヌヌヌヌヌー!」
!マークを描いたアンテナが、一瞬遅れて嬉しそうに揺れる。
驚いた顔が、子供の様にクシャっとなるのが、とても愛おしくて…。
「エーン!!ありがとう、諸君!!」
ありがとう、は私達のセリフだ。
ずっと、昔から家庭でも、そして、外では人間と吸血鬼達の関係調整の為に、身をすり減らしてきてくれたのだから。
「さあ、こちらへどうぞ。お母様の自信作のケーキもありますよ。」
「明日は、俺達も仕事を休んだんだ。徹夜のつもりだから、ゆっくり楽しんでくれて構わねえよ。」
「お父上、これだけではないぞ。帰りが遅くなっても構わない様に、ヴリンスにお母上と泊って頂ける様にしてあるんだ。三人と一匹の割り勘だから、遠慮なく受け取ってくれ。」
息子達の言葉を聞いて、ますますベソベソと泣き出す夫の肩を撫でる。
本当に今も昔も手のかかる、可愛い人だ。
「エーン、ミラさん。ありがとう、私がこんなに幸せでいいのかな。」
勿論だ。そして、それは私のセリフだ。
生まれて来てくれて、そして、私と出会ってくれてありがとう。
思い込みが激しくて、極端で、強大な力を持ったばかりに、誰も身近にいて貰えなかった私が、幸せを感じられる様になったのは…
「こちらこそ、私に幸せをくれてありがとう。」
お前と出会ってからだ。
ドラウス、お前のおかげなんだ。
『ドラウス、ごめんな。』
子供の頃から知っている様な気がする優しい声。微かな記憶。
『あいつの血を受け入れていれば、今も傍にいられたのに…ごめんな。』
いいんですよ。きっとお父様と貴女との間で、色々相談されて決められたんで…しょうから。
『✕✕✕✕✕の目を通して、今も見ているぞ。日が暮れて帰ったら、きっと…フフ。あいつもワクワクして、準備しているだろうからな!』
あぁ…誕生日からお父様のお相手をする事になるんでしょうね。
いや、いいんですけど…うん。お父様と遊ぶのは…
『今日はドラウスを泣かせちゃ駄目だぞって、お父様に言っておくからな。安心して、楽しんでくれ。』
お母様と遊ぶのは…楽しいですから。
「ドラウス?どうした?」
愛しい妻の声で目が覚める。あっ、そうだ。
ここは暗い棺桶の中ではなく、ドラルク達が取ってくれたヴリンスホテルのスイートルームだ。
「お、おはよう!ミラさん!」
これも夢ではないだろうか。滅多に会えないミラさんと、二人っきり。
目が覚めて、最初に目に入るのは一番大事で、綺麗な月。いや、月よりずっとずっと、美しい…
「泣いているぞ?怖い夢でも見たのか?」
そう言って、ミラさんは柔らかい指先で目元を拭ってくれる。嬉しくて、その手を取って頬ずりした。
「怖い夢…ではなかったよ。幼い頃から、時々見る優しい夢…かな。」
お父様の部屋に飾られた、肖像画の女性が出てくる夢。
さて、着替えてミラさんと栃木の居城に帰る準備をしなくては…
「やれやれ、遅いぞ。ドラウス。ご真祖様を待たせるんじゃない。」
「誕生日おめでとう。こちらは、私の秘蔵のエッチピクチャです。ご夫人とのスパイスに使って…。」
「今、シンヨコから帰ってきたのか?久しぶりだな、ミラ。」
「我が輩だって、暇ではないのだぞ。全く…。」
「あぁ、この面子が揃うなんて滅多にないのに…今回は、ピカっとはしないでおくよ。何しろ、背後が怖いからね。」
「そう。今日は、ピカっとするのは禁止。さぁ、皆、入って入って!!ドラウス、ハッピーバースデー!!いっぱい、楽しも?」
きっと、古き血の友人達も巻き込んで、お父様とお母様が待ってくれているのだと分かっているから。