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一般観光PEVO星人まとめ

全体公開 11 4322文字
2024-03-20 21:31:06

Twitterにならべた一般観光PEVO星人のまとめです。
適宜更新するかもしれません。
リンクまとめは一番最後のページにあります。

その1
PEVO星とテラを結ぶ定期便にはいくつか種類があることを恐らくテラヴスは知らないだろうと思う。
全く同化しないプランから少しでも遅れると帰れなくなるほど同化するプランまで様々あるが、このおっちょこちょいな性格からして滞在が長くなると帰れなくなりそうだ。
そんな自分はいつも全く同化しないプランでさくっと行き来している。
130億光年を結ぶバスでいざテラに降り立つ。
このプランを選ぶのはテラ観光初心者が多いため、まわりの同胞が目を輝かせているのを自分は何十回も見ていることになる。
まぁ、帰れなくなるよりは良いだろう、うん。

全く同化しないプランだからこそ生じる弊害と言えば、そう。
『食事』だ。
テラヴスは栄養を経口摂取することは流石に覚えたので表情にまでは出ていないと思うが、そうはいっても同化を全くしないためにいつ見ても食事というのに慣れない。
見るのもそうだし、自分でするのもだ。
しかも来た日が悪かった。
どうやらテラヴスの言葉で『ナツマツリ』と呼ばれる行事の日だったらしく、そこかしこで食事が行われている。
……いくらなんでも、ちょっと、その……うん……
言わない、言わないが。
いや、まぁ、テラヴスが多いのと気温が高い故に多少顔が赤くとも「暑いのかな」と思われているであろうことだけが不幸中の幸いと言えるだろう。
何も買わないのも悪目立ちしかねないため、ナピルを両替したエンとよばれる通貨でラムネとやらを買った。
……ひどく恥ずかしかったが、おいしかったのは確かである。
また来よう、なんて思う自分は同胞の中でも変わり者なのかもしれない。
ただ、そうだな。
次はこの季節は避けよう。
……せめて人目につかない屋内で『食事』を済ませたいので。


その2
オレには変わった友人がいる。
テラにしょっちゅう旅行に行くくせに一切同化しようとしないやつだ。
普通一ヶ月ぐらい滞在してある程度同化した方が食事への恥じらいとかを感じにくいから便利なんだが、あいつは相変わらずそうしない。
まぁ、何が言いたいかというと。
「すまないな手間をかけて。」
「いいさ、いつものことだ。」
もしも目の前のこいつが恥ずかしさに負けて食事を完遂できなかった場合に残りを食べるという簡単な仕事を任されている。
初めは一口も食べられていなかった分、同化こそしていないが慣れてはいるんだろう。
ここはラーメン屋。
奥の座敷席で目の前のこいつはラーメンを啜っている。
……こっちみんな。」
「へいへい。」
持ってきたテラヴス語の本を眺めつつ、時々様子をうかがう。
端から見れば熱々のラーメンを啜っているから顔が赤いように見えるだろうが、実際は違う。

それをオレだけが知っている。

幸い、ランチタイムや夕飯時を避けた結果店内には客がほぼいない。
自分の分のチャーハン餃子セットは既に食べ終えているので店員に無礼ということもない。
……すまん無理だ。』
小声、かつ母国語で囁かれた。
店員に配慮した結果だろうとは思うがむしろ恥ずかしくないのか?
オレは本をぱたんと閉じる。
「はいよ。」
マ、半分も食えてりゃ上出来じゃないか?

『いつもすまんな。』
『別に、いつものことだ。』
帰りのバスでそんな会話を交わす。
こいつが変わり者なのは確かだが、毎回性懲りもなく付き合うオレも十分変わり者なんだろう。


その3
「よ、大将。」
1カ月に1回、測ったように来る常連客が言う。
「おー、おまえさんか。」
「なんか困りごと?」
「困りごとってーか、こいつなんだけどよ。飯注文したときからそわそわしてたがなんか顔真っ赤にして撃沈しちまった。」
なんなんだ一体。

同胞じゃねーか。
どっからどうみても同化してない同胞じゃねーか。
いきなりカウンター席で食事はきついってそりゃ。
『全く、ちょっと貸せほら。』
「あんたそれ何語だ?」
「母国語さ。こいつ、オレの母国での同級生だ。」
これが嘘も方便ってやつだ。
すまんが許せ、大将。

はー……
「妙な偶然もあるもんだなぁ。」
「全くだ。」
「故郷は遠いのかい?」
「まぁ、そこそこな。」
こんだけ日本語がうまいもんだからてっきり日本人かと思ってたが違うのか。
「だからあれか、一ヶ月に一回しか来れねぇのか。」
「そういうこと。ホントはもっと通いたいんだがねぇ。」

「ごちそーさま。あ、こいつはオレが責任持って回収するから。」
「おう!今度は二人で来てくれな!」
どこの国の出身だろうが常連は常連だ。
客としてくるならちゃんともてなす、それがこの店の流儀だからな。
「おーとも。じゃ、また一ヶ月後に。」

