みずいこお題部第三回より「おそろい」をお借りしました
関西弁非ネイティブのため口調は勘と変換機頼り
@a_yuuzora
「水上、これあげる」
そう言われて渡されたのは、ポップな色合いをした2つのストラップだった。パステルカラーの1センチ角キューブが複数連なっていて、キューブひとつひとつ一文字ずつアルファベットが書かれている。片方のストラップの文字列は「TATUHITO」、もう片方には「SATOSHI」と書かれている。更にご丁寧にストラップの末端にはハート形のビーズまであしらわれている。(水上は「訓令式かヘボン式で統一せんかい」と頭の中で一瞬つっこんだ)
デザインは、ありていに言えばあまりにも少女趣味。もう少し良く言えばキュートすぎる。少なくとも十分背丈が育った男子高校生が所持したり身に着けるようなものではない。
「え……な、なんすか、これ」
「ストラップやで」
「いやそりゃ見れば分かりますけど。わざわざ探したんすか」
「いや、作った」
「作ったぁ!?」
「こないだ任務中に助けた子からこういうの貰ってな?」
生駒は傍にあった鞄の中をがさごそ漁って、チラシを綴じたような薄い冊子を取り出した。表紙には『SUNHO』と書かれている。水上は、小学生の頃クラスメイトの女子が似たようなのを学校に持ってきてたな、というのを思い出した。確か、それくらいの世代の女子が好みそうなファンシーグッズを格安で通信販売しているブランドのカタログだったはずだ。つまり、男子大学生とご縁があるタイプの冊子ではない。
「なんでまたそんなもん貰うことに……」
「なんでやったかなぁ。その子が二冊持ってるから片方あげる言うてん。ほんでな、ぱらぱらめくってたらアルファベットビーズちゅーの見つけてな、これやったら俺の名前作れるんちゃう?って思ったらどうにも欲しくなってもーて」
「あー、お土産屋のネームグッズ気になってたクチですか」
「せやねん! たつひとくんのお名前見たことないねん。たっくんとかたっちゃんはあるんやけど。さとしくんはありそうやな」
「まあいちいち探してないっすけど、間違いなくあるやろな……いやだったらイコさんの名前だけでええやないですか」
「こういうのつけるのコイビトっぽいって思わん? おそろいやねん」
そう言って生駒はポケットからもう二本同じ文字列のストラップを取り出し、水上は「嘘やろ」と呆れたように呟いた
「今時中学生カップルでもやらんでしょ」
「やらんかな? でも俺らがこういうの持ってたらオモロいと思わん?」
「オモロ……いや、それはだいぶオモロいと思いますけど、え、ほんまにおそろいでつけたいて思て作ったんです?」
「おん」
眼差しが思った以上にまっすぐで、水上はたじろぐ。どうやら、コイビト同士のお揃いグッズへの憧れとシンプルなウケ狙いが半々くらいに見える。
だが、心底惚れて付き合った相手からのお願いとはいえ、こんなあまりにも少女趣味のグッズを持ち歩くのは男子高校生には心理的ハードルが高すぎた。
「え、そんな嫌? いらんならひっこめるけど」
こころなしかしょぼんとして引き下がろうとする生駒の手を水上は掴んで引き止める。
「いらんくは、ないです! けど、あー……こういう作りだとビーズが一個でも割れたら綴り変わって残念なことになってまうでしょ、だから普段使いにすんのはちょぉ怖いなあ思て」
ギリギリ嘘ではない範囲で誤魔化すと、生駒は納得したように「なるほどなぁ」と感嘆した。
「一文字でも壊れたら名前変わってまうのは気づかんかったわ。じゃあこれは大事にしまっとこな」
そう言って生駒は再び冊子に目を戻す。それが何か別の物を物色している気がして、水上はその表紙を畳んで除ける。
「おそろいが欲しいならこん中から探さんでも、せめてバースデーグッズとかで妥協しませんか。水族館とか遊園地とかにあるような」
「サービスエリアの売店みたいな?」
「サービスエリアでもプラネタリウムでも観光地でもええですけど」
「おっ、じゃあ今度の休みそういうとこにデート行こな」
デートのお誘いのつもりはなかったが、思いがけず都合のいい方向に話が転がったため便乗する。
「ええですね、どうせならお泊りする距離んとこ行きます?」
「そこはカレンダーと防衛任務のシフト次第やなあ」
「それはそう」
長期休みはまだ先なのでシフトとの兼ね合いを考えるとしばらくは無理そうだと水上は結論づける。だが、いつかは行けるだろう。無事にお付き合いが続けば。
「そういや土産屋って言うたら剣に竜巻き付いてるやつあるやん。買うたことある?」
「ないですけど、兄貴が修学旅行のお土産でくれましたね」
「俺ああいうの好きでな、実家に十個ぐらいあんねん」
「多ない!?」
「やっぱ少年心くすぐられてまうねんなー、今でもくすぐられるかもしれん」
「言っときますけど俺は買いませんからね」
「えー」
「勘弁してください……」