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心残り?じゃあ、これから埋めていこう?

全体公開 本編ドラヒナ(両片思い期) 9 3104文字
2024-03-17 17:28:17

オールジャンルイベントの『春の〆祭り』参加させて頂きました。
本編ドラヒナで、卒業式がテーマのお話です。なんとなく、ですが『ジェントルおままごと』のお話のヒナイチくんが、妙に寂しそうに見えたので、にっぴきに合流するまで友達がいない子だったのかなぁ、と思って書きました。
さらに考えると、なんのかんので悪くはなかったんだろうけど、ティーンエイジャーをノース師匠の元にいたドラルクさんも、ジョンもおらず、同世代とつるめなくて、ちょっと寂しかったんじゃないかなそんなイメージで書きました。
色々捏造注意です。

Posted by @kw42431393

 「あ~、終わった。何だよ、お前。泣いてんの?」
 「うるさい!俺、こういうのダメなんだよ!」
 「美香ちゃん、卒業したら県外に就職だっけ?」
 「寂しいなぁ向こう行ったら、連絡頂戴?」
 「泣く事ないじゃん。ゴールデンウィークには、また同窓会するんだからさ。」
 「いいな、皆で集まろうぜ。」
 「なぁ。この後、皆でカラオケ行かね?」

 体育館から出ると、緊張感から解放される。なんとなく、校庭に集まって写真を撮ったり、連絡先を交換し合ったり、そのまま遊びに行く相談する者と、様々だ。
 あくびをする顔、笑っている顔、泣いている者もいるし、慰める者、からかっている者もいる。
 
 「ねえ、ヒナちゃんも行こうよ。」
 「そうだよ。あんまり、こういうの来なかったじゃない。」
 同級生の何人かが、声をかけてくれる。
 家でも空いた時間は、道場に籠って鍛錬に詰めていた。
 ドラマや芸能界に興味を示さなかった私は、女子グループの会話についていけなかった。だからと言って、男子グループでも、剣道部でいつも5人抜き出来る私は浮いていて、そこに入る事をしなかった。
 「んそうだ、な。」
 最後ぐらい、いいじゃないか?これまで、遊んでいなかったんだしでも。
 幼い頃から、兄の後を追って吸血鬼対策課に入ると決めていた私は、もう進路が決まっていた。
 『エリートの俺が、話をつけておいた。警察学校も本来10か月だが、お前次第では数か月で卒業して、入隊出来るだろう。』
 どんな悪どい手を使ったのかは、未だに不明だ。とにかく、一日でも早く来いと言われている。
 「どしたの?ヒナちゃん?」
 結局、当時の私は、一日でも早く市民の為に戦いたいという夢を取った。早く、実戦に投入されたかった。
 だから
 「明日、始発の便で神奈川に向かう事になってるんだ。」
 田舎だから、寝過ごしてその時間を逃すと、出発が遅くなる。
 カラオケ終わったら、誰かの家でお菓子を持ち寄って、大騒ぎして実は、ちょっと憧れてたんだよな。
 最後ぐらい最後なんだよな。さいごだか、ら

 「ごめんな。」
 困った様な友人達の顔を見るのが辛くて、私は皆に背を向けた。
 「ヒナちゃん、本当は私達さぁ。」
 想像しなかった言葉に振り返る。本当は?本当はって?
 「ヒナちゃんと、もっと遊びたかったなぁ。」
 「5月の同窓会は、来るよね?今度こそ、一緒にカラオケしよ?」
 「な?そうしようぜ?」

 うん、それもたぶんダメなんだ。私は、超特急で卒業する為に、スケジュールが詰められているから。
 「うん。行けたら、今度こそ。」

 結局、そのゴールデンウィークも参加しなかった。あまりに、忙し過ぎて忘れてたんだ。



 「ヒナイチくん?」
 「ヌーヌヌヌ?」

 校門の前で、よく知った一人と一匹に呼びかけられて我に返る。『新幹線が止まるだけの虚無』といわれているシンヨコだが、この高校は地元よりは校舎もずっと大きくて、部活帰りの生徒達の姿が見えた。
 「ど、ドラルクにジョンか?どうしたんだ?」
 今日は、ここも卒業式だったらしい。当時の私達同様、制服姿に卒業証書を持ったままの学生達が、街をうろついていた。パトロール中に、何人か羽目を外している学生達に、「そろそろ危ないから、帰りなさい。」と注意した所だ。