『全く、いきなりカウンター席はつらかったろうに。』
『あんな衆人環視されるとは思わなかったんだぁ……。』
『初めてか?食事は。』
『勇気出してやってみようと思って……。』
『マ、最初はそんなもんだ。少し同化すると慣れる。』
『いや、同化は怖い。』
『なんだそりゃ。』
『次食事するときはオレ呼べ、じゃあ。』
『へ?』
『だから途中で無理になったらオレが代わりに食うって言ってんだよ。』
『は、はぇ、ぇ。』
『テラヴス流の食事の方だから!同化しないっつっても慣れろ!せめて!!』


その4
ソレは毛むくじゃらであった。
ソレはとても小さいものであった。
ソレはレヘレリとは異なるものであった。
ソレは生命体であった。
「なんだこの生命体は!?」
「ネコだ、ネコ。……とはいえオレも見るのは初めてだが。」
ソレは、ネコというらしかった。
……襲われないだろうか。」
「大丈夫だろ……多分。」
恐る恐る手を出してみると、ネコは慣れた素振りで近づいてきた。
少しの間匂いを嗅いで、目と口を広げて静止した。
……固まったが。」
「そういう性質なのか……?」
自分のような変わり者に付き合ってくれる同胞も首をかしげている。
静止から解放されたネコは目の前でごろんと寝転んだ。
おっかなびっくり触ってみたが、逃げる様子はない。
……体温が高い動物のようだ。」
「本に書いてあるよりも触った方がよくわかる。」
寝転んだネコは骨があるのかどうか不安になるほどぐねぐねと動いている。
……行ってしまった。」
唐突に立ち上がったかと思うと、ネコは塀へ軽々と飛び移り、何処かに行ってしまった。
「ネコはテラヴスが信仰する生命体の一種らしい。確かにあのかわいさは信仰が生まれても不思議ではないな。」
「確かに。」
現にテラヴスではない自分達も、あの動物にもう一度会いたくて仕方がない。


その5
「居酒屋って知ってるか?」
「イザカヤ。なんだそれは。」
不思議そうな顔で聞き返してくる同胞になるべくわかりやすく居酒屋の説明を試みる。
ええと、居酒屋の『酒』は『コロン』の意味だから……
「食事とコロンの店。」
……テラヴスって……変態しかいないの……?」
「語弊語弊。」
……まぁ、食事がそういう意味ではないことは理解した。したが、コロンと食事はもうアレでは?」
「味付けがコロンに合うようにできてるんだよ。テラヴスに見られないような席で食べることもできるからどうかなって思ってな。」
こいつ、テラヴスにおける栄養補給の食事に対する興味はあるから。

……ここが……例の……。」
「普通の居酒屋だってば。」
ごく一般的な、それでもテーブル席だと周りに人が来ないタイプのいわゆる半個室席。
そして目の前にはガチガチに固まった同胞。
……とって食われたりしないか?」
「んな、アーガッシュじゃあるまいし……。」

「一番一般的なコロンはこのビールってやつだ。あとおすすめはヤキトリとモロキュウだな。」
…………じゃあ、それで。」
とりあえずそれぐらいなら二人前頼んでも一人で食べきれるだろう。
そう思ったので迷わずに注文。
先にビールが届いたので、テラヴス流の挨拶で飲み始めることに。
「「乾杯」」

「お前もちょっとは同化したらどうだ?困るだろ色々。」
前に聞いたときはなんか言いにくそうだったが、コロンが入れば言いやすくもなるだろう。
……知り合いがテラに行ったっきり帰ってこない。……とっくの昔にクリティカルポイントは過ぎている。」
思ったより重い理由だった。
「あー……そりゃなんていうか……。」
「あんたが気にすることじゃない。帰ってこられないとはどんな悪辣な星かと思えば逆に過ごしやすい星だったし。」
いつにもなく口数が多いな、なんて思うほどには付き合いも長い。
こういうときは黙って聞いてるのが良い。
……だから、そうならないようにしている。それだけだ。」
「それがあんたの選択ならそれでいいさ。……ってかコロンの減る速さはやすぎないか?」
「いーだろべつに。」
こりゃあ、うん。
二杯目は水にしてやるべきだな。
本にそう書いてあった。
……あつい。」
「全く、ふらふらじゃないかお前さん……。」
食事もそんなにしない所為もある、のかもしれない。
或いはコロンへの耐性がそんなにない個体だったのか?
「明日のバスで帰るからな。」
「きょうじゃないの?」
「んな状態で乗れるかっての。オレの仮拠点ならあるから……。」

……昨日は本当に申し訳なかった。」
「いやいいって、飲ませたこっちも悪かった。」
コロンの飲みすぎて記憶が無くなる場合もあるらしいが、今回はそうならなかったらしい。
朝起き抜けからいきなり謝罪された。
「昨日帰る予定だったんだけどな……。」
「一日ぐらい誤差だ誤差。問題ないって。」
ただまぁ、今後はあんまり無理はさせられないな。
そんな事を考えつつ、帰りのバスを待つ。


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