オールジャンルイベントの『春の〆祭り』参加させて頂きました。
本編ドラヒナで、卒業式がテーマのお話です。なんとなく、ですが…『ジェントルおままごと』のお話のヒナイチくんが、妙に寂しそうに見えたので、にっぴきに合流するまで友達がいない子だったのかなぁ、と思って書きました。
さらに考えると、なんのかんので悪くはなかったんだろうけど、ティーンエイジャーをノース師匠の元にいたドラルクさんも、ジョンもおらず、同世代とつるめなくて、ちょっと寂しかったんじゃないかな…そんなイメージで書きました。
色々捏造注意です。
@kw42431393
「あ~、終わった。何だよ、お前。泣いてんの?」
「うるさい!俺、こういうのダメなんだよ!」
「美香ちゃん、卒業したら県外に就職だっけ?」
「寂しいなぁ…向こう行ったら、連絡頂戴?」
「泣く事ないじゃん。ゴールデンウィークには、また同窓会するんだからさ。」
「いいな、皆で集まろうぜ。」
「なぁ。この後、皆でカラオケ行かね?」
体育館から出ると、緊張感から解放される。なんとなく、校庭に集まって写真を撮ったり、連絡先を交換し合ったり、そのまま遊びに行く相談する者と、様々だ。
あくびをする顔、笑っている顔、泣いている者もいるし、慰める者、からかっている者もいる。
「ねえ、ヒナちゃんも行こうよ。」
「そうだよ。あんまり、こういうの来なかったじゃない。」
同級生の何人かが、声をかけてくれる。
家でも空いた時間は、道場に籠って鍛錬に詰めていた。
ドラマや芸能界に興味を示さなかった私は、女子グループの会話についていけなかった。だからと言って、男子グループでも、剣道部でいつも5人抜き出来る私は浮いていて、そこに入る事をしなかった。
「ん…そうだ、な。」
最後ぐらい、いいじゃないか?これまで、遊んでいなかったんだし…でも。
幼い頃から、兄の後を追って吸血鬼対策課に入ると決めていた私は、もう進路が決まっていた。
『エリートの俺が、話をつけておいた。警察学校も本来10か月だが、お前次第では数か月で卒業して、入隊出来るだろう。』
どんな悪どい手を使ったのかは、未だに不明だ。とにかく、一日でも早く来い…と言われている。
「どしたの?ヒナちゃん?」
結局、当時の私は、一日でも早く市民の為に戦いたい…という夢を取った。早く、実戦に投入されたかった。
だから…
「明日、始発の便で神奈川に向かう事になってるんだ。」
田舎だから、寝過ごしてその時間を逃すと、出発が遅くなる。
カラオケ終わったら、誰かの家でお菓子を持ち寄って、大騒ぎして…実は、ちょっと憧れてたんだよな。
最後ぐらい…最後なんだよな。さいご…だか、ら…
「…ごめんな。」
困った様な友人達の顔を見るのが辛くて、私は皆に背を向けた。
「ヒナちゃん、本当は私達さぁ。」
想像しなかった言葉に振り返る。本当は?本当は…って?