 『あれ?お巡りさん、俺達と年違くね?』

 まぁ、そうだな。私の友人達も、一年前の今頃、そうしてはしゃいでいたんだろう。
 まさか、想像もしなかったな。敷かれたエリートコースに乗って、さっさと副隊長にまでなったのに自分の勘違いで左遷状態にあるなんて。
 そして監視対象に協力して貰ってまで、それを望んでいるのだから人生なんて分からないものだ。ドラルクに『人生という程、生きてないでしょ?』と窘められたのは、この前の事だったっけ。

 『今日、卒業式だったのか?』
 『そうそう、皆でつるむの最後だからさ。カラオケ、行ってきたんだ。』
 その言葉を聞いて、友人達の言葉を思い出したんだ。地元の埼玉までは行けないけれど、それでブラっと最寄りの高校まで足を向けたそんな感じだ。
 「あぁ、桜が咲いてるなと思って。つい、見惚れてたんだ。ほら。」
 「おや。じゃあ、中に入ろうか?」
 「ヌー?」
 今日日、部外者が勝手に入っていいものではないぞ。苦し紛れに出した言い訳に、苦笑する。
 「桜が見たいの?私と河原の並木道を散歩しようじゃないか。そのまま、一緒に事務所に行こう?」
 いや、私はまだパトロール中だぞ。その
 「じゃあ、パトロールもつき合うよ。どっちにしても、監視に来てくれるよね?勿論、帰ったらクッキーも焼いてあげる。」
 「クッキー!!あ、あぁ。いや。」
 「ヌヌイヌヌン?」
 私の肩に移ったジョンが、『どうしたの?』と首を傾げている。
 やっぱり正直に言ってしまおうかな。無理に誤魔化す様な内容でもないし。
 「桜が目的というよりはうん、今日は卒業式なんだなって。思ったんだ。」



 事務所までの道を一緒に歩く。黙って聞いてくれているのは、ありがたい。
 時々、ロナルドと半田を見ていると羨ましくなる。私には、当時そこまでじゃれ合える友人はいなかった。
 『もっと、遊びたかったなあ』
 そう思われてるなんて、考えもしなかった。じゃあ、たまには剣道を休んで『私も行くぞ!』そう言えたら今頃どうしていたのだろう。
 心残り、といえばそうなんだと思う。
 「まぁ、そういう気持ちになってな。あの時、ちょっと電車が遅れても皆とカラオケ行って、遊びに行って、何も考えずにはしゃいだら、良かったのかなって。」
 「。」
 「ヌシヌシ。」
 腕に抱いたジョンが、頬を撫でてくれる。柔らかい感触にホッとする。
 「ねえヒナイチくん。」
 ドラルクの声に、顔を上げる。いつの間にか、並木道に来ていたのだ。今日は平日だから、人が少ないけれど、今週末にはまたここも賑やかになるのだろう。
 「じゃあ、これからカラオケ行こうか?私達の曲が、入ったって。真祖にして無敵の生ライブを聞いて、元気を出してくれ給え。」
 「ヌエ
 密室で、オータムから出したお前のテーマソングをか。しかし、何故そうなるんだ?
 「お前、最後しか聞いてないだろう?」
 「そんな事ないよ。元気がでたら、お礼にヒナイチくんの生ライブも聞かせておくれ。そして、何も考えずにはしゃごう?ねえヒナイチくん?」
 「な、何を言って

 思い出したついでに、今夜も一つ埋めよう?一つ一つ、心残りを埋めていこう

 その時、強い風が吹いて桜が舞った。薄着をしていた私が身震いすると、ふわりとお香の匂いに包まれた。ドラルクのマントの中に引き入れられたのだ。

 「ん
 「私達と一緒に、ね?」
 「ヌン。」

 見上げた顔は、妙に寂しそうだった。何も考えていない様なこいつにも、心残りはあるのだろうか。
 「うん。」
 そのまま、薄い胸に頬を押し付けてじっとしていると続いて、スマホを操作する音が聞こえてきた。
 
 『もしもし、ロナルドくん。原稿終わった?サンズ女史は、まだそこにいる?丁度いい、オータムのイベントの練習に、二人ともおいで。うん、ヒナイチくんもここにいるよ。これから、カラオケに行こうじゃないか。』
 

 
 

 
 
 
 
 
 
 
 


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