「ヒナちゃんと、もっと遊びたかったなぁ。」
「5月の同窓会は、来るよね?今度こそ、一緒にカラオケしよ?」
「な?そうしようぜ?」
うん、それもたぶんダメなんだ。私は、超特急で卒業する為に、スケジュールが詰められているから。
「…うん。行けたら、今度こそ。」
結局、そのゴールデンウィークも参加しなかった。あまりに、忙し過ぎて忘れてたんだ。
「ヒナイチくん?」
「ヌーヌヌヌ?」
校門の前で、よく知った一人と一匹に呼びかけられて我に返る。『新幹線が止まるだけの虚無』といわれているシンヨコだが、この高校は地元よりは校舎もずっと大きくて、部活帰りの生徒達の姿が見えた。
「ど、ドラルクにジョンか?どうしたんだ?」
今日は、ここも卒業式だったらしい。当時の私達同様、制服姿に卒業証書を持ったままの学生達が、街をうろついていた。パトロール中に、何人か羽目を外している学生達に、「そろそろ危ないから、帰りなさい。」と注意した所だ。
『あれ?お巡りさん、俺達と年違くね?』
まぁ、そうだな。私の友人達も、一年前の今頃、そうしてはしゃいでいたんだろう。
まさか、想像もしなかったな。敷かれたエリートコースに乗って、さっさと副隊長にまでなったのに…自分の勘違いで左遷状態にあるなんて。
そして…監視対象に協力して貰ってまで、それを望んでいるのだから…人生なんて分からないものだ。ドラルクに『人生という程、生きてないでしょ?』と窘められたのは、この前の事だったっけ。
『今日、卒業式だったのか?』
『そうそう、皆でつるむの最後だからさ。カラオケ、行ってきたんだ。』
その言葉を聞いて、友人達の言葉を思い出したんだ。地元の埼玉までは行けないけれど、それでブラっと最寄りの高校まで足を向けた…そんな感じだ。
「あぁ、桜が咲いてるな…と思って。つい、見惚れてたんだ。ほら…。」
「おや。じゃあ、中に入ろうか?」
「ヌー?」
今日日、部外者が勝手に入っていいものではないぞ。苦し紛れに出した言い訳に、苦笑する。
「桜が見たいの?私と河原の並木道を散歩しようじゃないか。そのまま、一緒に事務所に行こう?」
いや、私はまだパトロール中だぞ。その…
「じゃあ、パトロールもつき合うよ。どっちにしても、監視に来てくれるよね?勿論、帰ったらクッキーも焼いてあげる。」
「クッキー!!あ、あぁ。いや…。」
「ヌヌイヌヌン?」
私の肩に移ったジョンが、『どうしたの?』と首を傾げている。
やっぱり…正直に言ってしまおうかな。無理に誤魔化す様な内容でもないし。
「桜が目的というよりは…うん、今日は卒業式なんだなって。思ったんだ。」
事務所までの道を一緒に歩く。黙って聞いてくれているのは、ありがたい。
時々、ロナルドと半田を見ていると羨ましくなる。私には、当時そこまでじゃれ合える友人はいなかった。
『もっと、遊びたかったなあ』
そう思われてるなんて、考えもしなかった。じゃあ、たまには剣道を休んで『私も行くぞ!』そう言えたら…今頃どうしていたのだろう。
心残り、といえばそうなんだと思う。
「…まぁ、そういう気持ちになってな。あの時、ちょっと電車が遅れても…皆とカラオケ行って、遊びに行って、何も考えずにはしゃいだら、良かったのかなって。」
「…。」
「ヌシヌシ。」
腕に抱いたジョンが、頬を撫でてくれる。柔らかい感触にホッとする。
「ねえ…ヒナイチくん。」
ドラルクの声に、顔を上げる。いつの間にか、並木道に来ていたのだ。今日は平日だから、人が少ないけれど、今週末にはまたここも賑やかになるのだろう。
「じゃあ、これからカラオケ行こうか?私達の曲が、入ったって。真祖にして無敵の生ライブを聞いて、元気を出してくれ給え。」
「ヌエ…」
密室で、オータムから出したお前のテーマソングをか。しかし、何故そうなるんだ?
「お前、最後しか聞いてないだろう?」
「そんな事ないよ。元気がでたら、お礼にヒナイチくんの生ライブも聞かせておくれ。そして、何も考えずにはしゃごう?ねえ…ヒナイチくん?」
「な、何を…言って…」
思い出したついでに、今夜も一つ埋めよう?一つ一つ、心残りを埋めていこう…
その時、強い風が吹いて桜が舞った。薄着をしていた私が身震いすると、ふわりとお香の匂いに包まれた。ドラルクのマントの中に引き入れられたのだ。
「ん…」
「私達と一緒に、ね?」
「ヌン。」
見上げた顔は、妙に寂しそうだった。何も考えていない様なこいつにも、心残りはあるのだろうか。
「…うん。」
そのまま、薄い胸に頬を押し付けてじっとしていると…続いて、スマホを操作する音が聞こえてきた。
『もしもし、ロナルドくん。原稿終わった?サンズ女史は、まだそこにいる?丁度いい、オータムのイベントの練習に、二人ともおいで。…うん、ヒナイチくんもここにいるよ。これから、カラオケに行こうじゃないか。』